1. モグラは、目が わるくても こまらないの?
1. モグラは目が悪くても平気なのか
1. 視力が低くても困らない ── モグラの地下生活
モグラの なかまは、目が 小さくて、あまり 見えません[1]。土の 中は くらくて、とおくを 見る ひつようが ないからです。
その かわり、モグラは かおや 足に はえた 毛で、まわりを さぐります。北アメリカに すむ ホシバナモグラは、鼻の さきに、小さな ひげのような ものが 22本 ならんでいて[2]、これで えものを さがしあてます[1]。
アフリカに すむ ハダカデバネズミも、目は 小さくて あまり 見えませんが[3]、トンネルの 中で たくさんの なかまと くらしています。目が わるくても、こまらない どうぶつは ほかにも いるのです。
モグラの仲間は、どの種も目が小さく、視力が低いといわれています。ただし、まったく目が見えない種は、その中の一部だけです[1]。耳の穴もとても小さいか、ほとんどありません[1]。土の中では遠くを見わたす必要がなく、光もほとんど届かないからでしょう。
その代わりに発達しているのが触覚です。顔や脚、しっぽに生えた感覚毛と、敏感な鼻づらで、まわりのようすを探ります[1]。北アメリカにすむ星鼻モグラは、鼻の先に22本の触手のような突起が輪になって並んでいて[2]、これで土の中の獲物をすばやく探り当てます。水の中にもぐったときは、この鼻先から泡を出し入れして、においをかぎ分けることもできるようです[1]。
地下で暮らしているのはモグラだけではありません。アフリカのハダカデバネズミも、目は小さく視力は低いのですが[3]、地下のトンネルに大きな群れをつくって暮らしています。目に頼らない暮らし方は、1種類の動物だけの特別な工夫ではないようです。では、目がほとんど見えなくても平気なら、なぜ多くの動物はそれでも目を持ち続けるのでしょうか。目を持つこと自体に、何かコスト(負担)があるのでしょうか。
モグラの仲間(モグラ科)は、どの種も目が小さく、視力が低い。ただし、まったく目が見えない種は、その中の一部にとどまる[1]。外耳もきわめて小さいか、ほとんど無い[1]。土の中では遠くを見わたす意味がなく、光そのものもほとんど届かないのだから、当然といえば当然だ。
その代わりに発達しているのが触覚だ。顔や脚、尾には感覚毛が生え、とくに鼻づらは敏感にできている[1]。北アメリカにすむ星鼻モグラは、鼻の先に22本の触手状の突起が輪になって並ぶ器官を持ち[2]、これで土の中の獲物を探り当てる。水にもぐったときは、この鼻先から泡を出し入れしてにおいをかぎ分ける(嗅覚)ことも知られている[1]。
地下で暮らすのはモグラだけではない。アフリカのハダカデバネズミも目は小さく視力は低いが[3]、地下のトンネルに巨大な群れをつくって暮らす。目に頼らない暮らし方は、1種類の動物だけの特別な工夫ではないらしい。では、目がほとんど見えなくても平気なら、なぜ多くの動物はそれでも目を持ち続けるのだろう。目を持つこと自体に、何かコストがあるのだろうか。
2. 目を なくして しまった 魚が いる?
