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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

1キログラムは、むかし パリの 金ぞくの かたまりで きまって いた。いまは どうやって はかるの?

1キログラムの基準は、なぜ金属の塊から離れたのか ── 測れない磁石の強さを式から消す、キッブルバランス

キッブルバランスは、測れない磁場の量をどう消す? ── 2つの実験から質量を求める

分野:技術

世界の 1キログラムは、およそ 130ねんの あいだ、パリに ある 金ぞくの かたまり 1こ でした。その かたまりは、ほんの すこしだけ かわる かもしれないと、かんがえられて いました[1]。

では、かたまりを つかわずに、どうやって 重さの きじゅんを つくるのでしょう。この メモでは、「はかれない 数を、もう 1回の じっけんで けして しまう」そうちの ひみつが 分かります。

1キログラムの基準は、1889年から約130年ものあいだ、パリ郊外に保管された金属の塊1個でした[1]。その質量は、表面の汚れなどのせいで、1億分の5ほどはゆらぎうると見積もられていました[1]。

では、塊をやめて、何を基準にしたのでしょうか。そして、その基準から、実際の重りの質量をどう出すのでしょうか。キッブルバランスという装置が、測りにくい磁石の強さを2回目の実験で式から消す仕掛けが分かります。

国際キログラム原器の質量の長期安定性は、表面汚染などの影響で約50μg(1kgに対し5×10-8)と推定されていた[1]。この数字が、質量の基準を物体から定数へ移す動機のひとつになった[2]。

では、定数から実際の質量をどう実現するのか。キッブルバランスは、磁場の強さとコイルの導線の長さの積BLという、直接測るのが難しい量を、コイルを動かすもう1つの実験で式から消して、これを可能にする。このメモでは、その原理と、2017年ごろに独立した方法で値が合った経緯が分かる。

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1. 130ねんの あいだ、世界の 1キログラムは パリに ある 金ぞくの かたまり 1こ だった

1. 130年間、世界の1キログラムはパリの金属の塊1個だった

1. 国際キログラム原器(1889年〜2019年)

1889ねんに、世界の 国ぐにが あつまる かいぎで、ある 金ぞくの おもりが 1キログラムだと きめられました。おもりは、パリの ちかくの 国さいどりょうこうきょくで だいじに しまわれて いました[1]。

そっくりの おもりが 国ごとに くばられ、日本にも 1889ねんに とどきました[1]。世界の 1キログラムは、この 1この かたまりが 元に なって いたのです。

でも、ものは よごれたり けずれたり します。かたまりが かわれば、世界の 重さの きじゅんも かわって しまいませんか。

金属の塊が「1キログラム」だった

1889年の第1回国際度量衡総会で、白金イリジウム合金でできた分銅(国際キログラム原器)の質量が、1キログラムと定められました。原器はパリ郊外の国際度量衡局で厳重に保管され、その複製が各国へ配られ、日本にも同じ1889年に届いたと産総研の資料は説明しています[1]。

世界中の秤は、たどっていけば、この塊に行き着く仕組みでした。では、その塊は本当に変わらなかったのでしょうか。

1889年の第1回国際度量衡総会は、白金イリジウム合金の分銅(国際キログラム原器)の質量を1kgと定義した。原器はパリ郊外の国際度量衡局で保管され、複製が各国に配られた。日本への到着も1889年とされる[1]。

基準が1個の物体だということは、質量の単位がその物体の状態に縛られるということでもある。次章では、その状態がどれほど疑われていたかを見る。

2. その 金ぞくの かたまりは、すこし かわる かもしれなかった

2. 塊は、1億分の5ほどゆらぐかもしれなかった

2. 原器の安定性の見積もり ── 約50μg(5×10-8)

けんきゅうを して いる 人たちは、かたまりの 表めんの よごれなどで、重さが 1おく分の 5ほど かわる かもしれないと 見つもって いました[1]。

1おく分の 5は、1キログラムに たいして、20000分の 1グラムの ちがいです。1円玉は 1グラムですから、1円玉を 20000こに わけた 1こぶん。ものすごく 小さい 数です。

ただし、これは 「本当に へった」のでは ありません。「これくらい かわるかもしれない」という 見つもりです。

それでも、世界の きじゅんを 1この ものに まかせて いる かぎり、この しんぱいは のこります。そこで、「もの」ではない ものを きじゅんに しようと いう 考えが 出て きました[2]。

50マイクログラムという見積もり

産総研の資料によると、表面汚染などの影響で、国際キログラム原器の質量の長期安定性は約50マイクログラム(μg)と推定されていました。1キログラムに対して5×10-8、つまり1億分の5です[1]。1円玉(1グラム)にくらべると、その2万分の1ほどです。

