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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

でんちを つないだ ままだと、はりは うごかなかった ── ファラデーの ふしぎな じっけん

電池につないだままでは、針は動かなかった ── ファラデーが見つけた「変わるとき」の電気

電池の電流が変わる瞬間にだけ、隣のコイルに電流が生まれた ── ファラデーの1831年の実験と、発電機・ICカードへの道

分野:技術

1831ねん、ファラデーという 人が、てつの わに でんせんを まいて、でんちに つなぎました。ところが、はりは ずっと ふれては くれません。ふれたのは、つなぐ しゅんかんと、はなす しゅんかんだけでした。

どうして「かわる とき」だけ、でんきが うまれるのでしょう。この ふしぎが、はつでん所や ICカードに つながって いる ことが わかります。

1831年、ファラデーは鉄の輪に電線を巻き、一方を電池につなぎました。もう一方につないだ検流計の針が振れたのは、電池をつないだ一瞬と、はずした一瞬だけでした。つないだままでは、針はすぐ元の位置に戻ったのです。

なぜ、変わるときにだけ電気が生まれるのでしょうか。その発見の場面から、発電機や交通系ICカードまで、同じ考え方がつながっていることが分かります。

ファラデーが1831年に行った電池とコイルの実験では、電池を接続し続けても検流計の針は戻り、反応が出たのは接続した瞬間と切った瞬間だけだった[2]。電流が「ある」ことではなく「変化する」ことが、別の回路に電流を生んでいたことになる。

この性質は、なぜ発電所の発電機や、電池を持たないICカードにまで使われるのか。発見の場面、ヘンリーとの関係、発電機への展開、ICカードの順に、資料から読み取ると分かる。

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1. どうして はりは すぐ もどったの?

1. つないだままなのに、針が戻ったのはなぜか

1. 1831年、電池をつないだコイルの実験で分かった、誘導電流が出る瞬間

ファラデーは、まるい てつの わを つくりました。そこに、でんせんを ふたくみ まきます。ひとつは でんちに、もうひとつは、でんきが ながれると はりが うごく きかい(けんりゅうけい)に つなぎました[1]。

でんちを つなぐと、はりが ぴくっと ふれました。ところが、つないだ ままに しておくと、はりは すぐ もとの ばしょに もどります。でんちを はなすと、こんどは はんたいに ふれました[2]。

ずっと ながれつづけると おもった のに、ふれたのは 「かわる とき」だけ。ここに、いちばんの ふしぎが ありました。

実験の道具は、丸い軟鉄の輪でした。太さ2.2cmほどの鉄の棒を溶接して、外側の直径は15cmほどにしてあります[2]。この輪に電線を2組巻き、一方を電池に、もう一方を検流計につなぎました[1]。検流計は、電流が流れると針が振れる道具です。

この鉄の輪の実験は、1831年8月29日と伝えられています[1]。

針の動きについては、ファラデーの論文の、電線を巻いたコイルを電池につなぐ実験に、はっきり書かれています。電池をつなぐと、針は振れました。でも、つないだままにしておくと、針は何事もなかったように元の位置に戻りました。電池を外すと、今度は逆向きに振れました[2]。

電池側のコイルには電流が流れ続けているはずなのに、検流計は反応しません。反応するのは、電池をつないだ瞬間と外した瞬間だけでした。

ファラデーの第1系列の論文によれば、装置は軟鉄の丸棒(太さ7/8インチ、約2.2cm)を溶接した外径6インチ(約15cm)の輪で、検流計は輪から3フィート(約90cm)離して置かれた[2]。二次資料では1831年8月29日の実験とされ[1]、巻き方は資料ごとに細部が異なるため、ここでは「電池側と検流計側の2組のコイル」と述べるにとどめる。

結果は意外なものだった。論文で接続・切断による針の動きが明記されているのは、電線を巻いたコイルを電池につなぐ実験の記述である。電池につなぐと針は動くが、接続を続けても針はやがて元の位置で静止し、電池を切ると逆向きに振れた[2]。鉄の輪の装置と日付は、これとは別に押さえておく必要がある。もし「電流が流れていれば、隣のコイルにも電流が出る」のであれば、接続中こそ針が振れ続けるはずである。ところが実際は、変化の瞬間だけに反応が出た。

では、これは電池というもの特有の現象なのか。ファラデーは、電池の代わりに磁石を使って確かめた。

2. じしゃくでも おなじ ことが おきるの?

