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トイレは、むかしから 水で ながして いたの?

トイレの歴史 ── 水洗トイレは、なぜ2度発明されたのか

トイレの歴史 ── 水洗トイレは、なぜ2度発明されたのか

分野:歴史・文化

むかしの 日本の いなかには、トイレの 下に 大きな かめが あって、いっぱいに なると おとな 2人がかりで はこび出す 家が ありました。

水を ながすだけで きれいに なる 今の トイレは、じつは 新しい しくみです。トイレは、どのように かわって きたのでしょう。

昔の日本の田舎には、トイレの下に大きなかめがあって、いっぱいになると大人2人がかりで運び出す家がありました。

水を流すだけできれいになる今のトイレは、実は新しい仕組みです。トイレは、どのように変わってきたのでしょうか。

昭和の日本の田舎には、トイレの下に大きなかめがあり、いっぱいになると大人2人がかりで運び出す家があった。汲み取り式と呼ばれる、水を使わないトイレである。

水を流すだけで清潔になる現在の水洗トイレは、世界的に見ても、実は歴史の新しい部類に入る。紀元前1700〜1800年ごろの古代クレタ島にはすでに水洗トイレがあったとされるのに、その技術は一度忘れられ、1596年と1775年、2つの発明を経てようやく現在の形にたどり着いた。日本独自の汲み取り式の歴史や、今も世界の3分の1以上の人が安全なトイレを使えないという事実をまとめる。

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1. せかいで いちばん 古い、水を ながす トイレ

1. 世界で一番古い、水を流すトイレ

1. 紀元前1700〜1800年ごろ、世界最古とされる水洗トイレがあった

水を ながす トイレが、じつは とても むかしに あった ことを 知って いますか。

今から やく 3800年も 前、地中海の クレタ島に あった クノッソスと いう おおきな たてものに、水で ながす トイレが あったのです[1]

雨水を ためて おき、それを つかって よごれを ながす しくみでした。

水を流すトイレが、実はとても昔にあったことを知っていますか。

今から約3800年も前、地中海のクレタ島にあったクノッソスという大きな建物に、水で流すトイレがあったのです[1]

雨水をためておき、それを使って汚れを流す仕組みでした。

世界最古の水洗トイレとされるのは、地中海のクレタ島にあった、ミノア文明のクノッソス宮殿のものである。紀元前1700〜1800年ごろにさかのぼるとされる(資料により年代の推定に幅がある)[1]

木製の座面と、水をためる貯水槽を備え、貯水槽やためた雨水を利用して汚水を流す、素焼きの土管による排水網が宮殿内に張り巡らされていた[1]

この高度な技術は、ミノア文明の衰退とともに、長い間、表舞台から姿を消した。

2. ローマの トイレは、みんなで つかう ばしょだった

2. ローマのトイレは、みんなで使う場所だった

2. 古代ローマの共同トイレは、社交の場だった

古代 ローマにも、水を つかった トイレが ありました。ただし、今とは ずいぶん ちがう すがたでした。

長い ベンチに あなが いくつも あいて いて、多くの 人が となりあって すわる、みんなで つかう トイレだったのです[2]。かこいも なかったので、おしゃべりを しながら つかう ことも あったようです。

古代ローマにも、水を使ったトイレがありました。ただし、今とはずいぶん違う姿でした。

長いベンチに穴がいくつも空いていて、多くの人が隣り合って座る、みんなで使うトイレだったのです[2]。囲いもなかったので、おしゃべりをしながら使うこともあったようです。

古代ローマは、上下水道の整備で知られ、「フォリカエ」と呼ばれる公衆トイレが各地に設けられた。長いベンチ状の座面に複数の穴が並び、下を流れる下水で汚物を流す仕組みである[2]

仕切りがなく、複数人が向かい合って用を足す構造だったため、現代の感覚では想像しにくいが、当時は会話を交わす社交の場としても機能していたと考えられている[2]

このような公共インフラは、ローマ帝国の衰退とともに、多くの地域で維持されなくなった。

3. 中世の ヨーロッパでは、しくみが わすれられて いた

3. 中世のヨーロッパでは、仕組みが忘れられていた

3. 中世ヨーロッパでは、衛生が後退した

クノッソスや ローマの すすんだ トイレの ちしきは、その あと ヨーロッパで、長い あいだ わすれられて しまいました。

おしろでは、へやの中で「おまる」を つかったり、トイレを かべの 外に つき出して つくり、下の ほりや みぞに そのまま おとしたり して いました[3]。町では、まどから 外に すてる ことも あったようです。

