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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

アメンボは なぜ 水の 上に 立てるの?

アメンボはなぜ水面に立てるのか ── へこむ水面と、ぬれない脚

アメンボの水面歩行 ── 表面張力・撥水構造・渦による推進

分野:生きもの・自然

池の 水面に、アメンボが すーっと うかんで います。あしは 水の 上に のって いるのに、ぬれて いません。

アメンボの あしは、水を どう して いるのでしょう。そして、どうやって 前に すすむのでしょう。

池の水面を、アメンボがすべるように動いています。水に浮いているようにも見えますが、体は水にしずみこんでいません。脚の先が水をはじいて、ぬれていないのです。

この虫は、水の上でどうやって体を支え、どうやって進むのでしょうか。「水面のへこみ」「脚の毛」「水の中にできる渦」の3つを、研究の報告を手がかりにたどります。

アメンボ科の昆虫は、体長約1cm、重さ約10ダイン(約0.01g)で、水面の上を移動する。体重は、水面の曲がりが生む表面張力の力で支えられるとされる[1]。

支えるしくみ、脚を濡らさない構造、進み方の3点を、査読論文の要旨と本文、研究室の紹介ページ、解説記事を突き合わせて整理する。数値の一部は要旨のみの確認で、その箇所は本文中に明記する。

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1. アメンボは、どれくらい 軽いの?

1. 体長1cm、重さ約0.01gの虫

1. 体長約1cm・約10ダイン ── 「軽さ」という前提条件

アメンボの 大きさは 1センチメートルくらいです。体重たいじゅうは 0.01グラムほどと ほうこくされて います[1]。

ある 子ども向けの 本では、10ぴき あわせても 1グラムに ならない ことが 多い、と 書かれて います[2]。

1円玉は 1グラムです。アメンボは、1円玉の 100ぶんの 1ほどの 軽さです。この 軽さが、水の 上に 立つ 手がかりの 1つです。

アメンボの体長は約1cm、体重は約0.01gと報告されています[1]。子ども向けの解説にも、10匹を合わせても1gにならないことが多い、とあります[2]。

1円玉が1gなので、1円玉の100分の1ほどの軽さです。水の上に立てるのは、体が軽いことがまず前提になります。ただ、軽いだけでは足りません。何が体を支えているのかは、次の章で見ます。

Hu・Chan・Bushの論文は、アメンボ科の特徴的な大きさを体長約1cm、重さ約10ダイン(約0.01g)とする[1]。1ダインは10⁻⁵ニュートンで、10ダインは約0.01gの物体にはたらく重力にあたる。学研の解説も、10匹合わせても1gにならないことが多いと述べ、数値の桁は一致する[2]。

ここで示された数値は、種類や成長段階で変わる「特徴的な値」である。以降の議論は、この軽さを前提にする。

2. 水の 上に 立つ ときに、水は どう なるの?

2. 水面は「へこんで」体を支える

2. 水面の曲率と表面張力 ── 押しくぼめられた水面

水の 表面は、できるだけ 小さく なろうと します。うすい ゴムの まくが ぎゅっと ちぢもうと するのに にて います。これを ひょうめん ちょうりょくと いいます。

アメンボが 水面を おすと、水面は すこし へこみます。へこんだ 水面が もとに もどろうと する 力が、体を ささえて いると 考えられて います[1]。

ただし 本当の 水は ゴムでは ありません。たとえは、あくまで イメージです。

水の表面には、できるだけ小さくなろうとする性質があります。これが表面張力です。アメンボが水面を押すと、水面はへこみます。研究では、体重は水面の曲がりが生む表面張力の力で支えられるとされています[1]。

清華大学のグループは、脚が水面に作るへこみの大きさを調べました。脚1本の支える力は、へこみの「影」の面積におおよそ比例していた、と報告しています。ただしこれは査読前のプレプリントです。支える力のうち、浮力と表面張力がどれだけを分けあうのかは、まだ断定できません[3]。

