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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

なべだけが あつく なる ふしぎ。アルミの なべは どうして だめだったの?

IH調理器はなぜ鍋だけ熱くなるのか 電気を通しやすい金属ほど温まりにくい逆説

IH調理器の加熱原理と鍋の条件 うず電流、アルミ・銅の壁、オールメタル加熱の周波数

分野:技術

ガラスの 板の 上に おいた なべの 水が、ぐつぐつ にえて います。板の 下には 火が ありません。

ふしぎな ことに、電気が とおりやすい アルミの なべは、むかしは 使えませんでした。どうして あつくなる なべと ならない なべが あるのでしょう。この 記事では、そのわけと、かべを こえた くふうが 分かります。

IH調理器の上では、鍋の水が沸いているのに、鍋を置いていないガラスの天板は火のそばのようには熱くなりません。熱が生まれているのは、台ではなく鍋の底そのものです[1]。

ところが、電気をよく通すアルミや銅の鍋は、ふつうのIHではかえって温まりにくいとされてきました[4]。電気をよく通す金属が、なぜ熱くならないのか。その理由と、メーカーが周波数を上げて壁を越えた工夫が分かります。

IH調理器は、天板の下のコイルが作る磁力線によって、鍋の底に電流(うず電流)を生じさせ、鍋自身の電気抵抗で発熱させる方式だ[1]。発熱源は加熱器ではなく鍋である。

この原理には逆説がある。電気をよく通すアルミや銅は、ふつうのIHではかえって温まりにくい。メーカーは磁性がないためと説明し、別の解説は電気抵抗の小ささから説明する[4]。使える鍋の条件がなぜ決まるのか、周波数を上げて制約を越えたオールメタル方式はどんな工夫で成り立つのか、その限界とともに分かる。

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1. 火が ないのに、どうして なべが あつく なるの?

1. 火がないのに、なぜ鍋の水が沸くのか

1. 熱源はどこにあるか 加熱器ではなく鍋が発熱する

ガスコンロは、火で なべの そこを あたためます。でも IHの 台の 上には、もえる 火が ありません。

それでも なべの 水は にえます。じつは、あつく なって いるのは、板では なくて、なべの そこ そのものです。だから、なべを おかない ときは、板は ほとんど かわりません。

では、なべの 中で、なにが おきて いるのでしょう。

ガスコンロは、炎で鍋を外側から温めます。IH調理器の場合は、鍋の外に熱源がありません。メーカーの説明では、熱が生まれるのは鍋の中です[1]。

そのため、熱が周りへ逃げにくく、熱効率は、資料によって幅があります。「80%以上」から「約90%」までと紹介されています[2]。

鍋の中で熱を作っているのは、電気です。でも、電気製品のコードが鍋に刺さっているわけではありません。電気はどこから来るのでしょうか。

ガスコンロは炎で鍋を外から加熱するが、IH調理器では鍋の外側に発熱体がない。メーカー資料では、熱が生じる場所は鍋そのものとされている[1]。

熱源と加熱対象が一致するので、熱が周囲へ逃げにくい。熱効率は「80%以上」とする解説と、三菱電機の記述として「約90%」とする紹介が併存しており[2]、機種や測り方で幅があると読むのが妥当だ。

では、鍋の中に電気はどこから来るのか。コードは鍋につながっていない。

2. なべの 中で、なにが おきて いるの?

2. 天板の下のコイルと、鍋の底のうず電流

2. 磁力線とうず電流 鍋の電気抵抗が熱に変わる

ガラスの 板の 下には、銅どうの 線を うずまきの ように まいた コイルが あります。ここに、ふつうより ずっと はやく むきが かわる 電気を 流します。

すると、コイルの まわりに、目に 見えない 力の 線が 出ます。この 線が 金ぞくの なべの そこを とおる とき、そこの 中で 電気の ぐるぐる 流れ(うず電流)に かわります。

電気は、とおりにくい ところを 通ると ねつに なります。ひろい ろうかは すいすい 歩けますが、せまい ろうかでは おしあって 大かわです。その おしあいが ねつです。ただし ほんとうの 電気は、人では ありません。

