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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ヒラメや カレイの 目は、どうして 同じ がわに あるの?

ヒラメとカレイの目は、なぜ体の同じ側にあるのか

ヒラメ・カレイの目の移動:変態、骨化、pitx2、5000万年前の化石

分野:生きもの

ヒラメや カレイの 顔を 見ると、目が 二つとも 体の 同じ がわに あります。うまれた ばかりの ときは、ふつうの 魚と 同じ 顔なのに、いつの まにか 目が 旅を します。

その 旅は、いつ、どうして はじまるのでしょう。しらべて みましょう。

魚屋さんで、ヒラメやカレイの顔を思い出してみてください。目は二つとも、体の同じ側にあります。ところが、生まれたばかりの稚魚は、ふつうの魚と同じ左右対称の顔をしています。

いつ、何が、片方の目を反対側へ動かすのでしょうか。骨、脳、遺伝子、そして約5000万年前の化石を手がかりに、たどってみます。

ヒラメ・カレイの仲間(カレイ亜目)は、生まれた直後は左右対称で、変態期に片方の目が頭の上を越えて反対側へ移り、両目が体の同じ側に並ぶ[1]。目が右に集まる型を右側眼、左に集まる型を左側眼と呼び、通常は種ごとに決まっている[1]。

このメモでは、変態の時期、骨と甲状腺ホルモン、脳と遺伝子pitx2、約5000万年前の化石、例外のヌマガレイを、複数の資料を突き合わせて追う。ソレアなど一部の魚の研究を仲間全体へ広げてよいかは、資料の書き方に沿って留保をつける。

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1. うまれた ばかりは、ふつうの 顔

1. 生まれたては、ふつうの魚の顔

1. 生まれた直後は左右対称:変態期に起こること

ヒラメや カレイは、うまれた ばかりの ときは、ふつうの 魚と 同じ 顔を して います。目は、頭の 左と 右に ひとつずつ。体も 左右 同じ 形です[1]。

ところが、赤ちゃんの 魚が 大きく すがたを かえる 時期に、かたほうの 目が うごきはじめます。頭の てっぺんを こえて、はんたいの がわへ、ゆっくり 進みます。ある 研究の しょうかいでは、うまれて 20日から 40日ぐらいと されますが、日数は 魚の なかまや 水の あたたかさで かわります[2]。

そのころ、目の ある がわだけ、体の 色が 黒っぽく なって いきます[2]。

ひと月ほどで、顔が変わる

ヒラメやカレイの仲間は、生まれたときは左右対称で、目も体つきもふつうの魚と変わりません。成長の途中で片方の目が頭のてっぺんを越え、反対側へ移ります[1]。

ある研究の紹介では、生後20〜40日ほどで目が左右どちらかに偏り始め、目のある側だけ体色が黒っぽくなるとされています[2]。この時期は稚魚の変態期にあたり、日数はあくまで目安です。

カレイ亜目の魚は、誕生時は左右対称で、成長の途中で片方の目が頭頂を越えて反対側へ移動する[1]。この変態期は稚魚の時期で、生後およそ20〜40日とする紹介記事があり、目が左右どちらかに偏り始めるのと並行して、目のある側だけ体色が濃くなる[2]。

日数は一つの紹介記事に基づく目安にすぎず、魚種や条件による違いは確認していないため、幅をもって読むのがよい。

2. 目は、右? 左?

2. 「左ヒラメに右カレイ」の見分け方

2. 右側眼と左側眼:「左ヒラメに右カレイ」

目が あつまる がわは、なかまごとに だいたい きまって います。右に あつまる 魚も いれば、左に あつまる 魚も います[1]。

むかしから、「左ヒラメに 右カレイ」と いいます。目の ある 黒い がわを 上に して、おなかを 手前に むけた とき、頭が 左なら ヒラメ、右なら カレイ、という おぼえ方です[9]。

この おぼえ方は、左手と 右手の 手ぶくろに ちょっと にて います。形は 同じでも、向きが はんたいです。ただし ほんとうは、手ぶくろは 左右が はじめから きまって いますが、ヒラメや カレイの 目は、うまれた あとに うごきます。

黒いのは、目の ある がわです。うらがわは 白いです[3]。

右側眼と左側眼

目が右側に集まる型を右側眼、左側に集まる型を左側眼と呼びます。どちらになるかは、通常は種ごとに決まっています[1]。

覚え方と、目のある側

「左ヒラメに右カレイ」は、有眼側(目のある黒い側)を上にし、腹を手前にして、頭が左ならヒラメ、右ならカレイ、という覚え方です[9]。ここで黒いのは、目のある側です。反対の側は白っぽくなります[3]。

