1. いぬの 汗は どこに あるの?
1. 犬が体を冷やす汗は、主に足の裏から出る
1. 汗腺のありか ── 肉球と、体温調節に使われない腺
いぬにも 汗を だす ところは あります。でも、あるのは あしの うら、にくきゅうの あたりです[2]。
そこの 汗が、からだを ひやす はたらきは、ちいさいと いわれます[1]。きんちょうした ときに、あしあとが しめる ことも あるそうです[3]。
ぜんしんを ひやす、おおきな しごとは、ほかの やりかたに まかせて います。
2. はあはあ は、水を くうきに わたす こと
2. 「はあはあ」は水を空気に渡す作業
2. パンティングによる蒸発 ── 舌・鼻の通り道・肺の内側
プールの あと、ぬれた からだに かぜが あたると、ひやっと しませんか。みずが かわく とき、まわりの ねつを もって いくからです。
いぬの はあはあ も、これに にて います。いぬは くうきを すばやく すって はきます。その とき、した や はなの おくの しめった ところから、みずが くうきに うつって いきます[4]。
みずが くうきに うつる とき、いぬの からだの ねつも いっしょに もって いかれる、という わけです。ただし ほんとうは、ぬれた ところが かわく ときの はたらきで、いぬが ねつを 「はいて」 いるのでは ありません。
3. はやくて あさい いき
3. 息の回数は増やし、1回の量は減らす
3. パンティングの定義 ── 呼吸数の増加と一回換気量の減少
はあはあ は、ふつうの いきとは ちがいます。いきの かいすうを ふやして、ひとかいの いきの りょうを へらす、と せつめいされて います[6]。
ゆっくり ふかく すう かわりに、はやく あさく すって はく。そうして、くちや はなの ぬれた ところに くうきを たくさん あてるのです。
速く、浅く
生理学者ロバーツホーの論文の抄録は、パンティングを「呼吸の回数を増やし、1回に出入りする息の量(一回換気量)を減らす、制御された呼吸」と説明しています[6]。目的は、上気道の換気を増やして、蒸発による放熱を増やすことです。
深く吸うのではなく、浅い呼吸を何度も繰り返すことで、湿った通り道に空気を当て続けます。呼吸の具体的な回数は、今回の資料では確かめられなかったので書きません。
Robertshaw(2006)の抄録は、パンティングを「呼吸数の制御された増加であり、一回換気量の減少を伴う」ものと定義し、その目的を上気道の換気を増やして蒸発による放熱を増すことに置く[6]。肺の奥まで空気を入れ替える換気(ガス交換)を抑え、蒸発面である上気道に空気を流す方向に呼吸を切り替える、と読める。
ここでの記述は、この論文の抄録に基づく。
4. はなと くちの つかいわけ
4. 鼻と口を、暑さに応じて使い分ける
4. 3つのパンティングの型(Goldberg et al., 1981)と選択的脳冷却
いぬは くちだけで いきを して いるのでは ありません。はなも つかいます。
1981ねんの けんきゅうでは、3とうの いぬを しらべました。あつさが つよく なる ほど、いきの とおりみちが かわると ほうこく されて います[7]。
はじめは はなから すって はなから はく。もっと あつく なると、はなから すって、はなと くちから はく。さらに あつい ときは、はなと くちの りょうほうから すって はきます。
5. はあはあ にも、にがてな ことが ある
5. 効くけれど、代償と限界がある
5. パンティングの限界 ── 湿度・呼吸筋の熱・蒸発面の小ささ
はあはあ は、いつでも よく きく わけでは ありません。しめった くうきの ひは、みずが かわきにくく なります。すると、ねつも にげにくく なります[8][5]。
はあはあ すると、いきを する きんにくも はたらきます。その きんにくが ねつを だす、と せつめいする しりょうも あります[8]。
くちや したは ひろい ところでは ないので、あまり こうりつが よい やりかたとは いえない、という かいせつも あります[10]。
湿度が高いと弱い
獣医向けの資料は、湿度が高く蒸発が減る環境では、パンティングは熱を逃がす力が落ちると説明しています[8]。別の資料も、周囲の湿度が高いと効率が下がり、熱中症の危険が増すと書いています[5]。ぬれた洗たく物が、湿った日には乾きにくいのと同じ考え方です。
ほかの弱点
パンティングは呼吸の筋肉を動かすので、それ自体が熱をつくる、という説明があります[8]。熱の量については、資料に数字がないため書きません。
日本の獣医師系の解説記事は、口や舌は面積が小さいため、あまり効率のよい方法とはいえない、と述べています[10]。ペット向けメディアの見解なので、参考として読んでください。
獣医師向けの資料は、高湿度で蒸発が減る環境ではパンティングによる熱放散が無効になりうると述べ[8]、別の解説も、高い周囲湿度で効率が下がり熱中症のリスクが増すとする[5]。蒸発による放熱である以上、空気が水蒸気で飽和に近づくほど効きにくい。人の汗と同じ原理である。
コストとして、パンティングは呼吸筋を動かすためそれ自体が熱を生む、と説明する資料がある[8]。ただし引用元の一節は蒸発の記述が中心で、熱量の大きさは示されておらず、効果に比べて大きいとも小さいとも言えない。
さらに、日本の獣医師系解説は、口と舌の粘膜は面積が小さく、効率のよい方法とはいえないとする[10]。これはペット媒体の見解であり、一次資料ではない点に注意する。
6. はなの みじかい いぬと、さんぽの じかん
6. 鼻の短い犬と、散歩の時間帯
6. 短頭種のリスクと、環境省の散歩の呼びかけ
はなの みじかい いぬは、くうきの とおりみちが せまく なりやすいと いわれます[5]。はあはあ が うまく できず、ねっちゅうしょうに なりやすいそうです。
かんきょうしょうは、さんぽを あさ はやくや よるなどの、すずしい じかんに するよう よびかけて います[9]。いぬは け が おおくて、じめんの ねつも うけやすいからです。
やってみよう。 りょうてに、みずを ちょっとだけ つけます。ひとつは ゆっくり ふーっ、もうひとつは はやく はっはっ と ふいて、どちらが ひやっと するか くらべます。
