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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

のりものの かたちは、コンピュータの なかで はしらせて きめる?

まだ走っていない乗り物を、スーパーコンピュータの中で先に走らせる

乗り物の空気の流れを、風洞とスーパーコンピュータで調べる ── 1日720条件の報道、X-59、超電導リニア

分野:技術

ひこうきの かたちを しらべる ふうどうは、1にちに だいたい 200こ の じょうけんを ためせると いわれます。あるコンピュータの けいさんは、2ふんの けいさんを 24じかん つづけると 720こ できると、ニュースで つたえられました。

まだ つくって いない のりものの かたちを、どうして よしあしが わかるのでしょう。くうきの ながれを コンピュータの なかで つくる ほうほうと、しずかな ひこうきや、ちょうでんどうリニアの おはなしが、この こたえに つながります。

飛行機の空気抵抗を調べる風洞実験は、1日に約200条件ほど試せるとされます。JAXAのスーパーコンピュータの計算では、1日に720条件分のデータが取れるようになったと報じられました。

まだ存在しない乗り物の形を、どうやって「いちばん良い」と決めるのでしょうか。空気の流れをコンピュータの中で再現する方法と、静かな超音速機X-59、超電導リニアの研究が、その答えを教えてくれます。空気の力と形の関係、風洞のむずかしさ、計算が分かります。

風洞実験は1日に約200条件、JAXAの新しい計算技術とスーパーコンピュータでは1日に720条件のデータが取れると、2016年に報じられた[4]。720は、1条件約2分の計算を24時間続けた場合の上限値にあたる。

ではなぜ、まだ存在しない乗り物の形を、計算機の中で決められるのか。この記事では、空気の力と形のトレードオフ、風洞のむずかしさ、飛行機の最適化に必要な計算量、NASAの静かな超音速機X-59、東北大学とJR東海の超電導リニアの共同研究が分かる。

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1. かたちを かえると、なにが こまるの?

1. 形を少し変えると、空気から受ける力が変わる

1. 空気抵抗と揚力のトレードオフ

はしる 車は、くうきから ちからを うけます。手を まどから 出すと、くうきに おされる のと おなじです。

くうきの ていこうが 小さいと、ねんぴが よく なります。けれど、車を うかせる ちから(揚力ようりょく)が 大きく なると、はしりが ふあんていに なります。だから、ていこうだけでなく、うかない ことも あわせて かんがえます。

ていこうを 小さくする かたちと、うかない かたちを、どうやって りょうりつ させるのでしょう。

走る車は、いつも空気から力を受けています。手を走る車の窓から出すと押される感じがしますが、あれと同じ力が、車全体にはたらいています。

理化学研究所(理研)の坪倉誠博士の解説によると、空気の抵抗が小さいほど燃費はよくなります。ところが、車を浮かせようとする力(揚力)が大きくなると、走りが不安定になります[1]。抵抗だけでなく、浮かせる力とのバランスも考える必要があります。

あちらを立てればこちらが立たない関係なので、形をほんの少し変えるだけで、燃費と安定性の両方が動きます。では、その「ほんの少し」をどうやって試すのでしょうか。

走行中の車体は、空気から抗力と揚力を受ける。理研の坪倉誠博士の解説では、空気抵抗が小さいほど燃費はよくなる一方、車体を浮かせる揚力が大きくなると安定性が悪くなる、というトレードオフがある[1]。

したがって設計者は、どちらかの数値だけを下げればよいわけではない。形状を少し変えるたびに両方が動くため、変更を試して確かめる回数が、そのまま設計の質を左右する。次の問いは、その試験をどこで行うかである。

2. ふうどうで しらべる のは、なにが むずかしいの?

2. 風洞や試作車には、時間も費用もかかる

2. 風洞・試作の限界 ── 走行状況とのずれ、時間、費用

むかしは、ためしに つくった 車や もけいに、せんぷうきで 風を あてて しらべて いました。これが ふうどうの しくみです。

ところが、じっさいに はしる ときとは ようすが ちがい、じかんも おかねも かかります。そこで、じっけんを たすけるために、コンピュータの けいさんも つかわれるように なりました。

けいさんは、どんな ことまで しらべられるのでしょう。

従来は、試作した車や縮小した模型に送風機で風を当て、空気の流れを調べていました。これが風洞実験です。

ただ、実験は実際に走るときと状況が異なります。時間も費用もかかります。そこで、実験の代わりにシミュレーション(計算機で現象を再現すること)が行われるようになりました[1]。

