1. みどりの いろは、どこへ いくの?
1. 緑の色は、どこへ消えるのか
1. 緑は「消える」のでなく片づけられる ── クロロフィルの分解
なつの はっぱが みどりなのは、なかに 「クロロフィル」と いう みどりいろの 色素(いろの もと)が あるからです。
あきに なると、この みどりが きえて いきます。うえから べつの いろを ぬるのでは なくて、クロロフィルが こわされて、なくなって いくのです。
どうして こわすのでしょう。はっぱは、あきに おかたづけを しています。おみせを しめる ときに、だいじな にもつを はこびだす ようなものです。はっぱの なかの だいじな ざいりょうを、えだや みきへ はこんで、はるに また つかうと いわれて います。にもつを はこぶには、じゃまに なる みどりを さきに かたづけます。
ただし ほんとうは、木が かんがえて かたづけて いるのでは ありません。木の なかの しくみが、じぶんで すすんで いきます。こわされた みどりは、いろの ない ちいさな ものに なります。
みどりが きえた あとの はっぱには、なにが のこるのでしょう。
秋の葉の緑は、上から別の色をぬられて消えるのではありません。緑の正体は、クロロフィル(葉緑素)という色素です。この色素が分解されて、少なくなっていきます。
なぜ分解するのでしょうか。葉の中の材料を、幹や枝へ取りもどして、次の春の新しい葉に使うためです[2][3]。葉の中では、クロロフィルが光合成の装置をつくるタンパク質にくっついています。タンパク質を分解して取りもどすには、先に色素をはずして壊さなければなりません[2]。しかも、はずれたクロロフィルは、光を受けると細胞を傷つけるおそれがあるので、早く無害な形にしたほうがいいです[3][4]。
壊されたクロロフィルは、色のない小さな分子になって、葉の細胞の中にしまわれます[3][4]。取りもどされるのはタンパク質のほうで、色素の分解物は、葉といっしょに落ちるといいます[2]。ハウチワカエデの苗を使った実験では、夏の葉で乾燥重量1gあたり約30mgあった窒素が、落ちた葉では10〜15mgほどに減っていました[5]。
たとえるなら、店じまいの荷造りです。大事な荷物を運び出すために、じゃまなものを先に片づけます。ただし本当は、木が考えて片づけているのではありません。葉の中のしくみが、決まった順に進んでいきます。
緑が消えたあとの葉には、何が残るのでしょう。
秋の葉の緑は、上から別の色をぬられて消えるのではない。緑をつくっている色素、クロロフィル(葉緑素)が、なくなっていく。
木がクロロフィルを片づけるのは、葉にある材料を取りもどしたいからだ。葉には、光合成の装置をつくるタンパク質があり、窒素などの材料になっている。秋、木はそれを分解して幹や枝へ回収し、翌春の新しい葉に再利用すると説明される[2][3]。ところが、クロロフィルはそのタンパク質と結びついている。福岡県の解説は、クロロフィルがついたままだとタンパク質の分解酵素がはたらけず、アミノ酸を回収できないと説明する[2]。しかも、外れたクロロフィルは光を受けると細胞を傷つけるおそれがあり、光合成の効率が落ちる秋の葉では、これを早く無害な形にしておく必要もある[3][4]。
分解では、酵素がクロロフィルの環状の構造を開いて、色のない小さな分子に変える。この道すじは、陸上の植物に広く共通しているという[4]。分解物は葉の細胞の液胞にしまわれ[3]、取りもどされるのはタンパク質のほうで、色素の分解物は落葉とともに捨てられる、と福岡県の解説は書く[2]。
どれくらい取りもどすのか。ハウチワカエデの苗を使った2022年の実験では、夏の緑の葉で乾燥重量1gあたり約30mgだった窒素が、落ちた葉では条件ごとに10〜15mgほどに減っていた[5]。夏の3分の1から半分ほどが、落ちた葉に残った計算になる。
緑が引いたあとの葉には、何が残るのか。
2. きいろは、はじめから いたの?
