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魚が どろくさく なるのは なぜ? ── 水の においを 追いかけて みよう

魚が泥くさくなるのはなぜか ── 水のにおいの物質と、抜き方

魚の泥臭はどこから来る? ジェオスミンの蓄積と浄水場の対策

分野:自然

どくが ないのに、水の においに すぐ 気づく ことが あります。人の 鼻は、水1リットルに 10ナノグラムほどでも 感じると いわれます[1]。

その においの もとは、魚の からだにも 入ります。どうして 入って、どうやって ぬくのでしょうか。

毒がないのに、人の鼻は水1リットルに10ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)ほどのにおいでも気づくといわれます[1]。

湖や川の魚が泥くさくなることがあるのは、そのにおいの物質が魚のからだに入るからです。どう入り、どう抜くのか。魚を育てる池から、浄水場まで追いかけます。

ジェオスミンと2-MIB(2-メチルイソボルネオール)の人間の臭気閾値は、水中で5〜10 ng/Lと報告されている。毒性は認められていないのに、水道水のかび臭は深刻な問題として扱われてきた[1]。

同じ物質は、淡水魚の泥臭の原因にもなる[3]。この記事は、微生物が作るところから、魚への蓄積、出荷前のパージ、浄水場での処理までを、複数の資料で順にたどる。

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1. においの もとは、だれが 作るの?

1. においの物質を作るのは、水の中の小さな生きもの

1. 藍藻と放線菌がジェオスミン・2-MIBを作る

においの もとは、ジェオスミンと 2-MIB という ものです。作るのは 魚では ありません。水の 中の 藍藻らんそうや 放線菌ほうせんきんという 小さな いきものです[1]。

ジェオスミンは、カビや つちの においと いわれます。2-MIB は 墨すみの においと いわれます[1]。

ニジマスや ナマズの なかまなど、川や 池の 魚が どろくさく なる ことが あります[3]。ただし、どろくささには ほかの ものも かかわると いわれます。ぜんぶが ジェオスミンとは かぎりません。

ジェオスミンと2-MIBは、藍藻や放線菌が増えるときに作る物質です。ダムや湖、川などの水道の水源で、かび臭や土のにおいの原因になります[1]。ジェオスミンは「純かび臭・土臭」、2-MIBは「墨汁臭」と表されます。

水の中の魚にも、においがつきます。ニジマスやナマズの仲間などの淡水魚、淡水エビが泥くさくなることがあると、魚介類のにおいをまとめた解説にあります[3]。

ただし、泥くささにはピロリジンなど別の物質も関わるとされ、すべてをジェオスミンで説明できるわけではありません。ここでは、この2つの物質に絞ります。

ジェオスミンと2-MIBは、浮遊型または付着型の藍藻、もしくは放線菌が増殖するときの代謝産物だ。大分市水道局の報告は、両者を水道水のかび臭障害の原因物質とし、ジェオスミンを「純かび臭・土臭」、2-MIBを「墨汁臭」と区別している[1]。

水産大学校の解説によると、ニジマスやキャットフィッシュなどの淡水魚、淡水エビは、水中でこれらが作られると着臭し、泥臭くなることがある[3]。同じ解説は、泥臭にはピロリジンなど別の物質も関わるとする。したがって、泥臭の全てをジェオスミンに帰すことはできない。

2. どんな ときに、ふえるの?

2. 水温と栄養が、増えるきっかけになる

2. 水温上昇と窒素・リンの流入が重なると発生しやすい

湖や ためいけで、水の 温度が 上がって くると、植物プランクトンの なかまが ふえます。すると、カビや 墨すみの においが つく ことが あります[2]。

ふえる きっかけの ひとつは、水に 入る 栄養えいようです。家から 出る 水や、田んぼや はたけの 肥料ひりょうに ふくまれる 栄養えいようが、水に 流れこむ ことが あります[2]。

ただし、栄養えいようだけが 理由と いうわけでは ありません。水の 温度や、いきものの しゅるいも かかわります。

千葉県の説明では、湖や貯水池で水温が上がると植物プランクトンが繁殖し、かびや墨汁のようなにおいがつくことがあります[2]。

増えるきっかけの1つが、水に入る栄養です。家庭の雑排水や田畑の肥料に含まれる窒素とリンが原因になるため、水を使うときは節度をもつことが大事だと、同じ説明は述べています[2]。

ただし、窒素とリンだけで決まるわけではないようです。水温や、増える生きものの種類も関わるため、「これが原因」と1つに決めることはできません。

千葉県の水道の解説は、湖沼・貯水池で水温が上昇すると植物プランクトンが繁殖し、かび臭を引き起こすと述べる[2]。原因として挙げるのは、家庭の雑排水や田畑の肥料などに含まれる窒素とリンの流入である。

この解説は行政による一般向けの説明で、発生量を予測する式や閾値までは示していない。窒素・リンの濃度だけが要因とは書かれておらず、水温や産生する種の違いも関わる複合的な現象と読むのが妥当である。

3. 人の 鼻は、どれくらい するどいの?

