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羊は いつから 人と くらして いるの?

羊はいつから人間に飼われているのか ── 毛を刈らなければならない理由

羊はいつから人間に飼われているのか ── 毛を刈らなければならない理由

分野:生きもの

ヒツジは、どうして 人間に 毛を かられなければ ならないのだろう。

野生の どうぶつで、こんな せわが ひつような 生きものは、ほかに いない。

ヒツジは、どうして人間の手で毛を刈られなければならないのだろう。

野生の動物で、こんな世話が必要な生きものは、ほかにいない。

ヒツジは、なぜ人間の手で毛を刈られなければならないのか。野生の動物で、こんな世話が定期的に必要な生きものはほかにいない。

答えは、1万1千年前に始まった家畜化の歴史そのものにある。人間は長い年月をかけて、ヒツジの毛から、ある大事な能力そのものを取り除いてしまっていたのだ。

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1. 野生の ヒツジは、どんな 毛を して いたのか

1. 野生のヒツジは、どんな毛をしていたのか

1. 野生のヒツジは、どんな毛をしていたのか

今の ヒツジの ご先ぞは、西アジアの 山に 今も すむ「ムフロン」と いう 野生の どうぶつだと する 考えが もっとも 広く みとめられて いる[1]。

ムフロンの 毛は、2しゅるいの 毛で できて いる。太くて かたい「さしげ」が 外がわを おおい、その 下に、細くて やわらかい「したげ」が はえて いる。太い さしげは、細い したげの やく10ばいも 太い[2]。

そして、犬や ねこと 同じように、この 毛は 1年に 1回 はえかわり、きせつが 来ると しぜんに ぬけおちる[2]。

今のヒツジの祖先は、西アジアの山に今もすむ「ムフロン」という野生の動物だとする考えが、もっとも広く認められている[1]。

ムフロンの毛は、2種類の毛でできている。太くて硬い「差し毛(さしげ)」が外がわをおおい、その下に、細くてやわらかい「下毛(したげ)」が生えている。太い差し毛は、細い下毛のおよそ10倍も太い[2]。

そして、犬やねこと同じように、この毛は1年に1回生えかわり、季節が来ると自然に抜け落ちる[2]。

現在の家畜のヒツジ(Ovis aries)は、西アジアの山岳地帯に今も生息する野生のヒツジ、ムフロン(Ovis orientalis)の子孫であるとする説が、もっとも広く支持されている[1]。

ムフロンの体表は、二重構造の毛でおおわれている。太くごわごわした「差し毛」が表面をおおい、その下に細くやわらかい「下毛」が生えている。差し毛の直径はおよそ150マイクロメートル、下毛はおよそ15マイクロメートルと、およそ10倍の差がある[2]。

犬や猫と同じように、この二重の毛は毎年生えかわり、季節になると自然に抜け落ちる[2]。この「自然に抜け落ちる」という性質が、のちの物語の鍵になる。

2. 1まん1千年前、人が ヒツジを かいはじめた

2. 1万1千年前、人がヒツジを飼いはじめた

2. 1万1千年前、一つの村から始まった

2025年に はっぴょうされた しらべに よると、しらべた 中で もっとも 古い、ヒツジを かって いた むらは、今の トルコの まん中に ある「アシュクル・ホユック」だった[3]。この あたりの ちいきで、1まん1千年いじょう前に、人が はじめて ムフロンを つかまえて かいはじめたと 考えられて いる[3]。

この しらべは、モンゴルから アイルランドまで、せかいじゅうの こせきから みつかった、118点の 古い DNAを しらべた ものだ[3]。もっとも 古い むらの DNAが、その あとの 広い ちいきの ヒツジたちの ご先ぞに あたる ことが わかり、ヒツジを かう ことは、たった 1つの ばしょから 世界中に 広がって いった ことが しめされた[3]。

2025年に発表された調べによると、調べた中でもっとも古い、ヒツジを飼っていた村は、今のトルコの真ん中にある「アシュクル・ホユック」だった[3]。このあたりの地域で、1万1千年以上前に、人がはじめてムフロンをつかまえて飼いはじめたと考えられている[3]。

この調べは、モンゴルからアイルランドまで、世界中の古い骨から見つかった、118点の古いDNAを調べたものだ[3]。もっとも古い村のDNAが、そのあとの広い地域のヒツジたちの祖先にあたることがわかり、ヒツジを飼うことは、たった1つの場所から世界中に広がっていったことが示された[3]。

2025年1月に発表された研究によれば、解析対象の中でもっとも古いヒツジ飼育集落は、いまのトルコ中央部にある「アシュクル・ホユック」だった[3]。肥沃な三日月地帯西部にあたるこの一帯で、1万1千年以上前に、人間が野生のムフロンを捕らえて飼い始めたと考えられている[3]。

