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扇風機せんぷうきの 風に あたると、どうして すずしく なるの?

扇風機は空気を冷やしていないのに、なぜ涼しく感じるのか ── 肌の上の空気と汗の話

扇風機の涼しさの正体 ── 境界層の入れ替えと汗の蒸発、そして気温35℃の線

分野:技術

せんぷうきの 風に あたると、すずしいですね。ところが、へやの 空気の 温度は、ほとんど 下がって いません。

では、なにが すずしく して いるのでしょうか。手がかりは、はだの すぐ上の 空気と、あせです。

扇風機の前に座ると、すっと涼しくなります。それなのに、扇風機は冷たい空気を作っているわけではなく、部屋の空気を動かしているだけだと説明されています[1]。

空気が冷えていないのに、なぜ涼しいのか。ヒントは、肌のすぐ上にある目に見えない空気の層と、汗にあります。さらに、風が「逆に暑い」になる日があることまで、研究をたどります。

扇風機は空気の温度を下げない。それでも風に当たると涼しく感じるのは、体からの熱の逃げ方が変わるためだと説明されている[1]。2024年のレビュー論文は、その仕組みを、皮膚上の境界層の入れ替えと汗の蒸発の促進として整理している[2]。

一方で、気温が皮膚温(約35℃)を超えると、同じ風が熱を運び込む側に回りうる。仕組みと、その線引きをめぐる研究者の意見の違いを、出典つきで見ていく。

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1. すずしい のに、空気は ひえて いない?

1. 涼しいのに、空気の温度は同じ

1. 扇風機は空気を冷やさない

せんぷうきは、つめたい 空気を 出して いるのでは ありません。へやの 空気を うごかして いるだけです。風を おくる だけでは、空気 じたいは ひえません[1]。

それでも すずしく 感じるのは、わたしたちの 体の ほうで、ねつの にげ方が かわるからです。

この 「にげ方」を、つぎの 章から 見て いきます。

扇風機は、冷たい空気を出す機械ではありません。部屋にある空気を動かしているだけです。風を送るだけでは、空気そのものは冷えない、と説明されています[1]。

涼しく感じるのは、空気ではなく人の体のほうで、熱の逃げ方が変わるためです。逃げ方は主に2つあり、次の章から順に見ていきます。

扇風機は、冷えた空気を送り出しているのではない。室内の空気を動かす機械であり、風を送るだけでは空気自体を冷やさない。涼しく感じるのは、体側の熱の逃げ方が変わるためだと説明されている[1]。

体からの放熱には、皮膚のまわりの空気による対流と、汗の蒸発の2つがある。2024年のレビュー論文(Meadeら)は、扇風機がこの両方に関わると整理している[2]。以下、それぞれを見る。

2. はだの まわりの 「見えない うわぎ」

2. 肌にまとわりつく、動かない暖かい空気

2. 皮膚上の境界層と対流による放熱

はだの すぐ 上には、じぶんの ねつで あたたまった 空気が ひっついて います。見えない うすい うわぎを きて いるような ものです。

風が ふくと、この うわぎが ふきとばされ、まわりの すずしい 空気が はだに ふれます。ただし ほんとうは、うわぎは 空気で、きせて いるのは じぶんの ねつです。

ある 研究のまとめでは、気温が はだの 温度より ひくい ときに、せんぷうきは この あたたかい 空気が できるのを ふせぐ、と 書かれて います[2]。

肌のすぐ上には、体温で暖められて動きにくくなった空気の層ができます。専門用語では境界層といいます。見えない薄い上着を着ているようなものですが、この上着は空気でできていて、着せているのは自分の体の熱です。

2024年のレビュー論文は、気温が皮膚温より低いとき、扇風機は主に、この暖かい空気の層ができるのを防ぐことで熱の放散を速める、と整理しています[2]。層が薄いままなら、皮膚と空気の温度差が大きく保たれるので、熱がそのぶん移りやすくなります。

汗がほとんど出ていないときでも、風が涼しく感じられるのは、この効果が主に働くためと考えられます。ただしこの点は、資料では1つのレビューの記述にもとづいています。

皮膚のすぐ上には、皮膚からの熱で暖まった、動きの少ない空気の層(境界層)ができる。層があると皮膚と周囲の空気との温度差が小さくなり、対流による放熱が鈍る。Meadeらのレビューによれば、扇風機は、この暖かい停滞した境界層の形成を防ぐことによって、対流による熱損失を主に加速する[2]。

これが効くのは、気温が皮膚温(約35℃)より低い場合である。汗が出ていない状況でも、風を涼しく感じることはこの仕組みで説明できる。

3. あせを かわかす ちから

3. 汗が乾くとき、熱が奪われる

3. 汗の蒸発と潜熱 ── 2426 J/g

もう 1つは、あせです。あせは、かわく ときに、まわりから ねつを うばって いきます。だから、ぬれた ところに 風を あてると ひんやりします。

はだの 上の 空気は、あせで しめって いると、あせが かわきにくく なります。風は、その しめった 空気を、かわいた 空気に かえて くれます[2]。

あせ 1グラムが かわく ときに うばう ねつは、やく 2.4キロジュール。これは、水 やく580グラムの 温度を 1度 上げる ほどの ねつです。あせが たくさん 出る 人だと、1時間に 2リットル いじょうに なる ことも あります[2]。

