1. ほちょうきの なかには、なにが はいって いるの?
1. 補聴器の中の3つの部品
1. 基本構成 ── マイク・アンプ・レシーバー
ほちょうきの なかには、おもに 3つの ぶひんが あります。
ひとつめは、おとを ひろう マイク。ふたつめは、おとを おおきくする アンプ。みっつめは、みみに おとを とどける スピーカーです。
でんちで うごく、ちいさな ラジオのようなものを、そうぞうして みて ください。ただし ほんとうは、ラジオと ちがって、ひとりひとりの きこえかたに あわせて つかう どうぐです。
2. みみの おくでは、おとが どう つたわるの?
2. 耳の奥で、音が電気信号になるまで
2. 内耳の有毛細胞と感音難聴
みみの おくには、うずまきの かたちを した ところが あります。おとが はいると、なかの みずのような えきたいが ゆれます。
そこには、ちいさな け のような ものが ならんだ さいぼうが あります。け が まがると、でんきの あいずが うまれて、のうへ おくられます。
この はたらきが よわると、おとが とどいても、あいずに かわりにくく なります。また、あいずを のうへ はこぶ ところに わけが ある ことも あります。とくに たかい おとが きこえにくく なる ことが あるそうです。
耳の奥の内耳には、かたつむりのような形をした蝸牛があります。音の振動で中のリンパ液が揺れると、有毛細胞という細胞の先にある細かい毛が曲がります。毛が曲がると先端の小さな孔が開き、電気信号が生まれて、聴神経を通って脳へ送られます[4]。
音が内耳には届いていても、神経の信号に変えられなかったり、信号が脳へ伝わらなかったりする状態を、感音難聴といいます。原因のある場所は、有毛細胞など内耳の側のこともあれば、聴神経など信号を運ぶ側のこともあります。年をとると、とくに高い周波数の音が聞き取りにくくなると説明されています[3]。
補聴器は、内耳や神経の状態そのものを直す道具ではありません。聞こえにくくなった分を、外から補う道具です。
3. どうして、ぜんぶを おおきくしては いけないの?
3. 全部を大きくしても役に立たない理由
3. 周波数ごとの増幅とデジタル処理
たかい おとだけ きこえにくい ひとに、ぜんぶの おとを おおきくして きかせると、どうなるでしょう。
ききとりにくい ことばが、そのまま おおきく なるだけで、たすけに ならない ことが あると いわれて います。
たとえば、へやの すみだけ くらい ときに、へやじゅうの でんきを つけると、まぶしい ところが できて しまいます。くらい ところだけ あかるく できれば ちょうどいいのです。ただし ほんとうは、あかりと おとは べつの ものです。
いまの ほちょうきは、おとを かずの あいずに かえて、たかい おとや ひくい おとごとに、おおきくする ぶんを かえられる ものが おおいそうです。
高い音だけが聞こえにくい難聴の場合、単純にすべての音を増幅しても、聞こえてくる不明瞭な話し声がそのまま大きくなるだけで、あまり助けになりません。高い周波数を選んで増幅する補聴器なら、会話の聞き取りが大きく改善するという説明があります[2]。
これを可能にしているのがデジタル処理です。アナログ式は音を電気信号にして増幅します。デジタル式は音波を数値のコードに変えてから処理するため、周波数ごとに違う増幅ができます[1]。アナログが悪いということではなく、処理の細かさが違います。
いまは、内蔵のプロセッサが拾った音を分析し、雑音を減らしたり、周波数ごとに増幅したりするデジタル補聴器が主流だとされます[5]。多くの機種が複数の周波数チャンネルに対応し、その人の難聴に合わせて細かく増幅できます[2]。
主に高周波の音が聞こえない難聴では、単純な増幅は、聞こえる不明瞭な発話をそのまま大きくするだけで恩恵がない。高い周波数を選択的に増幅する補聴器では、会話の聞き取りが大きく改善するとされる[2]。
アナログ式は音波を電気信号にして増幅する。デジタル式は音波を二進法に似た数値コードに変換してから処理するので、周波数ごとに異なる増幅が可能になる[1]。現在は、内蔵プロセッサによる音の分析、雑音の軽減、周波数別増幅を行うデジタル式が主流とされる[5]。MSDマニュアルによれば、補聴器の多くは複数の周波数チャンネルのデジタル処理を備える[2]。
アナログとデジタルの違いは優劣ではなく処理の細かさである、と読むのが資料に沿う。
4. おおきい おとは、どう するの?