2. 目そのものを失った魚がいる
2. 目を維持するコスト ── 洞窟にすむ盲目の魚
メキシコの ほらあなに すむ 魚には、目が ある なかまと、目が ない なかまが います。目が ない ほうは、大きく なる とちゅうで、目が 皮ふに おおわれて しまうのです[4]。まっくらな ほらあなでは、目が あっても なにも 見えません。
目を うごかしたり、目から とどく しんごうを うけとったり する ためには、体の エネルギー(ちから)が つかわれます。やくに たたない 目に エネルギーを つかい つづけるのは、もったいない ことです[5]。
その かわり、ほらあなに すむ 魚は、体の よこに ある 線のような ぶぶんで、水の ながれの わずかな へんかを かんじとって およぎます[4]。目が なくても、こまらない くふうが あるのです。
メキシコの洞窟にすむ魚、メキシカンテトラには、目のある「地上型」と、目のない「洞窟型」がいます。同じ種類の魚なのに、洞窟型は育つ途中である遺伝子のはたらきで目のまわりの血の流れが止まり、目が皮膚におおわれてしまう、と研究者は考えています[4]。生まれつき目がないのではなく、いったんできかけた目が、成長の途中で覆われてしまうということです。
なぜそこまでするのでしょうか。2015年に発表された研究は、目とその奥にある視覚をつかさどる脳の部分に、どれくらいエネルギーがかかるかを調べました。体重1グラムほどの若い地上型の魚では、じっとしているときに使うエネルギーのおよそ15%が、目を持つことのコストだと計算されています。体重が8.5グラムまで育つと、この割合は5%まで下がります[5]。真っ暗な洞窟では、目を持つ利点はほとんどありません。目を維持するコストの高さが、目を失う進化を後押しした一因ではないか、と研究者たちは考えています。
目の代わりに洞窟型が頼っているのが側線という器官です。水の圧力や流れのわずかな変化を感じ取るセンサーで、もともと魚の体の側面に並んでいます[4]。目を失っても、洞窟の壁や岩、ほかの魚の動きを感じ取って泳ぐことができます。目は、あればあるほど得というわけではないようです。
メキシコの洞窟にすむ魚、メキシカンテトラには、目のある「地上型」と、目のない「洞窟型」がいる。同じ種でありながら、洞窟型は成長の途中である遺伝子の変異によって目のまわりの血の流れが止まり、眼球が皮膚におおわれてしまう、と考えられている[4]。生まれつき目がないのではなく、いったんできかけた目が、成長の途中で覆われてしまうのだ。
なぜそこまでするのか。2015年に発表された研究は、目とその奥にある視覚をつかさどる脳の部分(視葉)にかかるエネルギーを測った。体重1グラムほどの若い地上型の魚では、安静時代謝のおよそ15%が、目を持つことのコストだと計算されている。体重が8.5グラムまで育つと、この割合は5%まで下がる[5]。真っ暗な洞窟では、目を持つ利点はほとんどない。目を維持するコストの高さが、目を失う進化を後押しした一因ではないか、と研究者たちは考えている。
目の代わりに洞窟型が頼るのが側線という器官だ。水の圧力や流れのわずかな変化を感じ取るセンサーで、もともと魚の体の側面に並んでいる[4]。目を失っても、洞窟の壁や岩、ほかの魚の動きを感じ取って泳ぐことができる。目は、あればあるほど得というものではないらしい。
3. どうぶつの 目の よさは、どうやって しらべるの?
3. 動物の目の良さは、どうやって調べるのか
3. 「目がいい」はどう測るのか ── 視力表が使えない動物たち
にんげんの 目の よさは、まるい わっかの きれめが どこに あるか こたえて しらべます。でも どうぶつは、ことばで こたえられません。
だから けんきゅうする 人は、しま もようの いたを 見せます。しまが ほそく なるほど、とおくから 見ると、ただの グレーの いたに 見えて きます。どうぶつが、しまと グレーを 見わけられなく なる ところまで しらべると、その どうぶつの 目の よさが わかるのです。
ですから どうぶつの「目の よさ」は、字を よませて しらべた ものでは ありません。しまもように よって しらべた、めやすの ような かずなのです。
人間の視力は、Cの形が並んだ表を見て調べます。どの向きの切れ目まで見分けられるかで、0.1や1.0といった数字が決まります。でもこの検査は「これはCで、切れ目は右です」と答えられることが前提です。言葉を話さない動物には、そのままでは使えません[6]。
そこで研究者は、しま模様(グレーティング)を使います。太いしまと細いしまの板を見せて、動物がどちらをより長く見つめるか、しま模様につられて目や体がどれだけ動くかを観察するのです。しまが細かくなるほど、遠くからでは1枚のグレーの板に見えてきます。動物が2つを見分けられなくなる限界の細かさから、視力の数値を決めます[6]。この数値は「1度の視角の中にしまが何本入るか」という単位で表され、あとから人間の視力表の数字に置きかえられます[6]。
つまり動物の「視力◯◯」という数字は、文字を読ませて測ったものではなく、しま模様を見分ける限界から逆算した推定です。同じ動物でも、明るさや測り方によって数字は変わることがあります。このことを頭に置いたうえで、次からは実際の測定結果を見ていきましょう。
人間の視力は、Cの形が並んだ視力検査表で調べる。どの向きの切れ目まで見分けられるかで、0.1や1.0といった数字が決まる。だが、この検査は「これはCの形で、切れ目は右です」と答えられることが前提になっている。言葉を話さない動物には、そのまま使えない[6]。
そこで研究者は、しま模様(グレーティング)を使う。太いしまと細いしまの板を見せ、動物がどちらをより長く見つめるか、あるいはしま模様につられて目や体がどれだけ動くか(追視反応)を観察する。しまが細かくなるほど、遠くからでは1枚のグレーの板に見えてくる。動物が2つを見分けられなくなる限界の細かさから、視力を数値にする[6]。この数値は「1度の視角の中に、しまが何本入るか」という単位(cycles per degree)で表され、あとから人間の視力表の数字に換算し直される[6]。
つまり動物の「視力◯◯」という数字は、文字を読ませて測ったものではなく、しま模様を見分ける限界から逆算した推定値だ。同じ動物でも、測る条件(明るさ、対象までの距離、実験の設計)によって数字は変わりうる。この前提を頭に置いたうえで、次からは実際の測定結果を見ていこう。
4. 鳥は ほんとうに 目が いいの?