2. 黄色は、ずっと葉の中にいた
2. 黄色は夏から葉にあった ── カロテノイド
イチョウの はっぱは、あきに きいろく なります。この きいろは、あきに あたらしく できたので は ありません。はじめから、はっぱの なかに ありました。
なつは、みどりが とても こいので、きいろが かくれて いました。あきに みどりが へると、かくれて いた きいろが 見えて きます。
たとえば、きいろい セロハンの うえに、みどりの セロハンを かさねると、みどりに 見えます。みどりを はずすと、きいろが 見えます。ただし ほんとうは、はっぱの なかの いろの もとは、セロハンの ように わかれて かさなって いるのでは なくて、まざって います。
では、あかい いろは、どうでしょう。
緑が消えると、イチョウやエノキの葉は黄色になります[2]。この黄色は、秋に新しく作られたのではありません。カロテノイドという黄色っぽい色素が、春から葉の中にありました。夏は、量の多いクロロフィルの緑に隠れて、見えなかっただけです[2][3]。
秋の色づきは、主に、クロロフィルが減っていくことと、カロテノイドが一部残ることで起きる、と2000年の総説はまとめています[3]。気象庁は、イチョウの黄葉日を「木を全体として見て、葉の大部分が黄色になり、緑がほとんど見えなくなった最初の日」と決めています[6]。黄色がどれだけ増えたかではなく、緑が見えなくなったかどうかで決める日です。
では、赤い色は、どこから来たのでしょう。
緑が消えると、イチョウやエノキの葉は黄色くなる[2]。この黄色は、秋に新しくできたのではない。カロテノイドという黄色系の色素が、春から葉の中にあった。夏は、量の多いクロロフィルの緑に隠れて、見えなかっただけだ[2][3]。
2000年の総説(Matile)は、秋の色づきは、主にクロロフィルが減っていくことと、カロテノイドが一部残ることで起きるとまとめている[3]。気象庁の観測では、イチョウの黄葉日は、木を全体として眺めて葉の大部分が黄色に変わり、緑がほとんど認められなくなった最初の日とされる[6]。黄葉の日は、黄色が増えた量ではなく、緑が消えたことで決まる。
緑が消えれば、黄色になる。では、カエデの赤は、どこから来るのか。
3. あかい いろは、どこから きたの?
3. 赤い色は、秋に新しく作られる
3. 赤は秋に新しく作られる ── アントシアニンと、日なた・日かげ
あかと きいろは、おなじ ことの こい・うすい では ありません。きいろは、はじめから あった ものが のこって 見える いろです。あかく なる 木の あかは、あきに なってから、あたらしく つくられる いろです。
あかい いろの もとは 「アントシアニン」です。なつの はっぱには、ほとんど ありません。ざいりょうは、はっぱが ひかりで つくった 糖(さとうの なかま)です。それに、おひさまの ひかりも いります。だから おなじ 木でも、ひなたの はっぱが さきに いろづき、ひかげの はっぱは おそい ことが あるのです。
あかに なるか きいろに なるかは、木の しゅるいにも よります。もみじの なかまでも、イタヤカエデは きいろく なります。コナラの ように、ちゃいろに なる 木も あります。
でも、もうすぐ おちる はっぱが、どうして わざわざ あかい いろを つくるのでしょう。
赤と黄色は、同じ変化の濃いうすいではありません。黄色は、もとからあったものが残って見える色です。赤くなる木の赤は、秋になって新しく作られる色です。
赤い色素の名前はアントシアニンです。赤くなる木では、夏の葉にはほとんどなく、秋に作られます[3][2]。材料は、光合成でできた糖です[7][8]。それに、日光も必要になります[2]。ハウチワカエデでは、日なたの外側の葉が先に色づき、内側の葉は緑のまま長く残って、最後に赤い色素の少ない、黄みがかった赤になりました[5]。同じ木の中でも、日の当たり方で色の進み方がちがうのです。
赤になるか黄色になるかは、木の種類でも決まります。気象庁がカエデの観測に使うイロハモミジは赤くなりますが、北海道での代わりの種類のひとつ、イタヤカエデは黄色くなります[6]。日本植物生理学会の回答は、黄色くなる木では、赤い色素を作る遺伝子のどれかが欠けているか、働きが抑えられていると考えられる、と説明します[9]。コナラのように、茶色になる木もあります[2]。
でも、もうすぐ落ちる葉が、どうしてわざわざ赤い色素を作るのでしょう。
