1. 1秒は、なんかい かぞえた ながさ?
1. 1秒は「約92億回」── 半端な数で決まっている
1. 秒の定義 ── セシウム133と9 192 631 770という数
いまの 1秒は、げんしの 力を かりて きめて います。セシウムという げんしが 出し入れする 電波の 波を、かぞえます[2]。
その 波を、9,192,631,770 こ かぞえた 間が 1秒です。およそ 92億こ。ゆびで かぞえたら、とても おわりません。
この きめごとは、1967年に、せかいの 人が あつまる 話しあいで きまりました[2]。
原子の力を借りた決まり方
いまの1秒は、こう決められています。セシウム133という原子には、エネルギーがほんの少し違う2つの状態があります。その間を移るときに出入りする電磁波の周期を数えて、9,192,631,770個ぶんの時間を1秒とします[1][2]。
この決め方が採択されたのは、1967年の国際度量衡総会(CGPM)です[2]。2018年に表現が改められましたが、これは全部の単位の書き方をそろえるための言い換えで、秒の内容は同じです[2]。
9,192,631,770は約92億。周波数にすると約9.2GHzで、マイクロ波と呼ばれる電磁波の仲間です[1]。
現在の秒の定義(2018年の第26回国際度量衡総会[CGPM]で採択された表現)は、セシウム周波数、つまり外から乱されないセシウム133原子の基底状態の超微細構造遷移周波数の数値を、9 192 631 770 Hzと定める、という形をとる[1]。
セシウム原子を使う秒の定義そのものは、1967年の第13回CGPMで採択された。当時の文言は、セシウム133原子の2つの超微細準位の間の遷移に対応する放射について、その周期の9 192 631 770倍を1秒とする、というものだ[2]。2018年の改定は、全ての単位を「定数の値を決める」形でそろえるための言い方の変更で、秒の内容は変わっていない[2]。
9 192 631 770は約92億。1秒あたり約92億回の波、周波数にして約9.2 GHz(マイクロ波の領域)にあたる。定義の数字は「約9.2 GHz」ではなく9 192 631 770という具体的な値そのものだ[1]。
2. この 数は、どうやって きまったの?
2. 月を見て測った数が、そのまま「決まり」になった
2. 1955〜58年 ── 暦表時の秒とセシウム時計の比較
むかしは、1秒を 太陽や 地球の うごきで きめて いました。1960年の きめかたは、太陽の まわりを ぐるっと 1まわり する 長さを、こまかく わった ものです[3]。
1955年、イギリスで、げんしを つかった とけいが できました。つくったのは、エッセンさんと パリーさんです[5]。300年で 1秒しか ずれない とけいだと、はくぶつかんの せつめいには あります[4]。ただし これは、そのころの 言い方です。
では、9,192,631,770 という 数は、どこから 出て きたのでしょう。げんしの ことを 計算して 出した 数では ありません。空の 月の うごきから きまる 1秒と、できたての とけいを くらべて、はかった 数です[6]。
はかった 数が、そのまま「きめごと」に なりました[3]。月を 見て きめる やり方より、ずっと こまかく はかれたからです[7]。
もとは、天体の動きだった
原子で秒を決める前、秒は天体の動きにもとづいていました。1960年の決まり方は、1900年1月0日12時の回帰年(太陽の周りを一周して、季節がもとの位置にもどるまでの長さ)を31,556,925.9747等分した1つぶんです[3]。地球の自転ではなく、公転にもとづく決め方でした。
1955年、英国立物理学研究所(NPL)のエッセンとパリーが、実際に使える最初のセシウム原子時計を作りました。5月24日に初めて動き、数か月で「最初の本格的な原子時計」と認められたそうです[5]。2人はマイクロ波の専門家で、電磁場の測定や真空装置づくりに長い時間を使ったといいます[5]。
博物館の解説では、この時計は約300年で1秒ずれる正確さと紹介され、当時の水晶時計の約30倍、最良の振り子時計の約300倍という比べ方がされています[4]。ただしこれは当時の言い方で、今の不確かさの評価と同じ基準とは限りません。
「92億回」は、測って決めた数
では9,192,631,770はどこから出てきたのでしょう。原子の性質から計算で導いた数ではありません。1955年から1958年にかけて、月の位置の観測から決まる秒と、NPLのセシウム時計を見比べ、原子の共鳴が1秒に何回になるかを測りました。米海軍天文台のマルコウィッツらとエッセン、パリーが、1958年8月に「9,192,631,770サイクル毎秒、測定誤差は推定±20サイクル」と発表しています[6]。20を約92億で割ると、10億分の2ほどです。
