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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あげものの ころもは、どうして カリッと なるの?

揚げ物の油は、冷めるときにも入る? ── 衣がカリッとするしくみ

揚げ物の衣がカリッとするしくみ ── 水分の蒸発、水蒸気のバリア、吸油のタイミング

分野:技術

てんぷらを あぶらに いれると、ジュワーッと おとが して、あわが たくさん でます。この あわは、じつは しょくざいの みずが すがたを かえて でて きた ものです。

あわが でて いる あいだは、あぶらが なかに はいりにくく なると せつめい されます。あぶらで あげて いるのに、ふしぎですね。しかも ある じっけんでは、さめる ときに あぶらが はいる ものと、はいらない ものが ありました。この きじを 読むと、その ちがいが わかります。

天ぷらを油に入れると、ジュワーッという音とともに、細かい泡がわき上がります。この泡の正体は、衣や食材の水分が水蒸気になって出ていくものです。

しかも、泡が出ている間は、油が食材に入りにくくなる、と説明されます。ただし、完全に止めるわけではありません。さらに、小麦粉で作った模型食品の実験では、水分の量によって、冷めるときに油を吸うかどうかが変わりました。この記事では、その理由と、衣のカリッとしたしくみが分かります。

揚げ物の衣は、食材や衣の水分が水蒸気となって抜けることで形づくられる[1]。この水蒸気の泡は食材の表面で「バリア」となり、油が中へ入りにくくなる、と一般向けの記事では説明される[1]。ただし完全に止めるわけではなく、模型食品の実験では、初期水分によって冷却中の吸油が大きく変わった[3]。

では、水蒸気はどこから来て、油はいつ入るのか。揚げ物の一般向けの解説と、水分蒸発や吸油を測った実験報告を突き合わせ、衣の完成、熱の伝わり方、油が入る時機の3点を見る。ただし、多くは1つの食品・1つの条件での実験であり、一般論には条件がつく。

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1. あわの ショウタイは なに?

1. ジュワーッという泡は何か

1. 泡の正体 ── 蒸発する水分と衣の形成

あげものを して いる ところを、おもいだして ください。ジュワーッと おとが して、あわが ぷくぷく でて きます。

この あわは、しょくざいや ころもの みずが、あつい あぶらの なかで、すいじょうきに なって でて きた ものです[1]。

みずが ぬけるほど、ころもは かたく なって いきます。カリッと する ひみつは、ここから はじまります。

では、その みずは、ぜんぶ おなじ ときに ぬけるのでしょうか。

揚げ物を油に入れた瞬間の音と泡は、揚げ物ならではの光景です。この泡は、衣や食材にふくまれていた水分が、高温の油の中で水蒸気になって出ていくものです[1]。

水分が抜けるにつれて、衣が固まっていきます。食べたときのカリッとした歯ごたえは、水分が抜けた結果でもあります。

では、衣の水分と、中の食材の水分は、同じように出ていくのでしょうか。

揚げ物の油の中で見える泡は、衣と食材の水分が高温の油の中で蒸発した水蒸気である。水分が抜けるにつれて衣(クラスト)が形成される[1]。カリッとした食感の出発点は、水分が失われることにある。

では、衣と中身の水分は同時に抜けるのか。サツマイモの天ぷらを160・180・200℃で揚げた実験では、衣の水分が入れてすぐ蒸発し、そのあとサツマイモの水分が蒸発した[2]。油面を撮った画像のコントラストは、水分の蒸発の速さと一致したという。まず衣が乾いて形をつくり、中身の水分はそのあとで動く、という順序が示唆される。

2. あぶらで あげるのに、あぶらを はじく?

2. 泡が出ている間は、油が入りにくい

2. 水蒸気のバリア ── 油が入りにくい理由

ぷくぷく でて くる あわは、しょくざいの まわりに、すいじょうきの かべを つくります。

この かべが あると、あぶらが なかへ はいりにくく なる、と せつめい されます[1]。ただし、ぜんぶ ふせぐ わけでは ありません。

あわが たくさん でて いる あいだは、あぶらが はいりにくい。では、あわが おさまったら どうなるのでしょう。

水蒸気の泡は、食材の表面に「蒸気のバリア」をつくり、油が食材の中へ入りにくくなる、と説明されます[1]。ただし、油を完全に止めるわけではありません。

この説明は一般向けの記事によるもので、泡が出ている間は、油が入りにくい状態が続くということです。では、水分が抜けて泡が減ったあと、油はどうなるのでしょうか。

水蒸気の泡は、食材の表面で「蒸気のバリア」を形成し、油が食材の中に拡散しにくくなる、と説明される[1]。完全に止めるわけではなく、泡が盛んに出ている間は、油が食材に入りにくい、という程度の説明である。

では水分の蒸発が弱まればどうなるのか。この点は4章で実験の数字を見る。

3. なかは、どうして ひが とおるの?

