このサイトは、ほんの入り口です

ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ほちょうきは、どうして ちいさな おとが きこえるように なるの?

補聴器はなぜ小さな音を聞こえるようにできるのか ── 「大きくする」だけではない仕組み

補聴器の増幅・周波数選択・圧縮 ── 感音難聴の聞こえを補う仕組みと限界

分野:からだ

ラジオの おとが ちいさければ、つまみを まわして おおきく します。ほちょうきも、おとを おおきくする どうぐです。

でも、ぜんぶの おとを おなじだけ おおきくしても、よく きこえるように ならない ことが あります。ほちょうきは、なにを くふうして いるのでしょう。

ラジオの音が小さければ、音量のつまみを回せば済みます。補聴器も音を大きくする道具ですが、全部の音を同じだけ大きくしても、聞き取りやすくなるとは限りません。

資料には、聞こえにくい高い音だけを選んで増やす工夫や、大きな音を抑える「圧縮」という処理が出てきます。小さな部品の中で何が起きているのか、耳の仕組みと合わせて見ていきます。

補聴器は、音を大きくするだけの装置ではない。感音難聴では高い周波数から聞こえにくくなることがあり、全体を一様に増幅しても、不明瞭な話し声が大きくなるだけで恩恵がないとされる[2]。

この記事では、基本の3部品、内耳での音の電気信号化、周波数ごとの増幅、リクルートメントと圧縮、動物実験が示す処理の限界を、公的機関の解説と二次資料を突き合わせて整理する。日本の補聴器の制度や、装着後の調整(フィッティング)の手順は扱わない。

読み方を切り替えられます。画面の上にある「よみかた」のボタンで、小学校低学年むけ・小学校高学年むけ・中学生むけの3つの書き方に切り替わります。むずかしいと思ったら、いつでもやさしい方に戻ってください。選んだ読み方はブラウザが覚えているので、次に別の記事を開いたときも同じ読み方で始まります。

1. ほちょうきの なかには、なにが はいって いるの?

1. 補聴器の中の3つの部品

1. 基本構成 ── マイク・アンプ・レシーバー

ほちょうきの なかには、おもに 3つの ぶひんが あります。

ひとつめは、おとを ひろう マイク。ふたつめは、おとを おおきくする アンプ。みっつめは、みみに おとを とどける スピーカーです。

でんちで うごく、ちいさな ラジオのようなものを、そうぞうして みて ください。ただし ほんとうは、ラジオと ちがって、ひとりひとりの きこえかたに あわせて つかう どうぐです。

補聴器の基本の部品は3つです。音を電気信号に変えるマイク、その信号を大きくするアンプ、そして耳へ音を届けるレシーバー(小さなスピーカー)です[1]。

日本語の医学解説でも、音を拾うマイクロホン、電池式の増幅器、音を伝える装置を備えていると説明されています[2]。別々の資料で同じ3つが挙がっているので、この組み立ては基本と考えてよさそうです。

ただ、「大きくするアンプ」があるだけなら、ラジオと変わりません。補聴器が工夫を重ねているのは、そのアンプの中で、何をどれだけ大きくするかという部分です。

補聴器の基本部品は、音を電気信号に変えるマイク、信号を大きくするアンプ、耳へ音を届けるレシーバー(スピーカー)の3つとされる[1]。MSDマニュアル家庭版も、マイクロホン、電池式の増幅器、音を伝える装置を挙げており、独立した2資料で一致している[2]。

補聴器の種類には、耳かけ型(増幅能力が最も高いとされる)などがある[2]。ここまでは部品の話で、「何をどう増幅するか」が次章以降の中心になる。

2. みみの おくでは、おとが どう つたわるの?

2. 耳の奥で、音が電気信号になるまで

2. 内耳の有毛細胞と感音難聴

みみの おくには、うずまきの かたちを した ところが あります。おとが はいると、なかの みずのような えきたいが ゆれます。

そこには、ちいさな け のような ものが ならんだ さいぼうが あります。け が まがると、でんきの あいずが うまれて、のうへ おくられます。

この はたらきが よわると、おとが とどいても、あいずに かわりにくく なります。また、あいずを のうへ はこぶ ところに わけが ある ことも あります。とくに たかい おとが きこえにくく なる ことが あるそうです。

耳の奥の内耳には、かたつむりのような形をした蝸牛があります。音の振動で中のリンパ液が揺れると、有毛細胞という細胞の先にある細かい毛が曲がります。毛が曲がると先端の小さな孔が開き、電気信号が生まれて、聴神経を通って脳へ送られます[4]。

音が内耳には届いていても、神経の信号に変えられなかったり、信号が脳へ伝わらなかったりする状態を、感音難聴といいます。原因のある場所は、有毛細胞など内耳の側のこともあれば、聴神経など信号を運ぶ側のこともあります。年をとると、とくに高い周波数の音が聞き取りにくくなると説明されています[3]。

補聴器は、内耳や神経の状態そのものを直す道具ではありません。聞こえにくくなった分を、外から補う道具です。

内耳の蝸牛かぎゅうでは、音の振動でリンパ液が揺れ、有毛細胞の不動毛が曲がる。曲がることで不動毛の先端にあるチャネルが開くと電気信号が生じ、聴神経を経て脳へ伝わる[4]。

感音難聴は、音は内耳に届いていても神経信号に変換できない、あるいは信号が脳へ伝わらない状態を指す。障害の場所は、有毛細胞など内耳の側にも、聴神経など信号を運ぶ側にもありうる。加齢では、最も高い周波数の音から聞き取りにくくなるとされる[3]。

補聴器の設計は、「どの周波数がどれだけ聞こえにくいか」という個人差に合わせる方向で考えられている。次章では、その具体的な手段を見る。

3. どうして、ぜんぶを おおきくしては いけないの?