この結果の不確かさは、当時の秒を決めていた天文観測よりずっと小さいものでした[7]。1967年に秒の定義がセシウムの周波数へ切りかわった背景にも、この測定結果があります[2][7]。今の定義の数字は、1958年の測定結果の不確かさをゼロとして決めたもの、とBIPM(国際度量衡局)の会議資料にあるドイツのPTBの研究者の説明は述べます[3]。同じ測定は、地球の自転のむらや過去の天体位置表の不確かさが残るため、くり返されていません[3]。
定義が原子に移る前、1960年の秒は天文にもとづく暦表時の秒だった。1900年1月0日12時の回帰年(太陽の周りを一周して季節が同じ位置にもどる長さ)の31 556 925.9747分の1とされた[3]。1日の86400分の1ではなく、公転にもとづく決め方である点に注意したい。
世界初の実用的なセシウム原子時計は、英国立物理学研究所(NPL)のエッセンとパリーが作り、1955年5月24日に初めて動いた[5]。マイクロ波の専門家だった2人は、電磁場の測定や高真空装置づくりに長い時間を費やしたという[5]。博物館の解説は、この時計を「1秒のずれが出るまで約300年」、当時の水晶時計の約30倍、最良の振り子時計の約300倍の正確さと紹介する[4]。ただしこれは当時の解説の言い方で、現代の不確かさ評価と同じ基準とは限らない。
9 192 631 770は、原子の理論から導いた値ではない。1955〜58年に、月の位置の観測から決まる暦表時の1秒とNPLのセシウム時計を比べて測り、1958年8月に9 192 631 770サイクル/秒(推定の測定誤差±20サイクル/秒)と発表された[6]。測定は、米海軍天文台のマルコウィッツらとエッセン、パリーによる。±20は約92億に対して10億分の2ほど(20÷9 192 631 770≒2.2×10-9)の相対誤差にあたる。
この不確かさは10億分の数のオーダーで、当時秒を決めていた天文観測よりずっと小さかった[7]。1967年の定義変更は、この結果とビーム型セシウム時計の原子時が優れていたことにもとづく[7]。BIPMの会議資料に載ったPTBの説明では、定義の数値は1958年の測定結果の不確かさをゼロとおいて定めたもので、地球の自転のむらや過去の天体位置表の不確かさが残るため、この測定は再びは行われていない[3]。
3. げんしは、はりでは なく「あわせる あいて」
3. 原子は針ではなく、電波を合わせる相手
3. ビーム型 ── マイクロ波を原子の共鳴に合わせ続ける
げんし とけいの なかで、げんしが ふりこの ように ゆれて、はりを すすめる わけでは ありません。かぞえて いるのは、そとから あてる 電波の 波です[7]。
げんしは、「いま 電波が ちょうど よく あって いる よ」と しらせる やくめです。ラジオの つまみを まわして、よく きこえる ところに あわせるのに にて います。ただし ほんとうは、げんしは 音では なく、はんのうした げんしの 数で しらせて くれます[7]。
ちょうど よく あった 電波の 波を、9,192,631,770 こ かぞえたら、1秒です。
数えているのは、原子ではなく電波
原子時計というと、原子が振り子のように揺れて針を進める姿を想像しがちですが、少し違います。数えているのは、外から当てるマイクロ波の波です。原子は、その波の周波数が原子の共鳴にどれだけ合っているかを教える役をします[7]。
初期に使われた「ビーム型」では、セシウム原子の気体が管に入り、共鳴の周波数に近いマイクロ波を短い間浴びて、少し進んだ先でもう一度浴びます。マイクロ波の周波数が原子の共鳴に近いほど、エネルギーの高い状態になる原子が増えます[7]。その増え方が最大になるように発振器を調整し続け、出てきた波を9,192,631,770個数えると1秒になります。
ラジオのつまみを回して、放送がいちばんはっきり聞こえる位置に合わせ続ける作業に、少し似ています。ただしラジオは音を聞いて合わせますが、原子時計は「エネルギーの高い状態になった原子の数」を見て合わせます。
秒の定義は、外から乱されない静止した原子という理想の状態を前提に書かれています[3]。実際の時計は、その理想にどれだけ近づけたかを「不確かさ」として見積もります。セシウム時計の不確かさは約1×10-16(1京分の1)ですが、定義の側ではこれをゼロとして扱います[3]。
セシウム時計の原子は、振り子のように動いて針を進めるわけではない。時計として数えるのは、外から当てるマイクロ波の波で、原子は、その周波数が共鳴に合っているかを教える基準の役をする[7]。
初期のビーム型では、セシウム原子の気体が管に入り、共鳴周波数に近いマイクロ波を短時間浴び、進んだ先でもう一度浴びる。マイクロ波の周波数と原子の共鳴周波数が近いほど、エネルギーの高い状態になる原子が多くなる[7]。この反応の大きさを見て、マイクロ波の周波数を原子の共鳴に合わせ続け、その波を数える。9 192 631 770個数えれば1秒だ。