2. 磁石を出し入れしても、電気は生まれるのか

2. 磁石の出し入れ ── 磁界が変わるときの電流

ファラデーは、でんちの かわりに じしゃくを つかいました。でんせんを まいた コイルに、じしゃくを さしこみます。すると、はりが ふれました[2]。

じしゃくを いれた ままに しておくと、はりは もどります。そして、じしゃくを ぬくと、はりは はんたいに ふれました[2]。

じしゃくを うごかしただけで、でんきが うまれたのです。でんちが なくても、じしゃくを うごかすと、はりは ふれました。

電池の代わりに、磁石を使っても同じことが起きました。電線を巻いたコイルに磁石を差し入れると、針が振れます。入れたままにすると、針は元に戻り、磁石を抜くと、逆向きに振れました[2]。

電池でも磁石でも、電気が生まれる場面には共通点があります。コイルのまわりの磁気の力が、変わっているのです。磁石を差し入れるときも、電池をつなぐときも、まわりの磁気の力が変わります。止まっているとき、つまり変わっていないときには、電気は生まれません。

のちに、コイルを通る磁気の量が変わる速さによって、生まれる電気の大きさが変わることが分かります。数式にまとめたのは、1845年のノイマンです[5]。

磁石をコイルに挿入すると針が振れ、挿入したままだと元の位置に戻り、引き抜くと逆向きに振れる[2]。電池の接続・切断の実験と合わせると、起電力を生むのは電流や磁石の存在そのものではなく、コイルを貫く磁界が変化することだと読める。

この関係は、のちに定量化された。誘導起電力の大きさは、回路を貫く磁束が変化する速さで決まる。数式の形にしたのは1845年のノイマンで、起電力の向きに関する法則は1834年のレンツによる[5]。

電池の実験で使った鉄の輪も、のちに「最初の変圧器」と呼ばれた。現代の変圧器も、同じ原理でつくられている[1]。

3. ほかにも きづいた 人は いたの?

3. 同じ現象に、ほぼ同じころ気づいた人がいた

3. ヘンリーの独立した発見 ── 発表の先後と、単位「ヘンリー」

じつは、アメリカの ジョセフ・ヘンリーも、1832ねんに おなじ ふしぎに きづいて いました[3]。

でも、さきに はっぴょうしたのは ファラデーでした。そのため、ファラデーが はっけん者と みとめられて います[3]。

ヘンリーは、わすれられた わけでは ありません。コイルの せいしつを はかる たんいの なまえに、「ヘンリー」が のこって います[3]。

アメリカのジョセフ・ヘンリーも、1832年に、独立にこの現象に気づいていました。けれども、先に結果を発表したのはファラデーです。そのため、ファラデーが発見者と認められています[3]。

ヘンリーは、装置を調べるうちに、コイルが自分自身の電流の変化で電気を生む性質(自己誘導)にも気づきました。ファラデーも、同じころに気づいています[3]。この性質をはかる単位は、彼の名前にちなんで「ヘンリー(H)」と呼ばれます[3]。

絶縁した電線を鉄心にすきまなく巻き、強い電磁石をつくったのも、ヘンリーが最初だとされています[3]。先に発表した人の名は発見に残り、もう一人の名は単位に残りました。

ジョセフ・ヘンリー(米)も1832年に独立に誘導の現象を見いだしたが、ファラデーが先に結果を発表したため、公式にはファラデーが発見者とされる[3]。発見の優先権は、早く気づいたかどうかではなく、先に公表したかどうかで決まることがあるのだ。