3. 毒ではないのに、鼻がとても敏感に気づく

3. 臭気閾値5〜10 ng/L、水質基準は10 ng/L以下

においに 気づく ぎりぎりの ところは、水1リットルに 5〜10ナノグラムぐらいと されます。ものや 場合に よって、かわります[1]。1ナノグラムは、1グラムの 10億おく分の 1です。

25メートルプールに、水が 25万リットル 入って いると しましょう。10ナノグラムを かけると 2.5ミリグラム。一円玉(1グラム)の 400分の 1です。

それでも、この においの もとには どくは ないと されています[1]。においを かぐと 「カビかも」と 感じるのは、体に 本能ほんのうが あるからでは ないか、と 考える 人も います。ただし、これは まだ 考えの ひとつです。

ジェオスミンと2-MIBの臭気閾値は、人間で水1リットルあたり5〜10ナノグラムとされます。日本の水道水質基準は、どちらも蛇口の水で10ナノグラム以下です[1]。千葉県の説明では、この基準は「においを感じる限界の濃度」をもとにしています[2]。

10ナノグラムを実感してみます。25メートルプールに25万リットル(深さ1メートルとして)の水が入っているなら、10ナノグラム×25万で約2.5ミリグラム。一円玉(1グラム)の400分の1です。

この物質に毒性は認められていません[1]。それでもかび臭が深刻に受け取られる理由を、大分市水道局の報告は、においに本能的に「かびの脅威」を感じるからではないかと考察しています。ただし、これは筆者の推察です。

人間の臭気閾値は、ジェオスミン・2-MIBとも5〜10 ng/Lと極めて低い。水質基準は両物質とも給水栓水で10 ng/L以下(生活上支障関連項目)で、生体への毒性は認められていない。両物質を基準に入れている国は日本だけとされる[1]。10 ng/Lは、1リットルあたり100億分の1 g(1×10⁻⁸ g)にあたる。千葉県の解説は、この基準を「においを感じる限界濃度」に基づくものとし、県営水道は独自に蛇口で1 ng/L以下を目標にしている[2]。

10 ng/Lの実感として、25 mプール(25万L、深さ1 mと仮定)なら約2.5 mg、一円玉(1 g)の400分の1である。

大分市水道局の報告は、毒性がないのにかび臭障害が深刻化する一因を、においに本能的な脅威を感じるためと考察する。筆者の推察であり、実証された説明ではない[1]。なお魚肉では、水中とは単位も媒体も異なる値(1 ng/g未満など)で語られるため、水中の値と直接は比べられない[4]。

4. 魚の 体に、においは どう 入るの?

4. においは、鰓から入って脂肪にたまる

4. 主な取り込み経路は鰓で、脂質の多い組織に蓄積する

魚は、えらで 水の 中の においも 取りこみます。ひふや おなかからも 入りますが、いちばん 大きな 入り口は えらだと いわれます[4]。

入った においは、脂肪しぼうの 多い ところに たまります。においの もとは、あぶらに たまりやすい ようです。たとえば、あぶらの ついた ふきんに においが のこるのと にています。ただし、魚の 体の 中では もっと いろいろな ことが おきて います。

人は、魚の 肉1グラムに 1ナノグラムより 少なくても 感じる ことが あると いわれます[4]。

ジェオスミンと2-MIBは、魚の鰓・皮膚・消化管から体に入ります。ヨーロッパホワイトフィッシュの研究では、なかでも鰓が主な取り込み経路とされ、脂肪の多い組織にたまります[4]。魚が自分で作るのではなく、水の中の微生物が作ったものが入ります。

淡水魚は、浸透圧の関係で、体の表面や鰓から周りの水が入り込みやすいとされます。そのため、においも取り込みやすくなります[3]。

人は魚肉1グラムあたり1ナノグラム未満でも感じるといわれます[4]。水の中のごく低い濃度でも、脂肪にためこまれるうちに、人が気づく量になることがあるようです。

ヨーロッパホワイトフィッシュを扱った研究は、ジェオスミンと2-MIBが鰓・皮膚・消化管から吸収され、鰓が主な取り込み経路であること、低濃度の水中でも脂質の多い組織に蓄積することを述べる。人が感じる魚肉中の濃度は1 ng/g未満とされる[4]。物質を作るのは魚ではなく、水中の微生物である。

淡水魚では、浸透圧の関係で体表や鰓から環境水が入り込むため、においを取り込みやすいとされる[3]。この説明は水産大学校による総説的な解説の記述で、個々の魚種での定量的な比較ではない。

5. においを ぬく ほうほうは あるの?

