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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ジャンプの とき、スケートの 選手せんしゅは どうして あんなに はやく まわれるの?

空中では回転の勢いを足せない ── 4回転ジャンプは「踏み切り」と「たたみ方」で決まる

4回転ジャンプの力学 ── 踏み切りの角運動量と、空中の慣性モーメントの小ささ

分野:技術

4回転ジャンプでは、選手せんしゅは 空中に 1秒びょうも いません。その あいだに、体を 4回 まわします。

空中では、もう 回る いきおいを たせない そうです。それなら、どうして あんなに はやく 回れるのでしょうか。この 記事を 読むと、その ひみつが 分かります。

4回転ジャンプで、選手が空中にいる時間は、およそ3分の2秒とされています[1]。その短い間に、体を4回まわします。1秒あたりに直すと、平均で6回転ほどです。

ところが、空中に出てしまうと、回転を新しく足すことはできません。では、なぜあんな速さで回れるのでしょうか。踏み切りの一瞬に何が起きているのか、空中で体をどう使うのか、成功と失敗の分かれ目まで見ると分かります。

4回転ルッツの滞空時間は約3分の2秒、回転速度は毎分300回転を超えるとされる[1]。だが、空中では回転の勢いそのもの(角運動量)を新しく作れない[1]。

ならば、この速さはどこから来るのか。踏み切りでの氷のひねり、空中での慣性モーメントの小ささ、そして成功と失敗を分けた測定結果まで、この速さが生まれる理由が分かる。

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1. 1秒びょうより みじかい あいだに、何回 まわる?

1. 3分の2秒で4回転する速さはどのくらいか

1. 4回転の「速さ」を数字にする

4回転ジャンプで 空中に いる 時間は、3分の2秒びょうぐらいだと いわれます[1]。1秒びょうの はんぶんより、すこし 長い だけです。

この 間に 4回 まわるので、1秒びょうに 直すと 6回ぐらいです。1秒びょうで 6回も 回る はやさです。

そんなに はやく まわる ために、選手せんしゅは 空中で がんばって 回るのでしょうか。じつは、大事なのは 空中に 出る 前です。

4回転ルッツの滞空は約3分の2秒、回転速度は毎分300回転を超えるとされています[1]。毎分300回転は、1秒あたり5回転です。また、4回転を3分の2秒で回ると、4÷(2/3)で平均は1秒あたり6回転になります。

この速さを、人間が氷の上で、自分の体だけで作ります。しかも、踏み切ってから着氷まで、途中で押し足すことはできません。

では、その回転の勢いは、いつ、どこで作られるのでしょうか。

4回転ルッツの滞空時間は約3分の2秒で、回転速度は毎分300回転を超えるとされる[1]。毎分300回転は毎秒5回転にあたる。滞空時間で単純に割れば、4回転の平均は4÷(2/3)=毎秒6回転で、資料の下限値と矛盾しない(最高速度と平均は別の量である)。

この回転を、人間が氷の上で、自分の体だけで作る。しかも次の章で見るとおり、離氷後は回転の勢いを足せない。では勢いはどこで作られるのか。

2. 空中で まわる いきおいは、いつ 作るの?

2. 勝負は、氷をける一瞬で決まる

2. 踏み切り ── 角運動量は氷から受け取る

なげた ボールは、手を はなれた あとで、はやく できません。ジャンプの 回転も にています。回る いきおいは、氷から はなれる 前に 決まります。ただし 人の 体は、かたちを かえて、回る はやさを かえられます。

回る いきおいを 作るのは、氷を けって とぶ ときです。選手せんしゅは、氷を 強く ひねるように おします[1]。その 力で、体が くるっと 回り はじめます。

4回転では、氷を おす 力が 3回転より 大きいと されます。3回転は やく200キロ分、4回転は やく250キロ分の 力です[1]。これは しりょうの ポンド表記を 直した 数字です。

回る いきおいを 作ったら、こんどは 空中で 何を すれば よいのでしょうか。

ジャンプの成否は、3つで決まると説明されています。踏み切りで、どれだけ回転の勢いを持って氷を離れるか。空中で、体をどれだけ小さくたためるか。そして、空中にいる時間です[2]。

このうち、回転の勢い(角運動量)は、踏み切りで氷を強くひねって作ります。空中に出たあとは、新しく足すことができません[1]。投げたボールが手を離れたあとで、速さを足せないのと似ています。ただし人の体は、形を変えて、回る速さを変えられます。