もし 電気が とおりにくい ほど ねつに なるなら、いちばん 電気を 流しやすい 金ぞくは、どうなるのでしょう。

天板のガラスの下には、銅線を渦巻き状に巻いたコイルがあります[2]。ここに高周波の交流電流を流すと、コイルから磁力線が出ます。

その磁力線が金属の鍋の底を通ると、鍋の中に渦のような電流が生まれます。これがうず電流です。うず電流が鍋の電気抵抗にぶつかることで、鍋自身が発熱します[1]。

たとえば、広い廊下は人がすいすい歩けますが、狭い廊下では押し合いになります。電気も、通りにくい場所を無理に通るときに熱を出します。ただし本物の電気は人の群れではなく、この例は熱の出方のイメージをつかむためのものです。

とすると、電気を通しやすい金属ほど、熱は出にくくなりそうです。実際どうなのか、次で見ます。

天板の下には銅線を渦巻き状に巻いたコイルがあり、高周波の交流電流を流す[2]。すると磁力線が生じ、これが金属の鍋の底を通過するとき、鍋の中にうず電流が誘起される。うず電流は鍋の電気抵抗によって熱に変わる[1]。

この現象は、電流の2乗に抵抗を掛けた電力が熱になるジュール熱として説明される(一般原理の解説として[9]を参照)。

ここで、発熱量が電気抵抗に関係するのなら、電気をよく通す金属は不利になりうる。次章で、実際に使える鍋がどう決まっているかを確認する。

3. でんきが とおりやすい アルミの なべは、どうして だめだったの?

3. 電気を通しやすい金属が、なぜ温まりにくいのか

3. 対応鍋の材質 抵抗が小さい金属は発熱しにくい

IHの 台では、ふつう、鉄の なべや ホーローの なべは 使えます。銅どうや アルミの なべは、むかしは 使えませんでした。土なべも 同じです。

アルミや 銅どうは、電気が とても とおりやすい 金ぞくです。さっきの ろうかで いえば、広すぎて おしあいが おきません。だから ねつが あまり 出ないのです。

電気が とおりにくい 鉄の ほうが、かえって よく あつく なります。ふしぎですね。

では、電気を とおしやすい アルミの なべを あつくする ことは できないのでしょうか。

一般的なIH調理器で使えるのは、鉄、ホーロー、ステンレスの鍋です。アルミ、銅、耐熱ガラス、土鍋は、対応マークがあるものを除いて使えないと案内されています[3]。パナソニックは、その理由を「磁性を持たないため」と説明しています。

別の解説では、アルミや銅は電気を流しやすく電気抵抗が小さいから、十分な熱が生まれにくいと説明しています[4]。メーカーは磁性を理由に挙げ、別の解説は抵抗の小ささから説明している、ということです。使える鍋かどうかは、磁性などの条件で決まります。

電気をよく通す金属が、ふつうのIHでは不利になる。ここが、IHの意外なところです。ただし、ステンレスも製品によって温まりにくいものがあるとされ、材質の名前だけで決まるわけではないようです[3]。

なお、メーカーは物理の式までは示していません。ここでは「抵抗が小さいと熱が出にくい」という説明までにとどめます。

パナソニックの案内では、一般的な電磁誘導加熱方式で使えるのは鉄・ホーロー・ステンレスの鍋で、アルミ・銅・耐熱ガラス・土鍋(対応表示のあるものを除く)は使えない。理由は「磁性を持たないため」とされる[3]。

別の解説では、アルミや銅は電気を流しやすく電気抵抗が小さいため、十分な熱が生まれない、と説明されている[4]。使える鍋の可否は磁性などの条件で決まり、電気抵抗は補助的な説明として読むのが妥当だ。電気をよく通す金属が通常のIHでは不利、という逆説がある。二つの説明(磁性と抵抗)は、資料ごとに強調点が異なる。

ステンレスは製品によって温まりにくいものもあるとされ、材質名だけでは決まらない[3]。なお、表皮効果や抵抗率を用いた物理的な定量説明は、今回参照した資料には見られなかったため、ここでは扱わない。

では、アルミや銅の鍋をあきらめるしかないのか。その前に、材質のほかにも鍋に求められる条件がある。

4. ほかにも、なべに いる ことは あるの?