4. 鳥は本当に人間より目がいいのか
4. 猛禽類の視力 ── ワシは人間の2倍、コンドルはそれより低い
「ワシは 目が いい」と よく いわれます。しらべた けんきゅうでは、大きな ワシの 目の よさが、にんげんの やく2ばいだったそうです[7]。
でも、鳥なら みんな 目が いい わけでは ありません。しんだ どうぶつを たべて くらす コンドルという 鳥は、はやく にげる えものを おいかける ひつようが ないので、それほど 目が よくないと いわれています[9]。
その かわり、多くの 鳥は、にんげんには 見えない しがいせんという 光まで 見る ことが できます[9]。花や 虫の もように、しがいせんでしか 見えない もようが ある ことも あるそうです。「目が いい」には、いろいろな はかりかたが あるのです。
「ワシは人間よりずっと目がいい」という話をよく聞きます。実際に調べた研究があります。オーストラリアにすむ大きなワシ(オナガイヌワシ)を対象にした1985年の研究は、しま模様を使った実験と、目の中の受容体(光を感じる細胞)の並び方の両方から視力を見積もり、人間のおよそ2倍という値を出しました[7]。2018年に出た猛禽類の視覚についての総説論文も、この数字を紹介しています[8]。
ただし、これは「猛禽類なら誰でも」という話ではありません。小型のアメリカチョウゲンボウは、目の中でいちばん敏感な部分に、1平方ミリメートルあたり65,000個の受容体が集まっていますが、人間の同じ部分は38,000個ほどです[9]。これに対して、死んだ動物を食べて暮らすコンドルは、同じように中心窩の受容体を数えると35,000個ほどしかありません[9]。獲物が自分から逃げないぶん、小さくすばやい虫を追いかけるチョウゲンボウほどの解像度はいらない、と考えられています。実際、中型・小型の猛禽類の多くは、人間と同じくらいか、それ以下の解像度しかないという指摘もあります[9]。1986年には、ワシの目の弱点を論じた論文も発表されました[10]。「鳥は目がいい」は、種と暮らし方によって答えが変わる問いのようです。
解像度とは別に、多くの鳥は色の見え方で人間を上回ります。ほとんどの鳥は、人間の3種類より1種類多い、4種類の色を感じる細胞を目に持っていて、紫外線まで見えます[9]。花や虫の模様の中には、紫外線の光でしか見えない部分があるようです。ワシのように大きな目でくっきり見る鳥もいれば、色の情報で人間を超える鳥もいます。「目がいい」には、いくつもの物差しがあるのです。
「ワシは人間よりずっと目がいい」という話はよく聞く。実際に調べた研究はある。オーストラリアにすむオナガイヌワシという大きなワシを対象にした1985年の研究は、しま模様を使った実験と、目の中の受容体(光を感じる細胞)の並び方の両方から視力を見積もり、人間のおよそ2倍という値を出した[7]。2018年に出た猛禽類の視覚についての総説論文も、この数字を紹介している[8]。
ただし、これは「猛禽類なら誰でも」という話ではない。小型のアメリカチョウゲンボウは、目の中でいちばん敏感な部分に、1平方ミリメートルあたり65,000個の受容体が集まっているが、人間の同じ部分は38,000個ほどだ[9]。これに対し、死んだ動物を食べて暮らすコンドルは、同じように中心窩の受容体を数えると35,000個ほどしかない[9]。獲物が自分から逃げないぶん、小さくすばやい虫を追いかけるチョウゲンボウほどの解像度はいらない、と考えられている。実際、中型・小型の猛禽類の多くは、人間と同じくらいか、それ以下の解像度しかないという指摘もある[9]。1986年には、ワシの目の弱点を論じた論文も発表されている[10]。「鳥は目がいい」は、種と暮らし方によって答えが変わる問いだ。
視力の解像度とは別に、多くの鳥は色の見え方で人間を上回る。ほとんどの鳥は、人間の3種類より1種類多い、4種類の色を感じる細胞を目に持ち、紫外線まで見える[9]。花や虫の模様の中には、紫外線の光でしか見えない部分があるらしい。ワシのように大きな目でくっきり見る鳥もいれば、色の情報で人間を超える鳥もいる。「目がいい」には、いくつもの物差しがある。
5. フクロウは、近くが 見えにくいって ほんとう?