ここで注意したいのは、これは「実際に50μg減った」という意味ではないことです。「これくらいの変動がありうる」という推定です。

「モノ」でないものを基準にする

産総研の別の資料は、1990年ごろの原器の100年間の質量変動が1億分の5kg程度とされたことから、「モノ」でないものを基準にしようという方針につながったと紹介しています[2]。では、モノでないものとは、何のことでしょうか。

産総研の解説によれば、表面汚染などによる国際キログラム原器の質量の長期安定性は約50μgと推定され、1kgに対し5×10-8(1億分の5)にあたる[1]。これは「実際に50μg減った」ではなく、「安定性が約50μgと推定される」ということだ。1円玉(1g)の2万分の1である。

別の産総研資料も、1990年頃、表面の汚れなどによる原器の100年間の質量変動が1億分の5kg程度とされたことが、「モノ」でないものを基準とする方針につながったと述べる[2]。ただし、この2つは同じ数字の別の資料での言及であり、独立した2つの測定結果ではない。では、「モノでないもの」とは何か。

3. 2019ねん、「プランクていすう」で きまった

3. 2019年、1キログラムは「プランク定数」で決まった

3. 2018年の採択と2019年5月20日の施行

2018ねんの 11月に、世界の 国ぐにの かいぎで、1キログラムの きめ方を かえる ことが きまりました。2019ねんの 5月20日から、あたらしい きめ方に なりました[3]。

あたらしい きめ方では、「プランクていすう」という 数を、ぴったり 6.62607015×10のマイナス34じょう と きめます。この 数が きまると、1キログラムも きまる しくみです[3]。

これは およそ 130ねんぶりの かいていと されています[1]。

でも、数で きめても、家の はかりには 数は のって いません。ほんとうの おもりの 質量しつりょうを、どうやって 出すのでしょう。

定数を決めて、単位を決める

2018年11月の第26回国際度量衡総会(ヴェルサイユ)で、キログラムの定義の改定が採択され、2019年5月20日から新しい定義になりました。プランク定数hを、ちょうど6.626 070 15×10-34 J s(ジュール秒)と定め、その数値を、秒とメートルの定義と組み合わせてキログラムを決める、という形です[3]。産総研の資料は、これを約130年ぶりの改定としています[1]。

定数の値は決まりましたが、それだけでは、手元の重りが何キログラムかは分かりません。定数と、実際の重りの質量とを結ぶ装置が必要になります。

2018年11月の第26回国際度量衡総会(ヴェルサイユ)でキログラムの定義改定が採択され、2019年5月20日から、プランク定数hを6.626 070 15×10-34 J sと定める定義になった。この値と、秒・メートルの定義を組み合わせてキログラムが決まる[3]。産総研は、約130年ぶりの改定と位置づけている[1]。採択と施行が別の年であることに注意したい。

定義が定数に移っても、実際の分銅の質量を定数から導く実験が要る。その代表が、次章から見るキッブルバランスだ。

4. まず、おもりを 電じしゃくの ちからで ささえる

4. まず、重りを電磁力で支える

4. 力のモード ── F = IBL

キッブルバランスは、はかりの 一しゅです。はかる おもりを のせて、その 重さを、電流でんりゅうを ながした コイル(ぐるぐるに まいた 線)の ちからで ささえます。

おもりは 下へ ひっぱられ、コイルは じしゃくの なかで 上へ おされます。この 2つが つりあうまで、電流を ちょうせつします[4]。

つりあった とき、重さは「電流 × コイルの 線の 長さ × じしゃくの つよさ」で 決まります。

ところが、この 「じしゃくの つよさ」と「線の 長さ」を かけた 数は、ひつような 正しさで はかるのが、とても むずかしいと されています[4]。ここで もう おわりでは ありません。

天秤の片側を、電磁力に置きかえる

NISTの説明によると、キッブルバランスの1つ目のモードでは、重りの重さ(下向きの力)を、コイルに電流を流して生じる上向きの電磁力と釣り合わせます。電流をぴったり釣り合うまで調節する、という手順です[4]。

電磁力Fは、電流I、磁場の強さB、コイルの線の長さLの積、F=IBLで表されます。ところが、磁場とコイルの線の長さの積BLは、必要な精度で直接測るのが極めて難しい量だとNISTは述べています[4]。

