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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

体育館の ゆかに、ふゆだけ すきまが できるのは どうして?

体育館の床の継ぎ目は、なぜ冬だけ開くのか ── 見えない床下とセットで動く木の床

体育館の木質フローリングの目地幅の季節変化 ── 含水率・下地合板・床下湿度(北海道4施設の実測)

分野:技術

北海道の ある 体育館で、ゆかの 板の つぎめを はかった 人たちが います。なつは、つぎめが 見えない ほど ぴったり くっついて いました。ところが ふゆには、3ミリほどの すきまが あいた ところも ありました。

こわれたのでは ありません。ゆかの 木が、うごいて いたのです。どうして ふゆに あくのか、その 下には 何が あるのかが 分かります。

北海道のある体育館では、床の板の継ぎ目が、夏には境目が見えないほど詰まり、冬には、平均の継ぎ目幅が最大で約3.0mmになった、と報告されています。同じ場所の同じ床です。

壊れたわけではなく、木が湿度に合わせて伸び縮みした結果のようです。しかも、動いているのは見えている板だけではありません。なぜ体育館の床は木なのか、すき間は何に左右されるのか、床の下には何があるのかが分かります。

北海道の体育館で行われた実測では、木質フローリングの板どうしの継ぎ目(長辺側)が、夏には境界が判別できないほど密着し、冬には平均目地幅が最大で約3.0mmに達した[2]。同じ床が、半年ほどで別の表情を見せる。

床材の伸縮は含水率の変化で説明できるが、この報告は、上の板だけでなく、下地合板や床下の湿度まで含めて床が動いていることを示唆する。なぜ体育館の床は木なのか、すき間は何に左右されるのか、その限界はどこかが分かる。

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1. ふゆの ゆかの すきまは、こわれた しるし?

1. 冬の床のすき間は、故障のしるしなのか

1. 継ぎ目が開閉する床 ── 施設Aの実測(夏と冬)

体育館の ゆかを、しゃがんで 見た ことは ありますか。細長い 木の 板が、ならんで います。

板と 板の あいだに、ほそい すじが 見える ところが あります。ふゆに なると、その すじが ひろがる ことが あります。

これは こわれた のでしょうか。それとも、木の ゆかなら ふつうの ことなのでしょうか。まず、どうして 木の ゆかなのかから 見て みましょう。

体育館の床にしゃがんで目をこらすと、細長い板が並び、その間に細い線が見えることがあります。冬になると、その線が広がる体育館もあります。

北海道の林産試験場が4つの体育館で調べたところ、施設Aでは、長い辺どうしの継ぎ目の幅が夏と冬で平均0.6mm、最大で2.6mm変わりました。冬の平均は最大で3.0mmほどになり、夏は境目が分からないほど詰まった継ぎ目が多かった、と報告されています[2]。

3.0mmは、この1施設の冬のいちばん大きな平均値で、どの体育館でも同じではありません。では、そもそも体育館の床が木でできているのは、どうしてでしょうか。

調査は、北海道内の体育館4施設で、床の継ぎ目の幅(目地幅)を測る形で行われた。施工後の床の伸縮を直接測るのは難しいため、隣り合う板の間の隙間を測って、膨潤・収縮を間接的に見る方法がとられている[2]。

湿度の季節変化が大きい施設Aでは、長辺どうしの目地幅が夏と冬で平均0.6mm、最大2.6mm変化した。冬の平均目地幅は最大で3.0mm程度になり、夏は境界が判別できないほど密着した目地が多かった[2]。ただし3.0mmは施設Aの値で、どの体育館でも同じではない。湿度変化の小さい施設Cでは、季節変化は平均0.08mmにとどまった[2]。

すき間の大きさは施設で大きく違う。その差は何に由来するのか。まず、床材に木が選ばれている理由から確かめる。

2. どうして 体育館の ゆかは 木なの?