Hu らは、体重が自由表面の曲率が生む表面張力の力で支えられると記す[1]。清華大学のZhengらのプレプリントは、脚1本が受ける支持力が、水面のくぼみの影の面積に線形に比例したと報告する。この支えは、浮力(アルキメデスの原理)と表面張力の両面から考えられる、とも整理している[3]。

査読前の資料のため、両者の割合は確定した値として扱わない。表面張力の値そのもの(約72mN/mなど)も、今回の資料では確認していないので、記事では数値を出さない。

3. 池の そこに、まるい かげが ある?

3. 池の底に映る、丸い影と明るい輪

3. 水底の影 ── くぼみが光を曲げる

晴れた 日に、アメンボの いる 池の そこを 見ると、まるい かげが 見えることが あります。かげの まわりには、明るい わも できます[3]。

これは、あしが 水面を おして へこませた ところで、光が まがるからです。かげは、水面の へこみが 光を まげて できた ものです。

かげの 大きさは、体が 大きい ほど、重い ほど、大きく なりやすいと ほうこくされて います[3]。

日光の下でアメンボが池にいると、池の底に脚の丸い影や、半紡錘形の影ができ、そのまわりに明るい輪が見えることがあります[3]。水面がへこんだ場所で光が曲がるために、こうなるとされています。

清華大学の報告では、影の大きさは、アメンボの体の大きさと重さが大きいほど大きくなる、という関係がありました[3]。つまり、池の底の影は、水面のへこみを目に見える形にしたものです。

Zhengらは、池の底に、丸い、あるいは半紡錘形の黒い影と、その外側の明るい輪ができることを記す。水面が押しくぼめられて光の進み方がゆがむためで、影の大きさは体の大きさ・重さと正の関係にあった[3]。

この影は、支える力を測る手がかりにもなっている(前章)。ただし、いずれも査読前の報告で、種や環境で結果が変わりうる点には注意が必要である。

4. あしは、なぜ ぬれないの?

4. 毛と溝と油 ── 水をはじく脚

4. 微小剛毛とナノ溝 ── 階層構造による超撥水

水面に へこみが できても、あしが ぬれて しまうと、水に ひきこまれて しまいます。アメンボの あしは、水を はじく しくみを もって います。

あしには、こまかい 剛毛ごうもうが、びっしり はえて います。この 毛には 油が ついて いて、水を はじきます[2]。

毛と 毛の あいだには 空気が たまり、あしが 水に ふれる ところが 少なく なる、と 書かれて います[5]。

あしの 先の つめは、水面の まくに ささって、すべりにくく して いると いわれます[2]。

脚をぬれにくくしているのは、油だけではありません。2004年、Gao と Jiang は、アメンボの脚に、向きのそろった細かい毛(微小剛毛)があり、その表面にナノメートル級の細かい溝があることを報告しました。ロウだけで説明できると考えられていたのに対し、毛と溝の形も撥水に大きく関わる、というのが主な主張です[4]。

毛のすきまには空気がたまり、脚と水が直接ふれる面積が小さくなります。京都大学の解説は、剛毛と油、ナノの溝、空気の組み合わせで超撥水になると説明します[5]。子ども向けの解説では、脚先のつめが水面の膜にささって、すべりにくくしているとも書かれています[2]。

Gao & Jiang(2004)は、Gerris remigis の脚で、向きのそろった微小剛毛とその表面のナノ溝という階層構造が、従来考えられていたロウよりも撥水に大きく寄与すると報告した[4]。この論文は検索で得た要旨のみを確認しており、毛の太さや溝の幅などの数値は扱わない。

Fengらは、脚に水滴を置いたときの接触角を約167.6±4.4度と報告した(要旨のみ確認)[6]。ほぼ球のまま転がる状態で、超撥水にあたる。剛毛のすきまに空気が保たれ、水と脚の接触面積が小さくなるという説明は、京都大学の解説に見られる。同解説の「体重の60倍」という数字は根拠が不明なので採らない[5]。脚先のつめが水面に刺さることも解説されている[2]。

5. あし 1本で、どれくらい ささえられる?

