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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

方位磁針ほういじしんは どうして いつも 北を むくの?

方位磁針は、北の「どこ」を向いているのか ── 球の磁石と地球の中の流れ

方位磁針と地磁気:ギルバートの球(1600)、外核のダイナモ、偏角と北磁極の移動

分野:自然

方位磁針ほういじしんの 針はりは、とおい 北極ほっきょくを みて いるのでしょうか。じつは、ちがう ようです。

いま 立って いる ところの まわりの 力に、針はりが ならぶ だけ、と かんがえられて います。この 力は どこから くるのか、むかしの 人は どう たしかめたのか、見て いきます。

方位磁針の針は、はるか北の北極を、じっと見つめているように思えます。ところが、針がそろうのは、遠くの一点ではなく、いま立っている場所の磁場の向きだと説明されています[1]。

では、その磁場はどこから来るのか。1600年に、球の形の磁石で地球を再現しようとした人がいました。地球の中の流れ、日本で約6〜10度もずれる北、動き続ける北磁極まで、順に見ていきます。

方位磁針は、磁北極という1点を直接指しているのではなく、その場所の磁場の水平成分の向き(磁北)にそろう[1]。この磁場を「地球が大きな磁石だから」と最初に整理した1人が、1600年のギルバートである[2]。

本稿では、磁場の発生源(外核の流れ)、真北とのずれ(偏角)、動き続ける北磁極の順に整理する。数値のうち出典の性格が弱いものは、その旨を添える。

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1. 針はりは、どこを みて いるの?

1. 針がそろうのは「一点」ではなく「その場所の向き」

1. 磁北:磁場の水平成分にそろう

おもちゃの 方位磁針ほういじしんを もって、まどの そとを 見て みます。針はりの 先は 北を むいて います。

「北極ほっきょくに あるものに ひかれて いる」と 思いがちです。でも、針はりは ほんとうは、いま いる ところの 力の むきに ならんで いる だけと いわれて います[1]。

たとえば、川に うかべた 木の は は、川の ながれの むきに ながされます。とおくの うみを 見て いるのでは ありません。ただし 本当の 針はりは、水では なく、目に 見えない 力に そろって います。

方位磁針が北を向くのは、北極にある何かに引っ張られているから、と考えたくなります。けれども、カナダ天然資源省の説明では、磁針は「その場所の磁場の水平成分」の向きにそろい、その向きを磁北と呼びます[1]。

川に浮かべた葉っぱは、はるか下流の海を見ているのではなく、足もとの水の流れの向きに流されます。針も同じで、そろう先は足もとの磁場の向きです。ただし磁場は目に見えず、針が動くのは水ではなく磁石の力のためです。

では、その磁場は、地球のどこで作られるのでしょうか。それを地球の大きさで確かめようとした人物から、話を始めます。

NRCanの説明では、方位磁針はその場所の磁場の水平成分の向きにそろい、その向きを磁北と呼ぶ[1]。針が示すのは局所の磁場の向きであり、磁北極は、その場所の針の向きと同じ方角にある点ではない。

この局所の磁場が、なぜ地球全体でおおよそ南北にそろうのか。次章で、地球そのものが磁石だと考えた1600年の議論を見る。

2. まるい じしゃくで、ちきゅうを つくった 人

2. 1600年、球の磁石に小さな針を置いたギルバート

2. ギルバート『磁石論』(1600)とテレラ

いまから 400ねんほど 前、1600ねんに、ギルバートと いう 人が、「ちきゅうは 大きな じしゃくだ」と 本に かきました[2]。

ギルバートは、ボールの ような まるい じしゃくを 作りました。その 表面に 小さな 針はりを おいて うごかすと、ちきゅうの 上の 針はりと 同じ ように うごきました[2]。

ちいさな ちきゅうを 手の 上に のせて、ためして みた ようなものです。

1600年にロンドンで出た『磁石論』で、ギルバートは、地球は大きな磁石で、磁針はその地磁気に向くと述べました[2]。

その根拠にしたのが、「テレラ」と呼ばれる球形の磁石です。表面に小さな磁針を置いて動かすと、地球上の磁針の動きが再現できることを示したと紹介されています。たとえば、北を向くだけでなく、少し下向きになる角度(伏角)も出てきます。ただし伏角の再現については、二次資料の紹介にとどまります。