つまり、電流Iは測れても、重りの質量を出すには、もう1つ測れない量が残ります。それを、どうしたのでしょうか。

NISTの解説では、第1のモード(力のモード)は、コイルへ流す電流を調節し、コイルにはたらく上向きの電磁力を、重りの下向きの重さと釣り合わせる。釣り合いの式は mg = IBL(mは質量、gは重力加速度)だ[4]。BIPMの実現手引きも同様に mg = I1Bl と書く[3]。

ここで、磁場Bとコイルの導線の長さLの積BLは、必要な精度で直接測ることが極めて難しい[4]。電流Iを測れても、BLが未知のままでは、m を決められない。この壁を越える手立てが、次章の第2のモードである。

5. つぎに、おもりを はずして コイルを うごかす

5. 次に、重りを外してコイルを動かす ── すると、測れない量が消える

5. 速度のモード ── V = vBL と、BLの消去

2回目の じっけんでは、おもりを はずして、電流も きります。そして、おなじ コイルを、じしゃくの なかで 一定の はやさで うごかします[4]。

すると、コイルの りょうはしに でんあつが 生まれます。この でんあつは、「はやさ × じしゃくの つよさ × 線の 長さ」で 決まります。あの 「はかれない 数」が、また 出て きました。

ここで、ひとつ たとえて みます。1回目も 2回目も、おなじ 「なぞの 数」が かけ算に 入って います。おなじ 「なぞの 数」が 2つの 式の りょうほうに あるので、2つを くらべると、なぞの 数だけが 消えて、はかれる 数だけが のこります。

ただし 本当の 式では、「電流」「でんあつ」「重力の 大きさ」「うごかす はやさ」を つかって、重さを 出します[4]。かんたんな たとえと、まったく おなじでは ありません。

2回目の実験で、同じコイルを動かす

NISTによると、2つ目のモード(速度のモード)では、重りを取り外して電流を切り、同じコイルを磁場の中で一定の速さvで動かし、生じる誘導電圧Vを測ります。この電圧は、V=vBLと表されます[4]。

1つ目の式F=IBLと、2つ目のV=vBLには、同じBLが入っています。力の式と電圧の式に同じBLがあるので、2つを組み合わせると、BLが式から消えます。重りの重さをmg(gは重力加速度)とすると、m=IV/(gv)という形になります[4]。

「仮想の」仕事率

BIPMの手引きは、この2つのモードの式を組み合わせてBlを消し、mgv=I1U2の形にできると述べます。左辺は力学的な仕事率、右辺は電磁的な仕事率です。2つは別々の実験で測ったものなので、手引きは「仮想の」仕事率と呼んでいます[3]。測れない量を、そもそも測らずに済ませる発想です。

第2のモード(速度のモード)では、重りを外して電流を切り、同じコイルを磁場中で一定の速さvで動かして、誘導電圧Vを測る。V = vBLである[4]。

第1のモードの mg = IBL と組み合わせると、BL = V/v を代入して mg = IV/v、すなわち m = IV/(gv) となる。BLは、直接測らなくても、同じコイルで2つのモードを実行すれば式から消える[4]。BIPMは、同じ内容を mg v = I1U2 と書き、力学的な仕事率と電磁的な仕事率を等置するので「仮想の」仕事率と呼ぶ[3]。

この式の条件は、2つのモードで同じコイルと磁場が使われること、つまり同じBLであることだ。この計算では2つのモードで同じBLを使う必要がある。別のコイルではBLが同じとは限らず、消去できない。

6. 電流や でんあつは、どうやって ただしく はかるの?

6. 電圧と電流は、量子の現象を使って測る

6. 量子の現象で電圧と抵抗を測り、重力も別に測る

式に 出て くる 電流と でんあつは、とても ただしく はかる ひつようが あります。その ために、「ジョセフソンこうか」「りょうしホールこうか」という、ちいさな せかいの ふしぎな きまりが つかわれます[4]。

どちらも、プランクていすうと つながって います。だから、新しい 1キログラムの きめ方と、うまく つながる のです[4]。

ほかにも、重力の 大きさ g は、べつの そうちで はかります。また、空気の うきりょくの えいきょうを けすため、そうちの 中を 空気の ない いれものに いれる ことも あります[5]。

電圧はジョセフソン効果、抵抗は量子ホール効果

NISTによれば、電圧はジョセフソン効果で、抵抗は量子ホール効果(フォン・クリッツィング定数)で測ります。どちらも、プランク定数につながる現象です。不確かさは、電圧がおよそ100億分の1、抵抗がおよそ10億分の1の範囲とされています[4]。

