1. 雪が 氷に なるまで、何年 かかるの?
1. 降り積もった雪が、氷になるまで
1. 雪から氷へ:内陸では約3千年
なんきょくの まん中の ほうは、とても さむいので、雪が とけません。ふった 雪の 上に、また 雪が つもります。
下の 雪は、上の 雪の おもさで、ぎゅっと おされます。雪だまを 手で かたく にぎると、かたい かたまりに なりますね。それと にています。
ただし、なんきょくでは、手では なく 雪の おもさだけで、とても 長い 時間を かけます。中の ほうでは、およそ 3000年 かかると いわれます[1]。
南極大陸の内陸は寒く、降った雪はほとんど溶けずに積み重なります。下になった雪は、上の雪の重さで少しずつ押しかためられ、やがて氷に変わります。
国立極地研究所の資料では、内陸部で雪が氷になるまでに約3000年かかるとされています[1]。ただしこれは内陸部の目安で、雪の積もる量や気温によって、かかる時間は場所ごとに大きくちがいます。
南極大陸の内陸部では、雪は融解せずに堆積し、積雪後およそ3000年をかけて自重による圧密を受けて氷になる[1]。これは内陸部の目安であり、涵養量や気温の異なる場所では所要時間が大きく異なる。
2. 空気は、どうして あわに なるの?
2. 空気が泡として閉じこめられる深さ
2. フィルンの細孔が閉じるとき
つもった 雪の 中には、すきまが たくさん あります。すきまは、外の 空気と つながって います。
雪が おされて 氷に 近づくと、すきまが せまく なり、やがて とじます。そのとき、中に のこった 空気が あわに なります[2]。
ふたを しめた びんの 空気のように、外と 行き来が できなく なるのです。そのあと、氷の 中で ずっと のこります。
積もったばかりの雪は、すきまだらけです。その雪が押されると、白くて固い「フィルン」という層になります。フィルンのすきまは、しばらくのあいだ地表の空気とつながっています。
雪が押されて密度が1立方メートルあたり約800キログラムに達すると、すきまは閉じ、外の空気と行き来できなくなって、泡として氷の中に保存されると説明されています[2]。ふたをしめた瓶のように、その時点の空気が中に残るわけです。
積雪は多孔質のフィルンを経て氷化する。密度が約800kg/m3に達すると、フィルン中の細孔が閉じ、周囲の大気と隔絶されて気泡として氷に保存される[2]。
空気が閉じ込められるのは雪が積もったあとなので、気泡の空気は周囲の氷より新しい。氷と気泡のあいだには年代差があり、その大きさは場所によって異なる。数値は資料ごとに異なるため、ここでは示さない。
3. 日本は、どこまで 深く ほったの?
3. ドームふじで掘った3035メートルの氷
3. 第2期ドームふじ:深さ3035m、最深部で約72万年前
日本の チームは、なんきょくの 「ドームふじ」と いう 場所で、氷を 長い ぼうの 形に ほりました。ほった 氷の ぼうは 「コア」と よばれます。
2003年から 2007年に かけて、ほった 深さは 3035メートル。いちばん 下の 氷は、およそ 72万年 まえの ものでした[3]。
3035メートルぜんぶが 72万年分では ありません。いちばん 下の ところが、72万年 まえです。
日本の南極観測では、内陸の「ドームふじ」で氷を柱のようにくり抜く掘削が行われました。取り出した氷の柱は、氷床コアと呼ばれます。
第2期の掘削は2003年から2007年まで。深さ3035メートルまで掘り、最も深い部分の氷は、約72万年前のものとされています[3]。3035メートルの全部が72万年分という意味ではなく、いちばん下の氷が約72万年前ということです。
日本の第2期ドームふじ掘削は2003〜07年に行われ、深さ3035mの氷床コアが得られた。国立極地研究所は、このコアが約72万年の記録を持つと報告している[3]。
72万年は最深部の年代で、3035mの全体が均等に72万年分という意味ではない。
4. あわの 空気から、なにが わかるの?