左手と右手の手袋を思い浮かべると、形は同じで向きだけが逆、という感じがつかめます。ただし手袋は最初から左右が決まっています。ヒラメやカレイの目は、生まれたあとに動いて、向きが決まっていきます。

右側に両眼が集まる個体を右側眼(dextral)、左側の場合を左側眼(sinistral)と呼び、通常は種によって一方に定まる[1]。実用的な見分けとして「左ヒラメに右カレイ」があり、有色側を上、腹を手前にして、頭が左ならヒラメ科、右ならカレイ科とする[9]。

有色の側は背中側ではなく、目のある側である。反対の盲側は白い[3]。体の背腹の区別と混同しないこと。

3. 目を おす ものは なに?

3. 目を動かす力は、骨の変化だとされる

3. 眼下の骨化と甲状腺ホルモン:ソレアの研究

では、目を おして うごかして いるのは、何でしょう。シタビラメの なかまを しらべた 研究けんきゅうでは、目の 下に ある ほねが、目の ない がわで かたまって いく ことが、目の 動きの 一ばん 大きな 力だと 考えられて います[4]。

ほねが かたまる ことには、こうじょうせんという ところから 出る ホルモンが かかわると されます。くすりで ほねが かたまるのを じゃました ときは、目の 動きも じゃまされました[4]。

この ほねの かたまり方は、しらべられた ほかの 魚でも 同じでした。ほかの なかまにも 通じる しくみではないかと、研究けんきゅうした 人たちは 考えて います。ただ、これは 研究した 人たちの 考えで、たしかめられた ことでは ありません。

移る目の下で、骨が固まる

シタビラメの仲間(ソレア)の稚魚を調べた研究では、目の移動の主な原動力は、移る目の下の骨が、目のない側で固まること(骨化)だと報告されました[4]。

骨が固まる過程には、甲状腺ホルモンが関わっています。骨をつくる働きを薬でじゃますると、目の移動もさまたげられました[4]。

どこまで一般化できるか

目の下の骨化は、この研究の時点で調べられたヒラメ・カレイの仲間(異体類)すべてに共通で、共通の仕組みではないか、と研究した人たちは提案しています[4]。ただし、実験で確かめたのはソレアです。ほかの仲間にも当てはまるかは提案の段階で、この資料だけでは言い切れません。

ソレア(シタビラメ類)を使った研究で、変態中の幼生の盲側で、移動する目の下の骨(眼下の骨)が骨化することが、ソレアでは目の移動の主な原動力と示された。骨形成を薬で妨げると、目の移動が妨げられ、この過程には甲状腺ホルモンが関わる[4]。

眼下の骨化は、それまでに調べられたすべての異体類に共通で、普遍的な仕組みだと著者らは提案している[4]。実験の対象はソレアなので、ヒラメ・カレイ全般へ当てはまるかは著者らの提案の範囲にとどまる。「普遍的」は確定した事実として読まないほうがよい。

4. 目が うごく 前から、はじまって いる

4. 目が動く前から、変化は始まっている

4. 前庭系とpitx2:目の移動に先行するもの

おもしろい ことに、目が うごく 前から、体の かたちや およぎ方が かわりはじめる、と いう 研究も あります。ヒラメの なかまの 研究では、頭の ほねの ちがいや、体を よこに かたむけて およぐ ようすが、目が 動く 前に あらわれて いました。バランスを とる しくみが かわる ことが かかわるのでは、と 考えられて います[5]。

もう ひとつ、ヒラメの 研究では、「ピットエックスツー」と よばれる 遺伝子いでんしが、目が 動く 前に、脳のうの 左がわで もう 一度 はたらく ことが わかりました。その あとで、目が 動きはじめます[6]。この 遺伝子いでんしは、体の 中の 左右を きめる ものと して しられて います。

どちらの がわへ 目が 行くかの 手がかりも、目が 動く 前から 体の 中に あるのかもしれません。

横に傾いて泳ぐのが先

ヒラメの仲間を調べた研究では、頭の骨の非対称や、体を横に傾けて泳ぐ行動が、目が動く前から現れていました。目の位置に合わせた行動というより、甲状腺ホルモンによる平衡感覚(前庭)の系の変化が関わる可能性が示されています[5]。

左右を決める遺伝子が、もう一度働く

ヒラメの研究では、体の内臓の左右を決める遺伝子pitx2が、変態前の脳の左側(手綱核という部分)でもう一度働き、その後で目が動き始めると報告されています[6]。手綱核は、左側眼のヒラメでは右へ、右側眼では左へずれるといいます[6]。