5. フクロウは近くのものが見えにくい
5. 暗闇に強く、近くはぼやける ── フクロウの遠視
フクロウの 目は、あたまの 大きさに くらべて、とても 大きいです。目を うごかせない かわりに、くびを おおきく まわして まわりを 見ます[11]。よるの くらい 森でも ネズミを 見つけられるのは、くらい ところで 見る ちからが、にんげんより ずっと つよいからです[11]。
でも、フクロウの 目には にがてな ことも あります。目から すこし はなれた ところは よく 見えますが、目に ちかい ところは、ぼやけて よく 見えないのです[12]。
くらい ところに つよい 目と、ちかくが にがてな 目。フクロウの 目は、その りょうほうを もっているのです。
フクロウは、頭の大きさのわりに、目がとても大きくできています。目玉を動かす代わりに、首を最大で約270度も回して、まわりを見ます[11]。夜、うす暗い森を飛びながらネズミを見つけられるのは、人間の10倍から100倍ともいわれる、暗いところでの感度のおかげです[11]。
ところが、この目には弱点があります。フクロウの多くは遠視とされ、目から数センチメートルより近くにあるものには、はっきりピントを合わせられないといわれています[12]。人間なら眼鏡で直す遠視ですが、フクロウにとっては、遠くの獲物をとらえるために進化した結果のようです。近くのものは、くちばしのまわりに生えた感覚毛で確かめると考えられています。
暗いところに強い目と、近くが苦手な目は、同じ1つの目の中に同居しています。「目がいい」がどんな条件を指すかによって、フクロウの評価は変わってくるのです。
フクロウは、頭の大きさのわりに、目がとても大きい。目玉を動かす代わりに、首を最大で約270度も回して周りを見る[11]。夜、うす暗い森を飛びながら、獲物のネズミを見つけられるのは、人間の10倍から100倍ともいわれる暗いところでの感度のおかげだ[11]。
ところが、この目には弱点がある。フクロウの多くは遠視とされ、目から数センチメートルより近くにある物には、はっきりとピントを合わせられないといわれる[12]。人間の遠視は眼鏡で直す対象になるが、フクロウにとっては、遠くの獲物をとらえるための進化の結果らしい。近くの物は、くちばしの周りに生えた感覚毛で確かめると考えられている。
暗いところに強い目と、近くが苦手な目は、同じ1つの目の中に同居している。「目がいい」がどんな条件を指すかによって、フクロウの評価は変わる。
6. どうぶつにも 近視は あるの? ネコとの ちがい
6. 動物にも近視はあるのか ── ネコとのちがい
6. 動物実験が明かした近視の仕組み ── そしてネコの選んだ道
にんげんの 近視は、目の おくゆきが のびすぎる ことで おきます。けんきゅうする 人たちは、ヒヨコや サルの 目の 前を レンズで ぼかしたり、まぶたを とじさせたり して そだてる じっけんを しました。すると、その どうぶつも 近視に なったのです[13]。近視は にんげんだけに おきる ことでは ないようです。
ネコの 目の よさは、にんげんほど よくありません。でも ネコは、にんげんの やく6ぶんの1の あかるさが あれば、まわりが 見えます[14]。よるに ネコの 目が ぴかっと 光るのを 見た ことは ないでしょうか。目の おくに ある かがみのような ものが、光を もう1回 はねかえしているのです。
くっきり 見える 目と、くらくても 見える 目。この記事に 出てきた どうぶつは、どちらかを えらんで くらしているのかも しれません。
フクロウに見られる遠視は、生まれつきの目の形が主な原因と考えられています。では近視はどうでしょうか。人間の近視の多くは、目の奥行き(眼球の長さ)が伸びすぎることで起こります。この仕組みを調べるために、研究者はヒヨコやサルなど、いろいろな動物を使った実験をおこなってきました[13]。
目の前を人工のレンズでぼかしたり、まぶたを閉じて光をさえぎったりして育てると、その目は奥行きが伸びて近視になります。目は、光の刺激を受けながら、自分がどれくらい伸びるかを調節しているらしい、ということが、こうした実験からわかってきました[13]。魚や鳥のような動物では、この人工的な近視は、もとの条件にもどせば短い期間で治ることもあるそうです[13]。近視は人間だけに起きることではなく、目が育つしくみに根ざした、動物に共通する反応のようです。
身近な動物にも、目の性能の「選び方」の跡が見えます。ネコの視力は、人間でいう0.1から0.3ほどしかありません。ネコが6メートルまで近づいてやっと見えるものを、人間なら20〜30メートル離れていても見分けられる計算になります[14]。その代わり、ネコは人間のおよそ6分の1の明るさがあれば、ものを見分けられます[14]。目の奥にある反射板(タペータム)が、目に入った光をもう一度網膜に反射させるからです。くっきり見える目と、暗くても見える目。どちらか一方をとことん伸ばすのは、モグラからワシまで、この記事に出てきたどの動物にも共通する生き方の選び方だったのかもしれません。
フクロウの遠視は、生まれつきの目の形に由来すると考えられている。では近視はどうだろう。人間の近視の多くは、目の奥行き(眼軸)が伸びすぎることで起こる。この仕組みを調べるために、研究者はヒヨコやサルなど複数の動物を使った実験をおこなってきた[13]。