定義は、静止した原子・外部の電磁場なしという理想条件の固有時間として書かれている[3]。実際の時計のずれは、この理想の値からどれだけ離れているかの見積もり(不確かさ)で表される。セシウム時計の不確かさ(約1×10-16)は、定義そのものの側ではゼロとして扱われる[3]。
4. げんしを 上へ なげる とけい
4. 原子を上に放り上げる「噴水型」
4. 噴水型(原子泉)── 冷却した原子と、「約3億年に1秒」の読み方
1955年の とけいでは、げんしが 電波を あびる 時間が みじかい ままです[7]。そこで、げんしを 上に なげあげる やり方が 生まれました。ふんすいの ように 見える ので、ふんすい がたと いいます[8]。
ボールを ぽーんと 上に なげると、のぼって、おちて きます。それと 同じ ように、レーザーという 光で ひやして ほとんど うごかなく した げんしの くもを、ふわっと 上に おくり出します。ただし ほんとうは、ボールでは なく、げんしの つぶの あつまりです[8]。
げんしは のぼる ときと おちる ときの 2回、電波を あびます。かんそくできる 時間は およそ 1秒です[8]。
アメリカの とけいは、「3億年で 1秒も すすまず、おくれも しない」と いわれます[9]。ただし これは 計算で 出した めやすで、ほんとうに 3億年 うごかした わけでは ありません。
1955年の とけいは、300年で 1秒 ずれる くらいと いわれました[4]。そこから 60年ほどで、めやすの 数は 100万ばいに なりました。ただし、はかり方は 少し ちがいます。
原子を上に投げる
原子を長く観察できれば、そのぶん共鳴を細かく見分けやすくなる、といわれます。ビーム型では原子が管の中を短い時間で通りぬけますが[7]、そこで考えられたのが「噴水型(原子泉)」です。レーザーで絶対零度近くまで冷やしたセシウム原子の雲を、上向きのレーザーで軽く上へ放り上げます[8]。そのあとレーザーを全部切ると、原子は自分で上がって、落ちてきます。上りと下りの2回、マイクロ波の空洞を通り、観測できる時間は約1秒です[8]。
「3億年に1秒」の読み方
米国のNISTが2014年に運用を始めたNIST-F2は、「約3億年で1秒も進まず遅れもしない」とされ、1999年から標準だったNIST-F1の2倍以上の正確さです[9]。この「3億年」は、不確かさ1×10-16(1京分の1)を年に直した目安です。1年は約3,150万秒なので、1京分の1のずれなら1年で約3.2×10-9秒、つまり10億分の3秒ほど。1秒たまるまでに約3億年かかる計算です[9]。時計が実際に3億年動いた記録ではありません。
1955年に「約300年で1秒」と紹介された時計から、60年ほどで「約3億年で1秒」の時計へ。数字だけなら約100万倍です。ただし前者は当時の博物館の解説、後者は現代の不確かさからの換算で、同じ物差しの比べ方ではありません。桁の感覚として受け取るのがよさそうです。
ビーム型では、原子は管の中を短時間で通りぬける[7]。観測時間を伸ばす方式が噴水型(原子泉)で、レーザーで絶対零度近くまで冷やしたセシウム原子の雲を、上向きのレーザーで軽く上に放り上げる[8]。レーザーを全て切ったあと、原子は上がって落ちる間に、マイクロ波の空洞を上りと下りの2回通る。観測できる時間は約1秒だ[8]。世界の計量機関では、この方式などによる秒の定義の実現が、不確かさ1×10-16に近づいている[8]。
米国立標準技術研究所(NIST)のNIST-F2(2014年運用開始)は、「約3億年で1秒も進まず遅れもしない」とされ、1999年から標準だったNIST-F1の2倍以上の正確さをもつ[9]。1×10-16の不確かさを年に直すと、1×10-16×3.15×107秒≒3.2×10-9秒で、その逆数が約3.2億年になる。これは不確かさからの換算による目安で、時計が実際にその期間動いた保証ではない。NISTの噴水型ページには別の年数の記載もあるが、1×10-16の換算としては桁が合わないため使わない。
1955年のNPLの時計は約300年に1秒(博物館の解説)、NIST-F2は約3億年に1秒。数字だけなら約100万倍(3×108÷300)だが、前者は当時の解説の言い方、後者は現代の不確かさからの換算で、同じ基準の比較ではない。桁の感覚として読むべき数字だ。
5. つぎは、光の とけい
5. 次の時計は、電波ではなく光の波を数える
5. 光格子時計 ── 約429テラヘルツと、日本標準時への利用(2022年)
げんし とけいでも、いくつも ならべて へいきんしても、何か月かで、せかいの 時こくと ほんの すこし ずれて きます[10]。