「風洞はもう要らない」という話ではありません。理研の資料も、シミュレーションを「実験の代わり」にも、「より現実に近い状態」を調べるためにも使う、という書き方です。では、計算機の中では、風洞にはできないどんなことができるのでしょうか。

従来の空力評価は、試作車や模型に送風機で風を当てて流れを調べる実験が中心だった。しかし実験の条件は実際の走行と異なり、時間と費用もかかるため、代わりにシミュレーションが行われるようになったと、理研の解説は述べる[1]。

ここで注意したいのは、風洞が不要になったという主張ではないことである。理研の資料は、シミュレーションを実験の代替にも、より現実に近い状態の再現にも使うという位置づけで書いている[1]。

では、風洞ではできない、あるいは危険な状況まで、計算機はどう扱うのか。

3. コンピュータの なかで、車を はしらせると?

3. コンピュータの中で車を走らせると、突風や急ハンドルも試せる

3. 仮想走行と形状探索 ── 突風・追い越し・AIによる提案

コンピュータの なかで、車を はしらせる こともできます。せっけいの ずが あれば、まだ ない 車でも はしらせられます。

とっぷうや、おいこし、きゅうな ハンドルなど、じっけんでは むずかしい こと、あぶない ことも しらべられます。

かたちを すこしずつ かえて、いちばん いい かたちを さがす こともできます。デザイナーの えらんだ かたちを かずに して、かっこよさと はしりの よさの りょうほうが いい かたちを、AIが かんがえて すすめる こころみも はじまって います。

近年のシミュレーションは、実験の代わりにとどまりません。設計図さえあれば、車をコンピュータの中で仮想的に走らせることができます。突風、追い越し、急ハンドルのように、現実の実験では難しいことや危険なことも、調べられます[2]。

形を少しずつ変えながら性能を調べ、いちばん適した形を探すこともできます。さらに、たくさんの形と性能を学習したAIに、形を提案させる試みもあります。デザイナーのデザインを数値にしてコンピュータに入れ、性能とかっこよさの両方がよい形を探す方法です[1]。

これを何千回も繰り返すには、1回の計算が速くなければなりません。どのくらい速くなったのでしょうか。

設計図(形状データ)があれば、車をコンピュータの中で仮想的に走らせられる。突風、追い越し、急ハンドルなど、現実の実験では難しい、あるいは危険な状況も調べられる点が、風洞との大きな違いである[2]。

形状を少しずつ変えて性能を調べ、最も適した形を探索することも可能だ。さらに、多数の形と性能を学習したAIが最適形状を提案し、デザインを数値化して性能と見た目の両立を探る試みも始まっている[1]。ただしこれらは研究や事例の紹介であり、すべての設計で標準になったという意味ではない。

こうした探索は、形を変えるたびに計算をやり直すため、1回の計算に要する時間が成否を分ける。

4. なぜ スーパーコンピュータが いるの?

4. 形を何千通りも試すには、1条件の計算を短くしたい

4. 進化計算と大量のCFD ── 1条件2分、1日720条件の意味

ひこうきの かたちを よくする には、たくさんの かたちを けいさんしなければ なりません。ふつうの コンピュータでは、じかんが かかりすぎます。

JAXAは 2016ねんに、けいさんの じかんを 20ぶんの1 に へらす ぎじゅつを つくりました。1つの じょうけんが 2ふんくらいです。

ふうどうは 1にち だいたい 200こ です。けいさんは、2ふんの けいさんを 24じかん ずっと まわしつづけると 720こ に なる、と ニュースで つたえられました。

しんかんせんの さきも、コンピュータで 5000とおり いじょうの かたちを しらべて きまったと ほうどうされました。

飛行機の形を最適にするには、進化計算という方法がよく使われます。形の案を少しずつ変えては性能を計算し、よいものを残していく方法です。JAXAの利用報告は、この方法で使う精度の高い3次元の流れの計算(CFD)を大量に行う必要があり、大規模な解析ができるスーパーコンピュータの活用が必須だと述べています[3]。

JAXAは2016年、飛行機の空気抵抗などの計算にかかる時間を20分の1に短縮する技術を開発したと報じられました。1条件は約2分です。風洞実験が1日約200条件なのに対し、1日720条件分のデータが取れるようになった、という報道です[4]。

24時間を2分で割ると720になり、報道の数字と合います。ただし、これは休まず計算を続けた場合の上限値の考え方で、JAXAの一次資料では確認していません。

新幹線N700系の先頭形状も、遺伝的アルゴリズムを使った空力の計算で5000通り以上を検討して決まったと報じられています[7]。くわしくは、別のメモ「新幹線の先頭形状」で扱っています。