3. 全部を大きくしても役に立たない理由

3. 周波数ごとの増幅とデジタル処理

たかい おとだけ きこえにくい ひとに、ぜんぶの おとを おおきくして きかせると、どうなるでしょう。

ききとりにくい ことばが、そのまま おおきく なるだけで、たすけに ならない ことが あると いわれて います。

たとえば、へやの すみだけ くらい ときに、へやじゅうの でんきを つけると、まぶしい ところが できて しまいます。くらい ところだけ あかるく できれば ちょうどいいのです。ただし ほんとうは、あかりと おとは べつの ものです。

いまの ほちょうきは、おとを かずの あいずに かえて、たかい おとや ひくい おとごとに、おおきくする ぶんを かえられる ものが おおいそうです。

高い音だけが聞こえにくい難聴の場合、単純にすべての音を増幅しても、聞こえてくる不明瞭な話し声がそのまま大きくなるだけで、あまり助けになりません。高い周波数を選んで増幅する補聴器なら、会話の聞き取りが大きく改善するという説明があります[2]。

これを可能にしているのがデジタル処理です。アナログ式は音を電気信号にして増幅します。デジタル式は音波を数値のコードに変えてから処理するため、周波数ごとに違う増幅ができます[1]。アナログが悪いということではなく、処理の細かさが違います。

いまは、内蔵のプロセッサが拾った音を分析し、雑音を減らしたり、周波数ごとに増幅したりするデジタル補聴器が主流だとされます[5]。多くの機種が複数の周波数チャンネルに対応し、その人の難聴に合わせて細かく増幅できます[2]。

主に高周波の音が聞こえない難聴では、単純な増幅は、聞こえる不明瞭な発話をそのまま大きくするだけで恩恵がない。高い周波数を選択的に増幅する補聴器では、会話の聞き取りが大きく改善するとされる[2]。

アナログ式は音波を電気信号にして増幅する。デジタル式は音波を二進法に似た数値コードに変換してから処理するので、周波数ごとに異なる増幅が可能になる[1]。現在は、内蔵プロセッサによる音の分析、雑音の軽減、周波数別増幅を行うデジタル式が主流とされる[5]。MSDマニュアルによれば、補聴器の多くは複数の周波数チャンネルのデジタル処理を備える[2]。

アナログとデジタルの違いは優劣ではなく処理の細かさである、と読むのが資料に沿う。

4. おおきい おとは、どう するの?

4. 大きな音は抑える ── 圧縮という工夫

4. リクルートメントとダイナミックレンジ圧縮

ちいさな おとを おおきくするだけだと、こまる ことが あります。おおきな おとまで おおきくなると、おとの ちがいが おおきく なりすぎる ことが あるからです。

そこで、ちいさな おとは おおきく、おおきな おとは おおきく しすぎない ように する ほうほうが つかわれると いわれて います。これを 「あっしゅく」と いいます。

おとを つぶして ちいさく する ことでは ありません。ちいさい おとと おおきい おとの ちがいを、せまく する ことです。

感音難聴では、小さな音は聞こえにくいのに、大きな音になるとかえって大きすぎるように感じることがあります。これはリクルートメント(補充現象)と呼ばれ、有毛細胞の損傷に関係するとされています[6]。

補聴器には、小さい音と大きい音の差を縮める「ダイナミックレンジ圧縮」をかけてから増幅する方法があります。音の大きさの差を縮める処理として説明されます。リクルートメントへの対応として使われると、この記事で参照した資料が直接述べているわけではありません。圧縮といっても、音をつぶして小さくするわけではありません。多くの補聴器には、小さな音を選んで増幅する圧縮の処理が入っていると紹介されています[7]。細かな設計は機種ごとに違うはずなので、ここでは考え方だけを押さえておきます。

感音難聴では、特に大きな音で音の感じ方が誇張される「リクルートメント」が特徴的とされ、有毛細胞の損傷が原因と説明される。神経性難聴では見られない[6]。

補聴器には、小さな音と大きな音の差を縮めるダイナミックレンジ圧縮を行ってから増幅する方法がある。音の大きさの差を縮める処理として説明される。ただし、これをリクルートメントへの対応と直接位置づけた資料は、今回の出典にはない。多くの補聴器は、小さな音を選択的に増幅する圧縮アルゴリズムを備えると紹介されている[7]。

5. ほちょうきで、まえと おなじに もどるの?