4. 泡の空気が語る、80万年の二酸化炭素
4. EPICAの80万年記録:CO2と気温の連動
ヨーロッパの チームも、なんきょくの ほかの 場所で 氷を ほりました。そして あわの 空気から、空気の 中の 二酸化炭素の りょうを 調べました。
2008ねんの ろんぶんでは、80万年 まえまでの 記録が しめされました。二酸化炭素が 多い ときは あたたかく、少ない ときは 寒い、という つながりが 見られたと つたえられて います[4]。
どちらが 先に かわったのかは、はっきり 言い切れません。ほとんど 同時か、気温が 少し 先だったという はなしが あります[6]。
氷の中の泡を取り出して空気の成分を測ると、大昔の二酸化炭素の量が分かります。欧州のEPICAという計画のコアを分析した2008年の研究では、この記録が約80万年前までのびました[4]。
その80万年のあいだ、寒い氷期と暖かい間氷期が8回くり返されました。二酸化炭素の量も、氷期に低く間氷期に高く、南極の気温とよく重なって動いていたと報告されています[4]。
では、二酸化炭素と気温は、どちらが先に上がったのでしょうか。地球環境研究センターの解説では、氷期から間氷期へ向かうとき、ほぼ同時か、気温のほうがやや先だったとされます。太陽の光の量の変化が引き金で、そのあとにガスの濃度が上がったという説明です[6]。
5. いまの 二酸化炭素は、むかしと くらべると?
5. 過去80万年の範囲と、いまの数字
5. 産業革命前との比較と上昇の速さ
空気の 中の 二酸化炭素の りょうは、「ppm(ピーピーエム)」で あらわします。100万分の 1が 1ppmです。
1750年ごろは、280ppm より 少なく、80万年の あいだ 300ppm を こえた ことは ありませんでした[5]。2024年は およそ 422.8ppm。1750年ごろの 1.5ばいくらいの 数字です[5]。
氷の 記録では、20ppm ふえるのに およそ 1000年 かかりました。いまは 同じ 分が、およそ 10年で ふえて いると いわれて います[6]。
氷の記録をならべると、二酸化炭素の濃度は、氷期に低く間氷期に高い周期を80万年のあいだくり返しています。産業革命の前、1750年ごろは280ppm以下で、過去80万年のあいだ300ppmを超えたことはありませんでした[5]。ppmは100万分の1をあらわす単位です。
アメリカの海洋大気庁(NOAA)の解説によると、2024年は約422.8ppmで、産業革命前より約50%高い値です[5]。
上昇の速さも、記録と大きくちがいます。氷期から間氷期への移り変わりでは、二酸化炭素が約20ppm増えるのに約1000年かかりました。いまは約20ppmの増加が約10年で起きている、と地球環境研究センターは説明しています[6]。
6. もっと 古い 氷は、見つかったの?
6. 記録は、120万年より古い氷へ
6. 古い氷が薄くなる理由と、記録更新の現在
古い 氷は、下の ほうで とても うすく つぶれて います。氷は 少しずつ よこにも 流れ、さいごは 氷山に なって 海へ 出ます[8]。だから、古い 氷ほど、うすい かさなりに ぎゅっと つまって います。
2025年1月、ヨーロッパの チームは、長さ およそ 2800メートルの 氷を いちばん 下の かたい 岩まで ほり終えました。この 氷は、120万年より 古いと 考えられて います。でも、ほんとうの 年は、これから しらべて 分かる ところです[7]。
日本も、100万年より 古い 氷を ほる 計画が あります[8]。
氷床の内陸では、古い氷ほど深いところにありますが、ただ深いだけではありません。内陸でも雪の積もる量は少なく、古い氷は圧縮されて、とても薄い層になります。さらに氷は少しずつ横にも流れ、最後は大陸の縁から氷山になって海へ出ます。深く古い部分ほど、薄く詰まった状態になるのです[8]。
2025年1月、欧州10か国・12機関の「Beyond EPICA」計画が、南極のリトルドームCで約2800メートルの氷を岩盤まで掘り終えました。氷の年代は120万年より古いと見込まれています。ただし、これは見込みで、確かな年代や泡の分析結果は分析を待っている段階です[7]。
日本も、第3期としてドームふじ第2基地の近くで100万年より古い氷を掘る計画を進めています。氷の厚さは約2200〜2700メートルと見られていますが、時期などの詳しい進み方は、資料からは分かりません[8]。
別の方向からの記録もあります。2017年、アメリカのチームが、南極アランヒルズの青氷域から約270万年前の氷を見つけたと報告しました。強い風で雪が飛ばされ、古い氷の層が地表に出る場所です。ただ、柱として続いた記録ではなく、氷の塊の年代を測って並べたものです[9]。
氷床内陸では、古い氷は涵養量が少ないうえ、圧縮されて非常に薄い層になる。氷は水平方向にも流動し、最終的に大陸縁辺で氷山として海に出るため、深部の古い氷ほど薄く詰まっている[8]。
2025年1月、欧州10か国・12機関のBeyond EPICA計画が、南極リトルドームCで約2800mのコアを岩盤まで掘削した。氷の年代は120万年を超えると見込まれ、従来の連続記録(約80万年)を大きく超える。ただし年代は見込みであり、気泡の分析結果も未公表である[7]。