5. 出荷の前に、きれいな水で泳がせて抜く

5. パージ ── ホワイトフィッシュは16日で検出限界未満、うなぎは換水で低下

あります。出荷の 前に、きれいな 水で しばらく 魚を 育てる のです。これを パージと いい、川や 池の 魚を 育てる 仕事では ふつうの ことだと されます[3]。

ホワイトフィッシュという 魚の 研究では、肉の においの もとが 16日で はかれない くらいに へりました[4]。うなぎを しらべた ときも、水を 入れかえると においが 下がりました[5]。

ただし、16日は この 魚で、この ときの 数です。どの 魚も 同じ 日数とは かぎりません。

淡水魚の養殖では、出荷の前にしばらくきれいな水で飼い、においを抜く「パージ」をするのが一般的だとされます[3]。

循環式養殖のヨーロッパホワイトフィッシュ(体重約600グラム)では、魚肉にジェオスミン32ナノグラム/グラム、2-MIB24ナノグラム/グラムまで入っていた状態から、きれいな水で16日飼うと、どちらも検出限界未満になりました。ジェオスミンは13日後にほぼ限界未満でした。流入水は冬の0℃近い水でした[4]。

愛知県水産試験場のうなぎ試験(水温28℃)では、餌を与えず水の入れ替え率が高い試験区で、7日後以降ほとんど臭わないと判定されました。においを抜く効果が、水の入れ替えにあると示唆されています[5]。予備的な試験のため、細かな数字は使いません。

16日という日数は、この魚と条件での値です。魚の種類や水温がちがえば変わるはずなので、一般化はできません。

水産大学校の解説は、淡水魚の養殖では、出荷前にしばらく清浄な水で飼育してにおいを除去(パージ)することが一般的だと述べる[3]。

循環式養殖のヨーロッパホワイトフィッシュ(約600 g)では、魚肉のジェオスミンが最大32 ng/g、2-MIBが24 ng/gあった状態から、流入水のまま(冬で0℃近い)で浄化すると、16日後にどちらも検出限界未満になった。ジェオスミンは13日後にほぼ限界未満だった[4]。

愛知県水産試験場の平成14年度のうなぎ試験(水温28℃、2-MIB添加で着臭)では、無給餌・換水率43%の試験区が7日後以降ほぼ臭わないと判定され、換水による脱臭効果が示唆された[5]。予備試験で、結果の表に読み取りの不確かさがあるため、「換水で低下した」までにとどめる。

16日は魚種・水温・条件つきの値であり、他の魚種にそのまま当てはめられない。

6. 水道の 水は、どうやって きれいに するの?

6. 浄水場では、活性炭やオゾンで取り除く

6. 浄水場は、かび臭の物質をどう取り除く? ── 大分市2014年の事例

浄水場じょうすいじょうで ふつうに 使う、すなで こす しくみだけでは、水に とけた においの もとは 取れません[1]。そこで、活性炭かっせいたんという 炭の こなを 入れたり、オゾンを 使ったり します[1][2]。においの もとが 炭に くっつく のです。

2014年、大分市で こんな ことが ありました。上流の ダムで 2-MIB を 作る 藍藻らんそうが ふえ、蛇口じゃぐちの 水に カビの においが 51日間 つづきました。およそ 12万世帯せたいに えいきょうし、苦情くじょうは 450件けんでした[1]。

活性炭かっせいたんを たくさん 入れても、なかなか 取りきれませんでした。においの もとの 100万ばいぐらいの 炭が いると、水道局の 文に 書かれています[1]。

浄水場で一般的な急速ろ過(凝集沈殿・砂ろ過・塩素消毒)では、水に溶けたかび臭物質は除けません[1]。粉末活性炭やオゾン、粒状活性炭などで吸着したり分解したりする処理を足します。千葉県も同じ処理をしていると説明しています[2]。粉末活性炭は急な発生に向く一方で、除去率が高くない場合があり、費用もかさむといいます[1]。