クノッソスやローマの進んだトイレの知識は、そのあとヨーロッパで、長い間忘れられてしまいました。

お城では、部屋の中で「おまる」を使ったり、トイレを壁の外に突き出してつくり、下の堀や溝にそのまま落としたりしていました[3]。町では、窓から外に捨てることもあったようです。

古代の水洗トイレの技術は、中世ヨーロッパにはほとんど継承されなかった。城には「ガーダーロープ」と呼ばれる、壁から張り出した小部屋型のトイレが設けられ、排泄物は直接、城の堀や周囲の溝に落とされた[3]

一般の住居では室内で「チェンバーポット」(おまる)が使われ、都市部では中身を窓から街路に投げ捨てる習慣もあったとされる[3]

こうした衛生環境の悪さは、感染症が広がる一因になり得たと考えられている。

4. 女王さまの ために 作られた、さいしょの すいせんトイレ

4. 女王さまのために作られた、最初の水洗トイレ

4. 1596年、ハリントンが「エイジャックス」を作った

1596年、イギリスの ハリントンと いう 人が、水を ながす しくみの ある トイレを 作りました。エリザベス1世と いう 女王さまの ために 作った ものでした[4]

でも、この トイレは その あと あまり 広まりませんでした。まだ、下水道などの まわりの しくみが ととのって いなかったからです。

1596年、イギリスのハリントンという人が、水を流す仕組みのあるトイレを作りました。エリザベス1世という女王さまのために作ったものでした[4]

でも、このトイレはそのあとあまり広まりませんでした。まだ、下水道などの周りの仕組みが整っていなかったからです。

1596年、イングランドの廷臣ジョン・ハリントンは、水を流して汚物を貯水池へ送る仕組みのトイレを考案し、名付け親であった女王エリザベス1世のために、リッチモンド宮殿に設置した[4]

ハリントンはこの発明を「エイジャックス」と名付けた。当時トイレを指す俗語「ジェイクス」に掛けた洒落である[4]

しかし、下水処理や大量生産の技術がまだ整っていなかったため、この発明は当時、広く普及することなく終わった。

5. くさい においを ふせぐ、まがった かんの ひみつ

5. 臭いにおいを防ぐ、曲がった管の秘密

5. 1775年、決定的なS字の排水管が発明された

1775年、カミングと いう 人が、トイレの はいすいかんを「S」の 字の かたちに まげる ほうほうを かんがえました[5]

まがった かんの 中に 水が たまるので、下水道からの くさい くうきが、へやの 中に 入って こなく なりました。この くふうが、今の トイレにも つかわれて います。

まがる ストローを Uの 字に まげて 水を そそぐと、あふれた ぶんは むこうがわへ ながれて いきますが、そそぐのを やめると、下の まがった ところには、やはり 少し 水が のこります。トイレの S字の かんの 中でも、おなじ ことが おきて います。ただし ほんとうは、トイレの かんは、Uの 字ではなく、少し ちがう Sの 字を して います。

ちなみに、トイレを 広めた 人として ゆうめいな クラッパーさんと いう 人が いますが、この 人は トイレを はつめいした 本人では ありません。トイレを うる お店を ひらいて、多くの 人に つかって もらえる ように した 人です[6]

1775年、カミングという人が、トイレの排水管を「S」の字の形に曲げる方法を考えました[5]

曲がった管の中に水がたまるので、下水道からの臭い空気が、部屋の中に入ってこなくなりました。この工夫が、今のトイレにも使われています。

ちなみに、トイレを広めた人として有名なクラッパーさんという人がいますが、この人はトイレを発明した本人ではありません。トイレを売るお店を開いて、多くの人に使ってもらえるようにした人です[6]

1775年、スコットランドの発明家アレクサンダー・カミングは、排水管をS字型に曲げる「S字トラップ」の特許を取得した[5]

曲がった管の中に常に水が残ることで水封(水の栓)ができ、下水道からの悪臭や有害なガスが室内に逆流するのを防げる。これは今日の水洗トイレにも受け継がれている、決定的な発明である[5]