4. 底が平らで、大きさもほどよく:鍋に求められる条件

4. 鍋の底の形と大きさ、IH対応土鍋の工夫

なべの そこは、たいらで、板に ぴったり くっつく ことが 大切です。そって いると、力が うまく とどきません。

大きさも かんけいします。メーカーの 目安では、そこの 大きさは 12から 26センチくらいです。小さすぎると、安全の ための 仕組みで、火力が 弱く なったり、あつく ならなかったり します。

土なべは、ふつうは 使えません。でも IH用の 土なべは、そこに 鉄の 板を うめこんで います。鉄を あつくして、その ねつで 土なべを あたためる くふうです。

こんな 決まりを 少しずつ こえて、アルミの なべも 使えるように なりました。

材質のほかにも、条件があります。パナソニックの案内では、鍋の底は平らでトッププレートに密着する必要があり、反りが約3mm以上のものは使わないとされています[3]。

底の直径の目安は12〜26cmです。12cm未満だと、異常を検知する機能が働き、火力が弱くなったり加熱できなかったりすることがあります。これは、パナソニックの案内の数字で、機種によって差があります。

土鍋は普通は使えませんが、IH対応のものは底に鉄板を埋め込んでいます。鉄が発熱し、その熱が土鍋に伝わるというしくみです[4]。

材質の壁は、鍋を作り替えるだけではなく、加熱する側を工夫することでも越えられそうです。

材質以外の条件もある。パナソニックの案内では、底が平らでトッププレートに密着し、反りが約3mm以上のものは使わない。底径の目安は12〜26cmで、12cm未満だと異常検知機能が働いて火力が弱まったり加熱できなかったりする場合がある[3]。これらの数値は同社の案内であり、機種によって差がある。

IH対応の土鍋は、底に鉄板を埋め込み、鉄を発熱させて土鍋を温める[4]。鍋側を改造して、方式に合わせた例である。

逆に、加熱する側を変えて鍋の条件を広げる道もある。次章では、その代表であるオールメタル方式を見る。

5. アルミの かべを、どうやって こえたの?

5. 周波数を上げて、アルミと銅の壁を越える

5. オールメタル方式 周波数の引き上げと、その限界

メーカーは、電気の むきが かわる 回数(周波数しゅうはすう)を ふやす 方法ほうほうを 考えました。はやく すれば、アルミや 銅どうでも ねつが 出やすく なる くふうです。

コイルの 線も、とても 細くして 数を ふやして います。これを「オールメタル」と よびます。パナソニックは 2002年に この ぎじゅつを 取り入れた、と 発表して います。

ただし、なんでも 前と 同じ では ありません。アルミや 銅どうの なべでは、火力が 少し 弱く なることが あると せつめいする メーカーも あります。

この 台は、いつごろ 生まれたのでしょう。

メーカーが選んだ方法は、コイルに流す電気の周波数を上げることでした。オールメタル方式は、通常より加熱周波数を大きくして、電気抵抗の小さいアルミや銅の鍋にも熱を生ませる方式です[5]。コイルの金属線は非常に細く、本数も多いと説明されています。

ある研究会の報告では、新型のIH調理器の周波数は20kHzと90kHz(オールメタル対応型)で、オールメタル型は約3倍高い周波数を使うとされています[7]。機種によって周波数は異なりますから、これは目安の値です。

パナソニックは2002年に、それまで難しかったアルミ・銅の鍋を使えるようにしたオールメタル加熱を取り入れたと、自社の資料で紹介しています[6]。

ただし限界もあります。日立の案内では、アルミ・銅の鍋はオールメタル加熱で最大2.6kWの火力が出るとされ、鍋の材質・形・大きさによって火力は変わります[8]。これは日立の一機種の説明です。

火のない台は、いつ、どんな形で生まれたのか。次の章で振り返ります。

アルミ・銅の壁を越えるために採られた手段が、加熱周波数を上げることだった。オールメタル方式は、通常より加熱周波数を大きくして電気抵抗の小さいアルミ・銅鍋の加熱を可能にした方式で、コイルの金属線は非常に細く本数も多い[5]。

研究会資料(2007年)には、励磁周波数が20kHzと90kHz(オールメタル対応型)とあり、後者は約3倍にあたる[7]。機種で周波数は異なるので、目安として読む。

パナソニックは、2002年にオールメタル加熱を導入したと述べている[6]。ただし「世界初」かどうかは、今回の資料からは判断しない。

限界も明示されている。日立の案内では、アルミ・銅鍋や間にアルミを挟む多層鍋は、オールメタル加熱時に最大2.6kWの火力が得られるが、鍋の材質・形状・大きさによって火力は変わる[8]。これは一機種の説明であり、全機種には一般化できない。

では、この「火のない台」はいつ、どのような形で家庭に入ったのか。

6. 火の ない 台は、いつから あるの?

