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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

やかんの ふえは、どうして お湯が わくと 鳴るの?

笛つきやかんの音のしくみ ── 見えない蒸気が空気をふるわせるまで

笛つきやかんの空力音響 ── 蒸気のジェット、渦の放出、2段階の音、エッジトーンとの共通点

分野:技術

やかんの ふえは、お湯が わく すこし まえは しずかです。そして ある ときから、ピーッと 鳴りだします。

鳴って いる 正体は、目に 見えない ものだそうです。それが どうやって 音に なるのか、いっしょに 見て みましょう。

やかんの笛は、お湯が沸く少し前まで静かなのに、ある時点から急に鳴りだします。しかも音の元は、目に見えない蒸気です。

この音がどうやって生まれるのかは、イギリスの大学が実験と計算で調べたことがあります。その研究の紹介などをもとに、細い穴、渦、そしてリコーダーとの意外なつながりを見ていきます。

笛つきやかんの音は、蒸気が笛の細い穴を通ってジェットになり、その先の壁で渦を作って空気を振動させることで出る[1]。しかも鳴っているのは無色透明の気体で、白く見える湯気ではない[4]。

この現象は、2013年にケンブリッジ大学のHenrywoodとAgarwalが論文にまとめている[2]。ここでは大学とAIPの紹介記事を軸に、BBC Science Focusや日本語の資料を突き合わせ、音の出方が2段階あることと、笛やリコーダーの「エッジトーン」との共通点を整理する。論文本体は確認できておらず、数値は紹介記事経由のものに限る。

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1. 鳴って いるのは、白い ゆげ?

1. 笛を鳴らすのは、白い湯気ではない

1. 笛を通るのは無色透明の水蒸気

やかんから 白く ふわふわ 出て いるのは、ゆげです。じつは、ふえを 鳴らして いるのは、ゆげでは ありません。

お湯が わくと、水は 目に 見えない 水蒸気すいじょうきに かわります。その 見えない 気体が、ふえの 中を 通って 音を 出します[4]。

ゆげが 白く 見えるのは、外に 出た あとで、すこし ひえて 小さな 水の つぶに なった ぶんです。

やかんの口から白くもくもく出ているのは、湯気です。ところが、笛を通っているのは湯気ではありません。

水が蒸発してできた水蒸気は、無色透明の気体です。湯気が白く見えるのは、その一部が冷えて細かい水滴になったからです[4]。笛の穴を通っていくのは、まだ見えない水蒸気のほうです。

つまり、音は「目に見えない何か」が作っていることになります。どうやって、見えないものが音になるのでしょうか。

水蒸気は、水が蒸発してできた無色透明の気体である。白く見える湯気は、その一部が冷えて細かい水滴になったもので、気体そのものではない[4]。

笛を通り抜けるのは、この見えない水蒸気のほうだ。したがって、音の元になる流れは、目では追えない。この章の後は、研究で示された仕組みを順にたどる。

2. ほそい あなで、ふきだす 力に なる

2. 細い穴を通って、勢いのあるジェットになる

2. 笛の入口の細い穴とジェットの形成

お湯が わいて、水蒸気すいじょうきが できると、ふえの あなから 外へ 出て いきます。

その 水蒸気すいじょうきが、ほそい 口を 通って 外へ 出ようと します。ホースの 口を ゆびで つぶすと、水が いきおいよく 出るのと にて います。

ただし 本当は、ふえの 中は ホースより ずっと ふくざつです。

水が水蒸気になると、標準の温度と圧力では体積がおよそ1,700倍にふくらむといわれます[6]。これは、約100℃、1気圧のときの目安です。やかんの中でこのとおりになるわけではありませんが、沸騰して水蒸気が増えると、出口に向かう流れが強くなる、と考えるとイメージしやすくなります。

ケンブリッジ大学の説明では、水蒸気は注ぎ口を上がってきて、笛の入口の穴に出会います。この穴は注ぎ口よりずっと細いので、流れは細いジェットになります[1]。ホースの先を指でつぶすと水が勢いよく飛び出すのに、少し似ています。

ただし、ジェットになるだけでは、まだ音になりません。音になるのは、そのあとです。

水が水蒸気になると、標準の温度・圧力(約100℃、1気圧)で体積がおよそ1,700倍になる[6]。この値は目安であり、やかん内部の蒸気量にそのまま当てはめられない。ただ、沸騰で蒸気が増えれば、出口へ向かう流れが強まるという方向は説明できる。なお「沸騰前は鳴りにくい」ことの日本語の公的資料での明記は確認できておらず、ここは資料から導いた推論にとどまる。