氷を押す力は、4回転ルッツで約550ポンド、3回転で約440ポンドとされます[1]。1ポンドは約0.454kgなので、約250kgと約200kgの重さに当たる力で、4回転のほうが約25%大きい計算です(550÷440=1.25)。

回転の勢いを踏み切りで持ち出したあと、空中では何ができるのでしょうか。

ジャンプの成否は、踏み切りで持ち出す角運動量、空中で小さくできる慣性モーメント、そして滞空時間の3つで決まる、と整理される[2]。このうち角運動量は、踏み切りで氷を強くひねって作る量であり、離氷後に新しく加えることはできない[1]。

氷を押す力の目安として、4回転ルッツで約550ポンド、3回転で約440ポンドが示されている[1]。1ポンド≒0.454kgとして、それぞれ約250kgf、約200kgfに相当し、比は550÷440=1.25、約25%増となる。二次資料のポンド表記の値なので、厳密な測定値としてではなく目安として扱う。

角運動量が固定されるなら、回転の速さを変える余地はどこに残るのか。

3. 空中で うでを たたむと、どうして はやく なるの?

3. 腕をたたむと、なぜ回転が速くなるのか

3. 慣性モーメントを小さくする ── 角運動量は変わらない

空中で 選手せんしゅは、うでを 体に ぴったり くっつけます。すると 回る はやさが ぐんと 上がります[2]。

体を ほそく すると、まんなかの ぼうの まわりに 体が あつまります。あつまる ほど、体は 回りやすく なります。そのぶん、おなじ いきおいでも、はやく 回れる のです。

ここで 大事な ことが あります。うでを たたんでも、回る いきおい そのものは ふえて いません[3]。回りやすさが かわった ぶん、はやさが かわったのです。

空中で腕を体に近づけると、回転しやすさ(慣性モーメント)が小さくなり、回転が速くなります[2][3]。腕を広げたときは、体の重さが軸から遠くに散らばっているので、回すのに手間がかかります。腕をたたむと、重さが軸の近くに集まり、同じ勢いでも速く回れるのです。

ここで誤解しやすいのは、腕を寄せると回転の勢いが増える、という考えです。角運動量は空中で変わりません。変わるのは、慣性モーメントと回転の速さの組み合わせです[3]。

ということは、踏み切りで同じだけ勢いを持って離れても、どれだけ細くたためるかで、回転数は変わるはずです。実際にはどうだったのでしょうか。

角運動量Lは、慣性モーメントIと角速度ωの積で、L=Iωと書ける。空中では外から回転させる力が働かないため、Lは一定になる。腕を体に引き寄せてIを小さくすれば、ωは大きくなる[2][3]。

誤解しやすいのは、腕を寄せると回転のエネルギーが増える、という読み方だ。Lが保存されたまま速さが上がるのは、Iの減少とωの増加が打ち消し合っているからで、腕をたたむ動作が新しい回転の勢いを生むわけではない[3]。

では、同じ空中の時間で、Iをどれだけ小さくできたかは、成否にどれほど効いたのか。

4. 4回転が せいこうする ときと、しっぱいする とき、何が ちがうの?

4. 成功と失敗を分けたのは、高さより「たたみ方」だった

4. King(2002)── 成功した4回転トウループの測定

4回転トウループを とぶ 人の ジャンプを くわしく 調べた 研究が あります。せいこうした ジャンプと、しっぱいした ジャンプを くらべました[4]。

すると、走る はやさ、上に とび上がる はやさ、空中に いる 時間は、あまり ちがいませんでした[4]。ちがったのは、体の 使い方です。

せいこうした ジャンプでは、とぶ とき、体が 回りやすい 度あいが 3分の1ほど 小さく、回る いきおいは 16パーセント 大きかったと いいます[4]。ただし、しらべた ジャンプは せいこうが 5回、しっぱいが 4回と すくないです。すべての 人に あてはまる とは いえません。

4回転トウループを調べた2002年の研究があります。成功した跳びと失敗した跳びを比べると、助走の速さ、踏み切りの上向きの速さ、滞空時間は、どれも似ていました[4]。

差が出たのは、踏み切りの瞬間の体でした。成功した跳びでは、体の軸まわりの慣性モーメントが33%小さく、角運動量が16%大きかったと報告されています[4]。

つまり、この研究では、高く長く跳ぶことより、回転の勢いをどう作り、体をどれだけ細くまとめるかのほうが、成否と結びついていました。ただし調べたジャンプは成功5本、失敗4本と少なく、ほかの選手にも当てはまるとは限りません。これだけで一般化はできず、人によっても違いうると考えられています[4]。