ヘンリーの名は、自己誘導の研究と単位に残った。自己誘導は、コイル自身を流れる電流の変化によって、そのコイルに起電力が生じる性質で、ヘンリーは装置からこれを認識し、ファラデーもほぼ同時期に認めていた。誘導の単位「ヘンリー(H)」は彼にちなむ[3]。

ヘンリーは、絶縁した導線を鉄心に密に巻いて強力な電磁石を作った最初の人物とされ、1835年のリレーの仕事は実用電信の土台になった[3]。誘導の原理は、実験室の中だけでなく、電気を利用する道具の設計にも広がっていく。

4. まわしつづけると、でんきは どうなるの?

4. 磁石や円板を回し続ければ、電気は途切れない

4. 発電機への展開 ── 相対運動から連続的に起電力を得る

「かわる とき」に でんきが できるなら、うごかし つづければ よいのでは ないでしょうか。

ファラデーは、1831ねんの うちに、じしゃくの あいだで どうの まるい いたを まわす そうちも つくりました[5]。これが、はつでんきの はじまりの ひとつです。

いま、はつでん所では、タービンという はねぐるまを まわして、はつでんきから でんきを とりだします。かりょくと げんし力は じょうきで、水力は 水の ちからで、タービンを まわします。やり方は ちがっても、でんきを つくる ところは にて います[4]。

ただし、たいようこうはつでんは ちがう しくみです。

つないだり外したりするたびに電気が生まれるなら、動かし続ければよい。その考えに沿うように、ファラデーは1831年のうちに、磁界の中で銅の円板を回す発電の装置もつくりました[5]。

磁石とコイルの位置が相対的に動くと、電気が生まれます。これが発電機の土台です[4]。火力・原子力・水力などの発電所では、タービンを回し、発電機の中で電磁誘導によって電気を取り出します[4]。ただし、太陽光発電は電磁誘導ではありません。

発見から10年後には、発電機が銅製品の電気めっきに使われました。1841年にはイギリスのバーミンガムで、動力で動く発電機が銅製品の電気めっきに使われています。1858年には、ノース・フォアランド灯台に、電灯用の発電機が置かれました[1]。

誘導が「変化」で起きるなら、変化を連続的に与える機構があればよい。ファラデーは1831年のうちに、磁界の中で銅の円板を回転させる単極発電機をつくった[5]。回路と磁界の相対運動で生じる起電力は、発電機の動作原理そのものである[4]。

火力・原子力・水力などの発電所では、蒸気や水でタービンを回し、発電機で電磁誘導により電気を得る[4]。太陽光発電は、この原理による発電ではない。

実用化は早かった。1841年にはバーミンガムで動力駆動の多極発電機が銅製品の電気めっきに使われ、1858年にはノース・フォアランド灯台に電灯用の発電機が設置された[1]。発見から30年足らずで、発電機は工場と灯台の仕事を始めていたことになる。

5. でんちの ない カードが どうして うごくの?

5. 電池のない交通系ICカードが動く理由

5. 非接触ICカードの電力供給 ── 電波を受けたアンテナに生じる電流

えきの かいさつで ピッと かざす ICカードには、でんちが ありません[6]。

よみとり きが でんぱを だします。カードの なかの アンテナが それを うけると、でんきが うまれます。その でんきで、カードの ICが うごきます[6]。

よみとりきが でんぱを おくれる きょりは、カードから 10センチほどです[6]。これは、「かわる もの」から でんきが うまれる かんがえ方に つながって います。

ほかにも、IHの ヒーターは、コイルに でんきを ながして、なべの なかに うずを つくり、なべを あたためます[7]。

交通系ICカードには、電池が入っていません。読み取り機が出す電波をカードの中のアンテナが受けたときに生じる電流で、ICの読み書きをしています[6]。周波数は13.56MHzで、電波が届く範囲は約10cmです[6]。