つまり、電気の量を、身近な電池ではなく、量子の現象を頼りに測っているのです。だから、電気を通して測った質量が、プランク定数と結びつきます。

重力と空気の影響

重力加速度gは、落下式の絶対重力計などで、別に精密に測ります。また、空気の浮力の影響を消すため、装置の可動部を真空の容器に入れる例があります[5]。ただし、装置ごとに構成は異なり、すべてが真空というわけではありません。

電圧はジョセフソン効果、電流の測定に使う抵抗は量子ホール効果(フォン・クリッツィング定数)で測る。NISTは、不確かさが電圧で100億分の1、抵抗で10億分の1の範囲だと述べる[4]。つまり抵抗の不確かさは10億分の1、電圧は100億分の1とされる。どちらの効果も、プランク定数につながる。NPLも、ジョセフソン電圧・量子ホール抵抗と、固定されたプランク定数を通じて質量の単位を実現できると説明している[6]。

重力加速度gは、落下式の絶対重力計などで別に測る。空気の浮力を消すため、可動部を真空容器に入れる装置の例がある。機種ごとに構成は異なる[5]。

7. ちがう やり方で はかっても、おなじ 答えに なるの?

7. 別のやり方で測っても、答えは合ったのか

7. プランク定数の2つの決め方と、CODATA 2017

プランクていすうを 出す やり方は、2つ あります。ひとつは キッブルバランス。もうひとつは、シリコンで つくった ほとんど まんまるの たまの 大きさや 重さを しらべる、X線けっしょうみつどほうです[1]。

2017ねんに、この 2つの やり方で 出した 8この 数から、プランクていすうが きまりました。まちがいの ありそうな はば(ふたしかさ)は、1キログラムで 10マイクログラムです。これは、かたまりが かわるかもしれない 50マイクログラムより 小さい 数です[1]。

日本の さんそうけんは、8この うち 4こに かかわりました。ただし、キッブルバランスで はかったのは アメリカ・カナダ・フランスで、さんそうけんは X線けっしょうみつどほうの ほうです[1]。

2つの方法が、同じ定数に行き着く

プランク定数の測定には、キッブルバランス法と、X線結晶密度法があります。後者は、シリコンの単結晶の球の密度・モル質量・格子定数からアボガドロ定数を求める方法です。産総研はこちらで測り、精度は2.4×10-8(1キログラムで24μg)でした[1]。

2017年10月に、CODATAは、キッブルバランス(NIST、カナダのNRC、フランスのLNE)とX線結晶密度法(産総研を含む)による計8つの測定値からプランク定数を決めました。精度は1.0×10-8、1キログラムで10μgで、原器の約50μgを上回ります。産総研は、8つのうち4つの測定に貢献しました[1]。

NIST-4の1万回

NISTのNIST-4は、0.5〜2kgの質量を1万回以上量り、相対不確かさ13×10-9(100億分の13、1キログラムで13μg)で、プランク定数を測ったと報告されました[7]。

プランク定数の決め方は、キッブルバランス法と、X線結晶密度法の2つある。後者は、シリコン単結晶球の密度・モル質量・格子定数からアボガドロ定数を求める方法で、産総研はこちらで測り、精度は2.4×10-8(1kgで24μg)だった[1]。

ここから、2017年10月のCODATAの決定につながる。キッブルバランス(NIST・カナダNRC・フランスLNE)とX線結晶密度法(産総研を含む)の計8つの測定値から、プランク定数は精度1.0×10-8(1kgで10μg)で決まった。原器の約50μgを大きく上回る。産総研は4つの測定に貢献した。キッブルの貢献は米・加・仏、日本の貢献はX線結晶密度法である[1]。

NIST-4は、0.5〜2kgの質量を1万回以上量り、hを相対不確かさ13×10-9(100億分の13)で測った(2015〜2017年の測定、2017年発表)[7]。独立した2つの方法が、この精度の範囲で折り合った点に、新定義の土台があった。

8. この そうちの 名前には、人の 名前が ついて いる

8. 装置の名前は、亡くなった発明者にちなんでいる

8. 原理の提案(1975年とされる)と、「ワットバランス」からの改名(2016年)

この そうちは、イギリスの ブライアン・キッブルさんが 考えました。はじめは、べつの ことを はかる ためだった と いわれます[5]。

むかしは「ワットバランス」と よばれて いました。2016ねんに、キッブルさんの 名前に ちなんだ 名前に かえられました[5]。

この原理は、1975年にイギリスの国立物理学研究所(NPL)のブライアン・キッブルが提案したと説明されます。もとは、磁気回転比を測る目的でした[5]。NPL自身は、1970年代に開発された装置だと説明しています[6]。

当初は「ワットバランス」と呼ばれていました。2016年に、キッブルの名にちなんで改名されました[5]。原理から新定義まで約40年かかったことになります。

この原理は1975年にNPLのブライアン・キッブルが提案したとされ、もとは磁気回転比の測定が目的だった[5]。NPLは「1970年代に開発された」と説明する[6]ので、1975年は原理の提案、開発は1970年代、と分けて読むのが安全だ。

当初は「ワットバランス」と呼ばれた。2016年に、キッブルの名にちなんで改名された[5]。

9. 家に ある 「もの」は、なにで きまって いる?