5. 脚1本が支える力は体重の何倍か

5. 脚1本あたりの最大支持力 ── 約152ダインという値

ある 研究では、アメンボの あし 1本が ささえられる 力は、体重の 15ばいほどに なる、と いわれて います[4]。

ただし、べつの 研究者は 「体重の 数ばい」と まとめて いて、ばいの 言い方は、そろって いません[3]。

体重の 15ばいなら、あし 1本でも、体を ささえられそうな 数字です。ただ、これは 1本が 水面で ささえられる 「さいだい」の 力の 話です。

Gao と Jiang は、脚1本が水面で支えられる最大の力を約152ダインと報告しています。体重が約10ダインなので、152÷10で約15倍になります[4]。

ただし、清華大学の論文は、同じ数字を「体重の数倍」と表しています。倍率の言い方は出典によってゆれるので、ここでは「約15倍という報告がある」ととらえます[3]。

もう1つ、脚を水面に沿って折り曲げ、広い範囲で水にふれる、という解説もあります[7]。細かい毛が水にふれる面が大きくなる、という説明です。

Zhengらによれば、Gao & Jiangは脚1本の最大支持力を約152ダイン(1ダイン=10 μN)とし、体重の数倍と要約されている[3]。体重約10ダインで割ると約15倍だが、この倍率は検索で得た要旨に基づく。清華大学の論文が「数倍」とぼかすなど、出典で揺れるため、断定は避ける。

アマナの解説は、脚を水面に沿って折り曲げ、水に接する範囲を長くしていると説明する[7]。これは接触線を長くする方向の説明で、査読論文での検証は今回の資料には入っていない。

6. どうやって、前に すすむの?

6. 波を作れない赤ちゃんアメンボは、どう進むのか

6. デニーのパラドックスを、2003年の研究はどう説明したか

むかしは、アメンボは 水面に 波を つくり、その 波に おされて すすむ、と 考えられて いました。

でも、赤ちゃんの アメンボは、あしが おそくて 波を つくれません。それでも、前に すすみます。この なぞは 「デニーの パラドックス」と よばれました[1]。

2003年、アメリカの 研究者たちが、ビデオで アメンボを ゆっくり 見ました。すると、こぐ あしが 水の 中に、小さな うずを のこして いました[1]。

アメンボは、波では なく、この うずで 前に すすむ、と わかりました。

従来は、アメンボが水面の波に運動量を渡して進む、と考えられていました。この考えだと、脚が遅くて波を作れない赤ちゃんアメンボは進めないはずで、「デニーのパラドックス」と呼ばれる謎になっていました[1]。

2003年、MITのHu・Chan・Bushは、高速度ビデオと粒子の追跡で、アメンボが主に、こぐ脚が水中に残す半球状の渦で進むことを示しました。渦の半径は約0.4cmで、体重約0.01gのアメンボの特徴的な速さは約100cm/s、つまり1秒に1mほどとされています[1]。体長が約1cmなので、1秒に体長の約100倍進む目安です。

この結果は、MITの研究室のページでも「波ではなく渦」と紹介され、水面を進む小さなロボットの開発につながりました[8]。

従来は、水面の波に運動量を渡して進むと想定されていたが、この前提は「脚が遅くて波を作れない幼虫は進めない」というデニーのパラドックスを生んだ[1]。

Hu・Chan・Bush(2003, Nature 424:663)は、高速度ビデオと粒子追跡で、こぐ脚が水中に残す半球状の双極渦が推進の主体だと示した。特徴的な半径R≒0.4cm、質量M≒0.01gの個体は、特徴的な速さV≒100cm/sに達する。ここでの「特徴的な値」は目安で、最大速さと平均速さは別物である[1]。