2. 走って跳ぶ床に、木が向いていると言われる理由

2. 床材としての木 ── 弾性・衝撃吸収と構造

木の ゆかは、足に やさしいと いわれて います。ジャンプして おりた とき、かたい ゆかより、ちょっと やわらかい ほうが ラクですよね。

木は、ほどよく しなって、もとに もどる ちからを もって います。下じきを ゆっくり まげると、もとに もどるのと にて います。ただし 本当の 木の ゆかが しなる りょうは、ほんの わずかです。

木の ゆかについて しらべた しりょうでは、ひんやり しすぎず、すりへりにくい ことも、いい ところに あげて います。ところが、この 木には、しっけに あわせて のびちぢみする くせが あります。

ジャンプして着地するたびに、足には床から衝撃が返ってきます。かたいコンクリートの上より、少しやわらかい床のほうが体にやさしそうです。木の床には、その衝撃をやわらげる力があると説明されています。

林産試験場の1985年の資料は、木材は断熱性が高く、適度な弾力と衝撃を吸収する力、すり減りにくさをあわせもつので、床材に向くと説明しています[1]。個々の性能だけを見れば、木より優れた材料もありますが、いくつもの性能を同時にもつ点が有利とされます。

木のフローリングは、コンクリートの上に貼る床材とちがい、根太(ねだ)という下の骨組みなどの上に張られます。そのため床板が荷重を支える役目も担い、木の弾力がそのまま床の弾力になって、体育館や舞台に向く、と述べられています[1]。ただしこれは1985年の資料で、木が最良の素材だとまで言っているわけではありません。

では、この「木の弾力」には、どんな弱みがあるのでしょうか。

木が床材に選ばれる理由として、1985年の林産試験場の資料は、断熱性が高く、適度な弾性をもち、衝撃吸収性と耐摩耗性を備える点を挙げている。個々の性能に優れた別の材料はあっても、これらを同時に満たす点で木の床は有利だという整理である[1]。

コンクリート面に貼る床材と異なり、木質フローリングは根太の上に直接、または下張り板を介して張られる。床板そのものが荷重を支える構造材を兼ねるため、木の弾性が床の弾力として現れ、足が受ける衝撃を減らして疲労を軽くする[1]。調査された北海道の体育館では、上から単層フローリング(カエデ・ナラ・カバなど、厚さ18mm、幅75〜78mm、長さ不ぞろいの乱尺)、その下に構造用ラワン合板(厚さ12〜15mm)という順の構成だった[2]。ただしこれは4施設の例で、全国共通の仕様ではない。

弾性を生む木材は、湿度で含水率が変わり、膨潤・収縮する。この性質が、目地幅の変化を生んでいる可能性がある。

3. ふゆに 木は、どう なるの?

3. 乾いた冬、木は水分を手放して縮む

3. 含水率と相対湿度 ── 制御されない体育館の空気

木は、空気の 中の 水を、すったり はいたり します。しっけが 高い なつには ふくらみ、かわく ふゆには ちぢみます。

さっきの 体育館では、ふゆに 空気が とても かわいて、しっけが 20パーセントほどまで さがりました。木は、水を 手ばなして ちぢみ、板と 板の あいだに すきまが できたようです。

なつは その ぎゃくです。木が ふくらんで、すきまが ぴったり うまります。ゆかは 1年を かけて、ゆっくり のびちぢみして いるのです。

木は、空気中の水分を吸ったり吐いたりして、含んでいる水の量(含水率)が変わります。湿った夏はふくらみ、乾いた冬は縮みます。

施設Aでは、フローリングの平均含水率が夏と冬で3〜5%ほど変わり、冬は8%前後まで下がりました。体育館の湿度は冷暖房や使い方で施設ごとに変わり、Aでは天井からの送風暖房で、冬の相対湿度が約20%まで下がりました。月平均で見ても、夏と冬で40〜50%の差があったと報告されています[2]。

いっぽう、湿度の変化が小さい施設BとDでは、含水率の変化は1%弱でした[2]。すき間の大きさは、体育館の空気の使い方とつながっているようです。

ところで、動くのは見えている板だけでしょうか。床の下にも板があります。

木材の含水率は周囲の相対湿度に追随し、湿度が下がれば含水率が下がって収縮する。施設Aでは、夏と冬でフローリングの平均含水率が3〜5%変化し、冬は8%前後まで低下した[2]。

その背景には、体育館の湿度が屋外の天気に従うのではなく、冷暖房と利用状況で決まることがある。施設Aは天井からの送風暖房で、冬の相対湿度が約20%まで下がり、月平均で夏冬に40〜50%RHの差が出た[2]。対照的に、湿度変化の小さい施設B・Dでは含水率の変化は1%弱だった[2]。目地幅の差が施設ごとに大きいことは、この湿度環境の差と重なる。ただし、原因をこれだけに絞れるかは分からない。

ただし、床の動きは表面の板だけで決まるのか。この報告は、床下の湿度も含めて管理する必要があると述べている[2]。次に、床の下の構造を見る。

4. ゆかの 下にも、ずらして ならべた 板が ある?

