1. アーモンドの はなは、ももに にてる?
1. アーモンドの花は、なぜモモの花に見えるのか
1. 花の見た目と分類 ── 「モモに似たアーモンド」の出発点
アーモンドの はなは、ももの はなに よく にて います。さくらいろや ももいろの ひんしゅだと、ぱっと 見ただけでは ももの はなと まちがえそうです[5]。
では、はなが にて いるだけなのでしょうか。それとも、ほんとうに なかまなのでしょうか。
アーモンドの花は、桜色やモモ色の品種だと、一見するとモモの花のように見えます。梅やアンズの近縁とも説明されます[5]。
もし花だけが似ているなら、たまたまの一致かもしれません。実際に近い仲間なのかどうかは、分類やゲノムを見ないと決められません。
そこで、専門家が両者をどう分けてきたかを見てみます。
アーモンドの花は、桜色・桃色の品種ではモモの花と見分けにくい。日本語の解説ではアンズ・モモ・ウメの近縁種と位置づけられる[5]。
ただし花の外観は、分類の証拠としては弱い。収斂や共通祖先由来の形質を区別するには、系統解析やゲノム情報が要る。
そこで、両者が分類上どこに置かれてきたか、まず確かめる。
2. どのくらい ちかい なかま なの?
2. 分類では、どこまで近い仲間なのか
2. 分類の改訂 ── 「モモ亜属」から「節」へ、そして「姉妹種ではない」
アーモンドと ももは、どちらも バラの なかまの、サクラぞくです。むかしは、ふたつとも おなじ グループに 入れられて いました[1]。
そのご、しらべかたが かわり、グループの わけかたも かわりました。しりょうに よって かきかたが ちがうのは、そのせいです[3]。
ダーウィンは、ももは アーモンドが かわった ものかもと かんがえたと いわれます。いまの けんきゅうでは、「ちかいけれど、きょうだいでは ない」と されます[4]。ふたつは、おなじ ご先ぞから、べつべつに わかれた なかまです。
では、なかの つくりは どれだけ にて いるのでしょう。
アーモンドとモモは、どちらもバラ科サクラ属です。従来は、どちらも「モモ亜属」に入れられてきました。アーモンドにいちばん近い仲間は、モモを含むこのグループだと報告されています[1]。
ところが、分子のデータで系統を調べ直すと、サクラ属は大きく3つの系統に整理されました。そのうちの「スモモ亜属」の中には、「節」というより細かい単位がいくつか置かれました[3]。資料によって「モモ亜属」「スモモ亜属」と書き方が分かれるのは、こうした改訂があるためです。
ダーウィンの推測はどうなったのでしょう。2014年の系統解析では、栽培モモと栽培アーモンドは「近いが姉妹種ではない」と結論づけられ、ダーウィンは完全には間違っていなかったとまとめられました[4]。片方がもう片方から直接生まれたのではなく、共通の祖先から別々に枝分かれした、というイメージです。
では、遺伝子の中身はどれくらい似ているのでしょうか。
アーモンドとモモはバラ科サクラ属で、従来はどちらもモモ亜属(Amygdalus)に置かれ、アーモンドの最近縁はモモを含むこの群とされてきた[1]。ところが、Shiらの分子系統解析(2013)は、広義のPrunusを亜属Padus・Cerasus・Prunusの3系統に整理した[3]。この整理では亜属Prunusの中に複数の節が置かれた。こうした分類の改訂があるため、資料によって「モモ亜属」と「スモモ亜属」の表記が分かれる。
では、ダーウィンの推測は当たっていたのか。Yazbek & Al-Zein(2014)は、栽培モモと栽培アーモンドを近縁だが姉妹種ではないとし、一方が他方の直接の子孫という単純な図式は否定した[4]。それでも「ダーウィンは完全には間違っていなかった」という評価になるのは、両者が近い共通祖先を持つことは支持されたからである。
分類は枠組みの話にすぎない。では、ゲノムの塩基配列ではどう見えるのか。
3. いでんしは、どれくらい にて いるの?