3. 中まで火が通るしくみ

3. 表面から中心への熱の伝わり方

あげものの なかは、ころもで つつまれて います。でも、なかまで ちゃんと あつく なりますね。

ねつは、あぶらから しょくざいの ひょうめんへ つたわり、そこから なかへ、すこしずつ つたわって いきます[1]。ひょうめんが あつく なっても、なかが あつく なるまでには、じかんが かかります。

熱は、まず高温の油から食材の表面に伝わります。そこから中心へは、食材の中を少しずつ伝わっていきます。これを伝導といいます[1]。

表面が熱くなっても、中心が熱くなるまでには時間がかかります。だから、外側がこんがりしていても、中の温まり方はまた別のことです。

熱は、油から食品の表面へ伝わり、中心へは食品の中を伝導によって広がる[1]。表面が熱くなっても、中心が熱くなるまでには時間差がある。

衣の水分は先に蒸発し、食材の水分はあとから動く(1章の実験)。

4. あげた あとに、あぶらは はいるの?

4. 冷めるときに油が入る?

4. 吸油のタイミング ── 水分量による違い

あぶらが なかに はいるのは、いつでしょう。あげて いる とちゅうか、とりだして さめる あいだか。

こむぎこと みずで つくった うすい にせの たべものを、150ど の パームゆで さいだい 7ふん あげる じっけんが あります[3]。さいしょの みずの りょうは、40・60・70・80パーセントの 4しゅるいです。

みずが 40〜70パーセントの ものは、あげて いる あいだに あぶらを すいました。80パーセントの ものは、あげて いる あいだは すこしで、さめる あいだに きゅうに すいました。

だから、「あぶらは かならず さめるとき はいる」とは いえません。この じっけんでは、みずの りょうで かわりました。

油が食材に入るのは、揚げている最中か、取り出して冷める間か。小麦粉と水で作った薄い模型試料を、150℃のパーム油で最大7分揚げた実験があります。初めの水分は40・60・70・80%の4種類でした[3]。

初めの水分が40〜70%の試料は、主に揚げている間に油を吸い、冷める間の増加は小さいものでした。80%の試料は、揚げている間の吸油が少なく、冷める間に急に吸いました。この2つの間、水分70〜80%あたりに転換点があるとされています。

この模型食品では、水分が蒸発する速さと吸油の速さが関係していました。著者らは、蒸気の圧力が油の侵入を妨げる可能性を述べています。したがって、「油は冷めるときに入る」と一言では言えず、この実験では水分量によって変わりました。

油はいつ食品に入るのか。小麦粉の初期水分を40・60・70・80%にした薄い模型試料を、150℃のパーム油で最大7分揚げた実験では、初期水分40〜70%の試料は主に揚げている間に吸油し、冷却中の増加は小さかった。80%の試料は、揚げ中の吸油が少なく、冷却中に急に吸油した[3]。転換点は、初期水分70〜80%の間にある。

この模型食品では、水分の蒸発速度と吸油速度が関係していた。著者らは、蒸気圧が油の侵入を妨げる可能性を述べている。2章の「蒸気のバリア」の説明と方向は合うが、論文がバリアそのものを測ったわけではない。ただし、模型食品1種類を単一の条件で調べた報告であり、実際の食材の一般論とするのは早い。

5. てんぷらの ころもは、なにが ちがうの?

5. 天ぷらの衣は、粘りを出さないように作る

5. 天ぷらの衣はグルテンを抑える ── 粘りが出ない理由

てんぷらの ころもは、パンの ように ふくらんだり、もちもち したりは しません。さっくり、かるい ですね。

こむぎこには「グルテン」という、ねばりの もとに なる ものが できる ことが あります。

てんぷらでは、あげて いる あいだに グルテンが できるのを おさえる ことが だいじだと、しらべて いる ひとたちが かいて います[4]。

おさえる ための くふうは、りょうりの ほんに いろいろ あります。

天ぷらの衣は、パンやうどんのような、ねばりのある食感とは違います。小麦粉には、ねばりのもとになるグルテンができることがあります。

天ぷらの調理では、加熱中にグルテンができるのを抑えることが要点とされます[4]。雑穀粉を天ぷらの衣に使えるかを調べた研究の中で、こう述べられています。

家庭で「冷たい水を使う」「混ぜすぎない」などと聞くのは、この考え方と合っているように見えます。

小麦粉にはグルテンという粘りのもとができることがある。天ぷらの調理では、加熱中に小麦のグルテンができるのを抑えることが要点とされる[4]。これは、雑穀粉の天ぷら衣への適性を調べた報告の中で述べられている。

抑える方法として、水の温度や混ぜ方が語られることが多い。「冷水」「混ぜすぎない」といった家庭の作法は、グルテンを抑える工夫として筋が通ると考えられる。

6. あぶらの おんどは、どれくらい?