2014年10月、大分市の上流の芹川ダムで、2-MIBを作る藍藻が増えました。2-MIBの濃度は最高1000ナノグラム/リットルに達しました。基準の10ナノグラム/リットルと比べると、100倍です。蛇口でのかび臭は10月9日から11月28日まで51日間続き、約12万世帯に影響し、苦情は450件でした[1]。

粉末活性炭は最大で30ミリグラム/リットルまで入れましたが、除去は難しく、水質基準を一時超えました。報告では、かび臭の濃度の約100万倍の量が要ると述べられています。なお、この事例はジェオスミンではなく2-MIBです。市は「汲み置きより煮沸が有効」とも広報しました[1]。

大分市水道局の報告によれば、急速ろ過(凝集沈殿・砂ろ過・塩素消毒)は溶解性物質であるかび臭物質を除去できず、粉末活性炭・粒状活性炭(生物活性炭)・オゾンなどの吸着または分解処理が必須となる。粉末活性炭は突発的な発生に向く一方、除去率が高くない場合があり、運用費がかさむ[1]。千葉県も、粉末活性炭の注入と、オゾン処理・粒状活性炭による高度浄水処理で対応していると説明する[2]。

2014年10月、大分市の上流の芹川ダムで2-MIB産生藍藻(Pseudanabaena属)が増え、2-MIBは最高1000 ng/Lに達した。給水栓でのかび臭は10月9日〜11月28日の51日間続き、約12万世帯に及び、苦情は450件だった[1]。

粉末活性炭の最大注入率は30 mg/Lだったが、除去は難しく、水質基準を一時超過した。報告は、必要な注入濃度をかび臭濃度の百万倍程度と述べる。なお、この事例で問題になったのは2-MIBで、ジェオスミンではない。市は「汲み置きより煮沸が有効」とも広報している[1]。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できること:おうちの 人と、すんで いる 町の 水道局の ホームページを 開いて、「水の しらべ」と いう ことばで さがして みましょう。水を しらべた けっかが のって いる ことが あります。カビの においに ついての ページが あるかも しれません。

出かけて できること:見学を 受けつけて いる 浄水場じょうすいじょうが あるかも しれません。水道局の おしらせを のぞいて みましょう。

県の ページ:千葉県の 水道の ページに、水道の 水が カビくさく なる わけが 書かれて います[2]。

今日できること:家の人と、住んでいる地域の水道局のホームページを開き、「水質」で探してみましょう。水質検査の結果が載っていることがあります。かび臭の物質の項目があるか、探すのも面白そうです。

出かけてできること:見学を受けつけている浄水場があるかもしれません。水道局のお知らせで確かめてみましょう。活性炭やオゾンの設備が見られるかもしれません。

公式の情報:千葉県の「水道水で気になる『かび臭』って?」が、原因と対策を短くまとめています[2]。

今日できること:住んでいる地域の水道局の水質情報を探し、ジェオスミン・2-MIBの項目と、基準の10 ng/Lをどう扱っているか確かめる。資料が公開されていれば、年による変化も見られる。

出かけてできること:見学を受け入れている浄水場があれば、活性炭やオゾンによる高度浄水処理の設備を見られるかもしれない。

資料を読むなら:日本語では、大分市水道局の事例報告[1]と水産大学校の解説[3]が J-STAGE で読める。英語では、ホワイトフィッシュのパージ研究[4]があり、条件と結果が詳しく書かれている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。数字は各資料の記述をもとにしています。

  1. におい・かおり環境学会誌 49巻1号「水道水のかび臭問題と対応事例」(大分市水道局) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/49/1/49_2/_pdf (原因物質、臭気閾値、基準、2014年の事例、浄水処理)
  2. 千葉県「水道水で気になる『かび臭』って?」 https://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/keikaku/oishii2/qa/qa16.html (水温と栄養、基準、浄水処理)
  3. におい・かおり環境学会誌 51巻3号「魚介類のにおいとオフフレーバー」(水産大学校) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jao/51/3/51_194/_pdf (淡水魚の着臭、パージ)
  4. Depuration of geosmin- and 2-MIB-induced off-flavors in RAS farmed European whitefish(PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6801251/ (鰓からの取り込み、浄化の経過)
  5. 愛知県水産試験場 平成14年度業務報告「うなぎ養殖技術試験」 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/51560.pdf (換水による脱臭効果の示唆)

なおした ところ

更新履歴

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