赤と黄色は、同じ変化の濃い・うすいではない。黄色は、もとからあった色素が残って見える色。赤くなる木の赤は、秋になって新しく作られる色だ。
赤い色素はアントシアニン。赤くなる木では、夏の葉にはほとんどなく、秋に作られる[3][2]。材料は、光合成で作られた糖だ[8]。ハウチワカエデの葉を調べた2024年の研究(Kitaoら)では、葉のデンプンが糖に分解されて糖が増え、デンプンがなくなったあとも、赤い色素は増え続けた[7]。
光も要る。福岡県の解説は、アントシアニンの合成には日光に当たることが必要だとする[2]。ハウチワカエデの観察では、色づきは日なたの外側の葉で主に起こり、内側の葉は少し長く緑のまま残って、最後に、赤い色素の少ない黄みがかった赤になった[5]。
赤になるか黄色になるかは、木の種類にもよる。気象庁がカエデの観測で使うのは、紅色に変わるいろはかえで(イロハモミジ)だが、北海道での代わりの種類のひとつ、イタヤカエデは黄葉する[6]。日本植物生理学会の回答は、黄葉する木では、アントシアニンを作る遺伝子のどれかが欠けているか、働きが抑えられていると考えられる、と説明する[9]。コナラやメタセコイアのように、茶色の褐葉になる木もある[2]。茶色は、フロバフェンという色素が増えることや、細胞が死んだあとにフェノール類が酸化してできる暗い色によるとされる[2][3]。
では、まもなく落とす葉に、なぜ木はわざわざ赤い色素を作るのか。
4. どうして あかく なるのかな?
4. 落ちる葉が、わざわざ赤くなるのはなぜ?
4. なぜ、落ちる葉が赤い色素を作るのか ── まだ決着していない仮説
じつは、まだ はっきり わかって いません。
ひとつめの かんがえです。ひかりが つよすぎると、はっぱが いたみます。あかい いろが ひかりを よけて、はっぱを まもって いるのでは、と いう かんがえです。
ふたつめの かんがえです。あきに 木に やって くる アブラムシと いう むしに、「この 木は まもりが かたいぞ」と しらせて、よせつけない ため、と いう かんがえです。
どれが ただしいのか、けんきゅうしゃの あいだでも、まだ はなしあいが つづいて います。
木は、これから落とす葉に、どうしてわざわざ赤い色素を作るのでしょう。実は、まだ答えが決まっていません。2009年の総説は、秋の色づきは老化のおまけではなく、いくつもの仮説がありますが、その意味は謎のままだ、と書いています[10]。
ひとつめは「日よけ」説です。赤い色素が強い光をさえぎって、葉が傷つくのを防ぐという考えです[2]。ただ、日本植物生理学会の回答は、生きた植物でその働きが確かめられた証拠は十分でない、としています[9]。ハウチワカエデの研究は、糖がたまりすぎて老化が早まるのを防ぐ役目があるかもしれない、と提案しました[7]。
ふたつめは「虫への合図」説です。進化生物学者のハミルトンとブラウンが2001年に発表しました。派手な色は、虫への守りに力を入れている木にしか出せない合図で、アブラムシは色の派手な木をさける、という考えです。二人は、アブラムシの種類が多い木ほど秋の色が強いことを示しました[11]。
どれが正しいのかは、まだ決着していません[10]。
木は、これから落とす葉に、なぜわざわざ赤い色素を作るのか。答えは決まっていない。2009年の総説(Archettiら)は、秋の色づきは老化の副産物にとどまらないとして、いくつもの仮説が出ているが、その適応的な意味は謎のままだと書く[10]。
ひとつは「光の日よけ」説だ。福岡県の解説は、アントシアニンが光をさえぎってクロロフィルが吸う光を減らし、活性酸素の発生をおさえるためと説明する[2]。ただ、日本植物生理学会の回答者は、生きた植物で保護の働きをしていると言える証拠は十分でないとしている[9]。ハウチワカエデの研究は、別の役目を提案した。糖がたまりすぎて老化が早く進むのを防ぐ「糖の緩衝」と、光のエネルギーを使う別の逃がし道になる役目だ[7]。
もうひとつは、進化生物学者のハミルトンとブラウンが2001年に出した「虫への信号」説だ[11]。派手な秋の色は、虫への防御に力を注いでいる木だけが出せる、ごまかしにくい合図で、秋に木へ移ってくるアブラムシは、色の派手な木を避ける、という考えだ。二人は、アブラムシの種類が多い木ほど秋の色が強い、という関係を示した[11]。
どれが正しいのか、複数が当たっているのかは、まだ決着していない[10]。
5. やまの うえの ほうが、はやく いろづくの?