そこで、日本の 人が かんがえた 光の とけいが あります。光格子時計です。2001年に、東京大学の 香取秀俊さんが かんがえました[11]。光で つくった 小さな へやに、げんしを 100万こほど、ひとつぶずつ とじこめます[11]。
この とけいが かぞえるのは、電波では なく 光の 波です。1秒の あいだに かぞえる 数は、429兆ほど。セシウムの およそ 4万7000ばいです[10]。1秒を はかる ものさしの めもりが、それだけ こまかい、と 思って ください。ただし めもりの こまかさと、せいかくさは、べつの ことです。
2022年、日本の 時こくを つくる ところで、この 光の とけいが 世界で はじめて つかわれ ました。せかいの 時こくとの ずれは、4分の 1 いかに なりました[10]。
電波の時計の弱点
セシウムなどのマイクロ波の原子時計は、複数台を平均しても、発振周波数が15桁目で変動します。日本標準時をつくる情報通信研究機構(NICT)によると、数か月で世界の標準時(協定世界時、UTC)とのずれが10ナノ秒(1億分の1秒)以上に広がります[10]。
日本生まれの光の時計
そこで期待されているのが、光格子時計です。東京大学の香取秀俊さんが2001年に提案しました[11]。レーザー光を重ね合わせてできる「光格子」という微小な空間に、ストロンチウム原子を約100万個、1個ずつ閉じ込めます。そのときに使うレーザー光の波長が、「魔法波長」と呼ばれています[11]。数えるのは、マイクロ波ではなく光の波です。
数える周波数は約429兆Hz(429,228,004,229,872.99 Hz)。セシウムの約92億Hzの約4.7万倍で、1秒あたりの目盛りがその分だけ細かくなります[10]。ただしこの約4.7万倍は周波数、つまり目盛りの細かさの比で、精度の比ではありません。精度は18桁で、マイクロ波の原子時計の15桁より約1000倍高く、1秒ずれるのに約300億年かかる水準と紹介されています[11]。これも18桁の不確かさからの換算による目安です。
2022年6月、NICTは世界で初めて、光格子時計を参照して日本標準時の刻み幅を調整しました。UTCとの時刻差は、従来の10億分の20秒から、10億分の5秒以内に抑えられるようになり、4分の1以下です[10]。
マイクロ波(セシウム等)の原子時計は、複数台を平均しても発振周波数が15桁目で変動し、数か月でUTC(協定世界時)との時刻差が10ナノ秒以上に広がる、と日本標準時をつくるNICTは説明する[10]。
次の候補が光格子時計だ。香取秀俊(東京大学)が2001年に提唱した[11]。「魔法波長」のレーザー光を干渉させてできる光格子という微小な空間に、約100万個のストロンチウム原子を1個ずつ閉じ込め、光の周波数を測る。精度は原子時計の15桁に対し18桁で、約1000倍高く、1秒ずれるのに約300億年かかる水準とされる[11]。ただしこの300億年は18桁の不確かさからの換算で、実際に測って確かめた期間ではない。
ストロンチウム光格子時計の周波数は約429 228 004 229 872.99 Hz(相対不確かさ1.9×10-16以内)、約429テラヘルツの光の波だ[10]。セシウムの9 192 631 770 Hzの約4.7万倍(429 228 004 229 873÷9 192 631 770≒46 693)で、1秒あたり数える目盛りがそれだけ細かい。これは周波数の比で、精度の比(約1000倍)とは別のものだ。
2022年6月9日、NICTは世界で初めて光格子時計を参照して日本標準時の刻み幅を調整した。UTCとの時刻差を、従来の10億分の20秒から10億分の5秒以内へ、4分の1以下に抑えられるようにしたという[10]。
6. 1秒の きめ方が かわる かも しれません
6. 秒の決め方は、2030年に向けて見直されようとしている
6. 秒の再定義 ── 2030年を目標にした議論と2つの選択肢
光の とけいは、セシウムの ときより 100ばい いじょう、こまかく はかれる ものも あります[13]。それで、1秒の きめ方を 光の とけいに かえよう、と いう 話が すすんで います。
2026年10月に、フランスで、せかいの 人が あつまって 話しあう 集まりが ひらかれる よていです。そこで、2030年を めざして じゅんびを すすめる ことが 話しあわれる そうです[12]。ただし、この メモを 書いた 9月の ときは、まだ きまって いません。
1秒の ながさは かえない ほうしんです[3]。かぞえる 数が かわる だけで、みなさんの 1秒は、そのままです。
2030年を目標にした議論