では、この計算の力は、旅客機の何に使われたのでしょうか。

飛行機の空力最適化では、進化計算(形状案を変更・選択しながら性能を高める探索)が用いられる。その際、高精度なCFD、つまり3次元RANS解析を大量に行う必要があり、大規模解析のできるスーパーコンピュータの活用が必須とされる[3]。

ニュースイッチ(日刊工業新聞)は2016年9月、JAXAが飛行機の空気抵抗などのシミュレーション時間を20分の1に短縮する技術(FaSTARとJSS2の組み合わせ)を開発し、1条件の計算を約2分にしたと報じた[4]。同記事では、風洞実験が1日約200条件なのに対し、1日720条件のデータが取れるとされる。

2分×720=1440分=24時間であり、720は休みなく回した場合の理論上の上限値と読める。実際の運用でこの数が常に出るとは限らない。また、この数字は報道ベースで、JAXAのプレス原文では確かめていない。

形状数の桁を示す例として、新幹線N700系の先頭形状は、航空機開発でも使われる遺伝的アルゴリズムで5000通り以上を検討して決まったと報じられる(二次資料)[7]。詳細は別メモ「新幹線の先頭形状」に譲る。

では、この計算力で、何の形が決まったのか。

5. しずかな ちょうおんそくきの かたちは、どう きまったの?

5. 静かな超音速機X-59は、仮想風洞で衝撃波まで調べた

5. X-59の設計 ── NASAの仮想風洞と衝撃波の弱め方

おとより はやく とぶと、じめんに 大きな「ドン」と いう おとが とどくと いわれます。

アメリカの NASAは、しずかな ちょうおんそくきの X-59を つくりました。せっけい あんを、スーパーコンピュータの なかの「ばーちゃる ふうどう」で しらべました。

その けっか、きたいされたのは、大きな ドンでは なく、しずかな「サンプ」と いう おと でした。ながくて ほそい さきっぽが、かぎ だと いわれます。

音より速く飛ぶ超音速機は、衝撃波によって地上に大きな「ドン」という音を響かせるとされます。NASAは、その音を小さくする静かな超音速機X-59を設計しました。

NASAのエイムズ研究所では、設計案を、スーパーコンピュータ(Pleiades、Electra、Endeavour)で高解像度の3次元計算にかけました。いわば「仮想風洞」で、空気の流れを細かく調べたのです[5]。

計算では、機体の下側から出る衝撃波が弱いことが示されました。地上には、大きな「ドン」ではなく、静かな「サンプ(thump)」が聞こえると期待されています。長く細い機首が、そのための設計の鍵だとNASAは説明しています[6]。

飛行機で磨かれたこの計算は、地上を走る乗り物にも使われはじめています。

NASAは、静かな超音速機X-59の設計案を、エイムズ研究所のスーパーコンピュータ(Pleiades、Electra、Endeavour)で高解像度3次元シミュレーションにかけ、仮想風洞として空力を詳細に調べた[5]。

その結果、機体下面から伝わる衝撃波が弱いことが示され、地上ではドンという大きな音ではなく、静かなサンプ(thump)が聞こえると期待された。長く細い機首が、衝撃波を弱める設計の鍵とされる[6]。ここでの「期待」は設計段階の計算に基づくもので、飛行後の測定結果とは別に読む必要がある。

形状の詳細な効果を、実機の前に計算で見通せる点が、スーパーコンピュータを使う利点である。同様の考え方は、空ではなく地上の高速鉄道にも及んでいる。

6. こんどは、ちょうでんどうリニアを コンピュータで はしらせる

6. 超電導リニアの空気の流れを、スパコン「富岳」で計算する

6. 東北大学とJR東海の共同研究(2025年)── 飛行機の流体計算から超電導リニアへ

2025ねん6がつ、とうほくだいがくと JRとうかいは、スーパーコンピュータ「ふがく」を つかう けんきゅうを はじめると はっぴょう しました。

ちょうでんどうリニアの、ながい しゃりょうの まわりの くうきの ながれと、くうきが だす おとを、くわしく けいさんします。めざすのは、ていこうが 小さく、しずかで、のりごこちの いい のりものです。

つかうのは、ひこうきの ために つくられた けいさんの ぎじゅつです。

2025年6月26日、東北大学とJR東海は、スーパーコンピュータ「富岳」を使って超電導リニアの空力性能を高める共同研究を始めると発表しました[8]。

使うのは、東北大学が航空機の空力シミュレーション向けに開発してきた技術(FFVHC-ACE)です。複雑な台車を含む、長い車両編成全体の空気の流れと空力音を高精度に再現し、走行抵抗が低く、静かで、乗り心地のよいリニアの開発を目指します[8]。