目の前を人工のレンズでぼかしたり、まぶたを閉じて光をさえぎったりして育てると、その目は奥行きが伸びて近視になる。目は、光の刺激を受けながら、自分の伸び具合を調整しているらしい、ということがこうした実験からわかってきた[13]。魚や鳥のような動物では、この人工的な近視は、条件をもとに戻せば短期間で治ることもあるという[13]。近視は人間だけの現象ではなく、目の成長のしくみに根ざした、動物に共通する反応のようだ。
身近な動物にも、目の性能に「選択」の跡が見える。ネコの視力は、人間でいう0.1から0.3ほどしかない。ネコが6メートルまで近づいてやっと見えるものを、人間なら20〜30メートル離れていても見分けられる計算になる[14]。その代わり、ネコは人間のおよそ6分の1の明るさがあれば、ものを見分けられる[14]。目の奥にある反射板(タペータム)が、目に入った光をもう一度網膜に反射させるためだ。くっきり見える目と、暗くても見える目、どちらか一方をとことん伸ばすのは、モグラからワシまで、この記事に出てきたどの動物にも共通する生き方の選び方だったのかもしれない。
じぶんでも しらべてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
どうぶつえんや すいぞくかんに 行ったら、フクロウや ワシの 目が どれくらい 大きいか、かおの どこに ついているか、見てみましょう。目のない 魚を かっている すいぞくかんが あれば、目の ある 魚と 見くらべてみましょう。
おうちで ネコや イヌを かっていたら、よるに へやの あかりで、目が ぴかっと 光るのを 見た ことが ないか おもいだしてみましょう。スマートフォンの ライトや かいちゅうでんとうを どうぶつの 目に むけたり、ちかづけたり しては いけません。
動物園や水族館には、目のつくりを比べる材料がそろっています。フクロウやワシの展示では、目の大きさや、顔のどこに付いているかを観察してみましょう。前を向いた大きな目を持つ動物と、横向きの小さな目を持つ動物とでは、見え方の役割がちがいます。メキシカンテトラを飼育している水族館が見つかれば、地上型と洞窟型の目のちがいを、実物で見比べられます[4]。
身近な動物でもできることがあります。夜、飼っているネコやイヌの目が、部屋の明かりなどでぴかっと光ることがあります。これは、この記事で紹介した目の奥の反射板(タペータム)のはたらきです。スマートフォンのライトや懐中電灯を動物の目に直接向けるようなことはしないようにしましょう。
もっと調べたい人は、この記事のもとになった資料を、参考にした情報源から直接読んでみてください。とくに1985年のワシの視力の研究や、2015年の洞窟魚のエネルギーについての論文は、実験の組み立て方そのものがおもしろいです。
動物園や水族館には、目のつくりを比べる材料がそろっている。フクロウやワシの展示では、目の大きさや、顔の中でどこに付いているかを観察してみるとよい。前を向いた大きな目を持つ動物と、横向きの小さな目を持つ動物とでは、見え方の役割がちがう。メキシカンテトラを飼育している水族館が見つかれば、地上型と洞窟型の目のちがいを、実物で見比べられる[4]。
身近な動物でもできることがある。夜、飼っているネコやイヌの目が、部屋の明かりなどで光ることがある。これは、この記事で紹介した目の奥の反射板(タペータム)のはたらきだ。スマートフォンのライトや懐中電灯を動物の目に直接向けることはしないようにしよう。
もっと調べたい人は、この記事の元になった論文や資料を、参考文献欄から直接あたってみてほしい。とくに1985年のワシの視力の研究や、2015年の洞窟魚のエネルギーについての論文は、実験の組み立て方そのものが面白い。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
- English Wikipedia「Talpidae」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Talpidae (モグラ科の動物がどの種も目が小さく視力が低いこと、完全に目が見えない種はごく一部であること、外耳が非常に小さいか無いこと、触覚に頼り顔・脚・尾に感覚毛があること、水中でのにおいのかぎ分け方は同記事による)
- English Wikipedia「Star-nosed mole」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Star-nosed_mole (星鼻モグラの鼻先に22本の触手状の突起(Eimer器官が並ぶ)があることは同記事による)
- English Wikipedia「Naked mole-rat」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Naked_mole-rat (ハダカデバネズミの目が小さく視力が低いこと、地下生活に適応していることは同記事による)
