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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

しろみは どうして、やくと しろく なるの?

透明な卵白が、熱すると白くなるのはなぜか

卵白の白濁 ── タンパク質の熱変性と凝集、光の散乱(60〜80℃)

分野:自然

めだまやきを つくって いると、フライパンの 上で、とうめいな しろみが、ふちから すこしずつ しろく なって いきます。

なにも まぜて いないのに、どうして いろが かわるのでしょう。しろみの 中で おきて いる ことを、いっしょに かんがえて みましょう。

フライパンに割った卵を落とすと、透明だった白身が、まわりから少しずつ白くなっていきます。白い粉を混ぜたわけでもないのに、色が変わります。

この変化のわけを、卵白の成分、タンパク質の大きさ、光の進み方の順にたどります。最後に、白くならない場合や、生でも白く濁る場合も見ておきます。

生の卵白はふつう透明だが、加熱すると白く不透明になる。この変化は、水に溶けていたタンパク質が熱で変性し、ランダムに集まって網目状の構造をつくることで起こると説明される[3]。

このメモでは、成分表[1]、論文[2]、料理の資料[4][7]などを突き合わせて、その仕組みと、透明のまま固まる条件、産みたてで濁る例外を整理する。

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1. まぜて いないのに、なぜ しろく なるの?

1. 何も足していないのに、色が変わる

1. 問いの整理 ── 何が変わり、何が変わらないのか

しろみを ながめると、とうめいで、ねばねばした 水の ように 見えます。それが あつく なると、ゆきの ような しろに なります。

しろい こなを いれたのでは ありません。もとの しろみが、そのまま しろく なって いるのです。

たとえば、空気の 中の 水じょうきは 見えませんが、そらの くもは しろく 見えます。とうめいな ものでも、小さな つぶが あつまると しろく 見える ことが あります。

こたえの ヒントは、しろみの 中に ある、とても 小さな ものに ありそうです。

足したものは何もない

目玉焼きでも、ゆで卵でも、白身は火が通ると白くなります。途中で何かを混ぜたわけではないので、変わったのは白身そのものの中の様子のはずです。

雲との似た話

透明な水蒸気が集まって小さな水のつぶになると、雲は白く見えます。透明なものでも、小さなつぶが集まると白く見えることがあります。ただしこれは似たしくみの一例で、白身がまったく同じ理由で白くなると言っているわけではありません。

白身の中で何が起きているのか、まず中身を見てみます。

調理では、卵白は加熱によって透明から白い不透明な状態に変わる[7]。混ぜ物はないので、変化の原因は卵白自身の内部にある。

この現象を、成分(何でできているか)、大きさ(光とどう関係するか)、加熱による変化(何が起きるか)、光の散乱(なぜ白く見えるか)の順に整理する。雲が白く見えることとの連想は成り立つが、似た現象の例にとどめ、卵白の仕組みの説明には使わない。

2. しろみは ほとんど 水

2. 卵白の成分は、ほとんどが水

2. 成分 ── 水約88%とタンパク質約10%

しろみを 100グラム あつめたとして、そのうち 88グラムほどが 水です。のこりの 10グラムほどが、たんぱくしつと いう ものです[1]。

なまの しろみの たんぱくしつは、あつく する まえは、水に とけた じょうたいです。しおが 水に とけて 見えなく なる のと おなじで、とけて いる あいだは、目で 見えません。

ただし、しおと ちがって、たんぱくしつの つぶは、ずっと 大きい ものです。

100gのうち、10gがタンパク質

日本食品標準成分表では、生の卵白100gのうち、水分が88.3g、タンパク質が10.1gとされています[1]。つまり、卵白の約9割は水で、タンパク質は約1割です。

加熱する前の卵白では、そのタンパク質は水の中に溶けた状態です[3]。塩や砂糖が水に溶けると見えなくなるのと同じように、溶けているあいだは目に見えません。ただし、タンパク質のつぶは、塩や砂糖よりずっと大きな分子です。