4. 床下の合板も、継ぎ目をずらして張られている

4. 千鳥張りの下地合板と、目地幅の関係

体育館の 木の ゆかの 下には、「ごうばん」が しかれて います。木を うすく はりあわせた 板です。

この 板は、つぎめが ならばないように、半分ずつ ずらして ならべて あります。「ちどりばり」と いう ならべかたです。レンガの かべを つくる ときと にて います。ただし ゆかの 場合は、その ならべかたで すきまが どうなるかまでは、はっきり して いません。

ごうばんの つぎめの 近くで、上の ゆかの すきまが ひろがりやすい ようでした。

床の下には、合板が敷かれています。調べられた体育館では、この合板が「千鳥張り」で施工されていました。千鳥張りとは、隣り合う板の継ぎ目を半分ずつずらして並べる張り方で、レンガ積みの壁の並びに似ています[2]。

研究チームは、下地合板の継ぎ目の近くで、上のフローリングの継ぎ目幅の変化が大きくなる傾向があることに気づきました。施設Aでは合板を450mmずつずらして施工しており、冬に、その間隔に近い位置で継ぎ目が大きく開いた箇所がありました[2]。

ただし、これは「合板の継ぎ目が原因」と決まった話ではありません。報告でも、合板の動きがどう作用するかは、さらに詳しい調査が必要とされています[2]。

なお、合板とフローリングは、伸び縮みの量がちがいます。ラワン合板の収縮率はフローリングの木より小さく、継ぎ目幅の季節変化も、フローリングより小さかったそうです[3]。

調査した施設では、下地のラワン合板が千鳥張りで施工されていた。千鳥張りには、隣接する短辺を幅の半分ずつずらす幅方向のものと、長辺を長さの半分ずつずらす長さ方向のものがある[2]。

床下の合板の継ぎ目位置の近くで、フローリングの目地幅の変化が大きくなる傾向があった。施設Aでは合板を450mmずつずらして施工しており、冬に、この間隔と推測される位置でフローリングの目地が大きく開いた箇所がある[2]。

ただし、この因果を、合板の継ぎ目が原因だと断定することはできない。報告自身が、下地合板の膨潤収縮に伴う目地近傍の挙動が目地の開閉を大きくすることは確認できたが、詳細な調査が必要だとしている[2]。

層ごとの伸縮率の違いも関わる。未塗装の下地合板は、塗装されたフローリングより吸放湿しやすく、含水率の変化は大きい。それでも合板の収縮率がフローリング材より小さいため、継ぎ目幅の季節変化は合板のほうが小さかった。この違いが作用すると推察されている[3]。

5. すきまは、あっても いいの?

5. すき間は逃げ場でもある ── 板が押し合うと

5. 短辺の密着と、伸縮の逃げ場 ── 管理の目安

ゆかの 板は、ながい 方向より、はしどうしの すきまの ほうが、ずっと せまい です。なつは、ほとんど ぴったり くっついて います。

ぴったり くっついた 板が、さらに ふくらむと、おしあって、そったり もりあがったり する ことも あるそうです。すきまは、木が のびる ための 場所でも ある のです。

アメリカの メープルゆかの 会社の だんたいは、かべぎわに 木が のびる ための あきを つくる やりかたを、しめして います。日本の 体育館とは 同じとは かぎりません。

木の ゆかの 下の しっけまで 気を つける ことが 大切だと、しらべた 人たちは 考えて います。

板の端どうしの短い継ぎ目は、長い辺の継ぎ目よりずっと狭く、施設Aとは別の複合フローリングの施設Dでは、夏の平均が0.02mm、冬でも平均0.12mmで、冬でも密着した継ぎ目が多くありました。夏には、押し合って形が変わった板も見られたそうです[2]。

すき間は、木が伸びるための逃げ場にもなっているようです。アメリカのメープル床材の業界団体MFMAは、壁ぎわや柱まわりに、床が動くための空き(エキスパンションボイド)を設ける仕様を示しています。その空きがごみでふさがると、床板が押し合って反り上がることがありうる、と説明しています[4]。ただし、これは米国の団体の資料で、日本の体育館の仕様と同じとは限りません。

近年は、はがれた床板の木片によるけがが、体育館で相次ぎました。消費者安全調査委員会が2017年に調査報告を公表し、経年劣化や過度な吸放湿が割れの要因にあげられた、と林産試験場の報告は紹介しています[2]。こうした背景から、床上と床下の温湿度を管理することが大切だと考えられています。

