1. すいさいの えのぐは、水が なくなると どうなるの?
1. 水彩は、水が逃げたあとに何が残るのでしょうか
1. 水彩絵具は、水が蒸発したあと顔料をどうやって紙にとどめるのか
すいさいの えのぐを、ふでで かみに ぬります。しばらくすると、かみの 上に 色だけが のこります。
すいさいの えのぐは、色の つぶを、水に とける ゴムの ような ものと まぜて つくります。水が 蒸発すると、ゴムが 色の つぶを かみに くっつけたまま のこります[2]。
水が にげて いくだけの かわき方です。では、おなじ 水で まぜる アクリルの えのぐも、おなじ かわき方でしょうか。
2. おなじ 水で まぜる アクリルは、どこが ちがうの?
2. 同じ水性なのに、アクリルは乾くと水に強くなるのはなぜでしょうか
2. 水性のアクリル絵具が、乾くと耐水性になるのはなぜか
アクリルの えのぐも、水で のばして ぬります。でも、かわいた あとの すがたが ちがいます。
アクリルの えのぐは、樹脂の つぶが、水の 中に ちらばった えきで つくります[1]。かわくと、水に つよく なると せつめいされています[3]。
かわいた 上から また ぬり かさねやすいのも、この せいしつの おかげです。ただし、かわくと 色が すこし かわる ことも あります。
ここまでは 水の おはなし。では、水が ない あぶらえのぐは、どうやって かわくのでしょう。
水彩と同じように水で薄められるアクリル絵具ですが、乾いたあとの性質は違います。
アクリル絵具は、顔料をアクリル樹脂のエマルション(樹脂の粒が水に散らばった液)で練ったものです[1][3]。乾くと耐水性になり、上から絵具を重ねやすくなると説明されています[3]。水彩の固定役は水に溶けるゴムですが、アクリルは乾くと水に強い状態になります。
乾くと色が少し変わることがある点も、使う人が知っておきたい性質です[3]。水に溶かす仲間でも、水彩とアクリルでは「乾いたあと」が違います。では、水も溶剤も使わずに、油で練った油絵具はどう乾くのでしょうか。
アクリル絵具は水で薄めて使うが、乾いたあとの性質は水彩と異なる。顔料はアクリル樹脂のエマルション、つまり樹脂の粒が水に分散した乳濁液で練られている[1][3]。乾くと耐水性となり、重ね塗りがしやすい[3]。
ここで、水性であることと、乾いたあとに水で戻せることは、別の話だと分かる。水彩は水溶性のゴムで顔料を固定しているのに対し、アクリルは乾くと水に強い状態になる[2][3]。ただし、乾燥の途中で樹脂の粒がどのようにまとまるのかは、ここで使った資料では詳しく説明されていない。乾くと色が少し変わることは、資料に記されている[3]。
ここまでの2つは、水が抜けることで乾燥が進む絵具だった。しかし油絵具では、事情がまったく異なる。
3. あぶらえのぐは、どうして かたまるの?
3. 水がない油絵具は、どうやって固まるのでしょうか
3. 油絵具の「乾燥」が蒸発ではなく反応だといえる根拠は何か
あぶらえのぐは、色の つぶを 「かわく あぶら」で まぜて つくります。この あぶらは、空気に ふれると、酸素を とりこんで、すこしずつ かたまって いきます[4]。
水が とんで いくのでは ありません。あぶらの ちいさな 分子どうしが、酸素を なかだちに して つながって いきます。これを 反応と いいます[1]。
たとえば、ばらばらの ブロックが、ぜんぶ つながって ひとつの かたまりに なる ようすです。ただし ほんとうは、ブロックではなく、とても ちいさな つぶの はなしです。
「かわく あぶら」には、あまにゆや きりゆが あります。では、この 反応を はやく する ことは できるのでしょうか。
油絵具を乾かす主役は、水でも溶剤でもなく「乾性油」です。亜麻仁油(あまにゆ)や桐油(きりゆ)のように、空気中に置くと酸素を吸収してねばりが増し、最後に固まる油をこう呼びます[4]。
油絵具は、顔料をこの乾性油で練ったものです。乾性油の分子が酸素を仲立ちにして結びつき(重合)、固化します。「化学反応によって乾く」のが油絵具の特徴です[1]。水彩のように水が蒸発して顔料が残るのとは、乾くという言葉の中身が違います。
だから、油絵具は「濡れているから乾かない」のではなく、「酸素と反応する途中」にあるのだと考えるほうが近いのです。では、この反応を早めることはできるのでしょうか。
油絵具の乾燥が蒸発でないことは、展色剤の性質から分かる。展色剤の乾性油は、空気中に放置するか加熱すると酸素を吸収し、酸化・重合・縮合を起こして粘度を増し、ついには固化する油である[4]。亜麻仁油や桐油のように、リノレン酸・リノール酸など多価不飽和脂肪酸が多い油が該当し、目安としてヨウ素価130以上が挙げられる[4]。
佐藤勝昭氏の講演資料は、油絵の乾燥を「展色剤の乾性油が酸素を仲立ちに重合して固化する、化学反応による乾燥」と対比的に整理している。水彩が水の蒸発で顔料を固着させるのと、根拠が別なのだ[1]。
ただし、油分子が反応するために構造上どのような条件が必要かという点は、ここで使った資料では途中までしか確認できていない。この反応を早める方法もあるのだろうか。
4. かたまる のを はやく する ことは できるの?