汗は、肌の上で蒸発するときに、周りから熱を奪います。汗1gが蒸発するときに奪う熱は、約2426J(約2.4kJ)です[2]。水1gを1℃温める熱が約4.2Jなので、汗1gが乾くだけで、約580gの水を1℃温められるほどの熱が体から出ていく計算になります。

ただし、肌の上の空気が汗の水蒸気でいっぱいだと、汗は乾きにくくなります。扇風機は、この湿った空気の層を、比較的乾いた空気に入れ替えます。皮膚と周りの空気の水蒸気圧の差が広がるので、同じ汗の量でも、より多くが蒸発できます[2]。

汗の最大量は毎時2L以上にもなり、蒸発による熱の放散は、人が自分で行う冷却のしくみのなかで最も強力だとされています[2]。

汗の蒸発潜熱は2426 J/gである(kJ/gではない)。汗1gの蒸発でおよそ2.4kJが奪われる。水の比熱を約4.18 J/(g·℃)とすると、水約580gを1℃上げる熱量に当たる(筆者の計算)。最大発汗量は毎時2L以上に達し、蒸発による放熱は人の自律的な冷却機構で最も強力とされる[2]。

扇風機は、皮膚上の湿った(飽和した)空気の層を比較的乾いた空気に置き換えて、皮膚と環境の水蒸気圧の差を広げる。その結果、同じ汗量でより多くが蒸発し、蒸発効率が上がる[2]。

まとめると、扇風機は「対流で熱を運び去る」ことと「汗の蒸発を進める」ことの2つで体の熱を逃がす。どちらも気温が皮膚温より低いことが前提になる。

4. あつすぎる 日は、ぎゃくに あつく なる?

4. 気温が体温に近づくと、風は味方でなくなる

4. 気温が皮膚温を超えるとき ── 乾いた熱の獲得

風が すずしいのは、空気が はだより ひんやり して いる ときです。

気温が はだの 温度(やく35度)より 高いと、はだの まわりの 少し すずしい 空気を、あつい 空気に かえ つづけて しまいます。すると、はだが ねつを うけとる ほうが 大きく なる ことが あります[2]。

さらに、あせが 出にくい 人では、あせが かわく はたらきも 弱く なる ことが あります。そのため、気温が 35度を こえる ときは、とくに あせが 出にくい 人には せんぷうきを すすめない ように、と 研究者は のべて います[2]。

扇風機が冷やしてくれるのは、空気が皮膚より冷たいときです。気温が皮膚温(約35℃)を超えると、肌の上にあった比較的冷たい空気の層を、熱い空気で入れ替え続けることになり、乾いた熱の吸収がかえって増えるとされています[2]。

WHOやCDCなどの保健機関は、気温が約35℃以上では扇風機の使用を勧めていません。2024年のレビューも、この温度を超えると扇風機は深部体温を有意に下げるには不十分だとし、特に65歳以上など汗の出にくい人には、これまでどおり勧めないよう助言しました。ただし、風が体に熱を運び込む効果と、汗の蒸発が進む効果のどちらが大きいかは条件によるため、「必ず熱中症を防げない」と言い切っているわけではありません[2]。

もちろん、これは「35℃を1度でも超えたら必ず逆効果」という意味ではありません。次の章で見るように、線の引き方には意見の違いがあります。

気温が皮膚温(約35℃)を超えると、扇風機は皮膚上の比較的冷たい境界層を熱い空気で絶えず置き換え、乾いた熱の獲得(dry heat gain)を悪化させる[2]。

WHOやCDCなどの保健機関は、約35℃以上では扇風機の使用を勧めていない。2024年のレビューも、35℃超の扇風機の効果は深部体温を有意に下げるには不十分だとし、特に発汗能力が下がっている人(例:65歳以上)には、引き続き使用を勧めないよう助言した。ただし、乾いた熱の獲得が増える一方で蒸発による放熱も起こりうるため、効果は条件によって変わり、「必ず防げない」と断定しているわけではない[2]。

ただし、この35℃の線は絶対のものではない。次章で、別の研究の見方を併記する。

5. 「なんど から あぶない?」は、まだ 話し合い中

5. 湿った暑さと乾いた暑さ、そして専門家の意見

5. 実験とモデルからの示唆 ── 35℃の線をめぐる議論

2019年に、男の人 12人に きょうりょくして もらい、2時間、あつい へやに いる じっけんが ありました。あつくて しめった へやでは、せんぷうきが 体の 中の 温度や しんぞうの ふたんを へらしました。ところが、とても あつくて かわいた へやでは、しらべた こと ぜんぶで よくない けっかでした[3]。

