1. いとが でるのは、こわれて いるから?
1. 糸が出るのは、こわれているからではない
1. 「出ていく」ことが目的の装置
さかなが ぐいっと ひくと、リールの いとが ジーッと でて いきます。この しかけを「ドラグ」と いいます。
もし いとが まったく でなかったら、どう なるでしょう。つよく ひかれた とき、いとが ぷつんと 切れて しまう ことが あります。ドラグは、いとを すこし だして さかなの いきおいを うけ ながし、いとが 切れるのを ふせぐ ためだ と いわれて います[2]。
つまり いとが でるのは、わざと です。
2. どうして、すべる ように できるの?
2. 中では、ワッシャーが押しつけ合っている
2. ワッシャー同士の摩擦 ── つまみの締め具合で滑り出しが決まる
リールの なかには、まるい うすい ぶひん(ワッシャー)が かさなって います。この ワッシャーどうしの 摩擦で、スプールの まわり やすさを かえて います[1]。
ドラグの つまみを つよく しめる ほど、ワッシャーは ぎゅっと くっつきます。すると すべりにくく なって、いとが でにくく なります。ゆるめると、ちょっとの ちからで いとが でます[1]。
ぶあつい 本の あいだに 紙を はさんで、ひっぱる ところを おもいうかべて ください。本を つよく おさえる ほど、紙は ぬけにくく なります。ただし ほんとうは、リールの なかの ワッシャーは、本と 紙より ずっと ちいさく、ふくざつです。
ドラグは、2種類のワッシャーを組み合わせ、ワッシャー同士の摩擦で滑りを調節する仕組みだと、釣り情報サイトの解説にあります[1]。二枚一組で少し湾曲したドラグワッシャーが押しつけ合い、そこからドラグプレートに摩擦がかかる、と説明する釣り人の記事もあります[2]。
ドラグつまみを強く締めるほど、ワッシャーの密着が強くなり、スプールが滑り出すまでに必要な力が大きくなります。反対に、緩めるほど少ない力で糸が出ていきます[1]。つまり、つまみは「この強さを超えたら滑る」という境目の高さを決めているのです。
ワッシャーの素材にも種類があります。カーボンクロスは耐久性が高く、フェルトは滑り出しがなめらかだといわれ、リールによって使い分けられています[1]。
スピニングリールのドラグは、2種類のワッシャー(座金)を組み合わせ、ワッシャー同士の摩擦を利用して滑りを調節する[1]。二枚一組の湾曲したドラグワッシャーが押しつけ合い、ドラグプレートに摩擦を掛ける、という説明もある[2]。
つまみを強く締めるほどワッシャーの密着度が上がり、スプールが滑り出すまでに必要な力が大きくなる。緩めれば、少ない力で糸が出る[1]。つまり、つまみは滑り出しの力の敷居を決める。ここでは摩擦の大きさで説明する。
ワッシャーの素材にはフェルトやカーボンクロスがあり、カーボンは耐久性、フェルトは滑り出しの滑らかさに優れると解説される。用途に応じて使い分けられる[1]。なお、投げるときにスプールの回転を抑えるベイトリールの「ブレーキ」は、魚が引いたときに糸を出すドラグとは別の機構である。
3. どれくらいの つよさに すれば いいの?
3. 目安の「3分の1」は、どこから出てきたのか
3. 「約1/3」の中身 ── 弱さを掛け合わせた結果
ドラグは、つよく しめすぎても、ゆるめすぎても こまります。しめすぎると いとが 切れやすく、ゆるすぎると さかなに ひっぱられる ばかりです。
ひとつの めやすとして、いとが 切れる ちからの 3ぶんの 1 くらい、と いわれる ことが あります[3]。9キロで 切れる いとなら、3キロ くらいです。
どうして 3ぶんの 1 なのでしょう。いとは、ほんとうは カタログの ちからでは 切れて しまう ことが あるからです。いとの ばらつきや むすびめなどを かんがえて、ドラグを ひかえめに する めやすが、3ぶんの 1 くらいです。
ドラグ設定の目安として、PEライン(編んだ釣り糸)の強力値の約3分の1、という数字がよく紹介されます。この数字は、いくつかの「弱さ」を掛け算した結果だと説明する釣り情報サイトがあります[3]。
そのサイトの計算はこうです。糸の製品ごとのばらつきを0.7、リーダー(先につなぐ別の糸)との結び目による弱さを0.7、全体の余裕を0.6〜0.7として、100に掛けると、29.4〜34.3。つまり、およそ3分の1になります[3]。
別の解説では、係数が少し違います。新品でも表示の約7割を実用値と考え、PEとリーダーの結び目は元の強さの85〜90%ほどとして、PE1号の糸(強力値を9kgと仮定した計算例)なら約3.2kgとしています[4]。出典によって係数が変わるので、「3分の1」は物理の法則ではなく、経験にもとづく目安と考えるのがよさそうです。
ドラグ設定の目安は、PEラインの強力値(表示の切断強度)の約1/3とされる。TSURINEWSの解説は、これを製品ばらつき0.7×リーダーとのノット0.7×全体の余裕0.6〜0.7という掛け算で説明し、100×0.7×0.7×(0.6〜0.7)=29.4〜34.3(%)と示している[3]。
別の出典では係数が異なる。新品でも表示の約7割を実用値とみなし、PEとリーダーの結び目(FGノット)は元の強さの85〜90%程度、瞬間的な荷重も考え、PE1号(強力値を9kgと仮定した計算例)なら約3.2kg、つまり約1/3に収まると説明される[4]。ノット係数は0.7と0.85〜0.9で一致しない。したがって、1/3は数値の異なる例を丸めた慣習的な目安であり、法則とは扱えない。
この2つの出典はいずれも釣り情報サイトの解説である。
4. せっていした ちからより、強く ひかれたら?