とはいえ、こうした技術は、はじめから今のように使えたわけではありません。ジャンプは、どんな道をたどってきたのでしょうか。

King(2002)は、4回転トウループの成功試技と失敗試技を比較した。助走速度、踏み切り時の鉛直速度、滞空時間は両者で似ていた。一方、成功試技では、体幹の長軸まわりの慣性モーメントが踏み切り時に33%小さく、角運動量が16%大きかった[4]。

この結果は、滞空時間の長さより、回転の作り方と体のたたみ方が成否を分けた、と読める。ただし調べたジャンプは成功5本・失敗4本と少なく、他の選手や他のジャンプに一般化する根拠にはならない。原文は抄録で確認した数字であり、論文本体の条件(対象者の数や分析の方法)までは確認していない。

この知見を得るまでの道のりで、ジャンプ自体はどう進んできたのか。

5. 4回転は、いつから みとめられたの?

5. 4回転が「公認」されるまで

5. 4回転の公認 ── 1988年ブダペスト

4回転ジャンプを はじめて 大会で みとめられたのは、1988年です。カナダの カート・ブラウニングさんが、世界せんしゅけんの ブダペスト大会で 4回転トウループを とびました[7]。

その 2年 前にも、4回転を とんだ 人が いました。でも、その ジャンプは、あとで みとめられませんでした[7]。

ここで 大事なのは、「はじめて とんだ」では なく、「はじめて せいしきに みとめられた」ことです。

大会で公式に認められた最初の4回転ジャンプは、1988年3月25日、ブダペストの世界選手権で、カナダのカート・ブラウニングが跳んだ4回転トウループとされます[7]。

実は、その2年前の1986年の欧州選手権で、ヨゼフ・サボチクが4回転トウループを跳んでいました。この跳びは、のちに公認されなかったとされます[7]。

ですから、ここでは「初めて跳んだ」ではなく「初めて公認された」と書くのが正確です。

では、いちばん回転が多い今のジャンプは、どこまで来たのでしょうか。

大会で公認された最初の4回転は、1988年3月25日、ブダペスト世界選手権でカート・ブラウニング(カナダ)が跳んだ4回転トウループとされる[7]。この記録は、英語版ウィキペディア経由の二次情報であり、引用元の一次資料までは確認していない。

1986年の欧州選手権では、ヨゼフ・サボチクの4回転トウループが、このジャンプは、のちに公認されなかったとされる[7]。「初めて跳んだ」ではなく「初めて公認された」という書き方になるのは、このためだ。

踏み切りと回転の技術が積み重なるなかで、では最も回転の多いジャンプは、どこまで来たのか。

6. アクセルは、どうして とくべつなの?

6. 前向きに跳ぶアクセル ── 1882年から4回転半まで

6. アクセルの特別さ ── 1882年ウィーンから4回転アクセル(2022)へ

ジャンプには 6しゅるいが あります。その なかで、アクセルだけは、前を むいて とび上がります。ほかの 5しゅるいは、うしろ むきで とびます[5]。

ところが、おりる ときは 後ろむき です。だから、アクセルは、ほかの ジャンプより 半回転 多く 回ることに なります[5]。

名前は、ノルウェーの アクセル・パウルセンさんに ちなみます。1882年、ウィーンの こくさい大会で、スピードスケートの 靴くつで あたらしい ジャンプを 見せ、とくべつな しょうを もらった と つたえられて います。1回転半だったと する しりょうが あります[8]。

それから 140年あまり あとの 2022年9月、アメリカの イリア・マリニンさんが、4回転半の アクセルを、大会で はじめて せいこうさせました[6]。

ジャンプは6種類あり、そのうちアクセルだけが前向きに踏み切り、後ろ向きに着氷します。そのため、ほかのジャンプより実質で半回転多く回ることになります[5]。

名前は、ノルウェーのアクセル・パウルセンに由来します。1882年のウィーンの国際大会で、スピードスケート用の靴を履いて新しいジャンプを見せ、特別賞を受けたと伝えられています。前向きに踏み切る1回転半だったと書く資料もありますが、当時の跳び方が今のアクセルと全く同じかどうかは分かっていません[8]。

