1. じぶんで 出した 音を、じぶんで きく
1. 自分の音が返ってくるまでの時間を聞く
1. 反響定位の基本 ── 音の往復時間から距離を推定する
コウモリは、口から 人の 耳には きこえない 高い 音を 出します。この 音を「ちょうおんぱ」と いいます[1]。
音は、ものに ぶつかると はねかえって きます。コウモリは、その 音を 耳で きき、まわりの ようすを しって とびます[1]。
山で「やっほー」と さけぶと、すこし あとで こえが かえって きますね。とおい 山ほど、かえるのが おそく なります。コウモリは、出した 音が もどる までの 時間から、えものまでの きょりを つかんで いると いわれます[2]。ただし 本当は、こえでは なく、ちいさくて 高い 音です。
2. えものに ちかづくと、音を たくさん 出す
2. 獲物が近づくと、音は「連射」になる
2. 探索期・接近期・終末バズ ── 音の間隔と長さが段階的に縮む
コウモリは、とんで いる ときの 音の 出しかたを かえます。えものが ちかく なる ほど、音を 出す 回数が ふえます[2]。
つかまえる 直前には、もっと はやく なります。1びょうに 100回を こえる ことも あると いう ほうこくが あります[3]。
手を 1びょうに 何回 たたけますか。コウモリは、それよりも ずっと はやく 音を 出せる ことが あります。音が みじかく なるので、返ってきた 音と、出した 音が まざりにくく なると いわれます[2]。
探して、近づいて、つかまえる
獲物を追うコウモリの声は、探索・接近・終末バズという段階を経て変わっていきます。ある研究では、接近の段階で音は1秒に20〜80回、1回の長さは2〜5ミリ秒になり、音の高さも、あるFM型の例では約65kHzから25kHzへ急に下がる音に変わると説明されています(全種に共通する値ではありません)[2]。
バズ
捕まえる直前の「終末バズ」では、音はさらに短くなって0.5〜1ミリ秒、最大で1秒に約170回にもなります[2]。水を飲みながら飛ぶコウモリの観察でも、バズの間隔は約8〜20ミリ秒で、1秒に100〜200回に達したと報告されています[3]。
これらの数値は種や場面で変わるため、決まった値ではありません。
3. 1びょうに 160回、それを できる きんにく
3. 連射の速さを決めているのは筋肉
3. 超高速筋肉 ── 最大の発声速度は筋肉の性能で決まる
1びょうに 160回を こえる 音は、とても はやい うごきです。それを 出せるのは、とくべつに はやい きんにくの おかげだ、と 2011ねんの ろんぶんに あります[4]。
この きんにくの せいのうが、音を 出せる はやさの じょうげんを きめると せつめいされて います[4]。
考えて みると、音を 出す さいごの ばめんで、からだの ほうが ついて こられるか どうかが かぎ なのです。
160回をこえる連射
2011年に科学雑誌『サイエンス』に出た研究は、捕まえる直前のバズで、コウモリの発声が毎秒160回をこえると説明しています。この速さを可能にしているのは「超高速筋肉」と呼ばれる特別な筋肉で、その性能が最大の発声速度を決めているそうです[4]。
できることを決めるのは、体の作り
頭で「もっと速く」と考えても、筋肉が追いつかなければ音は出せません。
終末バズで、コウモリは発声を毎秒160回をこえる速さまで上げる。この速さは超高速筋肉(superfast muscles)が可能にしており、筋肉の性能が最大発声速度の上限を決める、というのが2011年の『Science』論文の主張である[4]。
4. 高い 音と ひくい 音、つかいわけ
4. 体の大きさや飛び方で、音の使い分けが変わる
4. 周波数の範囲・体サイズとの関係・CF-FM型とドップラー補償
コウモリが 出す 音の 高さは、しゅるいに よって ちがいます。いちばん ひくい ものと いちばん たかい ものでは、15ばいほど ちがいます[5]。
大きな からだの コウモリほど、ひくい 音を つかう ことが 多いと いわれます[6]。ぜんぶの コウモリが そうでは ありません。
キクガシラコウモリという なかまは、まず 長い 一つの 高さの 音を 出し、さいごに ちょっと 高さが かわる 音を つけます[7]。
音の高さは種によってちがう
コウモリの超音波の周波数は、種によって約10kHzから約150kHzまで広がっています[5]。5つの科を調べた研究では、体重が重い種ほど低い周波数を使う傾向がありました。ただし、傾向であって全種の規則ではありません[6]。
高い周波数を使う低デューティ比(発声している時間の割合が小さい)の種では、短い音を使う必要があります。長いと、返ってきた反響が自分の声に重なってしまうからです。なお、次に出てくるキクガシラコウモリのなかまは、高い周波数でも長い音を使います[6]。
一定の音と、下がる音を組み合わせる型
キクガシラコウモリのなかまは、数十ミリ秒の一定の高さの音(CF)の前後に、短く下がる音(FM)をつけた「CF-FM型」の音を出します。耳の奥の聴覚系には、その一定の音の高さ付近に特に鋭く反応する部分があり、獲物の羽ばたきに合わせた変化を検出できるとされています[7]。
また、このなかまは飛ぶ速さに合わせて自分の音の高さを下げ、返ってくる音の高さをほぼ一定に保つ「ドップラー補償」をする、と説明されています[6]。
超音波の周波数は、種によって約10kHzから約150kHzに及ぶ[5]。5つのコウモリ科では、周波数が体重と負の関係にあり、高周波を使う低デューティ比の種では、反響と自らの発声の重なりを避けるため短い音を用いる必要がある(ドップラー補償型のキクガシラコウモリ類は長い高周波音を使う)。ただし傾向であって全種の規則ではない[6]。
CF-FM型(キクガシラコウモリなど)は、数十msの一定周波数(CF)音の端に短いFM部をもち、聴覚系にはCF付近に同調した領域(聴覚斑)があって、相対速度や虫の羽ばたきに同期した変化を検出できる[7]。このなかまは、飛行速度に応じて発声の周波数を下げ、反響の周波数をほぼ一定に保つ(ドップラー補償)とされる[6]。
5. 耳を うごかす、なかまと 音を ずらす
5. 耳の動きと、仲間との混信のさけ方
5. 耳介の運動と混信回避 ── シミュレーションと観察
キクガシラコウモリの なかまは、こだまを きく とき、耳を はやく うごかします。どんな うごかし かたが 音の むきを しるのに よいか、日本の 大学が コンピューターで しらべました。216の うごかし方の うち、よかったのは 14 だけでした[8]。じっさいの コウモリで たしかめた 話では ありません。
たくさんの コウモリが あつまる ところでは、おたがいの 音が まざって しまいます。そこで、おたがいに 音の 高さを ずらして、まざりを さけると いう ほうこくが あります[1]。
6. 目も つかって いる
6. コウモリは「目が見えない」わけではない
6. 視覚と反響定位の併用 ── 得意なものが異なる
コウモリは 目が 見えないと おもわれる ことが ありますが、そう では ありません。目も つかって います[9]。