- English Wikipedia「Mexican tetra」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Mexican_tetra (メキシカンテトラに目のある地上型と目のない洞窟型がいること、洞窟型は成長の途中である遺伝子の変異によって目のまわりの血流が止まり皮膚におおわれると考えられていること、目の代わりに側線で水の圧力の変化を感じ取ることは同記事による)
- Moran D., Softley R., Warrant E. J.(2015). The energetic cost of vision and the evolution of eyeless Mexican cavefish. Science Advances, 1(8). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4643782/ (体重1グラムほどの地上型の若い個体で、視覚系〈目と視葉〉のコストが安静時代謝のおよそ15%を占め、体重8.5グラムまで育つと5%まで下がるという数値は同論文の要旨による)
- English Wikipedia「Visual acuity」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Visual_acuity (言葉で答えられない対象の視力を、しま模様〈グレーティング〉を使った行動実験や、脳波・眼球運動の観察で測ること、測定結果をcycles per degreeという単位で表すことは同記事による)
- English Wikipedia「Eagle」;Reymond L.(1985). Spatial visual acuity of the eagle Aquila audax: A behavioural, optical and anatomical investigation. Vision Research, 25(10). https://en.wikipedia.org/wiki/Eagle https://doi.org/10.1016/0042-6989(85)90226-3 (オナガイヌワシの視力が人間のおよそ2倍と見積もられたことは両出典による)
- Mitkus M. et al.(2018). Raptor Vision. Oxford Research Encyclopedia of Neuroscience. https://doi.org/10.1093/acrefore/9780190264086.013.232 (猛禽類の視覚についての総説として、オナガイヌワシの視力研究を紹介していることは同論文による)
- English Wikipedia「Bird vision」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bird_vision (アメリカチョウゲンボウの中心窩の受容体密度が1平方ミリメートルあたり65,000個、人間が38,000個であること、コンドルの中心窩の受容体が約35,000個であり腐肉食の鳥には高い解像度が必要ないと考えられていること、中型・小型の猛禽類の多くが人間と同等かそれ以下の解像度しかないという指摘、多くの鳥が4種類の色覚細胞と紫外線を感じる視覚を持つことは同記事による)
- Martin G. R.(1986). Vision: Shortcomings of an eagle's eye. Nature, 319(6052). https://doi.org/10.1038/319357a0 (ワシの視覚の限界を論じた研究が存在することの出典として挙げた)
- フリー百科事典『ウィキペディア』「フクロウ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/フクロウ (フクロウの目が人間の10〜100倍ほどの感度を持つとみられていること、首が最大約270度回ることは同記事による)
- English Wikipedia「Owl」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Owl (フクロウの多くが遠視で、目から数センチメートルより近くのものにはっきりピントを合わせられないとされることは同記事による)
- English Wikipedia「Myopia」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Myopia (人工のレンズやまぶたを閉じることで動物に近視を起こす実験〈form deprivation myopia〉がさまざまな動物モデルで行われてきたこと、下等脊椎動物では短期間なら元に戻ることがあることは同記事による)
- English Wikipedia「Cat senses」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Cat_senses (ネコの視力がおよそ20/100〜20/200であること、人間のおよそ6分の1の光量で見られること、タペータム・ルシダムが暗所視を助けることは同記事による)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。