2022年9月、アメリカのイリア・マリニンが、4回転アクセル(4回転半)を大会で初めて成功させました。報道では日付が14日と15日に分かれるため、ここでは「9月」と書きます。基礎点は12.50で、4回転6種類の中でいちばん高い点です[6]。

140年あまりのあいだに技術が積み重なり、前向きの踏み切りから4回転半まで跳べるようになりました。

6種類のジャンプのうち、アクセルだけが前向きに踏み切り、後ろ向きに着氷する。そのため、同じ回転数のほかのジャンプより、実質で半回転多く回ることになる[5]。この6種類の説明は、新聞社の検索結果の抜粋のみで確認したもので、競技団体の原文では確かめていない。

名称の由来は、ノルウェーのアクセル・パウルセンである。1882年のウィーンの国際大会で、スピードスケート靴で新しいジャンプを見せて特別賞を受け、のちに彼の名がついたとされる。前向き踏み切りの1回転半と記す資料がある一方、当時の跳び方が現在の1回転半(1A)と全く同じかどうかは、確認できていない[8]。

2022年9月、イリア・マリニン(アメリカ)が4回転アクセルを大会で初めて成功させた。NBCは9月14日(米国時間)と伝え、15日とする報道もあるため、「9月」にとどめる。基礎点は12.50で、4回転6種の中で最も高い[6]。

研究者の間には、人間の限界は5回転前後だとする意見もあるが、これは推測であり、確かな事実として扱わない。

7. テレビで、たしかめて みよう

7. 放送で、「たたむと速くなる」を確かめる

7. 出口 ── 放送映像で確かめる

テレビや どうがで フィギュアスケートを 見る ときは、2つの ところを 分けて 見て みましょう。とぶ 前に 氷を おす ところと、空中で うでを たたむ ところです。

「回る いきおいを 作る ところ」と「はやさを かえる ところ」が、べつべつに 見えて きます。

フィギュアスケートの放送を見るときは、跳ぶ前の氷を蹴る場面と、空中で腕をたたむ場面を分けて見てみてください。回転の勢いを作る場面と、速さを変える場面が、別々に見えてくるはずです。

放送や動画で4回転を見るなら、踏み切りの瞬間と、空中で腕を体に引き寄せる瞬間を分けて見るとよい。前者が角運動量を作る場面、後者が慣性モーメントを小さくして角速度を上げる場面にあたる。腕をたたむ前後で回転の速さがどう見えるか、自分の目で確かめられる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:George Mason大学、Smithsonian Magazine、Scientific American、King(2002)の抄録、神戸新聞、NBC Sports、ウィキペディア、Skate Guardブログを使った。ポンドからキログラムへの換算と、回転数の計算は、筆者が行った。

  1. George Mason University「Blades & Edge Physics」。 https://science.gmu.edu/news/blades-edge-physics-how-george-masons-ilia-malinin-lands-quad-lutz (踏み切りで作る角運動量、4回転の滞空時間と回転速度、氷を押す力について)
  2. Smithsonian Magazine「How Physics Keeps Figure Skaters Gracefully Aloft」。 https://www.smithsonianmag.com/science-nature/how-physics-keeps-figure-skaters-gracefully-aloft-180968051/ (ジャンプの成否を決める3つの要素、腕をたたむと回転が速くなることについて)
  3. Scientific American「Quad God」。 https://www.scientificamerican.com/article/quad-god-ilia-malinin-and-the-science-of-figure-skatings-near-impossible/ (慣性モーメントを小さくして回転の速さを上げること、角運動量は変わらないことについて)
  4. King D. (2002) 4回転トウループの生体力学的分析、Medicine & Science in Sports & Exercise(sponetの抄録)。 https://sponet.de/sponet/Record/4012759 (成功と失敗の跳びの比較について。抄録のみ確認)
  5. 神戸新聞「ジャンプの見分け方は?」。 https://www.kobe-np.co.jp/rentoku/keyword/201910/0010823033.shtml (アクセルだけが前向きに踏み切ることについて)
  6. NBC Sports「Ilia Malinin quadruple Axel」。 https://www.nbcsports.com/olympics/news/ilia-malinin-quadruple-axel-figure-skating (4回転アクセルの初成功と基礎点について)
  7. Wikipedia「Quadruple jump」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Quadruple_jump (4回転が初めて公認された大会について)
  8. Skate Guard「The 1882 Great International Skating」。 https://www.skateguardblog.com/2015/07/the-1882-great-international-skating.html (1882年のアクセル・パウルセンのジャンプについて)

なおした ところ

更新履歴

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