1. チンパンジーが、木の えだで シロアリを つりあげた
1. チンパンジーが、木の枝でシロアリを釣りあげた
1. 1960年、チンパンジーが道具を使い、定説が覆った
1960年10月、タンザニアの もりで、わかい けんきゅうしゃ ジェーン・グドールは、ある チンパンジーを かんさつして いた[1]。その チンパンジーは、草の くきの はっぱを むしりとり、それを シロアリづかの あなに さしこんで、くっついて きた シロアリを たべて いた[1]。「どうぐを 作って つかうのは 人間だけ」と かんがえられて いた じだいに、この はっけんは 大きな さわぎに なった[1]。
2. ラッコには、おきにいりの 石が ある
2. ラッコには、お気に入りの石がある
2. ラッコは貝を割るための石を選び、体に保管している
ラッコは、おなかの 上に 石を のせて、その 石に 貝を たたきつけて わって たべる[2]。じつは 多くの ラッコに、ずっと つかいつづける「おきにいりの 石」が あることが わかって いる[2]。その 石は、わきの したの ゆるんだ 皮ふを ポケットのように つかって、しまって おく[2]。
3. タコが、ヤシの からを もちはこんで よろいに した
3. タコが、ヤシの殻を持ち運んでよろいにした
3. メジロダコはヤシの殻を運搬し携帯シェルターとして利用する
インドネシアの 海で、「メジロダコ」と いう タコが、二つに われた ヤシの みの からを、体の 下に かかえて はこぶ ようすが 見つかった[3]。あぶない ときには、その からの 中に かくれる。せなかに からを かかえたまま 20メートルも 歩く ことも あった[3]。せぼねの ない どうぶつが 道具を つかう ことが わかった、はじめての れいだった[3]。
4. ゾウが、ふみ台を じぶんで ひらめいた
4. ゾウが、踏み台を自分でひらめいた
4. アジアゾウは試行錯誤なしに道具の利用法をひらめいた
アメリカの どうぶつえんで、カンジュラと いう 名の アジアゾウが、たかい ところに つるされた くだものを ほしがった[4]。カンジュラは、ちかくに あった プラスチックの ブロックを あしもとまで ころがして きて、その 上に 前あしを のせて 台に すると、はなで くだものを とった[4]。なんども ためす ことなく、いきなり この ほうほうを 思いついたのだろう[4]。
5. サルには、3000年つづく「石きの じだい」が ある
5. サルには、3000年続く「石器の時代」がある
5. ブラジルのオマキザルは3000年続く石器使用の伝統を持つ
ブラジルの こくりつこうえんに すむ ヒゲオマキザルと いう サルは、かたい 木の みを われる石で わって たべる[5]。この こうえんの ちそうを しらべると、すくなくとも 2400年から3000年 まえの 石きが 見つかり、ときどき とぎれながらも、長い あいだ 石を つかう くらしが つづいて きたと 見られて いる[5]。しかも、木の みの かたさに あわせて、つかう 石の 大きさを かえて きたらしい[5]。
6. なぜ、こんなに ちがう どうぶつたちが 道具を つかうのか
6. なぜ、こんなに違う動物たちが道具を使うのか
6. 系統の離れた動物での道具使用は収斂進化と考えられる
チンパンジー、ラッコ、タコ、ゾウ、サル。これらは 生きものの なかまとしては、おたがいに ぜんぜん ちがう グループに ぞくして いる。それでも 道具を つかう どうぶつが、あちこちの グループに いるのは、道具を つかう ことが、生きのこる うえで やくに 立つからだと かんがえられて いる[6]。
チンパンジー、ラッコ、タコ、ゾウ、サル。これらは生きものの仲間としては、お互いにぜんぜん違うグループに属している。それでも道具を使う動物が、あちこちのグループにいるのは、道具を使うことが、生き残るうえで役に立つからだと考えられている[6]。
チンパンジー(霊長類)、ラッコ(哺乳類だが霊長類とは遠縁)、メジロダコ(頭足類、脊椎動物ですらない)、ゾウ(長鼻類)、オマキザル(霊長類だがヒトとは別系統)。これらは進化的に大きく離れたグループに属している。それにもかかわらず、それぞれの環境の中で道具を使う行動が独立に見られることから、道具の使用は特定の系統だけに限られた特殊な能力ではなく、似た課題に直面した生物が独立に似た解決策にたどり着く「収斂進化」の一例である可能性が考えられる。ただし、ここで紹介した事例だけから、それぞれの能力がどのような進化的経路をたどったかまで確定できるわけではない[6]。
まわりの どうぶつを、よく かんさつして みる
まわりの動物を、よく観察してみる
まわりの動物を、よく観察してみる
こうえんに いる カラスや、いえで かって いる ペットを、よく 見て みよう。えさを とる ときや、あそんで いる ときに、なにかを「どうぐ」のように つかって いる しゅんかんが あるかもしれない。
公園にいるカラスや、家で飼っているペットを、よく見てみよう。えさを取るときや、遊んでいるときに、何かを「道具」のように使っている瞬間があるかもしれない。