6. 油の温度は、何度くらいがよいのか

6. 揚げ温度は何度がよいか ── 水分のバランスで見る

あげものの あぶらの おんどは、ふつう 160〜180ど くらいです[5]。からあげを 165ど で 6ぷん、ポテトを 170ど で 3ぷん あげた じっけんの れいも あります。

サツマイモの てんぷらを 160、180、200ど で あげた じっけんでは、160ど が、みずの バランスが いちばん よかった そうです[2]。ただし、さつまいもの てんぷらだけの はなしです。

揚げ物の油の温度は、一般に160〜180℃程度です。実験では、から揚げを165℃で6分、ポテトを170℃で3分揚げた例があります[5]。

サツマイモの天ぷらを160・180・200℃で揚げ比べた実験では、160℃のとき、水分のバランスが最もよかったと報告されています[2]。温度が高ければ、衣の水分が早く抜けるぶん、中の水分との間に差が出やすい、と読めます。ただし、実験は芋の天ぷら1種類です。

揚げ油の温度は、一般に160〜180℃程度である。実験例では、から揚げ(100g)を500gのサラダ油で165℃・6分、ポテトを170℃・3分揚げている[5]。

では、温度を上げれば速く仕上がるのか。サツマイモの天ぷらを160・180・200℃で比べた実験では、160℃のときに水分のバランスが最も良かった[2]。衣の水分は入れてすぐ、芋の水分は遅れて蒸発する(1章)ため、温度が高いほど衣だけが先に仕上がり、中の水分の抜け方との差が開きやすい、と解釈できる。この解釈は1つの食品での結果からの推論である。

じぶんでも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

おうちの ひとが てんぷらや からあげを あげて いる とき、おとなに あんぜんな ばしょを きめて もらって、おとを きいて みましょう。あぶらが はねるので、ちかづきません。ジュワーッと いう おとが、だんだん かわる ところが あるかもしれません。

できあがった ころもを わって、だんめんを 見て みるのも いいですね。あなが あいて いるでしょうか。

おいしく たべながら

あげたてと、しばらく おいた あげものを、たべくらべて みましょう。カリッと した ところが、どう ちがうか、ことばに して みます。

しりょうを よむ

りょうりの ほんの「あげもの」の ページや、しょくひんかがくの ほんに、ヒントが あります。

今日できること

家の人が天ぷらやから揚げを揚げているとき、大人に安全な場所を決めてもらって、音を聞いてみましょう。油がはねるので、近づいてはいけません。ジュワーッという音の変わり方に、気づくかもしれません。

できあがった衣を割って、断面を見るのもおすすめです。小さな穴や、空気が通ったような跡が見えるでしょうか。

食べ比べ

揚げたてと、時間がたった揚げ物を食べ比べて、カリッとした部分がどう違うのか、言葉にしてみます。

資料を読む

料理の本の揚げ物の章や、食品科学の入門書に、衣の水分や油の吸い方の話があります。学会誌の解説記事もヒントになります。

今日できること

家庭で揚げ物をしているとき、大人に安全な場所を決めてもらい、そこから音の変化を聞く。油はねがあるため、近づかない。できあがった衣は割って断面を観察し、穴や層の様子を見る。

比べる

揚げたてと、時間がたったものの食感を食べ比べ、違いを言葉で記録する。4章の水分量と吸油の話が、自分の食べ物でも成り立つかを考える材料になる。

原典にあたる

参考にした情報源から、気になった論文を選び(J-STAGEで抄録が読めるものがある)、条件(食品の種類・油温・時間)が今回の話とどう違うかを確かめるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

揚げ物の一般的なしくみは科学解説記事で、水分蒸発・吸油・グルテンは学会誌の抄録で確認した。Discover Magazineの記事は一般向けの解説で、泡と蒸気のバリアの説明はそこに帰属する。

  1. Discover Magazine「Fair Food: The Science of Deep-Frying」(Eunice Liu、2015) https://www.discovermagazine.com/fair-food-the-science-of-deep-frying-3181 (泡・水蒸気のバリア・熱の伝わり方)
  2. Yamanaka他(2025)天ぷらの品質評価(J-STAGE) https://www.jstage.jst.go.jp/article/rsc/45/2/45_55/_article (衣と芋の水分蒸発の順序・160℃の結果)
  3. Thanatuksorn他(2005)日本食品工学会誌6(2)(J-STAGE) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsfe2000/6/2/6_2_143/_article/-char/ja/ (水分量と吸油のタイミング)
  4. 谷口他(2019)雑穀粉の天ぷら衣への利用適性、日本調理科学会誌52(6)(J-STAGE) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/52/6/52_376/_article/-char/ja (グルテンを抑えること)
  5. 加藤(2009)揚げ調理条件と油の劣化、日本食生活学会誌20(1)(J-STAGE) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/20/1/20_1_47/_article/-char/ja/ (一般的な油温・実験の揚げ条件)

なおした ところ

更新履歴

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