この研究は、モンゴルからアイルランドまで、12,000年間にわたる範囲から発見された118点の古代ヒツジゲノムを解析したものだ[3]。解析対象の中でもっとも古いアシュクル・ホユックの遺伝情報が、その後の広い地域の集団の祖先にあたることが確認され、単一の起源から東西へ広がっていったことが示された[3]。

3. さいしょは、毛の ためでは なかった

3. 最初は、毛のためではなかった

3. 最初は、毛のためではなかった

かわれはじめた ころの ヒツジは、肉や おちちや かわを 手に 入れる ために かわれて いた[1]。

今のように、毛(ウール)を 手に 入れる ために かうように なったのは、かいはじめてから やく5千年も あとの、今から やく8千年前からだと される[1]。人は、その あいだに、ムフロンが もともと もって いた 毛を、時間を かけて つくりかえて いった。

飼われはじめたころのヒツジは、肉や乳や皮を手に入れるために飼われていた[1]。

今のように、毛(ウール)を手に入れるために飼うようになったのは、飼いはじめてからおよそ5千年もあとの、今からおよそ8千年前からだとされる[1]。人は、そのあいだに、ムフロンがもともと持っていた毛を、時間をかけて作りかえていった。

家畜化されたばかりのヒツジは、肉・乳・皮を得るために飼われていた[1]。

現在のようにウールを目的として毛を刈られるようになったのは、家畜化からおよそ5千年ほど後、今からおよそ8千年前(紀元前6000年ごろ)からだとされる[1]。その間に人間は、ムフロンが本来持っていた、差し毛と下毛からなる二重の毛を、選択的な交配によって少しずつ作り変えていった。

4. 人が つくった「毛が のびつづける ヒツジ」

4. 人が作った「毛が伸びつづけるヒツジ」

4. 人が作った「毛が伸びつづけるヒツジ」

時間を かけた かけあわせに よって、ヒツジの 毛は 大きく すがたを かえた。太くて かたい さしげは、だんだん へって いき、今の 毛用の しゅるい(メリノしゅなど)では、さしげと したげの 太さが、ほとんど 同じに なって いる[2]。

さらに、野生の ヒツジが もって いた「1年に 1回 はえかわって しぜんに ぬけおちる」と いう せいしつも うしなわれ、今の ヒツジの 毛は、ぬけおちる ことなく のびつづけるように なった[2]。

もし 人間の かみの毛が、いちども 切らずに、ずっと のびつづけたら どうなるだろう。今の ヒツジの 毛は、それに 近い。今の ヒツジが 人間の 手で 毛を かられなければ ならないのは、人間じしんが、毛が しぜんに ぬけおちる ちからを、長い 年月を かけて うばって しまったからだと いえる。

時間をかけたかけ合わせによって、ヒツジの毛は大きく姿を変えた。太くて硬い差し毛は、だんだん減っていき、今の毛用の種類(メリノ種など)では、差し毛と下毛の太さが、ほとんど同じになっている[2]。

さらに、野生のヒツジが持っていた「1年に1回生えかわって自然に抜け落ちる」という性質も失われ、今のヒツジの毛は、抜け落ちることなく伸びつづけるようになった[2]。

もし人間の髪の毛が、一度も切らずに、ずっと伸びつづけたらどうなるだろう。今のヒツジの毛は、それに近い。今のヒツジが人間の手で毛を刈られなければならないのは、人間自身が、毛が自然に抜け落ちる力を、長い年月をかけて奪ってしまったからだといえる。

この選択的な交配によって、ヒツジの毛は大きく姿を変えた。太くて硬い差し毛はしだいに減っていき、現在の毛用品種(メリノ種など)では、差し毛と下毛の太さの比率がほぼ1対1にまで縮まっている[2]。

さらに、野生のヒツジが持っていた「毎年生えかわって自然に抜け落ちる」という性質も失われ、いまのヒツジの毛は、抜けることなく伸びつづけるようになった[2]。

もし人間の髪の毛が、一度も切らずに伸びつづけたらどうなるか想像してみてほしい。現在のヒツジの毛は、それに近い状態にある。現在の毛用のヒツジが人間の手で毛を刈られなければならないのは、人間自身が、毛が自然に抜け落ちる能力を、長い年月をかけて交配によって取り除いてしまったからだといえる。研究者たちは、この変化の大きさと速さは、偶然の突然変異と自然選択だけでは説明しきれないと指摘している[2]。

5. 毛の 色まで えらんで いた しょうこ

5. 毛の色まで選んでいた証拠

5. 毛の色まで選んでいた証拠

さっきの 2025年の しらべには、もう 1つ おもしろい はっけんが あった。今から やく8千年前、ヨーロッパの ヒツジには、もう すでに、毛の 色に かんけいする いでんしの あたりに、人間が わざと えらんだ あとが 見つかったのだ[3]。

けんきゅうしゃたちは これを、「人間が ほかの どうぶつの 体の せいしつを つくりかえた、もっとも 古い しょうこ」だと している[3]。ヒツジを かいはじめてから、まだ 3千年ほどしか たって いない ときに、人間は もう、どの 色の 子を のこすかを えらびはじめて いたのだ。