タンパク質は1種類ではない

卵白のタンパク質には、オボアルブミンやオボトランスフェリンなど、いくつもの種類があります。このあと、その一つ、オボアルブミンを例に見ていきます。

日本食品標準成分表(八訂)増補2023では、卵白(生)の可食部100gあたり、水分88.3g、たんぱく質10.1gと示されている[1]。水分が約88%、たんぱく質が約10%にあたる。

このタンパク質は、加熱前には水に溶けた状態にある[3]。卵白のタンパク質にはオボアルブミン、オボトランスフェリンなど複数の種類がある。各成分の割合は、乾燥卵白での資料を生の卵白の値にそのまま読みかえられるとは限らないため、ここでは扱わず、以下ではオボアルブミンを例にする。

3. つぶが 小さいと、光は とおりぬける

3. 光の波長より、ずっと小さい

3. 大きさ ── 数nmのタンパク質と、390〜700nmの可視光

しろみの たんぱくしつの 中の オボアルブミンと いう つぶは、1ミリの 20万分の 1ほどしか ありません。光の はちょうと くらべても、100ばい ぐらい 小さい つぶです[5]。

光は、あまりに 小さい つぶには、あまり じゃまされずに とおりぬけると 考えられて います。なまの しろみが とうめいに 見える りゆうの ひとつです。

ただし、なまの しろみが いつも とうめいとは かぎりません。それは あとで はなします。

オボアルブミンは数ナノメートル

オボアルブミンは丸い形のタンパク質で、直径は3〜7nm(ナノメートル)ほどとされています[5]。1nmは1mmの100万分の1です。

光の波長との比べ

目に見える光(可視光)の波長は、およそ390〜700nmです[5]。タンパク質1つの大きさは、その波長の100分の1前後しかありません。

これほど小さい粒には、光はあまり邪魔されずに通り抜けると考えられます。生の卵白がふつう透明に見える一因として、このように説明されています[5]。

オボアルブミンは球状のタンパク質で、直径は3〜7nm程度とされ[5]、測定法や条件で幅がある。可視光の波長は約390〜700nm[5]で、タンパク質1分子はその1%前後である(5÷500=0.01)。

波長より十分に小さい粒が水に溶けているだけなら、光はあまり散乱されず、まっすぐ通ると考えられる。生の卵白がふつう透明なことの一因として説明される[5]。ただし、この光学的な説明は一般向けの英語資料が中心で、日本語の一次資料では波長との比の詳細までは確認していない。

4. あつさで、つぶが ほどけて くっつく

4. 熱で形が崩れ、つぶ同士がくっつく

4. 熱変性 ── 立体構造の崩れと凝集

たんぱくしつの つぶは、ふつう、ぎゅっと おりたたまれた かたちを して います。ひもが きれいに まるまって いるような ものです。

ある ていど あつく なると、その かたちが ほどけて いきます。おりたたまれて かくれて いた ぶぶんが そとに でて、まわりの つぶと くっつくのです[4]。

くっついた つぶが、あみのように つながって、水を つつみこみます。こうして、しろみは かたまって いきます[3]。

折りたたまれた形が崩れる

タンパク質は、ひものように長い鎖が複雑に折りたたまれてできています。熱が加わると、この立体的な形が崩れます。すると、中に折りたたまれていた部分が表面に出てきて、その部分を通じてタンパク質どうしがくっつきます[4]。これを熱変性といいます。

ランダムな網目ができる

科学技術振興機構の発表では、変性したタンパク質は決まった向きを持たずにランダムに集まり、すき間の多い不均一な網目をつくって、水を抱いたまま固まるとされています[3]。これが、ふつうの白い卵白のでき方です。