4. 大きな音は抑える ── 圧縮という工夫
4. リクルートメントとダイナミックレンジ圧縮
ちいさな おとを おおきくするだけだと、こまる ことが あります。おおきな おとまで おおきくなると、おとの ちがいが おおきく なりすぎる ことが あるからです。
そこで、ちいさな おとは おおきく、おおきな おとは おおきく しすぎない ように する ほうほうが つかわれると いわれて います。これを 「あっしゅく」と いいます。
おとを つぶして ちいさく する ことでは ありません。ちいさい おとと おおきい おとの ちがいを、せまく する ことです。
感音難聴では、小さな音は聞こえにくいのに、大きな音になるとかえって大きすぎるように感じることがあります。これはリクルートメント(補充現象)と呼ばれ、有毛細胞の損傷に関係するとされています[6]。
補聴器には、小さい音と大きい音の差を縮める「ダイナミックレンジ圧縮」をかけてから増幅する方法があります。音の大きさの差を縮める処理として説明されます。リクルートメントへの対応として使われると、この記事で参照した資料が直接述べているわけではありません。圧縮といっても、音をつぶして小さくするわけではありません。多くの補聴器には、小さな音を選んで増幅する圧縮の処理が入っていると紹介されています[7]。細かな設計は機種ごとに違うはずなので、ここでは考え方だけを押さえておきます。
5. ほちょうきで、まえと おなじに もどるの?
5. 補聴器にできること、できないこと
5. 補聴器の限界と、処理が神経応答に与える影響
ほちょうきを つけても、むかしの きこえかたに ぴったり もどる わけでは ありません。みみの おくの さいぼうを、なおす どうぐでは ないからです。
それでも、ひとと はなす ときに たすけに なると いわれて います。れんしゅうを すると、おとの ことが よく わかるように なる、という せつめいも あります。
どうぶつで しらべる けんきゅうも あります。ほちょうきの しくみを、もっと よく して いくための ものです。
アメリカの国立機関の解説では、補聴器は正常な聴力を回復させないとされています。増幅量にも実際的な限界があります。ただ、練習を重ねると、音とその音源についての認識を高められると説明されています[1]。日本語のMSDマニュアルも同じ趣旨で、正常な聴力の回復はできないが、コミュニケーション能力の改善が期待できるとしています[2]。
処理の側にも研究課題があります。難聴にしたスナネズミを使った2021年の研究では、増幅と圧縮の処理をするとニューロンの応答がゆがみ、圧縮を外しても完全には戻らなかったと報告されました[7]。動物での結果なので、人にそのまま当てはまるとは言えません。補聴器の処理の改善を考える動物研究の一例として読んでください。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
きょう できること
しずかな へやで、えんぴつを つくえに おく おと、ちいさな こえ、いつもの こえを きき くらべて みましょう。ちいさい おとと おおきい おとの ちがいを、「ちいさい」「ふつう」「おおきい」で ノートに かいて みます。あっしゅくは、この ちがいを せまく する しごとです。おおきな おとは、だしすぎないで ください。
おでかけで できること
まちで ほちょうきを つけて いる ひとを みかけても、じろじろは みないで おきましょう。みみに かける かたちの ものが あることは、しって おくと よいです。
今日できること
静かな部屋で、鉛筆を机に置く音、小さな声、ふだんの声を聞き比べてみましょう。「小さい」「ふつう」「大きい」の3段階でノートに書き、音の大きさの差がどれくらいあるかを見ます。圧縮は、この差を縮める処理です。大きな音は出さないでください。
出かけてできること
耳かけ型など、補聴器にはいくつかの形があります。街で見かけたら、じろじろ見ないで、形だけ覚えておくとよいでしょう。
公式情報
自分の聞こえや補聴器のことは、耳鼻咽喉科など医療の専門家に相談してください。ここでは一般的な仕組みの説明にとどめています。
資料を読む
NIDCD(米国立聴覚・伝達障害研究所)の「Hearing Aids」「How Do We Hear?」は英語だが、部品と聴覚の仕組みが短くまとまっている[1][4]。日本語ではMSDマニュアル家庭版の「難聴の管理」が読みやすい[2]。圧縮の動物実験はNature Asiaのハイライトに日本語の要約がある[7]。
今日できること
静かな部屋で、鉛筆を机に置く音、小さな声、ふだんの声を聞き比べ、3段階で記録して音の大きさの差を見る。圧縮はこの差を縮める処理にあたる。大きな音は出さない。
公式情報
自身の聞こえや補聴器については、耳鼻咽喉科など医療の専門家に相談してほしい。この記事は一般的な仕組みの整理にとどめる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[n]は、下の番号の資料に対応します。英語の資料は要約を経由して確認したものを含み、逐語の照合は一部にとどまります。
- NIDCD(米国立聴覚・伝達障害研究所)「Hearing Aids」 https://www.nidcd.nih.gov/health/hearing-aids (部品・デジタル処理・限界)
- MSDマニュアル家庭版「難聴の管理」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/19-耳-鼻-のどの病気/難聴と聾/難聴の管理 (部品・周波数選択・限界)
- MSDマニュアル家庭版「難聴」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/19-耳-鼻-のどの病気/難聴と聾/難聴 (感音難聴と高い周波数)
- NIDCD「How Do We Hear?」 https://www.nidcd.nih.gov/health/how-do-we-hear (内耳での電気信号化)
- MEDICAL NOTE「補聴器」 https://medicalnote.jp/diseases/補聴器 (デジタル処理の現状)
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「Hearing Loss」 https://www.msdmanuals.com/professional/ear,-nose,-and-throat-disorders/hearing-loss/hearing-loss (リクルートメント)
- Nature Asia ハイライト(Nature Biomedical Engineering 2021) https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13671 (圧縮とその影響)
なおした ところ
更新履歴
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