なお、トイレの代名詞としてしばしば語られるトーマス・クラッパーは、水洗トイレの発明者ではない。彼は配管工として、タンク内の水位を調整する浮き玉弁(ボールコック)やU字形トラップを改良して9件の特許を取得し、ロンドンのショールームでの展示販売を通じて水洗トイレを社会に広めた人物である[6]

6. 日本の トイレは、こやしを 作る しごとと つながって いた

6. 日本のトイレは、こやしを作る仕事とつながっていた

6. 日本は、汲み取り式トイレからウォシュレットへ進んだ

日本では、長い あいだ、水を つかわない「くみとり式」の トイレが つかわれて いました。トイレの 下に ためた ものを、あとで くみ出す しくみです。

えど時代には、この くみ出した ものを、はたけの こやし(しょくぶつを そだてる ための もの)として つかう しごとが ありました[7]。いなかの 大きな かめも、この しくみの なごりです。

そして 1980年、日本の 会社(TOTO)が、おしりを あたたかい 水で あらう「ウォシュレット」を うりだしました[8]

日本では、長い間、水を使わない「汲み取り式」のトイレが使われていました。トイレの下にためたものを、あとで汲み出す仕組みです。

江戸時代には、この汲み出したものを、畑のこやし(植物を育てるためのもの)として使う仕事がありました[7]。田舎の大きなかめも、この仕組みの名残です。

そして1980年、日本の会社(TOTO)が、おしりを温かい水で洗う「ウォシュレット」を売り出しました[8]

日本では長らく、便槽に排泄物をため、定期的に汲み出す汲み取り式くみとりしきトイレが主流だった。江戸時代には、汲み出した排泄物を農地の肥料ひりょうとして利用する「下肥(しもごえ)」の仕組みが確立し、専門の業者が回収・売買を行っていた[7]

農村部に見られた大きなかめによる貯留も、この汲み取り式の一形態である。この仕組みの詳しい経済的な側面は、下水処理を扱う別の記事に譲る。

1980年、TOTOは温水で洗浄する便座「ウォシュレット」を発売した。これは同社の独自発明ではなく、アメリカ製の医療用洗浄便座を1964年から輸入販売していた経験を踏まえ、日本向けに改良・量産化した衛生えいせい機器である[8]。内閣府の消費動向調査によれば、2021年時点の温水洗浄便座の世帯普及率は80.3%に達している[8]

7. せかいには、まだ ちがう トイレが たくさん ある

7. 世界には、まだ違うトイレがたくさんある

7. 世界には、まだ安全なトイレを使えない人が多くいる

日本や 多くの 国では すわる 形の トイレが 多いですが、しゃがんで つかう 形の トイレを つかう 国も たくさん あります。

じつは 今、せかいじゅうで やく 34おく人もの 人が、あんぜんな トイレを つかえずに いると いわれて います[9]。11月19日は「せかいトイレの日」と いう、こくれんが きめた 日にも なって います[9]

日本や多くの国では座る形のトイレが多いですが、しゃがんで使う形のトイレを使う国もたくさんあります。

実は今、世界中で約34億人もの人が、安全なトイレを使えずにいるといわれています[9]。11月19日は「世界トイレの日」という、国連が決めた日にもなっています[9]

洋式(座式)のトイレが主流の地域がある一方、しゃがみ式のトイレも、アジアや中東、ヨーロッパの一部で今も広く使われている。文化や住環境によって、選ばれる形が異なる。

国連によれば、世界では約34億人が、安全に管理された衛生施設を利用できていない。屋外で用を足さざるを得ない人も、3億5,400万人にのぼる[9]。この10年間で12億人が新たに利用できるようになったが、なお多くの人々が地理的・経済的な理由で取り残されている[9]

こうした状況を受けて、国連は毎年11月19日を「世界トイレデー」と定め、安全な衛生設備の普及を呼びかけている[9]

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

自分の 家の トイレの タンクの ふたを、大人と いっしょに あけて みましょう。水が どうやって たまり、どうやって ながれるのか、見て みて ください。

りょこうに 行った ときに、その 国の トイレが 日本と ちがうか、大人と いっしょに くらべて みるのも おもしろいでしょう。

あんぜんの ために

トイレの タンクを あける ときは、かならず 大人と いっしょに 行いましょう。

自分の家のトイレのタンクのふたを、大人と一緒に開けてみましょう。水がどうやってたまり、どうやって流れるのか、見てみてください。

旅行に行ったときに、その国のトイレが日本と違うか、大人と一緒に比べてみるのも面白いでしょう。

安全のために

トイレのタンクを開けるときは、必ず大人と一緒に行いましょう。

自分の家のトイレの仕組みを観察する

トイレのタンクのふたを大人と一緒に開け、フロートバルブや浮き玉がどう水位を調整し、レバーを引くとどのように水が流れ出すのかを観察してみる。あわせて、便器の奥がどのようにS字(またはそれに類する形)にカーブしているかも確認してみると、この記事で扱った1775年の発明が、今も自分の家で働いていることを実感できる。