4. 油絵具を早く乾かすには、何を混ぜるのでしょうか
4. 酸化重合を速める乾燥促進剤は、なぜ入れすぎてはいけないのか
あぶらえのぐは、かたまるまで じかんが かかります。そこで、かたまるのを たすける ざいりょうが あります。
ある しりょうでは、きんぞくを ふくんだ たすけやくを、えのぐと おなじ りょうか それ いじょう まぜると、数十ぷんから 数じかんで かわかせる ことが できると せつめいして います[1]。
でも、たくさん いれすぎると、ひょうめんに ちりめんの ような しわが できる ことが あります[1]。はやく すれば いい、とは かぎらないのです。
では、ぶあつく ぬる ニスは、まんなかまで おなじ ように かわくのでしょうか。
油絵具は、そのままでは固まるまで時間がかかります。そこで油絵具には、乾燥を早めるための速乾促進剤(ラピッドメジウムなど)が使われます。
佐藤氏の資料によれば、金属を含む乾燥剤が触媒となって酸化重合を進めます。油絵具と等量以上混ぜると、数十分から数時間で乾かせるといいます[1]。触媒とは、反応を進める手助けをするものです。
ただし、混ぜすぎには落とし穴があります。使いすぎると、表面にちりめん状のしわが出ることがあるそうです[1]。早く乾かせる代わりに、仕上がりに影響が出る場合があるのです。製品ごとの効き方は違うので、ここで書いたのは資料が挙げる一例です。
ところで、絵具ではなく「ニス」の乾き方はどうなのでしょうか。
5. ニスは、ぶあつく ぬると まんなかは かわくの?
5. ニスは、表面と内側で乾き方がちがうのでしょうか
5. 油性ワニスの乾燥では、溶剤の揮発と酸化重合はどう分担するのか
あぶらの ニスが かわく ときは、ふたつの ことが おきると かんがえられて います。ひとつは、まぜて ある ようざいが とんで いく こと。もうひとつは、あぶらが 酸素と くっついて かたまる ことです[6]。
でんきの コイルに ぬる ニスを しらべた けんきゅうでは、おもな やくわりは あぶらの 酸素との はんのうでした。ニスの 中の ふかい ところは、ようざいも ぬけにくく、酸素も とどきにくいので、ひょうめんよりも ずっと おそく かわくと いわれて います[6]。
これは でんきの ニスの はなしです。いえの かぐの ニスが おなじとは、ここでは いえません。
ところで、酸素が いる かたまり方の なかには、ふしぎな ものが あります。かんそうした ばしょでは かたまりにくい ものです。
ニスは、油や樹脂を溶剤にとかした塗料です。乾くときには、溶剤が抜けることと、乾性油が酸化重合で固まることの両方が起きると考えられています。中心になるのは、乾性油の酸化重合です[6]。
この記述は、電気機器のコイルに使う油性ワニスの乾燥を調べた1962年の研究に基づきます。それによると、深いところは溶剤が抜けにくく、酸素も届きにくいため、内部の乾きは表面よりきわめて遅くなります[6]。中まで乾くには、表面よりずっと長くかかるということです。
ただし、これは電気絶縁用ワニスの研究であり、家具用などのニスに同じ仕組みが当てはまるかどうかは、別に確かめる必要があります。酸素が届かないと乾かない塗料があるなら、もっと条件がきびしいものはないのでしょうか。
天然樹脂を使う従来型の油性系コイルワニスの乾燥は、溶剤類の揮発と、ワニス本体(乾性油+樹脂)の酸化重合によると考えられている。主役は乾性油の酸化重合とされる[6]。
この研究が重要なのは、乾燥が均一に進まない理由を示した点だ。塗膜の深部では溶剤が抜けにくく、酸素も届きにくい。そのため、内部の乾燥は表面よりきわめて遅い。溶剤の揮発も酸化重合も、奥へ行くほど進みにくいということだ[6]。
ただし、この結論は電気絶縁用コイルワニスの研究に基づく。家具用ニスの水性・油性・ウレタンといった種類ごとの乾き方は、メーカー公式資料で確かめる必要があり、ここでは一般化しない。酸素が必要な塗料でも、まだ条件がゆるやかな例だ。ではもっと条件のきびしいものは何か。
6. かんそうした へやでは かたまらない ものが ある?