鼻の短い犬は苦手
鼻の短い犬種(短頭種)は、上気道が部分的にふさがれているため体温調節が苦手で、熱中症のリスクが高いと、獣医向けの資料に書かれています[5]。
数字で見る体温
アメリカの獣医大学は、犬の平熱を華氏100.5〜102.5度としています。摂氏に直すと約38.1〜39.2℃です。体温調節ができず、体温が華氏105度(約40.6℃)以上に上がると、熱中症につながると説明されています[2]。資料の値は華氏で、℃は換算した値です。
散歩の時間を選ぶ
環境省は、犬や猫は密な毛におおわれて体温調整が得意ではなく、人より体高が低いため地面の熱も受けやすいとして、散歩は早朝や夜の涼しい時間にと呼びかけています[9]。
やってみよう:両手に水を少しつけ、片方はゆっくり、もう片方は速く息を吹きかけて、どちらが冷たく感じるかくらべてみましょう。
Today's Veterinary Practiceは、短頭種は部分的な上気道閉塞により体温調節能力が限られ、熱中症のリスクが特に高いと述べる[5]。
コーネル大学獣医学部の資料では、犬の平熱は華氏100.5〜102.5度で、体温調節ができず体温が105度以上に上がると熱中症につながると説明される[2]。℃換算((F−32)×5/9)では平熱が約38.1〜39.2℃、105度は約40.6℃にあたる。℃は換算した値である。
環境省の報道発表は、犬や猫は密な毛におおわれ体温調整が得意でなく、人より体高が低く地面の熱を受けやすいとして、散歩は早朝や夜の涼しい時間帯にと呼びかけている[9]。この発表にパンティングの説明はなく、仕組みの出典には使えないが、時間帯の助言としては上の仕組みと整合する。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
さんぽで いぬを 見かけたら、とおくから そっと 見て みましょう。したの だし かたや、はなと くちの うごきに、ちがいが あるかもしれません。さわったり、ちかづきすぎたり しては いけません。
しらべるなら、「かんきょうしょう」の ペットの ねっちゅうしょうの ページが、日本語で 読めます。
今日できること:散歩中の犬を、少し離れたところからそっと観察してみましょう。舌の出し方や、口の開き方が、暑さや動きでどう変わるか見てみます。近づいたり、さわったりはしません。
公式情報:環境省の「防ごう!ペットの熱中症」は日本語で読めます。この記事は獣医療の助言ではないので、愛犬の体調は獣医師に相談してください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:獣医学の教科書的資料、獣医大学・獣医師向けの資料、論文の抄録、環境省の発表を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- MSD Veterinary Manual「Structure of the Skin in Dogs」。https://www.msdvetmanual.com/dog-owners/skin-disorders-of-dogs/structure-of-the-skin-in-dogs (足の汗腺と、パンティングが主な放熱手段であることについて)
- Cornell University College of Veterinary Medicine「Heatstroke」。https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/riney-canine-health-center/canine-health-information/heatstroke-medical-emergency (汗腺が足だけであること、犬の平熱と熱中症の体温について)
- PetMD「Do Dogs Sweat?」(獣医師執筆・監修、2023年)。https://www.petmd.com/dog/general-health/do-dogs-sweat (体じゅうの腺と足の腺の役割の違いについて)
- American Kennel Club「Do Dogs Sweat?」。https://www.akc.org/expert-advice/health/do-dogs-sweat/ (パンティング中に水分が蒸発する場所について)
- Today's Veterinary Practice「Heatstroke in Dogs」。https://todaysveterinarypractice.com/emergency-medicine-critical-care/todays-technician-heatstroke-in-dogs/ (蒸発の場所、湿度への弱さ、短頭種のリスクについて)
- Robertshaw D. (2006) J Appl Physiol 抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16675613/ (パンティングの定義と鼻での熱交換について。抄録のみ)
- Goldberg MB, Langman VA, Taylor CR (1981) Respiration Physiology 抄録。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7280382/ (3つのパンティングの型について。抄録のみ)
- dvm360「Heatstroke in dogs (Proceedings)」。https://www.dvm360.com/view/heatstroke-dogs-proceedings (湿度が高いときの限界と、呼吸筋の熱について)
- 環境省 報道発表「防ごう!ペットの熱中症」。https://www.env.go.jp/press/press_05067.html (散歩の時間帯の呼びかけについて)
- ペトコト「犬にも汗腺がある?」。https://petokoto.com/articles/3454 (口と舌の面積が小さいことについて。ペット媒体の見解)
なおした ところ
更新履歴
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