1. まぜて いないのに、なぜ しろく なるの?
1. 何も足していないのに、色が変わる
1. 問いの整理 ── 何が変わり、何が変わらないのか
しろみを ながめると、とうめいで、ねばねばした 水の ように 見えます。それが あつく なると、ゆきの ような しろに なります。
しろい こなを いれたのでは ありません。もとの しろみが、そのまま しろく なって いるのです。
たとえば、空気の 中の 水じょうきは 見えませんが、そらの くもは しろく 見えます。とうめいな ものでも、小さな つぶが あつまると しろく 見える ことが あります。
こたえの ヒントは、しろみの 中に ある、とても 小さな ものに ありそうです。
足したものは何もない
目玉焼きでも、ゆで卵でも、白身は火が通ると白くなります。途中で何かを混ぜたわけではないので、変わったのは白身そのものの中の様子のはずです。
雲との似た話
透明な水蒸気が集まって小さな水のつぶになると、雲は白く見えます。透明なものでも、小さなつぶが集まると白く見えることがあります。ただしこれは似たしくみの一例で、白身がまったく同じ理由で白くなると言っているわけではありません。
白身の中で何が起きているのか、まず中身を見てみます。
調理では、卵白は加熱によって透明から白い不透明な状態に変わる[7]。混ぜ物はないので、変化の原因は卵白自身の内部にある。
この現象を、成分(何でできているか)、大きさ(光とどう関係するか)、加熱による変化(何が起きるか)、光の散乱(なぜ白く見えるか)の順に整理する。雲が白く見えることとの連想は成り立つが、似た現象の例にとどめ、卵白の仕組みの説明には使わない。
2. しろみは ほとんど 水
2. 卵白の成分は、ほとんどが水
2. 成分 ── 水約88%とタンパク質約10%
しろみを 100グラム あつめたとして、そのうち 88グラムほどが 水です。のこりの 10グラムほどが、たんぱくしつと いう ものです[1]。
なまの しろみの たんぱくしつは、あつく する まえは、水に とけた じょうたいです。しおが 水に とけて 見えなく なる のと おなじで、とけて いる あいだは、目で 見えません。
ただし、しおと ちがって、たんぱくしつの つぶは、ずっと 大きい ものです。
3. つぶが 小さいと、光は とおりぬける
3. 光の波長より、ずっと小さい
3. 大きさ ── 数nmのタンパク質と、390〜700nmの可視光
しろみの たんぱくしつの 中の オボアルブミンと いう つぶは、1ミリの 20万分の 1ほどしか ありません。光の はちょうと くらべても、100ばい ぐらい 小さい つぶです[5]。
光は、あまりに 小さい つぶには、あまり じゃまされずに とおりぬけると 考えられて います。なまの しろみが とうめいに 見える りゆうの ひとつです。
ただし、なまの しろみが いつも とうめいとは かぎりません。それは あとで はなします。
4. あつさで、つぶが ほどけて くっつく
4. 熱で形が崩れ、つぶ同士がくっつく
4. 熱変性 ── 立体構造の崩れと凝集
たんぱくしつの つぶは、ふつう、ぎゅっと おりたたまれた かたちを して います。ひもが きれいに まるまって いるような ものです。
ある ていど あつく なると、その かたちが ほどけて いきます。おりたたまれて かくれて いた ぶぶんが そとに でて、まわりの つぶと くっつくのです[4]。
くっついた つぶが、あみのように つながって、水を つつみこみます。こうして、しろみは かたまって いきます[3]。
5. あみが ひかりを ばらばらに する
5. 網目が光を散らし、白く見える
5. 光の散乱と温度 ── 60℃ごろから、80℃ごろで固まる
つぶが あつまって あみに なると、光は まっすぐ とおれず、あちこちに はね かえります。
あちこちから 光が 目に とどくので、しろく 見えます。くもや ゆきが しろい のと、にた かんがえ かたですが、しろみが しろく 見える くわしい しくみは、くもや ゆきと 同じとは かぎりません。
この へんかは、およそ 60どで はじまります。80どごろに なると、しっかり かたまります。はんじゅくの たまごは、その とちゅうの じょうたいです[7]。
光があちこちに散らばる
タンパク質が集まって網目になると、その網目が光をあらゆる方向に散らします[6]。それが目に届くので、白く不透明に見えます。ただし、この説明は一般向けの資料が中心で、細かい物理までは、日本語の一次資料で確認できていません。
60℃で始まり、80℃で固まる
卵白の中のタンパク質は種類ごとに固まる温度が違い、オボトランスフェリンは60℃前後、オボアルブミンは80℃前後で固まるとされます[7]。別の資料ではオボアルブミンは75〜78℃以上とあり、数字には幅があります[4]。
温度が60℃を超えるころに白くなり始め、80℃ごろにしっかり固まります。半熟卵の白身がやわらかいのは、この途中の状態だからと考えられます。
6. しろく ならない ときも あるよ
6. 白くならない場合、生でも白い場合
6. 例外 ── 透明ゲルと、産みたての白濁
あつく しても、とうめいの まま かたまる ことが あります。ただし それは、とても 高い おんどで、とくべつな じょうけんの ときです。おうちで つくる たまごでは おきません[2]。
その はんたいに、うんだばかりの たまごの しろみは、なまでも すこし しろく にごって います。中に ふくまれる ガスの せいと いわれます[8]。
「なまは とうめい」も「あつくすると しろい」も、いつも 同じとは かぎらないのです。