5. 山の上から、色づくのはなぜ?
5. 山の上から色づくのはなぜか ── 気温と標高
やまの うえは、ふもとより さむいです。たかさが 500メートル ちがうと、きおんは 2〜3どくらい ちがいます。
もみじは、さむく なるほど、はやく いろが かわります。だから、やまの うえの ほうから、ふもとへ むかって、いろが おりて きます。
よく いわれる めやすは、その日の いちばん ひくい きおんが 8どより ひくく なる ことです。5〜6どに なると、いろが どんどん すすむと いいます。ただし、これは めやすで、木の しゅるいや ばしょで ぴったり おなじ とは かぎりません。
山の上から色づくのは、気温が低いところほど色づくのが早いからです。気象庁は、紅葉は気温が低いと早まり、高いと遅くなると説明しています[12]。日本では、標高が100m高くなるごとに気温は0.5〜0.6℃ほど下がるとされます[13]。500m高い場所なら、およそ2.5〜3℃低い計算になります。
色づきの目安としてよく言われるのが、1日の最低気温です。福岡県の解説は、8℃以下になると紅葉が始まり、5〜6℃以下になるとさらに進む、としています[2]。木や場所によって、ぴったり同じとは限らない目安です。
日本の740か所以上で市民が記録した色づきのデータを使った研究では、色づきのピークが始まる日が、北へ行っても山に登っても、暖かさの指数(月平均気温から作る)と直線的な関係にありました[14]。気温への反応のしかたは、緯度でも標高でも、同じくらいでした。ただし、標高の影響は、色づきの季節が進むほど弱まったとも報告されています。
山の上から色づくのは、気温のせいだ。気象庁の2005年の発表は、紅葉は気温が低いと早まり、高いと遅くなるとしている[12]。標高が上がると気温は下がり、日本では100mにつき0.5〜0.6℃ほどとされる[13]。標高が500m高い場所は、およそ2.5〜3℃低い計算になる。
色づきの目安としてよく挙げられるのが、日最低気温だ。福岡県の解説は、1日の最低気温が8℃以下になると紅葉が始まり、5〜6℃以下でさらに進むとする[2]。これは目安で、木の種類や場所で同じとは限らない。
この関係は、日本全体の市民調査でも見えた。標高0〜2800m、北緯32〜44度の740か所以上の観察を使った2020年の研究(Nagaiら)では、色づきのピークが始まる日と、月平均気温から作る暖かさの指数とのあいだに、緯度方向でも標高方向でも、直線的な関係があった。気温への反応の大きさは、緯度と標高で一定だったと示唆される。ただし、標高の影響は、色づきの季節が進むほど弱まったとも報告されている[14]。
6. ことしは きれいな 年かな?