3. 遺伝子を比べると、どれくらい似ているのか
3. ゲノム比較 ── 分岐時期の推定幅と、トランスポゾンという差
アーモンドと ももの いでんしを ならべて みると、ならびかたが、とても よく にて いました[1]。
いでんしを ぶんしょうに たとえると、1000もじの うち、ちがうのは 20もじほどです[1]。ただし、ぶんしょうと いでんしは ほんとうは ちがう ものです。
ふたりが わかれたのは、500万〜800万年前ごろと いわれます。けんきゅうに よって ねんすうが ちがうので、ひとつには きめられません[1][2]。
ちがいの おおくは、ゲノムの なかを うごく「トランスポゾン」が、ある ばしょに はいったり、はいらなかったり する ことから できたそうです[1]。
これだけ にて いるなら、かけ合わせたら どうなるのでしょう。
アーモンドとモモのゲノムを並べると、遺伝子の並び順がよく保たれていました。塩基の1文字ずつの違いは、1000文字あたり約20文字、つまり約2%です[1]。アーモンドのゲノムは約2億3500万塩基で、8本の染色体にまとまります。
2つが分かれた時期は、ゲノム比較では約588万年前と推定されました。別の研究では約800万年前とされ、推定値には幅があります[1][2]。どちらか1つを確定値と考えるより、500万〜800万年前ごろと受け取るのが安全です。
では、その約2%の違いは何でしょうか。違いの形成には、トランスポゾン(ゲノムの中を動く配列)に由来する配列が大きく関わったと報告されています。トランスポゾン由来の配列は、アーモンドで約38.2%、モモで約37.6%を占めます[1]。
これだけ近いなら、実際に交配させたら子はできるのでしょうか。
両ゲノムは高度にシンテニー(遺伝子の並び順が保たれた状態)で、置換は1kbあたり約20塩基、すなわち約2%である[1]。ここで「約98%同じ」と言い換えると、別の指標の一致率と混同しやすい点に注意が要る。アーモンドの核ゲノムは約235Mbで、8本の染色体にまとまる。
分岐時期の推定は研究で割れる。Aliotoらは約5.88 Mya、Velascoらは約8 Myaとした[1][2]。手法・データの違いによる幅と考えられ、片方を確定値にはできない。
では、その約2%の差はどこから来るのか。両ゲノムの差の形成には、トランスポゾン由来の配列が大きく関わったと報告されている。トランスポゾン由来配列の割合は、アーモンド38.21%、モモ37.60%で、ほぼ同じ割合なのに位置が違う[1]。
配列がここまで近いなら、生殖の面でも近いはずだ。雑種はどうなのか。
4. かけ合わせると、こどもが できるの?
4. モモとアーモンドの雑種は、畑で使われているのか
4. 雑種の稔性と利用 ── 台木GF677
ももと アーモンドを かけ合わせると、こどもが できます。その こどもは、また こどもを のこせる ことが しられて います[1]。
「GF677」と いう なまえの ざっしゅは、はたけで ほかの きの ねもとに なる きとして そだてられて います。あるメーカーの しりょうでは、モモにも アーモンドにも つかえると せつめいされて います[6]。
ちかい なかまだから、こんな ことが できる のかも しれません。
それなのに、たべる ところは どうして ぎゃくに なったのでしょう。
5. たべる ところが はんたいに なったのは どうして?