5. 補聴器にできること、できないこと

5. 補聴器の限界と、処理が神経応答に与える影響

ほちょうきを つけても、むかしの きこえかたに ぴったり もどる わけでは ありません。みみの おくの さいぼうを、なおす どうぐでは ないからです。

それでも、ひとと はなす ときに たすけに なると いわれて います。れんしゅうを すると、おとの ことが よく わかるように なる、という せつめいも あります。

どうぶつで しらべる けんきゅうも あります。ほちょうきの しくみを、もっと よく して いくための ものです。

アメリカの国立機関の解説では、補聴器は正常な聴力を回復させないとされています。増幅量にも実際的な限界があります。ただ、練習を重ねると、音とその音源についての認識を高められると説明されています[1]。日本語のMSDマニュアルも同じ趣旨で、正常な聴力の回復はできないが、コミュニケーション能力の改善が期待できるとしています[2]。

処理の側にも研究課題があります。難聴にしたスナネズミを使った2021年の研究では、増幅と圧縮の処理をするとニューロンの応答がゆがみ、圧縮を外しても完全には戻らなかったと報告されました[7]。動物での結果なので、人にそのまま当てはまるとは言えません。補聴器の処理の改善を考える動物研究の一例として読んでください。

NIDCDは、補聴器は正常な聴力を回復させず、増幅量にも実際的な限界があるが、練習によって音と音源への認識を高められるとする[1]。MSDマニュアルも、正常な聴力の回復はできないが、コミュニケーション能力の改善が期待できると述べる[2]。

Nature Biomedical Engineering(2021年5月)に載った、難聴のスナネズミの研究では、増幅・圧縮処理を行うとニューロンの応答にゆがみが生じ、圧縮を外しても部分的にしか修正されないと報告された[7]。動物実験であり、人に直接当てはめることはできない。補聴器の信号処理の改善を検討する動物研究の一例として読める。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

きょう できること

しずかな へやで、えんぴつを つくえに おく おと、ちいさな こえ、いつもの こえを きき くらべて みましょう。ちいさい おとと おおきい おとの ちがいを、「ちいさい」「ふつう」「おおきい」で ノートに かいて みます。あっしゅくは、この ちがいを せまく する しごとです。おおきな おとは、だしすぎないで ください。

おでかけで できること

まちで ほちょうきを つけて いる ひとを みかけても、じろじろは みないで おきましょう。みみに かける かたちの ものが あることは、しって おくと よいです。

今日できること

静かな部屋で、鉛筆を机に置く音、小さな声、ふだんの声を聞き比べてみましょう。「小さい」「ふつう」「大きい」の3段階でノートに書き、音の大きさの差がどれくらいあるかを見ます。圧縮は、この差を縮める処理です。大きな音は出さないでください。

出かけてできること

耳かけ型など、補聴器にはいくつかの形があります。街で見かけたら、じろじろ見ないで、形だけ覚えておくとよいでしょう。

公式情報

自分の聞こえや補聴器のことは、耳鼻咽喉科など医療の専門家に相談してください。ここでは一般的な仕組みの説明にとどめています。

資料を読む

NIDCD(米国立聴覚・伝達障害研究所)の「Hearing Aids」「How Do We Hear?」は英語だが、部品と聴覚の仕組みが短くまとまっている[1][4]。日本語ではMSDマニュアル家庭版の「難聴の管理」が読みやすい[2]。圧縮の動物実験はNature Asiaのハイライトに日本語の要約がある[7]。

今日できること

静かな部屋で、鉛筆を机に置く音、小さな声、ふだんの声を聞き比べ、3段階で記録して音の大きさの差を見る。圧縮はこの差を縮める処理にあたる。大きな音は出さない。

公式情報

自身の聞こえや補聴器については、耳鼻咽喉科など医療の専門家に相談してほしい。この記事は一般的な仕組みの整理にとどめる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の[n]は、下の番号の資料に対応します。英語の資料は要約を経由して確認したものを含み、逐語の照合は一部にとどまります。

  1. NIDCD(米国立聴覚・伝達障害研究所)「Hearing Aids」 https://www.nidcd.nih.gov/health/hearing-aids (部品・デジタル処理・限界)
  2. MSDマニュアル家庭版「難聴の管理」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/19-耳-鼻-のどの病気/難聴と聾/難聴の管理 (部品・周波数選択・限界)
  3. MSDマニュアル家庭版「難聴」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/19-耳-鼻-のどの病気/難聴と聾/難聴 (感音難聴と高い周波数)
  4. NIDCD「How Do We Hear?」 https://www.nidcd.nih.gov/health/how-do-we-hear (内耳での電気信号化)
  5. MEDICAL NOTE「補聴器」 https://medicalnote.jp/diseases/補聴器 (デジタル処理の現状)
  6. MSDマニュアル プロフェッショナル版「Hearing Loss」 https://www.msdmanuals.com/professional/ear,-nose,-and-throat-disorders/hearing-loss/hearing-loss (リクルートメント)
  7. Nature Asia ハイライト(Nature Biomedical Engineering 2021) https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/13671 (圧縮とその影響)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。

このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。