条件しだいで透明なまま固まる
卵白アルブミンを水に溶かして80℃で加熱すると白く濁ったゲルができましたが、160℃で5分の熱処理では、均一な透明のゲルになったと報告されています[2]。これは精製したタンパク質を高温で調べた実験で、家庭の調理で起きる話ではありません。
特許の資料にも、加熱前のpH(酸性かどうか)や塩の量を調整すると、透明なゲルができる例が出ています[9]。白くなるかどうかは、どんな条件で温めるかで変わるようです。
産みたての卵は、生でも白く濁る
産みたての卵の白身には炭酸ガスが多く含まれていて、白く濁って見えます。ガスは殻の小さな穴から少しずつ抜け、白身は透明に近づいていきます[8]。「生は透明」は、いつでも当てはまるわけではありません。
卵白アルブミンの水溶液を80℃で加熱すると白濁ゲルができる一方、160℃で5分の熱処理では均一な透明ゲルになる。45wt%の試料は、100℃では白濁ゲルだったが130℃では透明ゲルに変わったと報告されている[2]。これは精製したタンパク質による高温の実験であり、家庭調理の話ではない。
特許文献には、透析してpH2〜3.5に調整した卵白を加熱すると透明ゲルができた例が記され、通常の卵白は加熱で白濁ゲルになるとも書かれている[9]。加熱前のpHとイオン強度が、濁りに強く影響するとみられる。強い酸性の特殊条件であり、食品としての話ではない。
逆に、産みたての卵の卵白は炭酸ガスを多く含み、白く濁って見える。ガスは殻の気孔から抜け、卵白は透明になっていく[8]。「生は透明、加熱で白濁」は、標準的なふるまいであって、例外がある。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
おうちの 人が 目玉やきを つくる ようすを、いっしょに 見て みましょう。しろみの どこから しろく なるかを 見ます。火や フライパンには ちかづかず、おとなと いっしょに、はなれた ところから 見ます。
ホームページで しらべるなら、「しょくひんせいぶんひょう」の ホームページや、JA全のうの「たまご」の ページが、日本語で 読めます。
今日できること:家の人が目玉焼きを作る様子を、一緒に見てみましょう。白身がどこから、どんな順序で白くなっていくかを観察します。火やフライパンには近づかず、必ず大人と一緒に、少し離れて見てください。フライパンの端と中央で、白くなる速さに差があるかもしれません。
調べるなら:文部科学省の「食品成分データベース」では卵白の成分を、JA全農たまごの「たまご大百科」では卵の基本を、日本語で調べられます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:文部科学省の成分表、論文、科学技術振興機構の発表、料理・食品関連の資料を使いました。特許文献は、特殊条件の例としてだけ使いました。何に使ったかは項目の最後に書いてあります。
- 日本食品標準成分表(八訂)増補2023 卵白 生(文部科学省 食品成分データベース)。https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=12_12014_7 (水分・たんぱく質の量)
- 熱測定 24(3)「卵白アルブミンの熱的特性」。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscta1974/24/3/24_3_118/_pdf (不透明ゲルの構造・透明ゲルの実験)
- 科学技術振興機構 機構報 第1301号(2018年1月5日)。https://www.jst.go.jp/pr/info/info1301/index.html (加熱で変性し網目をつくって固まる)
- 京都吉兆 徳岡邦夫コラム「タンパク質が固まるとは」。https://kyoto-kitcho.com/column-tokuoka/protein/ (立体構造の崩れと凝集・オボアルブミンの凝固温度)
- NomNomenon「Eggs-tra white」。https://www.nomnomenon.com/egg-white-transparent-to-white-chemistry-physics/ (タンパク質の大きさと光の波長・英語の一般向けサイト)
- Biology Insights「Why Does Egg White Go From Clear to White When Cooked?」。https://biologyinsights.com/why-does-egg-white-go-from-clear-to-white-when-cooked/ (網目が光を散らす・英語の一般向けサイト)
- ことわり料理「卵の火入れ」。https://www.kotowari-cooking.com/note/preparation/heat-control/ingredients/egg-heat-control (60℃と80℃の目安)
- JA全農たまご「卵白が濁っているたまごがあるのはどうして?」。https://www.jz-tamago.co.jp/customer/atoz/basic/a2z00018033/ (産みたての白濁)
- 特許 JPS63230038A「塩存在下で透明ゲルを形成する調整卵白」。https://patents.google.com/patent/JPS63230038A/ja (pHと塩で透明ゲルになる特殊条件の例)
なおした ところ
更新履歴
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