短辺どうしの継ぎ目は、長辺に比べて非常に狭い。複合フローリングの施設Dでは、夏の平均目地幅が0.02mm、冬でも平均0.12mm(最大0.3mm)で、冬でも密着した目地が多く、夏には押し合って変形した板も見られた[2]。複合フローリングでの測定値なので、単層の床にそのまま当てはまるとは限らない。

伸縮の逃げ場を設計に組みこむ例として、米国のメープル床材の業界団体MFMAの資料には、床の方式に応じて、外周や柱・バレーボール支柱の差し込み口などにエキスパンションボイド(伸縮のための空き)を設ける仕様が示されている。空きがごみで詰まると、床板の反り上がりなどが起こりうるとされる[4]。ただし米国団体の仕様であり、日本の体育館の仕様とは限らず、固定式の工法では空きが不要な場合もある。

この団体は、室内の湿度を通年で相対湿度35〜50%に保つことを推奨し、十分になじませた床材なら15%程度の変動は問題にならないとしている(事務局長の発言を紹介した二次資料)[5]。施設Aの月平均で夏冬に40〜50%RHの差があったことは、この15%程度という目安を上回る。ただし推奨と実測は条件が異なり、目地の動きとの因果は断定できない。

背景には、体育館で剥がれた床板の木片による負傷が相次いだという事情がある。消費者安全調査委員会が2017年に報告を公表し、割れの要因に経年劣化や過度な吸放湿が挙げられた(この経緯は林産試験場報の序文による紹介で、委員会報告そのものは確認していない)。今回の調査は、床上と床下の温湿度を管理する必要があると考察している[2]。

6. ゆかの 板を かんさつして みよう

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

つぎに 体育館に 行く とき、ゆかの 板を 見て みましょう。ゆかを ふまない ように、はしから しゃがんで 見ます。

板は どっちの むきに ならんで いますか。はしと はしの つぎめは、いろいろな ところに ありますか。それとも 同じ ところに そろって いますか。

すきまが 見えたら、先生に 「これは、木の ゆかが のびちぢみした あとですか」と 聞いて みても いいでしょう。

体育館の床を、しゃがんで横から見てみましょう。板は長さがそろっていない「乱尺」で並んでいるでしょうか。端の継ぎ目は、あちこちにずれているでしょうか。線が細い場所と広い場所は、どこにあるでしょうか。

すき間が見えたら、壁ぎわや窓の近く、暖房の風の当たる場所かなど、位置を記録してみるのもおもしろいと思います。床の動きは、湿度のちがいと関係しているのかもしれません。

体育館の管理は学校や自治体が行っています。床のことを知りたいときは、担当の先生に聞いてみましょう。

調査報告の全文は、林産試験場のサイトから読める(出典[2])。第552号の髙山・近藤の報告と、林産試だより2022年6月号(出典[3])をあわせて読むと、合板と床材の動きの違いが分かる。

日本の体育館で、下地の構成や壁ぎわの空き(エキスパンション相当)がどう設計されているかは、体育施設の設計指針で調べてみたい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

床の構造や実測値は林産試験場の資料を中心にし、米国の資料は日本の仕様との違いを確かめるために使いました。

  1. 林産試験場「林産試だより」1985年1月号「木の床は疲れない」 https://www.hro.or.jp/upload/9599/20044004001.pdf (木が床材に向く理由、根太の上に張る構造)
  2. 髙山・近藤「体育館におけるフローリングの損傷発生要因の検討(第1報)」林産試験場報 第552号(2025) https://www.hro.or.jp/upload/52721/552c-1_TAKAYAMA.pdf (4施設の床構成、含水率、目地幅、床下湿度の実測)
  3. 林産試験場「林産試だより」2022年6月号 https://www.hro.or.jp/upload/9018/2206-4.pdf (下地合板とフローリングの収縮率のちがい)
  4. MFMA「Expansion Voids」 https://www.sportsfloorsinc.com/wp-content/uploads/2022/05/Expansion-Voids_1.pdf (米国のメープル床材団体の、床が動くための空きの考え方)
  5. Campus Rec Magazine「Maintaining Proper Environments for Maple Sports Floors」 https://campusrecmag.com/maintaining-proper-environments-for-maple-sports-floors/ (推奨湿度の範囲。二次資料)

なおした ところ

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