ケンブリッジ大学の紹介では、注ぎ口を上がってきた蒸気が、注ぎ口よりずっと細い笛の入口の穴に出会い、細いジェット状の流れになるところから、音が始まる[1]。

3. うずが 空気を ふるわせる

3. ジェットが渦を作り、空気をふるわせる

3. ジェットの不安定性と渦の放出

ほそい ジェットは、まっすぐ 進み つづけられません。庭の ホースの 水が、とちゅうで みだれるのと 同じで、ゆらゆら ゆれて しまいます[1]。

その ゆれる 流れが、ふえの 2まいめの かべに 当たります。すると、小さな うずを つくりながら 外へ 出て いきます。この うずが、空気を ふるわせて 音の 波に なります[1]。

音の 正体は、空気の ふるえです。ふるえが 耳に とどくと、ピーッと 聞こえます。

ジェットはもともと不安定です。庭のホースから出た水が、途中で乱れて細かく分かれていくのと似ています[1]。

その揺れる流れが笛の2枚目の壁に当たると、小さな圧力の変化が生まれます。蒸気は渦を作りながら外に出ていき、この渦が音の波を作ります[1]。BBC Science Focusも、蒸気の流れが空気を素早く振動させることが音の正体だと説明しています[3]。

音とは、空気の振動が耳に届いたものです。やかんの笛は、蒸気の流れを空気の振動に変える小さな装置だと見ることができます。

笛に入った細いジェットは自然に不安定で、庭のホースの水が途中で乱れるのと似た振る舞いをする。ジェットが笛の2枚目の壁に当たると小さな圧力パルスができ、蒸気は渦を作って出ていく。この渦が音波を生む[1]。

BBC Science Focusも、蒸気の流れが空気を急速に振動させることが音の正体だと説明する。同誌は、蒸気が熱いほど穴を速く通り抜け、乱れが最終的な音を作るとも述べるが、厳密な因果は論文の流量による整理のほうが確かで、雑誌の説明は目安として読むのがよい[3]。

なお、この笛の内部構造(壁が何枚あるか等)は研究の実験装置に基づく説明であり、市販のやかん一般にそのまま当てはまるかは、日本語の一次資料では確認できていない。

4. 音の 出かたには、2つの ばめんが ある

4. 勢いによって、音の出かたが変わる

4. 2段階の挙動 ── ヘルムホルツ型と渦の卓越

大学の 研究けんきゅうでは、じょうきの いきおいで、音の 出かたが 2つに 分かれると しょうかいされて います[2]。

お湯が わきはじめの、いきおいが 小さい ときは、ビンの 口を ふくと ボーッと 鳴るのと 同じ しくみです。いきおいが ある 大きさを こえると、うずが 音を 作る ばめんに かわって いきます。

ですから、鳴りはじめと、ぐらぐら わいた あとで、音が ちがって 聞こえても ふしぎでは ありません。

研究を紹介するAIPの記事によると、蒸気の勢いによって、音の出かたには2つの場面があります[2]。

沸騰しはじめで勢いが小さいうちは、笛はヘルムホルツ共鳴のように振る舞います。これは、空きビンの口に息を吹きかけるとボーッと鳴るのと同じ仕組みです。ある速さを超えると、渦が音を作る段階に変わります[2]。

別の紹介記事では、この境目の目安としてレイノルズ数が約2000という値が挙がっていますが、これは要約を通した数字で、確度は高くありません[7]。数字より、「勢いで音の出かたが切り替わる」という考え方のほうを覚えておくと十分です。

AIPの紹介によれば、沸騰し始めの蒸気の勢いが小さい領域では、笛はヘルムホルツ共鳴器のように振る舞う。空き瓶の口を吹くと鳴るのと同じ機構である。速さがある値を超えると、渦が支配する音に移る[2]。

Improbable Researchの紹介は、この笛を、2枚の穴あき板を近づけた「ホールトーン」系のほぼ完全な例と位置づけ、レイノルズ数がおよそ2000を境に、下は周波数が一定(ヘルムホルツ型)、上はストローハル数が一定の挙動になるとする[7]。ただし、これは論文本体でなく紹介記事の要約経由の数値なので、「とされる」の範囲にとどめる。

5. リコーダーとは、しんせきだった

5. リコーダーやフルートとの意外な親戚関係

5. エッジトーンとしての笛 ── 楽器との共通点と音の高さ

リコーダーや ふえの 音も、ほそい 出口から 出た 息の 流れが、とがった ところに 当たって 鳴ります[5]。やかんの ふえと、流れが かべに 当たる ところが 同じです。

音の 高さは、ふえの 形で かわります。大学の せつめいでは、研究けんきゅうに 使った ふえで、くだが 長いほど ひくい 音に なりました[1]。リコーダーでも、長い ほうが ひくい 音ですね。