Bush研究室のページも、毛細管波ではなく渦が推進の主体だと紹介し、この知見が水面を進む機械の開発につながったとする[8]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

池や 水たまりの 近くで、アメンボを さがして みましょう。水面が 晴れて いれば、そこに 丸い かげが 見えるかも しれません。かげは、あしが 水面を おした あとです。水に 落ちない よう、岸から 少し はなれて 見て ください。

おうちで するなら、水を はった おおきな おさらに、クリップを そっと のせて みましょう。ゆっくり おくと、水面が すこし へこんで、うく ことが あります。うまく いかなくても ふしぎでは ありません。

もっと しらべたい とき

図書館で 「アメンボ」「ひょうめん ちょうりょく」の 本を さがして みましょう。

今日できること

晴れた日に、池や水路の岸から、アメンボの脚の下にできる影を探してみてください。影の形が丸いか、まわりに明るい輪があるかを見るだけで、水面のへこみを観察できます。水辺では、岸から身を乗り出さないようにしてください。

家でできる実験として、水を張った大きめの皿に、クリップを水面に平らにそっと置いてみる方法があります。置き方でうまくいくかどうかが変わり、うまく浮けば水面がへこんでいるのが見えるかもしれません。

調べる手がかり

図書館やインターネットで、「アメンボ」「表面張力」について日本語で書かれた解説を探し、この記事の説明と同じことが書いてあるか、くらべてみてください。もう1つの手がかりは、家の皿とクリップです。クリップの置き方を変えて、浮く場合と沈む場合を記録すると、水面の支え方のちがいを自分の目で確かめられます。

今日できること

晴れた日の池で、アメンボの脚の下にできる影と、まわりの明るい輪を観察する。影の形を観察し、報告された写真や図と見比べる[3]。水辺では転落に注意する。

皿に水を張り、クリップを水面にそっと置く簡単な観察もできる。浮いた場合、水面がへこんで見えるか確かめる。

資料を読むなら

日本語で読めるものとして、京都大学の解説[5]やGakkenの解説[2]がある。そこから、Gao & Jiang(2004)、Feng ら(2007)の要旨など、参考にした情報源の原典へ進むとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。数値の一部は要旨のみの確認で、その旨を本文に書いています。

  1. Hu, D. L., Chan, B. & Bush, J. W. M. (2003) The hydrodynamics of water strider locomotion. Nature 424:663. https://hoogle.gatech.edu/Publications/Hu03.pdf (体の大きさ、支える力、渦による推進)
  2. Gakken キッズネット 科学なぜなぜ110番 アメンボの解説 https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0186/ (軽さ、毛の油、脚先のつめ)
  3. Zheng, Q. ほか 清華大学 arXiv:1601.00724(プレプリント) https://arxiv.org/pdf/1601.00724 (脚の影、支える力、最大支持力の言い方)
  4. Gao, X. & Jiang, L. (2004) Water-repellent legs of water striders. Nature 432:36. https://www.nature.com/articles/432036a (毛とナノの溝、最大支持力。要旨のみ確認)
  5. 京都大学 エコ「バイオスクープ file 22」 https://eco.kyoto-u.ac.jp/?p=9161 (剛毛・油・溝・空気による超撥水の説明)
  6. Feng, X.-Q. ほか (2007) Langmuir 23:4892. https://pubs.acs.org/doi/10.1021/la063039b (接触角。要旨のみ確認)
  7. アマナ NATURE & SCIENCE「アメンボ」 https://nature-and-science.jp/amenbo/ (脚を折り曲げて広く水にふれる説明)
  8. MIT Bush研究室 Water strider locomotion https://thales.mit.edu/bush/index.php/2003/04/14/water-strider-locomotion-paradox-lost/ (渦による推進の紹介)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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