日本は第3期として、ドームふじ第2基地(旧基地の約5km南西)で100万年より古い氷の掘削を計画している。氷厚は約2200〜2700mとされるが、時期や進捗は資料から確認できない[8]。
別の系統として、2017年、米国チームがアランヒルズの青氷域から約270万年前の氷を報告した。従来の記録より約170万年古い。青氷域は強風で古い氷層が地表に出る場所で、南極表面の約1%とされる。ただし連続コアではなく、氷塊の年代を個別に測定して並べたものである[9]。氷そのものの年代が270万年であって、気泡の空気を含めた分析がその年代まで及ぶという意味ではない。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
れいぞうこの 氷を、よく 見て みましょう。白い ところや、小さな あわが あるか、さがして みて ください。あれば、氷の 中に 空気が 入って いる しるしです。
もっと 知りたい とき
インターネットで 「ドームふじ」や 「アイスコア」を 調べて みて ください。
今日できること
冷蔵庫の氷や、製氷皿の氷を見て、白くにごった部分や小さな泡があるか探してみてください。泡があれば、それが氷の中に空気が閉じこめられた形の身近な例です。
気になったら読む
「120万年より古い氷の分析で、二酸化炭素の量はどう出るのか」は、まだ分かっていません。国立極地研究所の「極」には、日本の次の掘削計画の記事があります。結果が出たときの報道と見くらべてみてください。
今日できること
製氷皿の氷に気泡があるか観察し、あれば氷床コアの気泡とのちがい(圧力・年代・閉じ込められた仕組み)を考えてみる。
資料を読むなら
- 国立極地研究所の研究成果(2016年・2017年)と、ウェブマガジン「極」の特集[1][3][8]
- Lüthi ほか(2008)Nature:EPICAの80万年CO2記録[4]
- Beyond EPICA計画の発表(2025年):分析結果の公表を待って確認する[7]
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った数字は、下の資料で確かめました。Nature論文([4])は要旨のみを確認しています。
- 国立極地研究所「研究成果」(2016年5月24日) https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20160524.html (雪が氷になる時間)
- 日本気象学会『天気』2014年11月号 氷床コア解説 https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2014/2014_11_0009.pdf (フィルンと気泡の保存)
- 国立極地研究所「研究成果」(2017年2月9日) https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20170209.html (ドームふじ72万年)
- Lüthi et al. (2008) Nature https://www.nature.com/articles/nature06949 (EPICA80万年のCO2)
- NOAA Climate.gov, Climate Change: Atmospheric Carbon Dioxide https://www.climate.gov/news-features/understanding-climate/climate-change-atmospheric-carbon-dioxide (CO2濃度の範囲と現在値)
- 国立環境研究所 地球環境研究センター「氷床コアからわかること」 https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/8/8-1/qa_8-1-j.html (気温とCO2の前後関係・上昇の速さ)
- ケンブリッジ大学ほか「Beyond EPICA」の発表 https://www.esc.cam.ac.uk/news/momentous-ice-core-drilling-campaign-retrieves-12-million-year-old-ice (120万年超の氷の掘削)
- 国立極地研究所「極」特集「未踏の100万年前の氷を掘るために」 https://kyoku.nipr.ac.jp/special/1114 (古い氷が薄い理由・日本の第3期計画)
- Science News (AAAS) 270万年前の氷 https://www.science.org/content/article/record-shattering-27-million-year-old-ice-core-reveals-start-ice-ages (アランヒルズの青氷域)
なおした ところ
更新履歴
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