6. 紅葉がきれいな年と、そうでない年
6. きれいな年と、そうでない年 ── 気温・日照・木の状態、そして遅くなる紅葉
いろの ようすは、年に よって ちがいます。あきが あたたかいと、いろが かわるのが おそく なります。
きしょうちょうが 1953ねんから しらべて いる ところ、かえでの はっぱが あかや きいろに なる 日は、10年で 3日ぐらい おそく なって きました。ながい あいだの きおんの あがりかたが かんけい して いると かんがえられて います。
きれいに いろづく ためには、ひるは ひが よく あたり、よるは ひえこむ ことが いい と いわれます。おなじ 年、おなじ ばしょでも、木に よって あかさが ちがう ことも あります。
色づく時期は、年によって前後します。気象庁は1965年から、関東地方の「紅葉の見ごろ予想」を毎年9月に出していました[15]。2005年の予想は、9月の気温が平年より高く、10月・11月も高いと予報されていたので、見ごろは例年より遅くなるというものでした[12]。予想のもとになるのは気温です。
長い目で見ても、遅くなっています。1953年からの観測で、かえでの紅葉・黄葉日は、10年あたり3.1日ほど遅くなりました。長期的な気温上昇が影響していると考えられています[16]。世界の北半球の森林を調べた2023年の研究では、夏至より前の温暖化は葉の老化の始まりを早め、夏至より後の温暖化は老化の期間を長くしました[17]。夏の暑さと秋の暑さは、逆向きに働くことがあります。
鮮やかさは、昼と夜の気温差が大きいことと、日光がよく当たることが条件にあげられます[2]。同じ年、同じ場所でも、木によって赤の出方はちがいます。サトウカエデを調べた研究では、葉の窒素が少なめの木のほうが、早く、広く赤くなりました[18]。気温、日照、木の状態が組み合わさって、その年の色になるようです。
色づく時期は、年によって前後する。気象庁は1965年から、関東地方の「紅葉の見ごろ予想」を毎年9月に出していた[15]。2005年の予想は、9月の気温が平年より高く、3か月予報も10月・11月を高いとみていたことから、見ごろは例年より遅くなる、というものだった[12]。予想の材料は気温だ。気象庁は2008年に、民間が全国で同様の予想を出すようになったとしてこの発表をやめ、予測式は日本観光協会が使うことになった[15]。
もっと長い目で見ても、遅くなっている。気象庁の「日本の気候変動2025」によると、1953年以降のデータで、かえでの紅葉・黄葉日は10年あたり3.1日程度遅くなり(サクラの開花は1.2日程度早くなっている)、長期的な気温上昇が影響していると考えられる[16]。北半球の森林を調べた2023年の研究(Zohnerら)は、夏至より前の温暖化は老化の始まりを早め(1℃あたり平均1.9日)、夏至より後の温暖化は老化の期間を延ばす(1℃あたり2.6日)と報告した[17]。夏の暑さと秋の暑さは、逆向きに働くことがある。
鮮やかさのほうはどうか。福岡県の解説は、昼夜の気温差が大きいことと、日光がよく当たることを、鮮やかに色づく条件に挙げる[2]。木ごとの差もある。サトウカエデ16本を調べた2003年の論文では、葉の窒素が少なめの木のほうが、早く、広く赤くなり、赤の広さは糖の濃度とも関係していた[18]。同じ年の同じ場所でも、木によって赤の出方はちがう。気温、日照、木の状態が組み合わさって、その年の色になるようだ。
7. じぶんでも しらべて みよう
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら ── 日なたと日かげ、紅葉日のデータ、『万葉集』
ちかくの こうえんで、木を 1ぽん きめましょう。ひなたに ある はっぱと、ひかげに ある はっぱの いろを、1しゅうかんに 1かい くらべて みましょう。ちがいが あるでしょうか。ひづけと てんきも、メモして おきます。
しらべる ときは、おとなと いっしょに、あかるい じかんに、こうえんや がっこう、おうちの ちかくで しましょう。くるまの とおる みちや、かわの ちかく、がけの ちかく、やまみちには いきません。木には のぼりません。えだは おりません。はっぱは、おちて いる ものだけ 見ます。しらない 木の はっぱは、さわらずに 見るだけにしましょう。
近所の公園や学校で木を1本決めて、日なたの側と日かげの側の葉の色を、1週間おきに見くらべてみましょう。日付、天気、最低気温もいっしょに書いておきます。最低気温は、気象庁の「過去の気象データ検索」[20]で調べられます。8℃や5〜6℃の目安[2]と、色が変わりはじめた日を比べてみます。
気象庁の「生物季節観測の情報」[19]には、かえで・いちょうの紅葉日・黄葉日が、観測地点ごとにのっています。近い場所を選んで、何年ぶんか並べてみましょう。
『万葉集』の「もみち」の歌も、注釈のついた本で読めます。「紅葉」の字を当てたとされる1首は、巻10の2201番の歌です。ただしその歌も、本によっては「黄葉」の字が当てられています[1]。歌をつくった人は、何色の葉を見ていたのでしょう。
観察は、明るい時間に、大人といっしょに、公園や学校、家の近くなど安全に行ける場所でしましょう。車道側、川の近く、がけの近く、山道には行きません。木にのぼりません。枝は折りません。葉は落ちているものだけ見ます。知らない木の葉は、さわらずに見るだけにしましょう。
1本の木を決めて、日なたの側と日かげの側の葉を、1週間おきに見くらべてみよう。ハウチワカエデでは、外側の日なたの葉から先に色づいた[5]。ほかの木でも同じかどうかは、自分の目で確かめられる。日付、天気、最低気温も書いておく。最低気温は、気象庁の「過去の気象データ検索」[20]で調べられるので、8℃や5〜6℃の目安[2]と、色が変わりはじめた日を比べられる。