6. 家庭の台所に、火のない台が来るまで

6. 国内での登場と高火力化

日本では、1974年に パナソニックが「クールトップワゴン」という IHの 台を 売りだした、と しょうかいされて います。今から 50年 いじょう 前の ことです。

そのあと、1990年には、200ボルトの 電気を 使う、火力の 強い IHの 台も 出ました。「火力が 弱いのでは」という 心配を へらす ための ものです。

いま、台所に ある IHは、こうした 少しずつの くふうの つみかさねです。

パナソニックの資料によると、国内の高周波IH調理器は、1974年に発売された「クールトップワゴン(KZ-1W)」に始まるとされています[6]。三菱電機も同じ年代に製品を出したとされますが、先後はここでは決めません。

1990年には、業界初の200V仕様のIHクッキングヒーターが発売されました。火力の不安を減らすことが狙いだったとされ、2020年11月時点で累計700万台を生産したと同社は述べています[6]。

鍋の条件、周波数、火力。台所の火のない台は、一つひとつの不便を工夫でこえてきた道具だと分かります。

パナソニックの資料では、国内の高周波IH調理器は、1974年発売の「クールトップワゴン(KZ-1W)」に始まるとされる[6]。三菱電機も1970年代前半に商用周波の製品を出したとされるが、記述は二次的な要約にとどまり、先後は断定できない。

火力への不安に応える形で、同社は1990年に業界初の200V仕様を発売した。2020年11月時点の累計生産は700万台とされる[6]。この数字はメーカー自身の発表である。

材質の壁(2002年のオールメタル)、底の条件、火力の増強は、それぞれ別の課題への応答として積み重なった。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

おうちの なべを 見て みよう(火は 使いません)。

  • なべの そこや せつめい書に「IHたいおう」の しるしが ないか さがします。
  • そこが たいらか、そって いないか、手で なでて たしかめます。
  • おうちの 人の 電気の 道具に「IH」と 書いて あるものが ないか、聞いて みましょう。

もっと 知りたい ときは、メーカーの「使える なべ・使えない なべ」の ページを、おうちの 人と 見て みてください。

今日できること:家にある鍋の底や取扱説明書に、IH対応の表示がないか探してみましょう。鍋の底が平らかどうかも、火を使わずに手でなでて確かめられます。

出かけてできること:家電売り場にIH調理器の展示があれば、「使える鍋・使えない鍋」の表示や、オールメタル対応かどうかの記載を探してみましょう。

公式情報:各メーカーの「使える鍋」のページで、対応する材質や底の条件が機種ごとに違うかどうかを読み比べると、この記事の数字の出どころが分かります。

今日できること:手持ちの鍋の材質・底の形状・対応表示を確認し、この記事の条件と照らし合わせる。火は使わない。

出かけてできること:家電量販店に展示機があれば、オールメタル対応機とそうでない機種の仕様表を比べる。周波数や最大火力が公開されているかを見る。

公式情報:パナソニック・日立・三菱電機の各公式ページで、使える鍋の条件と数値を機種別に読み比べる。本記事の数値は特定機種の説明であり、購入や使用の際は自分の機種の取扱説明書を確認してほしい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数値・条件は各メーカーの案内による。機種によって異なる。

  1. 三菱電機「IHクッキングヒーターの仕組み」 https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/ih_cooking/introduction/about/index.html (加熱の仕組み)
  2. 生活堂コラム「IHの原理」 https://www.seikatsu-do.com/reform/kitchen/column/ih-principle.php (コイルと熱効率)
  3. パナソニック「IHで使える鍋・使えない鍋」 https://panasonic.jp/ih/usable-pan.html (使える材質と底の条件)
  4. 家電Watch「仕組みコラム」 https://kaden.watch.impress.co.jp/docs/column/shikumi/1349553.html (アルミ・銅と土鍋)
  5. サンリフレ「オールメタルIHとは」 https://www.sunrefre.jp/ih/contents/what_is_allmetal.html (オールメタル方式)
  6. パナソニック プレスリリース(2020年11月18日) https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/11/jn201118-2/jn201118-2.html (2002年・1974年・1990年)
  7. 電子情報通信学会 研究会資料(2007年) https://ken.ieice.org/ken/paper/20070427yAtF/eng/ (周波数の目安)
  8. 日立「IH 鍋の使い方」 https://kadenfan.hitachi.co.jp/ih/contents/pot/ (オールメタル加熱の火力)
  9. ウィキペディア「電磁誘導加熱」 https://ja.wikipedia.org/wiki/電磁誘導加熱 (一般原理)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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