2026年10月にフランスで開かれる第28回国際度量衡総会(CGPM)では、2030年を目標に、国際協力で秒の再定義へ向けた研究開発を進めることが議論される予定です[12]。この記事を書いた2026年9月の時点では、まだ決まっていません。新しい定義の候補は光の時計で、光格子時計は有力候補の1つとされています[12]。
光時計は、今ではセシウムの基準より2桁以上(100倍以上)小さい不確かさで基準周波数をつくれます[13]。選択肢は2つあります。(1)セシウムに代わる原子を1つ選び、その遷移周波数を定義の値にする。(2)複数の原子の遷移周波数の重みつき相乗平均を、定義の値にする。2030年の総会での採択を目標にしています[13]。
1秒の長さは、変えない
大事なのは、1秒の長さを変えない方針だということです。PTBの研究者の資料は、新しい遷移を選んで周波数の数値を決め直す一方、秒の長さの連続性は保つとしています[3]。9,192,631,770が別の数に代わっても、今日の1秒がとつぜん長くなったり短くなったりするわけではありません。
2026年10月にフランスで開かれる第28回CGPMで、2030年を目標に、国際協力で秒の再定義へ向けた研究開発を進めることが議論される予定だ[12]。新しい定義の候補は光時計で、光格子時計は有力候補とされる[12]。この記事を書いた2026年9月時点で結論は出ておらず、再定義は決定ずみではない。
NICTの2025年12月の発表によれば、光時計は現在、セシウム基準より2桁以上小さい不確かさで基準周波数を生成できる[13]。再定義の選択肢は2つ。(1)セシウムに代わる原子種を1つ選び、その遷移周波数を定義値にする。(2)複数の原子種の遷移周波数の重みつき相乗平均を定義値にする。2030年のCGPMでの決議を目指すとされる[13]。
再定義でも、1秒の長さは変えない方針だ。PTBの研究者の資料は、新しい遷移を選んでHzでの数値を新たに決め直すが、秒の長さの連続性は保つとする[3]。9 192 631 770が別の数値に置き換わっても、1秒が長くなったり短くなったりするわけではない、という考え方だ。
7. 手を たたいて、1秒を かぞえて みよう
7. 92億回を、手をたたいて考えてみる
7. 出口 ── 92億回の実感と、原典の読みどころ
びょうしんの ある とけいが あれば、1めもり すすむ あいだに、手を 何回 たたけるか かぞえて みましょう。とけいが なければ、「いち、に」と 声に 出して かぞえます。
もし 1秒に 5回 たたけたと しても、92億回に なるまで、休まず つづけて 58年ほど かかります。10回でも 29年ほどです。げんし とけいは、この 数を 1秒ごとに かぞえて います。
2026年10月の 集まりで どう なったかは、日本の 時こくを つくる ところ(NICT)や、産総研(NMIJ)の ホームページで、あとから 見られる はずです。
秒針のある時計があれば、1目盛り進む間に、手を何回たたけるか数えてみましょう。時計がなければ、「いち、に」と声に出して数えます。5回前後か、がんばっても10回くらいか、まず予想してから試すと、数字のおもしろさが増します。
もし1秒に5回たたけたとして、92億回に届くまで、休まず続けて約58年かかります。10回でも約29年です(1年を約3,156万秒として計算)。原子時計は、この数を1秒ごとに数えています。
もっと知りたくなったら、日本標準時をつくるNICTの2022年の発表[10]や、産総研(NMIJ)の第28回CGPMのお知らせ[12]を読んでみてください。2026年10月の総会でどうなったかは、公式のお知らせで、あとから確かめられます。
秒針のある時計で、1秒に手を何回たたけるか数えると、92億回の大きさが実感できる。1秒に5回たたけたとして、9 192 631 770回に届くまで休まず約58年(9 192 631 770÷5÷3.156×107秒≒58.3年)、10回でも約29年かかる。
資料を読むなら、まず定義の文そのもの。BIPMの「SI base units: second」[1]と、NMIJ(産総研)の「時間:秒(s)」[2]で読める。1958年の測定の経緯は、NISTの技術資料[6]が引くMarkowitzらの1958年の論文(Physical Review Letters)にさかのぼれる。
光格子時計の側は、NICTの2022年6月9日の発表[10]、2025年12月の再定義の選択肢の発表[13]、NMIJの第28回CGPMのページ[12]が日本語で読める。2026年10月の会議の結果が出たら、この記事の「2030年を目標に」がどうなったかを、公式のお知らせで確かめられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:国際度量衡局(BIPM)、産総研(NMIJ)、情報通信研究機構(NICT)、米国立標準技術研究所(NIST)などの公的機関の資料と、博物館・学会誌の解説、科学ニュースを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- BIPM「SI base units: second」。https://www.bipm.org/en/si-base-units/second (現在の秒の定義の文言、周波数の数値について)