リコーダーやフルートの音も、細い出口から出た空気のジェットが刃のような端(エッジ)に当たって出る、「エッジトーン」と呼ばれる音です。楽器では、管の歌口の部分でこの音が作られます[5]。

やかんの笛も、ジェットが壁に当たる点で共通します。ケンブリッジ大学の実験では、管が長いほど音が低くなりました。リコーダーで長い管ほど低い音が出るのと似ています。ただし、これは研究の実験装置での結果で、市販のやかんの音程まで言い切れるわけではありません[1]。

笛やリコーダー、フルートの発音も「エッジトーン」で、細い出口から出た流体のジェットがエッジ(刃先)に衝突して生じる音だ。楽器では、管体の歌口で作られる[5]。やかんの笛も、ジェットが端や壁に当たる点で共通する。

ケンブリッジ大学の説明では、音の高さは笛の形で決まり、実験装置では注ぎ口(管)が長いほど低い音になった[1]。市販のやかんの音程まで一般化はできない。

6. ペットボトルの 口を ふいて みよう

6. 空きボトルの口を吹いてみる

6. 出口 ── ボトルの口を吹く、資料の入口

からの ペットボトルを 1本 用意します。口に 下くちびるを 当てて、ななめに 息を ふきかけて みましょう。うまく 当たると、ボーッと 音が 出ます。

水を すこし 入れる まえと あとで、音を 聞きくらべて みましょう。音は どう かわるでしょうか。やかんの ふえも、同じように 空気が ふるえて 鳴ります。

やかんを 使う ときは、お湯と じょうきが とても あついので、かならず おうちの 人と いっしょに してください。ふえの 口に 顔や 手を 近づけては いけません。

空のペットボトルを1本用意して、口の縁に下くちびるを当て、斜めに息を吹きかけてみましょう。うまく当たると、ボーッと音が出ます。ヘルムホルツ共鳴と同じ考え方で鳴る音です。

ボトルに水を少しずつ入れると、音の高さはどう変わるか、予想してから試すと発見があります。やかんの実物を観察するときは、熱い蒸気が出るので、必ずおとなと一緒に、笛の口に顔や手を近づけないでください。

水の量を変えて、吹く角度や強さはなるべく同じにして聞きくらべると、違いが分かりやすくなります。もっと知りたくなったら、参考にした情報源の大学の紹介記事(英語)も開いてみてください。

空のペットボトルの口に息を斜めに吹きかけて鳴らし、水を少しずつ入れて音の高さがどう変わるかを予想してから試すと、ヘルムホルツ共鳴の体感になる。やかんの実物を観察する際は、熱い蒸気と熱湯に近づかず、おとなの付き添いのもとで行う。

水の量を変えて、吹く角度や強さをなるべくそろえて聞きくらべると、違いが分かりやすい。資料を読むなら、まず日本語の講究録[5]、続いて英語のケンブリッジ大学の紹介記事[1]とAIPの紹介[2]。論文本体(Physics of Fluids掲載)は確認できていないため、数値を使う際はそちらに当たってほしい。講究録の報告は、エッジトーンと楽器の歌口との関係を説明している。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料。論文本体は確認できておらず、大学・AIP・雑誌などの紹介記事を通して確認した。

  1. University of Cambridge「How the kettle got its whistle」 https://cam.ac.uk/research/news/how-the-kettle-got-its-whistle (笛の穴・ジェット・渦・管の長さと音の高さ)
  2. AIP Publishing「Whither the teakettle whistle?」(Henrywood and Agarwal, Physics of Fluids, 2013の紹介) https://publishing.aip.org/publications/latest-content/whither-the-teakettle-whistle/ (研究の書誌・ヘルムホルツ共鳴と渦の2段階)
  3. BBC Science Focus「How does a kettle whistle?」 https://www.sciencefocus.com/science/how-does-a-kettle-whistle (蒸気が空気を振動させるという一般向け説明)
  4. コトバンク「水蒸気」 https://kotobank.jp/word/水蒸気 (水蒸気は無色透明で湯気は水滴)
  5. 数理解析研究所講究録 1697 https://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1697-03.pdf (エッジトーンと楽器の歌口)
  6. Wikipedia「Steam」 https://en.wikipedia.org/wiki/Steam (水が水蒸気になると体積がおよそ1,700倍)
  7. Improbable Research「A British analysis of the physics of a tea kettle whistle」 https://www.improbable.com/2013/10/24/a-british-analysis-of-the-physics-of-a-tea-kettle-whistle/ (ホールトーン系という位置づけ・レイノルズ数の目安)

なおした ところ

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