加熱でタンパク質の立体構造が崩れると、内部に折りたたまれていた部分が表面に出て、そこを介してタンパク質どうしがくっつき、凝集する[4]。

科学技術振興機構の2018年の発表は、変性したタンパク質がランダムに集まって不均一なネットワークをつくり、水を含んだゲルとして固まるとしている[3]。球状タンパク質の不透明ゲルの構造モデルの一つとして、塊状の凝集体が寄り集まった隙間の多い網目を挙げる論文もある[2]。

5. あみが ひかりを ばらばらに する

5. 網目が光を散らし、白く見える

5. 光の散乱と温度 ── 60℃ごろから、80℃ごろで固まる

つぶが あつまって あみに なると、光は まっすぐ とおれず、あちこちに はね かえります。

あちこちから 光が 目に とどくので、しろく 見えます。くもや ゆきが しろい のと、にた かんがえ かたですが、しろみが しろく 見える くわしい しくみは、くもや ゆきと 同じとは かぎりません。

この へんかは、およそ 60どで はじまります。80どごろに なると、しっかり かたまります。はんじゅくの たまごは、その とちゅうの じょうたいです[7]。

光があちこちに散らばる

タンパク質が集まって網目になると、その網目が光をあらゆる方向に散らします[6]。それが目に届くので、白く不透明に見えます。ただし、この説明は一般向けの資料が中心で、細かい物理までは、日本語の一次資料で確認できていません。

60℃で始まり、80℃で固まる

卵白の中のタンパク質は種類ごとに固まる温度が違い、オボトランスフェリンは60℃前後、オボアルブミンは80℃前後で固まるとされます[7]。別の資料ではオボアルブミンは75〜78℃以上とあり、数字には幅があります[4]。

温度が60℃を超えるころに白くなり始め、80℃ごろにしっかり固まります。半熟卵の白身がやわらかいのは、この途中の状態だからと考えられます。

凝集したタンパク質の網目が光をあらゆる方向に散乱し、透明だった卵白が白く不透明に見える[6]。この説明は一般向けサイトが中心であり、散乱の詳細は日本語の一次資料で確かめられていない。

凝固する温度は、オボトランスフェリンは約60℃、オボアルブミンは約80℃と説明される[7]。別の資料はオボアルブミンの凝固に75〜78℃以上を挙げており[4]、出典で幅がある。いずれも条件つきの目安であり、固定の温度ではない。

6. しろく ならない ときも あるよ

6. 白くならない場合、生でも白い場合

6. 例外 ── 透明ゲルと、産みたての白濁

あつく しても、とうめいの まま かたまる ことが あります。ただし それは、とても 高い おんどで、とくべつな じょうけんの ときです。おうちで つくる たまごでは おきません[2]。

その はんたいに、うんだばかりの たまごの しろみは、なまでも すこし しろく にごって います。中に ふくまれる ガスの せいと いわれます[8]。

「なまは とうめい」も「あつくすると しろい」も、いつも 同じとは かぎらないのです。

条件しだいで透明なまま固まる

卵白アルブミンを水に溶かして80℃で加熱すると白く濁ったゲルができましたが、160℃で5分の熱処理では、均一な透明のゲルになったと報告されています[2]。これは精製したタンパク質を高温で調べた実験で、家庭の調理で起きる話ではありません。

特許の資料にも、加熱前のpH(酸性かどうか)や塩の量を調整すると、透明なゲルができる例が出ています[9]。白くなるかどうかは、どんな条件で温めるかで変わるようです。

産みたての卵は、生でも白く濁る

産みたての卵の白身には炭酸ガスが多く含まれていて、白く濁って見えます。ガスは殻の小さな穴から少しずつ抜け、白身は透明に近づいていきます[8]。「生は透明」は、いつでも当てはまるわけではありません。

卵白アルブミンの水溶液を80℃で加熱すると白濁ゲルができる一方、160℃で5分の熱処理では均一な透明ゲルになる。45wt%の試料は、100℃では白濁ゲルだったが130℃では透明ゲルに変わったと報告されている[2]。これは精製したタンパク質による高温の実験であり、家庭調理の話ではない。