「地球が磁石」という考えは、ギルバート1人だけのものとは言い切れません。それでも、球の磁石で地球の針の動きを試したという場面は、印象的です。

1600年、ロンドンで刊行された『磁石論』でギルバートは、地球は大きな磁石であり磁針はその磁場に向く、と述べた[2]。京都大学WDCの解説によれば、テレラ(球形の磁石)を用いた実験で、地球そのものが磁石として働くことを示した。

表面上で小さな磁針を動かすと、地球上の磁針の挙動(北を向き、やや下を向く伏角)が再現される、という説明も広く見られるが、この伏角の再現は二次資料による記述である。また、「地球が磁石」という認識がギルバート1人の功績とは言い切れないため、本稿では「整理・提示した人物の1人」にとどめる。

この磁石の正体が何なのか。地球の内部のどこで、何が磁場を作るのかが、次の問いになる。

3. ちきゅうの 中の、ながれる もの

3. 地球の中の「流れ」が磁場を作る

3. 外核のダイナモ作用と地磁気の強さ

ちきゅうの 中は、ふかく なるほど あつく、まんなかの ほうに ある「外核がいかく」という ところでは、どろどろに ながれて います。

この ながれが、電流でんりゅうを 生み、電流でんりゅうが じしゃくの 力を 作ると 考えられて います[3]。ちきゅうは 大きな 電じしゃくの ような ものです。

この 力は 場所で ちがい、赤道の ほうが よわく、北や 南の きょくの 近くが つよいと いわれます[4]。

名古屋大学の解説では、地球の外核はどろどろと流れる流体で、その複雑な流れが電流を生み、それが磁場を作ると考えられています。地球は大きな電磁石のようなものだ、という説明です[3]。気象庁の地磁気観測所も、外核の流体運動でできる電流によるダイナモ作用として説明しています[4]。

地磁気の強さは、赤道付近でいちばん弱く、極に近いほど強くなります。場所によって約2.5倍ちがう程度、という見方です[4]。

ここで見た磁場は、日本では方位磁針を北から少しずらします。次の章では、そのずれを見ます。

地磁気の成因は、外核(流体)の複雑な流れが電流を生み、それが磁場を作るというダイナモ作用と考えられている[3]。気象庁地磁気観測所の説明も同じで、外核の流体運動による電流を挙げている[4]。

地磁気の強さは、赤道付近でおよそ25,000nT、極付近でおよそ65,000nTと説明され、場所によりおよそ2.5倍ちがう[4]。数値は目安として読む。

成因を1つの流れとして描けるのは、この磁場が地球規模で多くの観測とつじつまが合う説明だからである。

4. 「北」が 2つ ある?

4. 真北と磁北 ── 日本では針が西へずれる

4. 偏角:真北と磁北の差と日本の値

じつは、「北」には 2しゅるい あります。ちきゅうが まわる 中心の 北(真北)と、針はりが むく 北(磁北じほく)です[5]。

この 2つの ずれを 「偏角へんかく」と いいます。場所と 時間で かわります[5]。

日本では、針はりが 少し 西に ずれます。2020ねんの 数で、さっぽろは 10どくらい、なはは 6どくらい です[6]。

「北」には2種類あります。地球の自転軸の北極の方向を指す真北と、磁石が指す磁北です。この2つの角度のずれを偏角といい、場所によっても、年によってもちがいます[5]。

国土地理院の説明では、日本では全地域で磁北が真北より西にずれます。2020.0年の値で、札幌はおよそ10度、那覇はおよそ6度の西偏です[6]。

山で地図と磁石を使うとき、このずれを知らないと、少しずつ行き先がずれます。数値は、2020.0年の値であり、いまの値そのものではありません。

磁北と真北(自転軸の北極の方向)のなす角が偏角で、場所と時間で変わる[5]。日本では全地域で磁北が真北より西にずれ(西偏)、2020.0年値で札幌がおよそ10度、那覇がおよそ6度である[6]。

これらの数値は2020.0年値であり、現在の値ではない。既存のメモ「地図はなぜ北が上なのか」には東京の値として約7度40分の記述がある(地図はなぜ北が上なのか)。方位磁針の歴史的な話は、そちらと重なる。

磁石の基本的な話は「磁石のメモ」にもあり、本稿はそれと重ならないよう、針が何にそろうのかに絞っている。

5. きたの じしゃくの ばしょは、うごく?