目の向きの手がかりは、目が動く前から、脳や平衡感覚の側にあるのかもしれません。ただし、ここは研究の途中の話で、まだ確かな結論とはいえません。

ミナミヒラメ類の研究では、頭骨の非対称と横向きに傾いて泳ぐ行動が、目の移動前から現れていた。目の位置に合わせた適応というより、甲状腺ホルモンによる前庭系の変化が関わる可能性が示された[5]。ただし細部は原文で確かめていないため、弱めに読む。

ヒラメ類では、内臓の左右を決める遺伝子pitx2が、変態前の左の手綱核(脳の一部)で再発現し、その後に目の移動が始まる(Suzuki et al. 2009)[6]。手綱核は、左側眼の種では右へ、右側眼の種では左へずれる[6]。目の移動に先立って、脳の側にも左右差の変化が起こっていることになる。

5. 5000万年 前の 化石は、どうなって いる?

5. 約5000万年前の化石では、目が途中で止まっていた

5. アンフィスチウムとヘテロネクテス:Friedman 2008

むかしの ヒラメや カレイの なかまは、どんな ようすだったのでしょう。イタリアや フランスで 見つかった 5000万年 前ごろの 化石に、アンフィスチウムと ヘテロネクテスという 魚が います[7]。

この 魚たちは、頭の ほねが 少し ゆがんで いましたが、目の うごきは とちゅうで とまって いて、大人に なっても、目が 頭の りょうがわに のこって いました[7][8]。

しかも、見つかった アンフィスチウムの 化石の 中には、右の 目が 動いた ものも、左の 目が 動いた ものも ありました[7]。

この 化石を しらべた 人は、ヒラメや カレイの 目の むきは、とつぜん きまったのでは なく、少しずつ すすんだと 考えました。ただし、これは この 化石の 研究での 話です[7]。

途中の姿を残した化石

変態で目が移ることは知られていても、その途中にあたる化石がなく、起源は謎でした。2008年の研究で、約5000万年前(始新世)のイタリア北部やフランスで見つかったアンフィスチウムと、新しい属のヘテロネクテスが報告されました[7][8]。

どちらも頭の骨が少し非対称で、目の移動は不完全でした。成長したあとも、目が頭の反対側にとどまっている個体が見られます[8]。

右へ動く個体も、左へ動く個体も

アンフィスチウムでは、右の目が動いた標本も、左の目が動いた標本もありました。現生のように向きが決まっていなかったわけです[7]。この研究をしたFriedmanは、「突然生まれた怪物」のような変化ではなく、非対称は徐々に進んだことを示す、と述べています[7]。近年は起源をめぐって別の議論もあるので、これはこの化石研究での見方です。

Friedman(2008, Nature 454: 209–212)は、変態での眼球移動は知られていたが移行型の化石がなく起源が不明だった点を指摘し、約5000万年前(始新世)のイタリア北部・フランスの化石、アンフィスチウム(Amphistium)と新属ヘテロネクテス(Heteronectes)を報告した[8][7]。両者はやや非対称な頭骨をもつ原始的な異体類で、成体でも眼窩の移動が不完全で、目は頭の反対側に残っていた[8][7]。

アンフィスチウムでは、右の目が動いた標本も左の目が動いた標本もあり、現生種のような向きの固定はなかった。Friedmanは、これが「突然生じた」説を退け、非対称は徐々に進んだことを示すと述べた[7]。年代は大学の発表に由来し、起源をめぐる近年の遺伝子解析による議論には触れていないので、この結論は「この化石研究では」と限って読む。

6. 見分ける 手がかりと、めずらしい 魚

6. 例外のヌマガレイと、口の形

6. 例外:ヌマガレイ、側面逆位、口の形

「左ヒラメに 右カレイ」には、めずらしい 魚が います。ヌマガレイは、カレイの なかまなのに、日本の 近くでは ほとんどが 左に 目が あります[9]。アラスカの 海では、7わりぐらいが 左だと いわれます[1]。

ごく まれに、左右が ぎゃくに なった 魚も います[9]。

もっと たしかな 手がかりは、口です。ヒラメは 口が 大きくて とがった 歯が あり、小さな 魚を 食べる 魚が 多いです。カレイは 口が 小さく、ゴカイや 小さな エビなどを 食べる 魚も います[3]。

例外はヌマガレイ

ヌマガレイはカレイ科なのに、日本近海ではほとんどが左側眼です[9]。アラスカ沿岸では約7割が左側眼とされ、地域によって割合が違います[1]。日本近海と混同しないよう、注意が要ります。