6. 湿度が高いほうが固まりやすい塗料とは何でしょうか
6. 漆はなぜ湿度70〜80%の環境で固まるのか
ぬりものの おわんに つかう 漆は、えのぐや ペンキと ちがい、水や ようざいが とんで いって かたまるのでは ありません[5]。
漆の 中の ウルシオールと いう ものが、酸素と くっついて かたまります。ラッカーゼと いう はたらきものが てつだいます[5]。
この はたらきものが いちばん げんきに なるのは、きおん 25度ぐらい、湿度 70から80パーセントの ときだと されて います[5]。しめった くうきが むいて いる ふしぎな ぬりものです。
かたまりきった ウルシオールは、かぶれないと いわれます[5]。かたまるまでに かかる じかんは、この しりょうでは たしかめられませんでした。
ここまでの塗料は、乾燥した空気のほうが早く乾くように思えるかもしれません。ところが漆は、水や溶剤が蒸発して固まる塗料ではありません。主成分のウルシオールが酸素と結びつき(酸化)、固まります[5]。
この反応の手助けをするのが、漆にふくまれる酸化酵素のラッカーゼです。ラッカーゼが最もよく働くのは、気温25℃前後、湿度70〜80%の環境だと説明されています[5]。高い湿度と酸素が必要なので、からからに乾いた場所よりも、湿った空気が向く塗料だといえます。
完全に固まったウルシオールは、かぶれないとされています[5]。漆が固まるのにかかる時間は、使った資料からは確かめられませんでした。乾くの中身は、水が去ることだけではなく、空気中の水分と酸素が必要になる場合もあるのです。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
きょう できること
すいさいの えのぐを かみに ぬって、かわくのを まちます。かわいたら、水を つけた ふでで そっと なぞって みましょう。色は とれるでしょうか。ゴムが 水に とけるなら、どうなるか、よそうしてから ためして みます。
でかけて できること
おわんなどの ぬりものを、おみせや はくぶつかんで みて みましょう。漆が かたまった ひょうめんが、どんな つやを して いるかを みます。
くわしく しりたい ひとへ
おうちの ひとと いっしょに、しゅってんの しりょうを ひらいて みましょう。
今日できること
水彩絵具を紙にぬって乾かし、乾いたあとに水を含ませた筆でなぞってみましょう。色が動くかどうか、予想してからためします。アクリル絵具が手元にあれば、同じように比べられますが、ここでは無理に用意しなくてかまいません。
出かけてできること
漆器や工芸品が展示されている店や博物館で、表面のつやを見てみましょう。固まった漆の表面がどんな見た目をしているかを観察します。
公式情報を読む
佐藤勝昭氏の「絵の具の科学」(PDF)と、鳥取県の漆の性質の資料は、どちらも日本語で読めます。
今日できること
水彩絵具を紙に塗って乾かし、水を含ませた筆でなぞって、色が動くかを確かめる。「水彩はゴムで固定するだけで、乾いても水に溶ける」という説明が、自分の紙の上で成り立つかを見るとよい。
出かけてできること
漆器の展示を見て、固まった漆の表面を観察する。湿度が必要な塗料が、なぜ現在まで使われ続けているのかを、展示の説明と見比べる。
資料案内
佐藤勝昭「絵の具の科学」は、油絵と水彩の違いを対比的に整理している。鳥取県の資料は、国立歴史民俗博物館の展示解説を引用して漆の性質をまとめている。乾燥形式の分類(蒸発型・酸化重合型など)は、塗料業界の一次資料でも確かめる余地が残る。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。数字や条件は、それぞれの資料が述べる範囲にとどめています。
- 佐藤勝昭「絵の具の科学」(2013年講演資料) https://home.sato-gallery.com/research/science_of_pigments.pdf (油絵具・水彩・アクリルの乾き方、乾燥促進剤)
- 武蔵野美術大学 造形ファイル「水彩絵具」 https://zokeifile.musabi.ac.jp/wpwp/wp-content/uploads/2014/08/312_watercolor-paint.pdf (水彩絵具の展色剤と乾燥)
- 武蔵野美術大学 Art & Design Glossary「Acrylic Paints」 https://art-design-glossary.musabi.ac.jp/acrylic-paints/ (アクリル絵具の耐水性。英語の資料)
- コトバンク「乾性油」 https://kotobank.jp/word/%E4%B9%BE%E6%80%A7%E6%B2%B9-49044 (乾性油の定義)
- 鳥取県 漆の性質資料(国立歴史民俗博物館「URUSHIふしぎ物語」を引用) https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1326827/0718urusi.pdf (漆の固まり方と条件)
- 日立評論1962年7月「絶縁ワニスの乾燥性に関する二,三の考察」 https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1962/07/1962_07_11.pdf (電気用コイルワニスの乾燥。家具用ニスには一般化しない)
なおした ところ
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