5. 動き続ける北磁極

5. 北磁極の移動と報道値の扱い

ちきゅうの 中の ながれは、いつも 同じでは ありません。だから、北の ほうで 針はりが むかう 目じるしの 場所も、すこしずつ うごくと いわれて います。

ニュースでは、1831ねんから 2250キロほど うごいたと いわれて います[7]。これは ニュースで 知らせられた 数字です。

北磁極は、カナダの北極圏の方から、シベリアの方へ向かっていると報じられています。報道では、1831年に見つかってから約2250km動き、1990年ごろまでは年10km未満のゆっくりした動きだったのが、2000年以降は平均して年約55kmになったとされています[7]。

これは報道による数値です。年によっても速さは変わるので、目安として読んでください。それでも、「北」を示すものが、じっとしていないことは、方位磁針の針が北を向く理由を考えるうえで面白い点です。

報道によれば、北磁極は1831年に正式に発見されて以来およそ2250km移動した。1990年ごろまでは概ね年10km未満でカナダ北極圏を蛇行していたが、2000年以降は平均年約55kmに速まり、シベリアへ向かう[7]。2020年以降は年40km程度に減速するとの予測もある。

これらは報道による数値で、速度は年により変わる。傾向を示す目安として扱うのが妥当である。NOAA NCEIの「Wandering of the Geomagnetic Poles」を読むと、移動の記録をたどれる。

6. 家で、針はりを ためして みよう

6. 針の向きが変わる場所を探してみる

6. 出口:局所の磁場を観察する/原典に当たる

はじめに 出て きた おもちゃの 方位磁針ほういじしんが あれば、まどの そとで、針はりを たいらな ところに おいて みます。北を むいたら、こんどは れいぞうこや 鉄の ドアの そばに もって いきます。方位磁針ほういじしんが なくても、おうちの 人に かりたり、学校の 理科の 時間に 見せて もらったり できます。もし 見つからなければ、方位磁針ほういじしんの 絵や 写真を 見て、「鉄の ものの そばだと、針はりは どうなるかな」と そうぞうして みるだけでも たのしいです。

やって みた ときも、そうぞうして みた ときも、針はりの むきは かわると 思いますか。はなれると、もどると 思いますか。まわりの 鉄や じしゃくの 力にも、針はりは そろって しまう ようです。

じしゃくを 近づける ときは、針はりを こわさない よう、少し はなして、おうちの 人と いっしょに やって みましょう。

方位磁針を持って、家の中と外を歩き、針が北からずれる場所を探します。冷蔵庫の横、鉄のドアの近く、窓の外の広い場所で、針の向きを見比べてみてください。

針は、地球の磁場だけでなく、近くの鉄や磁石の磁場にもそろいます。そのため、地図と磁石で方角を測るときは、鉄のものから離れる必要があります。

資料を読むなら、国土地理院の「地磁気を知る」のページに、日本の磁気の話があります。

方位磁針を用いて、屋外の開けた場所と、鉄製品の近くで針の向きを比べる。局所の磁場の合成で針が決まるという、第1章の内容を確認できる。強い磁石を近づけると針の極性が反転する場合があるため、磁石は近づけない。

資料の当たり先は、国土地理院の「地磁気を知る」、気象庁地磁気観測所のQ&A、NOAA NCEIの磁気偏角のページ。世界磁気モデルの更新や、磁気図の地形図への記載も、公式ページで見てみよう。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:カナダ天然資源省、京都大学、名古屋大学、気象庁、NOAA、国土地理院の公開ページと、ニュース記事を使った。北磁極の数値はニュース記事による。

  1. Natural Resources Canada「Magnetic declination」。https://www.geomag.nrcan.gc.ca/mag_fld/magdec-en.php (針が磁場の水平成分にそろうことについて)
  2. 京都大学WDC「ステルン『磁石論』解説」。https://wdc.kugi.kyoto-u.ac.jp/stern-j/demagrev_j.htm (1600年のギルバートとテレラの実験について)
  3. 名古屋大学ISEE「地磁気50のなぜ 13」。https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/chijiki/13.html (外核の流れと地磁気について)
  4. 気象庁 地磁気観測所「Q&A」。https://www.kakioka-jma.go.jp/knowledge/qanda.html (ダイナモ作用と地磁気の強さについて)
  5. NOAA NCEI「Magnetic Declination」。https://www.ncei.noaa.gov/products/magnetic-declination (偏角の定義について)
  6. 国土地理院「地磁気を知る」。https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/menu01_index.html (日本の偏角について)
  7. ニューズウィーク日本版の記事。https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/12/post-13681.php (北磁極の移動について。報道の数値)

なおした ところ

更新履歴

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