ごくまれに、左右が逆になった個体(側面逆位)も知られています[9]。

向きより、口を見る

ヒラメは口が大きく、鋭い歯があり、小魚を食べる種が多いとされます。カレイは口が小さく、ゴカイや小エビなどを食べる種がいます[3]。目の向きに例外があるので、口の形のほうが見分けの手がかりになります。

ヌマガレイはカレイ科でありながら、日本近海ではほぼすべて左側眼で、アラスカ沿岸では約7割が左側眼とされる[9][1]。「約7割」はアラスカ沿岸の値で、日本近海と混同しない。

まれに、目の位置が鏡像になる側面逆位(lateral reversal)の個体が現れる[9]。ヒラメ科とカレイ科で向きがなぜ科ごとにほぼ決まるのかについては、決定的な説明を確認できていない。

口の形は別の手がかりになる。ヒラメは口が大きく鋭い歯をもち小魚を食べる種が多く、カレイは口が小さくゴカイや小エビなどを食べる種がいる[3]。

7. さかな屋さんで、口と 目を 見て みよう

7. 魚売り場で、口と目を見比べてみる

7. 出口:自分でも調べてみたくなったら

さかな屋さんや スーパーで、ヒラメや カレイを 見かけたら、まず 口を 見て みましょう。大きいか、小さいか。つぎに、黒い がわを 上に して、頭が 左か 右かを 見ます。魚には さわらず、ながめるだけに します。お店に なければ、水族館や、さかなの ほんでも できます。

「口は 大きいのに、頭は 右」の ような 魚が いたら、おぼえ方に 合わない 魚です。お店の 人に、名前を きいて みるのも いいですね。

魚売り場や水族館でヒラメやカレイの仲間を見かけたら、まず口の大きさを見て、大きければヒラメ、小さければカレイと予想します。そのあと、黒い側を上、腹を手前にして頭の向きを確かめ、「左ヒラメに右カレイ」に合うか照らし合わせます。魚には触らず、見るだけにしましょう。

「口は小さいのに頭は左」のような魚がいたら、名札を見てみてください。ヌマガレイのような例外に出会えるかもしれません。売っていなければ、図鑑やインターネットの写真でも試せます。

魚売り場や水族館で、口の大きさと、有色側を上にしたときの頭の向きを見比べ、「左ヒラメに右カレイ」に合うか確かめてみるとよい。合わない個体は、名札の種名でヌマガレイなどの例外かどうかを見られる。魚には触れず、見るだけにする。

資料を読むなら、変態と骨化はScientific Reports 2018[4]、化石の起源はFriedman 2008(Nature)[8]、pitx2と目の移動はSuzuki et al. 2009の要旨[6]が原典にあたる。日本語では、魚食普及推進センターの解説[3]とサカナトの記事[9]が読みやすい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:辞典の記述、水産団体・魚の解説サイトの記事、論文とその要旨や大学の発表を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. Wikipedia日本語版「カレイ目」。https://ja.wikipedia.org/wiki/カレイ目 (右側眼・左側眼、目の移動、地域ごとの割合について。二次資料)
  2. カラパイア(東北大学の研究の紹介記事)。https://karapaia.com/archives/51592081.html (変態の時期の目安と体色の変化について。二次資料)
  3. 魚食普及推進センター(大日本水産会)。https://osakana.suisankai.or.jp/s-other/6420 (黒い側と白い側、ヒラメとカレイの口の違いについて)
  4. Scientific Reports 2018「thyroid hormone asymmetric responsive centre」。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6095868/ (眼下の骨化と甲状腺ホルモンについて。ソレアが対象)
  5. Journal of Experimental Biology 2006「Asymmetric craniofacial remodeling and lateralized behavior」。https://journals.biologists.com/jeb/article/209/4/610/16488/Asymmetric-craniofacial-remodeling-and-lateralized (傾いて泳ぐ行動と平衡感覚の変化について)
  6. Suzuki et al. 2009, Development, Growth & Differentiation(PubMed要旨)。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19843151 (pitx2と手綱核、目の移動の順序について)
  7. EurekAlert!(シカゴ大学の発表)。https://www.eurekalert.org/news-releases/669656 (約5000万年前の化石と、右にも左にも動いた標本について。二次資料)
  8. Friedman 2008, Nature 454: 209–212「The evolutionary origin of flatfish asymmetry」。https://www.nature.com/articles/nature07108 (化石での目の移動の不完全さについて。要旨の範囲で使用)
  9. サカナト。https://sakanato.jp/96/ (左ヒラメに右カレイ、ヌマガレイ、側面逆位について。二次資料)

なおした ところ

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