気象庁の「生物季節観測の情報」[19]では、かえで・いちょうの紅葉日・黄葉日を、観測地点ごとに見られる。近い地点を選び、何年ぶんか並べると、10年で3日ほど遅くなるという全国の傾向[16]が、その地点でも見えるかどうか試せる。年ごとのばらつきもあるので、できるだけ長く並べるとよい。
最初の問いに戻るなら、『万葉集』の「もみち」の歌を、注釈のついた本で何首か読み、歌の中に色や木の名前の手がかりがないか探す方法がある。「紅葉」の字を当てた1首は巻10の2201番の歌と紹介されているが、その歌も、本によっては「黄葉」の字が当てられているという[1]。歌をつくった人は、何色の葉を見ていたのだろう。
観察は、明るい時間に、公園や学校、家の近くなど安全に行ける場所で。子どもは大人といっしょに。車道側、川の近く、がけの近く、山道には行かない。木にのぼらない。枝は折らない。葉は落ちているものだけ見る。知らない木の葉は、さわらずに見るだけにする。
しらべた もとの じょうほう
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参考にした情報源と、その使い方
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- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「万葉集についての本に、『もみじ』の漢字について、万葉集では多くが『黄葉』を宛て、『紅葉』を宛てている歌は1首しかないと書かれている。その1首を知りたい」。 https://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000089034 (『万葉集』で「もみち」に「紅葉」の字を当てたのは注釈書では巻10・2201番の1首とされること、その歌も本によっては「黄葉」の字が当てられること)
- 福岡県 環境部 自然環境課「紅葉はなぜ起きる? ~葉の色が変わる仕組み~」(生きもの雑学)。 https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/futsushu/zatsugakustory/autumn_leaves.html (クロロフィル・カロテノイド・アントシアニン・フロバフェンの役割、黄葉・紅葉・褐葉の木の例、最低気温8℃・5〜6℃の目安、鮮やかになる条件、分解の理由についての解説)
- Matile P., “Biochemistry of Indian summer: physiology of autumnal leaf coloration”, Experimental Gerontology 35, 2000(英語の総説)。 https://doi.org/10.1016/s0531-5565(00)00081-4 (秋の色づきは、クロロフィルの減少とカロテノイドの一部残存で起きること、赤いアントシアニンの新しい合成、茶色のフェノール類の酸化物、クロロフィルの分解物が無色で液胞にしまわれること)
- Hörtensteiner S., Kräutler B., “Chlorophyll breakdown in higher plants”, Biochimica et Biophysica Acta 1807, 2011(英語の総説)。 https://doi.org/10.1016/j.bbabio.2010.12.007 (クロロフィルの分解産物が無色の直鎖の分子であること、この分解の道すじが陸上の植物でよく保存されていること、光に対して有害な色素を無害化するという説明)
- Kitao M. ら, “Exposure to strong irradiance exacerbates photoinhibition and suppresses N resorption during leaf senescence in shade-grown seedlings of fullmoon maple (Acer japonicum)”, Frontiers in Plant Science, 2022(英語の論文)。 https://doi.org/10.3389/fpls.2022.1006413 (ハウチワカエデで、色づきが日なたの外側の葉に主に起こり、内側の葉は緑のまま長く残ること、苗の葉の窒素が夏の約30mg/gから落葉時に10〜15mg/gほどになったこと)
- 気象庁「生物季節観測指針」(令和3年12月)。 https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/shishin.pdf (イチョウの黄葉日とカエデの紅葉日の決め方、観測にいろはかえでを使うこと、北海道での代わりの種類とイタヤカエデが黄葉すること)
- Kitao M. ら, “Anthocyanins act as a sugar-buffer and an alternative electron sink in response to starch depletion during leaf senescence: a case study on a typical anthocyanic tree species, Acer japonicum”, Journal of Experimental Botany 75(11), 2024(英語の論文)。 https://doi.org/10.1093/jxb/erae109 (デンプンがなくなったあとも赤い色素が増え続けたこと、赤い色素が糖の緩衝と電子の逃がし道の役目をもつという提案)