身近な動物の行動を、道具使用という視点であらためて観察してみよう。カラスが硬いものを道路に置いて車に割らせようとしたり、飼い犬がおもちゃを前脚で踏んで固定したりする様子も、案外このテーマの延長線上にあるかもしれない。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
- ジェーン・グドール・インスティテュート・ジャパン「ジェーン・グドールについて」、Jane Goodall's Good for All News「Now we must redefine man, or accept chimpanzees as…humans?」。 https://www.jgi-japan.info/about-jane-goodall/ https://news.janegoodall.org/2019/07/24/now-we-must-redefine-man-or-accept-chimpanzees-ashumans/ (1960年10月、ジェーン・グドールがゴンベ・ストリームでチンパンジー「デイビッド・グレイビアード」が加工した草の茎でシロアリを釣って食べる様子を観察したことは1点目の出典による。ルイス・リーキーが「道具を再定義するか、人間を再定義するか、チンパンジーを人間として受け入れるかしかない」と評したとされることは2点目の出典による)
- UC Santa Cruz News「Sea otters use tools when feeding to survive a changing world」、ナショナルジオグラフィック日本版「ラッコが道具を使う謎、考古学の手法で迫る」。 https://news.ucsc.edu/2024/05/sea-otters-tools/ https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/040200199/ (カリフォルニア沿岸で196頭のラッコを追跡した調査で、多くの個体が決まった石を数か月〜数年、時には成体になってからずっと使いつづけ、脇の下のたるんだ皮膚を袋状に使って保管していることが確認されたことは1点目の出典による。別の調査地で、捨てられた貝殻の割れ方の偏りから、その生息地のラッコの多くが右利きではないかと示唆されたことは2点目の出典による)
- ナショナルジオグラフィック日本版「ココナツの殻を運ぶ知能の高いタコ」。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/2061/ (2009年、ジュリアン・フィンらが1999〜2008年にインドネシア北スラウェシ・バリ沿岸で観察した野生のメジロダコが、ヤシの実の殻を体の下にかかえて最大20m運び携帯シェルターとして利用していたこと、これが無脊椎動物における初の道具使用の報告とされることは同出典による)
- ナショナルジオグラフィック日本版「アジアゾウ、道具の使い方をひらめく」、スミソニアン国立動物園「Major Elephant Cognition Study」。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/4761/ https://nationalzoo.si.edu/news/major-elephant-cognition-study-comes-out (2011年、スミソニアン国立動物園でアジアゾウ3頭を対象に実験が行われ、そのうち7歳の雄「カンジュラ」が、届かない高さに吊るされた果物を、飼育環境で見慣れていたプラスチックのブロックを踏み台にして取ったこと、目立った試行錯誤なしにこの解決策にたどり着いたとされることは両出典による)
- ナショナルジオグラフィック日本版「サルにも『石器時代』、3000年継続中で石器も変化」、UCL(ロンドン大学)「Capuchin monkeys have been using stone tools for over 3,000 years」。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/062600373/ https://www.ucl.ac.uk/news/2019/jun/capuchin-monkeys-have-been-using-stone-tools-around-3000-years (ブラジル・セラ・ダ・カピバラ国立公園のヒゲオマキザルが少なくとも2400〜3000年前から石を使って木の実を割ってきたこと、この伝統が約450世代にわたり必ずしも連続的ではない形で保たれてきたとされることは2点目の出典による。食べ物の硬さに応じて使う石の大きさが時代とともに変化してきたとみられ、人類以外で初めて長期にわたる道具の変遷が確認された事例とされることは両出典による)
- フリー百科事典『ウィキペディア』「収斂進化」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/収斂進化 (系統的に離れた複数の生物が、同様の環境・生態的地位に対応する中で、それぞれ独立に似た形質・能力を獲得する現象が「収斂進化」と呼ばれることは同出典による)
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