4. 設定した力は、安全の上限ではない
4. 瞬間荷重とヘタり ── 数字を鵜呑みにしない理由
3ぶんの 1 に して あるから あんしん、と おもって しまいそうです。でも、さかなが きゅうに ぐんと つっこむと、せっていした ちからより 大きな ちからが、いとに かかる ことが あります[4]。
だから ドラグの 数字は、いとが ぜったいに 切れない ライン では ありません。
また、ふだんは つまみを ゆるめて おく 人が います。しめっぱなしに すると、ワッシャーが ぺしゃんこに なって、きかなく なる ことが ある から だそうです[2]。
5. ドラグは、いつ ごろ できたの?
5. 100年ちょっと前、釣り上げの最中に調整できるように
5. 1902年の摩擦ドラグから1913年のスタードラグへ
むかしの リールには、ドラグが ない ものも ありました。100ねんより まえの アメリカで、エドワード・ヴォム・ホーフェと いう 人が、ドラグの しくみを かんがえた と いう はなしが あります[5]。
その あと、つりを して いる さいちゅうでも、ドラグの ちからを かえられる リールが うまれた と いわれて います[5]。
ある英語の資料は、1902年にエドワード・ヴォム・ホーフェが、フロリダでの大きな魚ターポン釣りの経験をもとに、最初の近代的な内部摩擦式ドラグを特許にしたと書いています[5]。同じ年には、フランシス・ラベスが外付けの摩擦ドラグも作っています[5]。
1913年には、ウィリアム・ボーシェンがスタードラグを発表したとされます。星形のつまみで、魚とやり取りしている最中でも、ドラグの強さを調整できるようになった、という説明です[5]。
ただし、この年や人物は一つの英語資料にもとづく話です。ほかの資料にはスタードラグを別の年・別の人物に結びつける記述もあるので、断定はできません。
Antique Fishing Reels の解説によると、1902年、エドワード・ヴォム・ホーフェ(Edward vom Hofe)がフロリダでのターポン(tarpon)釣りの経験から、最初の近代的な内部摩擦式ドラグを特許化した。同年にはフランシス・ラベスの外付け摩擦ドラグもある[5]。
1913年にはウィリアム・C・ボーシェン(William C. Boschen)がスタードラグを発表し、釣り上げの最中に内部の摩擦ドラグを調整できるようになった[5]。ただし、この年代や人物は一つの英語資料にもとづく。ほかの資料にスタードラグを別の年・別の人物に結びつける記述があり、断定は避ける。特許や当時のカタログなどの原典で確かめる余地がある。
6. じぶんでも ためして みたく なったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
おうちの 人と いっしょに、ぶあつい 本を 1さつ ひらいて、そこに 紙を 1まい はさんで みましょう。紙の はしを ゆっくり ひっぱると、どう なりますか。本を そっと おさえた ときと、上から ぐっと おさえた とき、ぬける ようすは かわりますか。
つりぐを もって いる おうちなら、リールの つまみを まわして、いとの でかたを 見て みるのも いいです。つりぐや に いく ことが あれば、リールを 見て、つまみの ばしょを さがして みましょう。
ドラグの「滑り出しの力」を、家にあるもので試せます。厚い本に紙を1枚はさんで、紙の端を引いてみてください。本を軽く押さえたときと、上から強く押さえたとき、紙が動き出す力はどう違うでしょうか。ワッシャーの摩擦と同じ考え方です。ただし、実際のドラグは、本と紙よりずっと複雑にできています。
釣具店でリールを見る機会があれば、ドラグつまみの場所と、回したときの手ごたえを見てみるのも手です。触れる展示品なら、店の人に聞いてから、そっと触れてください。
問い。「約1/3」は、係数を変えると何割になるのか。手元の糸のパッケージの強力値に、TSURINEWSの係数(0.7×0.7×0.6〜0.7)とハマアングラーの係数(0.7×0.85〜0.9)を掛けて、目安の値を比べられる[3][4]。
原典に近づくなら、次の点が入口になる。
- リールメーカーの取扱説明書。ドラグの調整方法や、保管時の扱いがどう書かれているか。
- vom Hofe の1902年の特許。当時のドラグの図面がどうなっていたか。
- スタードラグの発表年と発表者を、複数の資料で照らし合わせる。
家でできる簡単な体験としては、本に紙をはさんで引き、押さえる力を変えて滑り出す力を比べる方法がある。ただし、リールの摩擦とは条件が異なるので、あくまで考え方の確認にとどめる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:ドラグの仕組み(釣り情報サイト・釣り人の解説)、設定の目安の計算(釣り情報サイト2件)、歴史(英語のアンティークリール解説)。何に使ったかは、それぞれの欄に書いた。個人ブログや販売店の解説が含まれる。
- FISHING JAPAN「スピニングリールのドラグを考察」 https://fishingjapan.jp/fishing/4242 (ワッシャーの摩擦・つまみ・素材)
- カケヅカ「リールのドラグって普段はユルユル」 https://kakedzukass.com/reel-drag/ (ドラグの目的・仕組み・締めっぱなしの話、個人の解説)
- TSURINEWS「今さら聞けないリールのキホン」 https://tsurinews.jp/147675/ (約1/3の計算例)
- ハマアングラー「ドラグは何kg?」 https://hama-angler.com/archives/33153 (1/3の別の計算例・瞬間荷重)
- Antique Fishing Reels「History and Evolution」(英語) https://antiquefishingreels.com/big-game-reels/history-evolution/ (ドラグの歴史)
なおした ところ
更新履歴
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