5. 近い仲間なのに、食べる所が正反対なのはなぜか
5. 果実の分化 ── 栽培化より前に起きた違い
ももは、あつくて やわらかい みを たべます。アーモンドは、かたい からの なかの たねを たべます。そとがわの かわは、かわのように かたくて、じゅくすと わかれます[2]。
この ちがいは、ひとが そだてはじめる ずっと まえに おきた かもしれないと いわれます[2]。
いでんしの ちがいの てがかりも あります。アーモンドの あまい たねと にがい たねは、トランスポゾンが ある ばしょに はいって いるかどうかと、かかわりが ある ようです[1]。
モモは、厚くて熟しても裂けない果肉を食べます。アーモンドは、硬い殻(内果皮)に包まれた種子を食べ、外側は革のようで、熟すと裂けます[2]。この果実の分化は、栽培が始まるよりずっと前、化石の時代に起きた可能性があると指摘されています。
2つの種のちがいは、遺伝子の多様さにも表れています。アーモンドの遺伝的な多様さはモモの約7倍で、モモは自分の花粉で実をつけられる自家和合性、アーモンドはそれができない自家不和合性です[2]。
甘いアーモンドと苦いアーモンドの違いにも、手がかりがあります。苦みのもとになる成分の合成にかかわる遺伝子のまわりに、甘い品種にだけトランスポゾンが入っていました。甘さの原因と決まったわけではなく、遺伝子のはたらきが下がることと重なる、という報告です[1]。
モモは裂開しない多肉質の中果皮を利用し、アーモンドは硬い内果皮(核)に包まれた種子を利用する。外果皮は革質で、成熟すると裂ける[2]。Velascoらは、この果実の分化が栽培化よりはるか以前、化石記録の時代にすでに生じていた可能性を指摘する。つまり、栽培による選抜だけでは説明できない。
遺伝的多様性にも差がある。アーモンドの遺伝的多様性はモモの約7倍で、モモは自家和合性、アーモンドは自家不和合性である[2]。
甘・苦の違いは、局所的な構造変異と相関する。苦味成分アミグダリンの合成にかかわる遺伝子CYP71AN24の近くで、甘い品種にだけ複数のトランスポゾンが挿入されており、発現の低下と相関するとされる[1]。ただしこれは相関の報告で、トランスポゾンが甘さの原因と断定されたわけではない。
果肉づくりや種子づくりの分かれ目に、どの遺伝子が関わるのかは、まだ研究の途中である。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
ももを たべたあと、かたい ところ(かく)を あらって、よく 見て みましょう。わったり しては いけません。ようすを えに かいて、アーモンドの かたい からと くらべて、おなじ ところと ちがう ところを ならべて みます。
出かけてできること
くだもの うりばで、うめや あんずの なまえを 見つけましょう。かって たべたあと、あらった たねの かたちを、ももの たねと くらべて みます。
こうしきの じょうほう
下の しゅってんに、けんきゅうの ろんぶんが あります。
今日できること
食べ終わったモモの核(かたい部分)を洗って、よく観察してみましょう。割るのは危ないので、割らずに形だけを見ます。殻つきのアーモンドがあれば、並べて絵にかいて、似ている点と違う点を書き出してみます。
出かけてできること
果物売り場で、ウメやアンズなどモモの近縁の果物の名前を見つけましょう。買って食べたあと、洗った核の形をモモの核と比べてみます。
公式情報
下の出典欄の論文は、公開されているものがあります。図や表を見るだけでも、ゲノムの並びを比べる様子が分かります。
今日できること
モモの核とアーモンドの殻を用意し、形・厚さ・表面を観察して記録する。割るのは危険なので、割らずに外側だけを比べる。
出かけてできること
売り場でモモ・ウメ・アンズなど近縁の果実の名前や品種名の表示を見る。買って食べたあと、洗った核の形を比べる。
公式情報・原典
Aliotoら(2020)とVelascoら(2016)は公開論文で、ゲノム比較と果実の分化の議論を読める。Shiら(2013)は分類、Yazbek & Al-Zein(2014)はダーウィンの推測との関係を扱う。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
分類・ゲノム・雑種・果実の違いは、それぞれ別の論文や資料で突き合わせた。数字は報告書や論文に書かれた範囲だけを使い、分岐時期は幅で示した。
- Alioto et al. (2020) Plant Journal(アーモンドのゲノム論文) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7004133/ (近縁性・ゲノム・雑種・甘い品種のトランスポゾン)
- Velasco et al. (2016) G3「Evolutionary Genomics of Peach and Almond Domestication」 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5144968/ (分岐時期・果実の違い・多様性)
- Shi et al. (2013) Journal of Integrative Plant Biology 55(11) https://www.jipb.net/CN/Y2013/V55/I11/1069 (サクラ属の系統整理)
- Yazbek & Al-Zein (2014) Genetic Resources and Crop Evolution「Wild almonds gone wild」 https://link.springer.com/doi/10.1007/s10722-014-0113-6 (ダーウィンの推測と系統解析)
- Wikipedia「アーモンド」 https://ja.wikipedia.org/wiki/アーモンド (花の見た目・果実・苦い品種の注意)
- Agromillora「GF677」 https://agromillora.com/en-us/agromillora-rootstock/gf-677 (雑種台木の紹介)
なおした ところ
更新履歴
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