同じ大学の計算プログラムは、「実際の航空機のフライト試験を大規模シミュレーションで再現することに世界で初めて成功した」と、大学が発表しています[8]。飛行機も超電導リニアも、複雑な形のまわりを高速で流れる乱流を扱う点が共通しています。

研究は始まったばかりです。乗り物の形がどう変わるかは、これからの結果を待つことになります。

2025年6月26日、東北大学とJR東海は、スパコン「富岳」で超電導リニアの空力性能を高める共同研究を始めると発表した。東北大学の河合宗司氏らが開発した航空機向けの空力シミュレーション技術(FFVHC-ACE)を用い、複雑な台車を含む長い車両編成全体の流れ(乱流)と空力音を高精度に再現し、低走行抵抗、静音性、乗り心地の向上をめざす[8]。

同大学は、この解析ソルバーが富岳上で、実際の航空機のフライト試験を大規模シミュレーションで再現することに世界で初めて成功したとも発表している[8]。「世界初」は大学側の表現である。飛行機とリニアには、複雑な形状のまわりを高レイノルズ数で流れる乱流を扱う、という共通点がある。

共同研究は開始が発表された段階で、形状の改善結果は本記事の時点では示されていない。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること うちわを もって、ひらたい めんを 前に むけて ふって みましょう。つぎに、うすい ほうを 前に むけて ふります。どちらが かるく ふれるでしょうか。

出かけて えきで、でんしゃの さきの かたちを 見くらべて みましょう。ふつうの でんしゃと、しんかんせんで、どう ちがうでしょうか。

くわしく しるなら りけんの こどもむけの ページ「科学道」で、シミュレーションの おはなしを 読めます。

今日できること うちわの平らな面を前に向けて振り、次に薄い側を前に向けて振ってみましょう。空気の抵抗による重さのちがいを、手で感じられます。

出かけてできること 駅で、いろいろな電車や新幹線の先頭形状を見比べてみましょう。空気の流れを思い浮かべながら見ると、形の理由を考えるきっかけになります。

公式情報 理研の子ども向けページ「科学道」や、JAXA、NASA、東北大学の発表資料で、空力シミュレーションの最新の話を読めます。

今日できること うちわの平らな面と薄い側を交互に前に向けて振り、空気抵抗の差を手で確かめる。面積が力に関わることの、身近な体験になる。

出かけてできること 駅や車庫の見学などで、電車の先頭形状を見比べる。N700系のノーズ形状は、別メモ「新幹線の先頭形状」で扱っている。

公式情報・原典 理研「科学道」(坪倉誠博士)、JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告、NASAの記事、東北大学のプレスリリース。NASAの記事は英語である。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

記事の記述は、次の資料をもとにしています。2026年10月1日に確認しました。

  1. 理化学研究所 科学道「シミュレーションで何ができるの?」(坪倉誠博士) https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/publications/kids/2023_m_tsubokura.pdf (空気の力と形、風洞の限界、AIによる形の提案)
  2. 理化学研究所「坪倉誠博士」紹介ページ https://www.riken.jp/pr/hakase/m_tsubokura/index.html (仮想走行で調べられること)
  3. JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告 R17JA3202 https://www.jss.jaxa.jp/mediadir/2018/08/R17JA3202.pdf (飛行機の空力最適化に必要な計算)
  4. ニュースイッチ(日刊工業新聞)2016年9月23日 https://newswitch.jp/p/6193 (計算時間20分の1、1日720条件の報道)
  5. NASA "Aeronautical Artwork: Computer Simulation or Both" https://www.nasa.gov/aeroresearch/aeronautical-artwork-computer-simulation-or-both (X-59の仮想風洞計算)
  6. NASA "Supercomputers Aid Quesst Researchers in Predicting X-59's Sound" 2023年4月21日 https://www.nasa.gov/aeroresearch/supercomputers-aid-quesst-researchers-in-predicting-x-59s-sound (衝撃波を弱める機首)
  7. 乗りものニュース「新幹線にも「翼」がある?」 https://trafficnews.jp/post/81122 (N700系の形を5000通り以上検討したという報道)
  8. 東北大学プレスリリース 2025年6月26日 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20250626_00_simulation.pdf (超電導リニアの共同研究)

なおした ところ

更新履歴

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