ふたつの しゅるいの コウモリを しらべた 研究では、木の ような 大きな ものは 目で、ちいさな ものは 音で みつけるのが とくいでした。ふたつを くみあわせて います[9]。
あかるい ところでは、音を 出す 回数を へらす コウモリも いました、と ほうどうされて います[10]。
7. きかれて にげる ガ、おとで 言いかえす ガ
7. 聞かれる側のガも、音で対抗する
7. ガの対抗策 ── 回避行動と超音波の反撃
コウモリに たべられる ガの ほうも、なにも しないわけでは ありません。ガには、ちょうおんぱを きいて にげたり、じぶんで 音を 出して はんげきしたり する しゅるいが います[11]。
耳の ない ガの なかまも、はねを うごかして、ちいさな カチカチと いう 音を 出す ことが わかって います[11]。
なん千しゅるいもの ガが こうした 音を 出す かのうせいが ある、という ほうこくも あります。まだ すいそくの だんかいです[12]。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
手を できるだけ はやく たたいて、1びょうに 何回 たたけるか、ともだちや 家の 人に 数えて もらいましょう。コウモリの 音の はやさと くらべると、どうでしょう。
本や ホームページで しらべるなら、「JTせいめいしけんきゅうかん」の ページが 日本語で 読めます。
今日できること:手を1回ずつゆっくりたたいたあと、できるだけ速くたたいて、1秒に何回たたけるかを、家の人に数えてもらってみましょう。コウモリの最大約170回/秒と比べると、体の作りの差が実感できます。
公式情報:JST(科学技術振興機構)の発表や、JT生命誌研究館のコウモリの研究の紹介、広島大学の研究成果のページは、日本語で読めます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:科学技術振興機構・広島大学・JT生命誌研究館の発表、学術論文、報道を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。報道は、原論文までは確かめていない。
- 科学技術振興機構(JST)共同発表(2018)「コウモリが互いの超音波の周波数を変えて混信を回避」。https://www.jst.go.jp/pr/announce/20180503/index.html (反響定位の基本、FM型の音、混信回避について)
- Frontiers in Behavioral Neuroscience (2010)「Probing the Natural Scene by Echolocation in Bats」。https://www.frontiersin.org/journals/behavioral-neuroscience/articles/10.3389/fnbeh.2010.00033/full (時間差と距離、接近期と終末バズの数値について)
- PLOS ONE (2020)「Echolocation while drinking」。https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0226114 (飲水場面でのバズの間隔について)
- Science (2011)「Superfast Muscles Set Maximum Call Rate in Echolocating Bats」。https://www.science.org/doi/10.1126/science.1207309 (160回をこえる発声と超高速筋肉について。要旨の範囲で確認)
- Physics Today「Echolocation in dolphins and bats」。https://physicstoday.aip.org/features/echolocation-in-dolphins-and-bats (超音波の周波数の範囲について)
- Journal of Experimental Biology (1999)「Scaling of echolocation call parameters in bats」。https://journals.biologists.com/jeb/article/202/23/3359/8321/Scaling-of-echolocation-call-parameters-in-bats (体重と周波数、反響との重なり、ドップラー補償の言及について)
- JT生命誌研究館「エコロケーション能の発達に見るコウモリの環境との対話」。https://www.brh.co.jp/publication/journal/035/resarch_21 (CF-FM型と聴覚斑について)
- 広島大学 研究成果(2022年10月31日)。https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/73853 (耳の動きのシミュレーションについて)
- Commentary: Echolocation and vision complement each other in two bat species。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4547011/ (視覚と反響定位の得意分野のちがいについて)
- Phys.org (2025)「Bats use both sight and sound to hunt」。https://phys.org/news/2025-09-sight-efficiently-miniature-sensors.html (明るい場所で発声が減った報道について。原論文は未確認)
- Scientific Reports (2019)「Deaf moths employ acoustic Müllerian mimicry」。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6363749/ (ガの超音波による防御について)
- Phys.org (2022)「Moths use ultrasound to defend against bats」。https://phys.org/news/2022-07-moths-ultrasound-defend.html (音を出すガが広がっている報道について。原論文は未確認)
- AAAS「Discovering sonar in bats」。https://www.aaas.org/membership/scientia/discovering-sonar-bats (歴史の簡単な紹介について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
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