世界のトイレ事情を調べる

  • 国連の「世界トイレデー」の公式ページを読み、自分が行ったことのある国や興味のある国の衛生施設の普及率を調べてみる。[9]
安全のために

トイレのタンクなどの設備を開ける際は、大人と一緒に行い、部品を無理に外したり壊したりしないこと。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. HistoryBits「The Toilet (Circa 2800 BC – Present)」、High 5 Plumbing「Who Invented Indoor Plumbing First?」。 https://www.historybits.com/world-history/the-toilet/ (クレタ島クノッソス宮殿の水洗トイレが紀元前1700〜1800年ごろにさかのぼるとされること〔資料により年代推定に幅がある〕、木製の座面と貯水槽、素焼きの土管による排水網)
  2. Toiletology「History of Toilets in Ancient Greece」、FLUSH「Toilets and Water Systems in Ancient Greece」ほか古代ローマの衛生に関する複数の解説記事。 https://toiletology.com/resources/history/history-of-toilets-in-ancient-greece/ (古代ローマの公衆トイレ「フォリカエ」が仕切りのない共同ベンチ式だったこと、社交の場としても機能していたと考えられていること)
  3. Local Histories「A History of Toilets」。 https://localhistories.org/a-history-of-toilets/ (中世ヨーロッパで古代の水洗トイレの技術が継承されなかったこと、城のガーダーロープ〔壁から張り出した小部屋型トイレ〕、室内でのチェンバーポットの使用)
  4. History.com「Who Invented the Flush Toilet?」、Human Progress「Heroes of Progress, Pt. 30: Sir John Harington」。 https://www.history.com/articles/who-invented-the-flush-toilet (1596年、ジョン・ハリントンが名付け親エリザベス1世のためにリッチモンド宮殿に設置した水洗トイレ「エイジャックス」、俗語「ジェイクス」に掛けた命名、当時は普及しなかったこと)
  5. Toilet Guru「The History of the Flush Toilet」、Illumin Magazine(USC Viterbi School of Engineering)「Worthy of Praise: The Modern Flush Toilet」。 https://toilet-guru.com/flush-history.html (1775年、アレクサンダー・カミングがS字トラップの特許を取得したこと、水封により下水の悪臭やガスの逆流を防ぐ仕組み)
  6. Horow「Thomas Crapper & the Flush Toilet: Who Invented the Toilet?」。 https://horow.com/blogs/guide/thomas-crapper-the-flush-toilet-who-invented-the-toilet (トーマス・クラッパーが水洗トイレの発明者ではなく、配管工として改良とショールームでの普及に貢献した人物であること)
  7. Wikipedia(日本語版)「日本の便所」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/日本の便所 (江戸時代に汲み取り式トイレが普及し、排泄物が下肥として農地の肥料に利用されたこと、専門業者による回収・売買が行われたこと)
  8. TOTO公式サイト「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」、TOTO公式「トイレ関連製品累計出荷台数のお知らせ」、TOTO公式「ウォシュレット等『機械遺産』認定」。 https://jp.toto.com/company/press/product/toilet/2020_06_23_010566/https://jp.toto.com/company/press/2022_10_28_01/https://jp.toto.com/knowledge/visit/museum/certifiedheritage/ (TOTOが1980年6月にウォシュレットを発売したこと、1964年にアメリカ製医療用洗浄便座「ウォッシュエアシート」の輸入販売を開始していた経緯、内閣府・消費動向調査による2021年時点の世帯普及率80.3%)
  9. 国連「World Toilet Day」公式ページ。 https://www.un.org/en/observances/toilet-day (世界で約34億人が安全に管理された衛生施設を利用できていないこと、屋外排泄者が3億5,400万人にのぼること、この10年間で12億人が新たに利用可能になったこと、11月19日が世界トイレデーであること)

なおした ところ

更新履歴

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