特許文献には、透析してpH2〜3.5に調整した卵白を加熱すると透明ゲルができた例が記され、通常の卵白は加熱で白濁ゲルになるとも書かれている[9]。加熱前のpHとイオン強度が、濁りに強く影響するとみられる。強い酸性の特殊条件であり、食品としての話ではない。

逆に、産みたての卵の卵白は炭酸ガスを多く含み、白く濁って見える。ガスは殻の気孔から抜け、卵白は透明になっていく[8]。「生は透明、加熱で白濁」は、標準的なふるまいであって、例外がある。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの 人が 目玉やきを つくる ようすを、いっしょに 見て みましょう。しろみの どこから しろく なるかを 見ます。火や フライパンには ちかづかず、おとなと いっしょに、はなれた ところから 見ます。

ホームページで しらべるなら、「しょくひんせいぶんひょう」の ホームページや、JA全のうの「たまご」の ページが、日本語で 読めます。

今日できること:家の人が目玉焼きを作る様子を、一緒に見てみましょう。白身がどこから、どんな順序で白くなっていくかを観察します。火やフライパンには近づかず、必ず大人と一緒に、少し離れて見てください。フライパンの端と中央で、白くなる速さに差があるかもしれません。

調べるなら:文部科学省の「食品成分データベース」では卵白の成分を、JA全農たまごの「たまご大百科」では卵の基本を、日本語で調べられます。

卵白の加熱ゲル化の詳しい機構は、日本語では熱測定学会誌の卵白アルブミンの論文[2]や、科学技術振興機構の発表[3]から読み始められる。透明ゲルになる条件の資料[9]は特許であり、食品への応用の情報ではない点に注意したい。

光の散乱そのものは、一般向けの資料にとどまった。波長と粒の大きさの関係が知りたければ、物理の教科書や光散乱の解説を当たるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:文部科学省の成分表、論文、科学技術振興機構の発表、料理・食品関連の資料を使いました。特許文献は、特殊条件の例としてだけ使いました。何に使ったかは項目の最後に書いてあります。

  1. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023 卵白 生(文部科学省 食品成分データベース)。https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=12_12014_7 (水分・たんぱく質の量)
  2. 熱測定 24(3)「卵白アルブミンの熱的特性」。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscta1974/24/3/24_3_118/_pdf (不透明ゲルの構造・透明ゲルの実験)
  3. 科学技術振興機構 機構報 第1301号(2018年1月5日)。https://www.jst.go.jp/pr/info/info1301/index.html (加熱で変性し網目をつくって固まる)
  4. 京都吉兆 徳岡邦夫コラム「タンパク質が固まるとは」。https://kyoto-kitcho.com/column-tokuoka/protein/ (立体構造の崩れと凝集・オボアルブミンの凝固温度)
  5. NomNomenon「Eggs-tra white」。https://www.nomnomenon.com/egg-white-transparent-to-white-chemistry-physics/ (タンパク質の大きさと光の波長・英語の一般向けサイト)
  6. Biology Insights「Why Does Egg White Go From Clear to White When Cooked?」。https://biologyinsights.com/why-does-egg-white-go-from-clear-to-white-when-cooked/ (網目が光を散らす・英語の一般向けサイト)
  7. ことわり料理「卵の火入れ」。https://www.kotowari-cooking.com/note/preparation/heat-control/ingredients/egg-heat-control (60℃と80℃の目安)
  8. JA全農たまご「卵白が濁っているたまごがあるのはどうして?」。https://www.jz-tamago.co.jp/customer/atoz/basic/a2z00018033/ (産みたての白濁)
  9. 特許 JPS63230038A「塩存在下で透明ゲルを形成する調整卵白」。https://patents.google.com/patent/JPS63230038A/ja (pHと塩で透明ゲルになる特殊条件の例)

なおした ところ

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