- 森林総合研究所「紅葉もたらす色素、デンプンに代わって糖上昇抑え早期落葉回避」(研究成果の紹介、2024年)。 https://www.ffpri.go.jp/research/saizensen/2024/20240729.html (光合成で作られた糖を、赤い色素の合成に使うこと)
- 日本植物生理学会「植物 Q&A 紅葉現象」(みんなのひろば。今関英雅サイエンスアドバイザーの回答、2009年)。 https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=0425 (黄葉する木ではアントシアニンを作る遺伝子が欠けているか働きが抑えられていると考えられること、赤い色素の保護の働きを生きた植物で示す証拠は十分でないこと)
- Archetti M. ら, “Unravelling the evolution of autumn colours: an interdisciplinary approach”, Trends in Ecology & Evolution 24, 2009(英語の総説)。 https://doi.org/10.1016/j.tree.2008.10.006 (秋の色づきは老化の副産物だけではなく、いくつもの仮説があるが、適応的な意味は謎のままであること)
- Hamilton W. D., Brown S. P., “Autumn tree colours as a handicap signal”, Proceedings of the Royal Society B 268, 2001(英語の論文)。 https://doi.org/10.1098/rspb.2001.1672 (秋の色を虫への防御の信号とみる仮説と、アブラムシの種類が多い木ほど秋の色が強いという関係)
- 気象庁 報道発表資料「関東地方の『紅葉の見ごろ予想』」(平成17年9月29日)。 https://www.jma.go.jp/jma/press/0509/29b/koyo2005.pdf (紅葉は気温が低いと早まり高いと遅くなること、その年の予想が9月の気温と3か月予報にもとづいたこと)
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「山の高さと気温の変化について知りたい。」。 https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000232978&page=ref_view (標高が100m上がるごとに気温が下がる割合が、日本では約0.5〜0.6℃とされること)
- Nagai S., Saitoh T. M., Miura T., “Peak autumn leaf colouring along latitudinal and elevational gradients in Japan evaluated with online phenological data”, International Journal of Biometeorology 64, 2020(英語の論文)。 https://doi.org/10.1007/s00484-020-01953-6 (740か所以上の市民調査データで、色づきの始まりと暖かさの指数が、緯度・標高の両方で直線的な関係を示したこと)
- 気象庁 報道発表資料「関東地方の紅葉の見ごろ予想の発表終了について」(平成20年7月31日)。 https://www.jma.go.jp/jma/press/0807/31a/kouyo080731.pdf (気象庁が昭和40年から毎年9月に関東地方の見ごろ予想を出してきたこと、2008年の秋から出さなくなったこと、予測式を日本観光協会が使うこと)
- 気象庁・文部科学省「日本の気候変動2025」コラム3「さくらの開花とかえでの紅葉・黄葉日の変動」。 https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/2025/html_honpen/cc2025_honpen_4.html (1953年以降の観測で、かえでの紅葉・黄葉日が10年あたり3.1日程度遅くなり、さくらの開花日が1.2日程度早くなっていること)
- Zohner C. M. ら, “Effect of climate warming on the timing of autumn leaf senescence reverses after the summer solstice”, Science 381, 2023(英語の論文)。 https://doi.org/10.1126/science.adf5098 (夏至より前の温暖化は老化の始まりを早め、夏至より後の温暖化は老化の期間を延ばすこと)
- Schaberg P. G. ら, “Factors influencing red expression in autumn foliage of sugar maple trees”, Tree Physiology 23, 2003(英語の論文)。 https://doi.org/10.1093/treephys/23.5.325 (サトウカエデ16本で、葉の窒素が少なめの木のほうが早く、より広く赤くなったこと、赤の広さと糖の濃度の関係)
- 気象庁「生物季節観測の情報」。 https://www.data.jma.go.jp/sakura/data/ (かえで紅葉・いちょう黄葉の観測地点ごとの日付が見られること)
- 気象庁「過去の気象データ検索」。 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php (地点と年月を選んで、日ごとの最低気温などを調べられること)
なおした ところ
更新履歴
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