- 産総研 計量標準総合センター(NMIJ)「時間:秒(s)」。https://unit.aist.go.jp/nmij/library/mise_en_pratique/time/ (1967年の採択と、2018年の言い換えについて)
- E. Peik(PTB)「Defining the SI Second via Option 1」BIPM 時間周波数諮問委員会(CCTF)資料。https://www.bipm.org/documents/20126/273113378/3_CCTF_TE_28042025_Peik/92c3fd48-d393-3516-aa00-9d6267ab6927 (1960年の秒、数値の決まり方、再定義でも秒の長さを保つ方針について)
- Science Museum Group Collection「Caesium Atomic Clock, 1955」。https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co855/caesium-atomic-clock-1955 (1955年の時計の「約300年に1秒」という紹介について。二次資料)
- SPIE Photonics Focus「Louis Essen, Time lord of precision atomic clocks」(2023年)。https://spie.org/news/photonics-focus/marapr-2023/inventing-precision-atomic-clocks (エッセンとパリーの1955年の時計づくりについて。二次資料)
- NIST 技術資料(tf.nist.gov)2585。https://tf.nist.gov/general/pdf/2585.pdf (1958年の測定と、9 192 631 770の発表について。Markowitzらの論文を引用した資料)
- NIST「Beams of Atoms: The First Atomic Clocks」。https://www.nist.gov/atomic-clocks/beams-atoms-first-atomic-clocks (ビーム型のしくみと、1958年の測定の不確かさについて)
- NIST「Cesium Fountain Atomic Clocks」。https://www.nist.gov/pml/time-and-frequency-division/time-realization/cesium-fountain-atomic-clocks (噴水型のしくみについて)
- NIST「NIST launches a new U.S. time standard: NIST-F2 atomic clock」。https://www.nist.gov/video/nist-launches-new-us-time-standard-nist-f2-atomic-clock (NIST-F2の「約3億年」という表現と、NIST-F1との比較について)
- 情報通信研究機構(NICT)プレスリリース「世界初、国家標準時の維持に光格子時計を利用」(2022年6月9日)。https://www.nict.go.jp/press/2022/06/09-1.html (マイクロ波の原子時計の弱点、日本標準時への光格子時計の利用、ストロンチウムの周波数について)
- JST サイエンスポータル「香取秀俊氏に本田賞」(2022年10月14日)。https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20221014_n01/ (光格子時計の提唱と、精度の目安について。二次資料)
- 産総研 計量標準総合センター(NMIJ)「第28回国際度量衡総会(CGPM)開催」。https://unit.aist.go.jp/nmij/info/cgpm2026/ (2026年10月の総会と、秒の再定義の議論について)
- 情報通信研究機構(NICT)プレスリリース「『秒』の再定義における二つの選択肢を…」(2025年12月)。https://www.nict.go.jp/press/2025/12/01-1.html (再定義の2つの選択肢と、光時計の不確かさについて)
なおした ところ
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