また、べつの 研究者は、あぶなく なる 温度は しつどや 年れいで かわるかも しれない と 考えて、35度という 1本の 線に 「ほんとうに それで いいのかな」と 問いかけて います[4]。

「なんど から 気を つけるか」は、しつどや 年れいも かかわって いて、むずかしい もんだい なのです。

2019年の実験(Morrisらの研究、健康な男性12人が協力)では、2時間の模擬的な暑さにさらされました。暑くて湿った条件では、扇風機が深部体温と心臓の負担を下げ、快適さも上げました。一方で、非常に暑く乾いた条件では、調べたすべての項目で不利な結果になりました[3]。

2021年には、Morrisらがモデル研究にもとづき、扇風機が不利になる温度は湿度や年齢によって変わりうるとして、35℃という一律の線に疑問を示しました[4]。

これに対して2024年のレビュー(Meadeら)は、35℃を超える扇風機は勧めない、という助言を続けています[2]。2019年の実験は「湿り気しだいで結果が逆になる」ことを示し、2021年のモデルは「線は1本でよいのか」を問い、2024年のレビューは「35℃超では慎重に」という立場を保っています。

Morrisらの2019年のAnnals of Internal Medicineの研究では、健康な男性12人が協力し、2時間の模擬暑熱曝露を行った。暑くて湿った条件では扇風機が深部体温と心臓への負担を下げ、快適さも高めたが、非常に暑く乾いた条件では、すべての測定項目で不利だった[3]。

これに対し、Morrisらは2021年のモデル研究にもとづき、扇風機が不利になる温度は湿度や年齢によって変わりうるとして、35℃という一律の線に疑問を示した[4]。

2024年のレビューは、35℃超では引き続き使用を勧めない立場を示している[2]。一律の線か、湿度や年齢を考える個別の判断か。三つの研究は、この問いの別々の側面を見ている。

6. ぬれた うでで、風を たしかめて みよう

6. 濡れた腕と乾いた腕で、風のちがいを比べる

6. 出口 ── 自分の腕で確かめる/原典を読む

つかうのは、うちわか、せんぷうきです。あついのが にがてな 人は、へやが むしあつく ない ときに して ください。

うでの 内がわを、かるく ぬらした タオルで ふいて、風を あてて みましょう。ぬれて いない ほうの うでに あてた ときと くらべると、どちらが すずしいでしょうか。ぬれた ほうが すずしければ、あせと 同じ はたらきが 見つかった ことに なります。

こんどは、ぬらして いない ほうの うでを、うちわで ゆっくり あおいで みましょう。ぬれた うでと、どんな ちがいが あるでしょうか。

うちわか扇風機を使って、腕で試してみます。涼しい部屋か、むし暑くない時間を選び、無理をしないでください。

腕の内側を、少し湿らせたタオルでふいてから風を当て、何もしていない腕に風を当てたときと比べます。どちらが涼しく感じるでしょうか。濡れているほうが涼しければ、汗の蒸発と同じ仕組みを、自分の腕で感じたことになります。

次は、うちわで自分をあおいだときと、扇風機に当たったときで、涼しさの感じ方がどう違うかも試してみましょう。風の強さや当たる面積が、涼しさにどう関わるかが見えてきます。

うちわか扇風機を用い、腕の内側を軽く濡らしたタオルでふいた腕と、乾いたままの腕とで、風を当てたときの涼しさを比べてみる。気温が高すぎない日に、無理のない範囲で行うこと。蒸発が進むと涼しさが増すという、汗と同じ働きを確かめられる。

もう一歩進めるなら、濡らした腕と乾いた腕に、同じ距離から同じ風を当て、涼しさの差を比べるとよい。風の強さや距離を変えると、差の出方がどう変わるかも観察できる。出典の詳細は、下の情報源一覧にある[2]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:Mental Flossの解説、Meadeらの2024年のレビュー論文、2019年の研究を紹介するScienceDailyの記事、Morrisらの2021年の研究を紹介するページを使いました。汗1gが奪う熱を水の温度に置きかえた数字は、筆者の計算です。

  1. Mental Floss「How Does a Fan Work to Cool You Off?」。 https://www.mentalfloss.com/article/57774/how-does-fan-work-cool-you (扇風機は空気の温度を下げないという説明について)
  2. Meade ほか「Lancet Planetary Health」2024年8巻e256-e269(レビュー論文)。 https://heathealth.info/wp-content/uploads/PIIS2542519624000305.pdf (境界層、汗の蒸発、潜熱、35℃の線について)
  3. ScienceDaily「Meade らの2019年の研究の紹介記事」。 https://www.sciencedaily.com/releases/2019/08/190805181627.htm (湿った暑さと乾いた暑さでの実験結果について)
  4. Morris ほか「Lancet Planetary Health」2021年の研究の紹介ページ(GHHIN)。 https://ghhin.org/resources/electric-fan-use-for-cooling-during-hot-weather-a-biophysical-modelling-study/ (35℃の一律の線への異論について)

なおした ところ

更新履歴

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