外から変化する電波を受けて、電気が生まれる。ファラデーが見つけた、「変わるときに電気が生まれる」という考え方につながる仕組みです。

IHクッキングヒーターも、近い考え方です。コイルに電流を流すと磁力線が生じ、金属の鍋を通るとき渦電流に変わります。鍋の電気抵抗で熱が出る、とメーカーは説明しています[7]。

非接触の交通系ICカードは電池を内蔵せず、読み取り装置の電波をカード内のアンテナが受けて生じる電流でICの読み書きを行う。周波数は13.56MHz(13.56メガヘルツ)、通信できる距離は約10cmである[6]。

これは、時間的に変化する電磁界から、受け手の導体に起電力が生じる点で、ファラデーの実験と同じ考え方に立つ方式と読める。電池の接続・切断が、読み取り機の発する変化する電波に置きかわっただけである。

IH調理器では、コイルに電流を流すと磁力線が生じ、これが金属の鍋を通るとき渦電流に変わり、鍋の電気抵抗で発熱する[7]。ここで示される熱効率(メーカー値)は条件つきの数字なので、ここでは使わない。

6. てまわし ライトで ためして みよう

6. 回している間だけ光るライトで確かめる

6. 出口 ── 手回しライトで、回している間と止めた後を観察する

てまわしの ライトが あれば、まわして みましょう。まわして いる あいだだけ、あかりが つきます。とめると、きえます。

「うごいて いる あいだだけ」でんきが できる。ファラデーの はりが、うごいた ときだけ ふれた ことと にて います。

ライトが ないときは、5の ICカードの はなしを よみ かえして、どうして よみとりきに ちかづけた ときだけ ピッと なるのか、かんがえて みましょう。

家に手回しライトがあれば、回してみましょう。回している間だけ光り、止めると消えます。中身は機種によって違いますが、回す力で電気をつくる道具です。

動いている間だけ電気が出る様子は、針が変化の瞬間にだけ振れた、ファラデーの実験とよく似ています。

ライトがなければ、5章のICカードの説明を読み返して、電池のないカードが読み取り機に近づけたときだけ反応する理由を考えてみましょう。

家に手回し式のライトがあれば、回している間だけ点灯し、止めると消える様子を確かめられる。中身は機種により異なるが、回転の力で電気をつくる道具である。

観察するときは、「回している間」と「止めた後」で、ライトの明るさがどう変わるかに注目するとよい。回す速さを変えると明るさが変わるかも試すと、誘導起電力の大きさが磁束の変化の速さで決まるという話と結びつけて考えられる。

ライトがなければ、ICカードが読み取り機に近づけたときだけ反応する理由を、5章の説明を読み返して考えてみるとよい。

資料案内として、ファラデーの論文『電気の実験的研究』第1系列の原文は[2]に載せてある(英語)。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:ファラデー自身の論文、物理学会の解説記事、百科事典、電気メーカーの説明、鉄道とITの解説記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. APS News "Faraday and electromagnetism"(2001年)。https://www.aps.org/apsnews/2001/08/faraday-electromagnetism (1831年の実験の日付、変圧器、発電機の早い利用について)
  2. Michael Faraday, Experimental Researches in Electricity, Vol.1(Project Gutenberg)。https://gutenberg.org/files/14986/14986-h/14986-h.htm (実験の道具の大きさ、針の振れ方について。一次資料)
  3. Joseph Henry(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Joseph_Henry (ヘンリーの独立の発見、自己誘導、単位について。二次資料)
  4. Electromagnetic induction(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Electromagnetic_induction (発電機の土台について。二次資料)
  5. Faraday's law of induction(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Faraday%27s_law_of_induction (円板の発電装置、数式化とレンツの法則について。二次資料)
  6. マイナビニュース「鉄道とIT 第8回」。https://news.mynavi.jp/article/railway_it-8/ (交通系ICカードの電力供給について)
  7. 三菱電機 IHクッキングヒーター「IHの仕組み」。https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ih_cooking/introduction/about/index.html (IH調理器の発熱の仕組みについて)

なおした ところ

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