さっきの2025年の調べには、もう1つおもしろい発見があった。今からおよそ8千年前、ヨーロッパのヒツジには、もうすでに、毛の色に関係する遺伝子のあたりに、人間がわざと選んだ跡が見つかったのだ[3]。

研究者たちはこれを、「人間がほかの動物の体の性質を作りかえた、もっとも古い証拠」だとしている[3]。ヒツジを飼いはじめてから、まだ3千年ほどしかたっていないときに、人間はもう、どの色の子を残すかを選びはじめていたのだ。

先に触れた2025年の研究では、もう一つ興味深い発見があった。今から8千年前の時点で、ヨーロッパのヒツジにはすでに、毛色に関わる「KIT」という遺伝子のあたりに、人間による意図的な選択の痕跡が見つかったのである[3]。

研究者たちはこれを、「人間が別の動物の生物学的な特徴を作り変えた、もっとも古い証拠」と位置づけている[3]。ヒツジを飼い始めてわずか3千年ほどのうちに、人間はすでに、どの毛色の個体を残すかを選び始めていたことになる。

毛かりの 前と あとを、くらべて みよう

毛刈りの前と後を、くらべてみよう

毛刈りの前後を、写真でくらべてみよう

どうぶつえんや ぼくじょうで ヒツジを 見る きかいが あったら、写真や どうがで、毛を かる 前と あとの すがたを くらべて みよう。今の ヒツジの ほとんどは、この きじで 見た「毛用の ヒツジ」で、毛を かる 前と あとで、体の 大きさが ずいぶん ちがって 見える ことに おどろくかも しれない。

もし きかいが あれば、犬や ねこの 毛が 生えかわる ようすと、ヒツジの毛の ちがいを、家の 人と はなしあって みよう。

動物園や牧場でヒツジを見る機会があったら、写真や動画で、毛を刈る前と後の姿をくらべてみよう。今のヒツジのほとんどは、この記事で見た「毛用のヒツジ」で、毛を刈る前と後で、体の大きさがずいぶんちがって見えることに驚くかもしれない。

もし機会があれば、犬やねこの毛が生えかわる様子と、ヒツジの毛のちがいを、家の人と話し合ってみよう。

もし動物園や牧場でヒツジを観察する機会があれば、毛刈りの前後でどれくらい印象が変わるか、写真などで比べてみるとよい。人間が1万年以上かけて作り変えた「毛の性質」を、実際に目にすることができる。

興味を持ったら、2025年に発表されたアシュクル・ホユックのDNA研究について、そのほかの発見(ヒツジの拡散経路や、地域ごとの品種の違いなど)も調べてみると、家畜化という現象の複雑さがより見えてくるはずだ。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

  1. English Wikipedia「Domestication of the sheep」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Domestication_of_the_sheep (ヒツジの祖先を野生のムフロンとする説がもっとも広く支持されていること(出典は「もっとも一般的な仮説」と表現)、家畜化されたばかりのヒツジが肉・乳・皮のために飼われていたこと、毛(ウール)を目的とした選択的な交配がおよそ8千年前(紀元前6000年ごろ)から始まったとされることは同出典による)
  2. Rantanen et al., “Evolution of the sheep coat: the impact of domestication on its structure and development”, Experimental Dermatology, 2020年(査読誌、PMC公開版)。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7306482/ (野生のヒツジの毛が、太い差し毛(直径約150マイクロメートル)と細い下毛(直径約15マイクロメートル)からなる二重構造で毎年生えかわること、現在の毛用品種では差し毛と下毛の太さの比率がほぼ1対1にまで縮まっていること、毛が抜け落ちず伸びつづけるように変化したこと、この変化の大きさと速さが偶然の突然変異と自然選択だけでは説明しきれないと著者らが指摘していることは同出典による)
  3. SciTechDaily「Ancient DNA Unlocks 11,000 Years of Sheep and Human History」(原論文:Daly, K. G. ほか「Ancient genomics and the origin, dispersal, and development of domestic sheep」, Science, 2025年1月30日)。 https://scitechdaily.com/ancient-dna-unlocks-11000-years-of-sheep-and-human-history/ (トルコ中央部のアシュクル・ホユック遺跡が解析対象の中でもっとも古いヒツジ飼育集落であること、この遺跡の遺伝情報がその後の広い地域の集団の祖先にあたり単一の起源から広がったこと、肥沃な三日月地帯西部で1万1千年以上前に野生ムフロンの捕獲から家畜化が始まったとされること、モンゴルからアイルランドにわたる118点の古代ヒツジゲノムを解析した研究であること、8千年前のヨーロッパのヒツジの毛色に関わるKIT遺伝子付近に人為選択の痕跡が見つかりこれが人間による動物の生物学的特徴の改変の最古の証拠とされることは、原論文(Science誌)を報じた同記事による)

なおした ところ

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