9. 特定の装置に縛られない、新しい1キログラム

9. 出口 ── 実現方法の多様化と、資料の読みどころ

あたらしい きめ方は、どの そうちを つかえと きめて いません。プランクていすうに つながる 重さが 出せれば、どんな やり方でも つかえる はずと されて います[3]。キッブルバランスと、X線けっしょうみつどほうは、その なかの やりやすい やり方です。

アメリカの NISTは、つくえの 上に おける ほど 小さな キッブルバランスの しさくきも つくったと、ニュースで つたえられて います[8]。

おうちでも、ちがいを 見つけられます。おうちの はかりで、りんごや 水の はいった ペットボトルを はかって、べつの はかりでも はかって みましょう。数が すこし ちがう ことが あります。はかりや おく ばしょで、はかった 数は かわるのです。だから 世界の きじゅんは、とても ていねいな そうちで つくられて います。

装置が変わっても、定義は変わらない

BIPMの手引きは、キログラムの新定義は、実際に質量を実現する特定の実験を指定しない、と述べています。定数につながる質量の値が得られる方法なら、原理的に使えます。手引きが挙げているのは、実行しやすい、または不確かさの小さい方法で、キッブルバランスとX線結晶密度法などです[3]。

机の上のキッブルバランス

NISTは、卓上サイズの小型キッブルバランスの試作機を作ったと報じられています[8]。

家のはかりで、測った値のちがいを見てみよう

台所のはかりで、水を入れたペットボトルや果物の重さを量り、体重計など別のはかりでも量ってみましょう。値が少しちがうことがあります。測定値ははかりや置く場所などの条件で変わるからです。キログラムの基準を精密な装置で実現しているのは、このちがいを小さくするためです。

もっと読んでみたくなったら

産総研の解説[1][2]は日本語で読めます。NISTの説明[4]は図つきで、この記事の2つのモードの部分をくわしく追えます。

BIPMの手引きは、新定義が特定の実験を指定せず、定数につながる質量が得られる方法なら原理的に使えると述べ、実行しやすい、または不確かさが小さい方法として、キッブルバランスとX線結晶密度法などを挙げる[3]。原器なしでも質量を実現できる道が開けたわけだが、実際にはどの方法も精密な装置と条件を要する。

NISTは卓上サイズの小型機の試作機を作ったと報じられた[8]。

資料を読むなら、日本語の解説は産総研の資料[1][2]。一次資料はBIPMの実現手引き[3]とNISTの解説[4]、NIST-4の論文[7]が、2つのモードの式と測定値の詳細を扱う。

冒頭の問い、定数から実際の質量をどう実現するかへの答えは、1つの装置に限られない。新定義は方法を指定しないので、BLを消すキッブルバランスも、X線結晶密度法も、その道の1つだ。身近な確かめとして、家のはかりを2つ用意し、同じ物を量って値を比べるとよい。測定値ははかりや条件で違う。この違いを小さくする努力が、精密な標準の実現である。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:産総研の解説、BIPM(国際度量衡局)の手引き、NISTとNPLの説明、論文、報道を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 産総研 倉本直樹「化学と工業 72-1」。https://unit.aist.go.jp/riem/mass-std/化学と工業.pdf (原器の歴史と安定性、プランク定数の2つの決め方、CODATA 2017について)
  2. 産総研 倉本直樹「さようならキログラム原器」(国立科学博物館トークイベント、2019)。https://unit.aist.go.jp/riem/mass-std/トークイベント「さようならキログラム原器」.pdf (原器の質量変動が改定につながったことについて)
  3. BIPM「SI Brochure 9th edition, Appendix 2 (kilogram)」。https://www.bipm.org/utils/en/pdf/si-mep/SI-App2-kilogram.pdf (新定義、2つのモードの式、特定の装置を指定しないことについて。英語)
  4. NIST「How a Kibble Balance Works」。https://www.nist.gov/si-redefinition/kilogram-kibble-balance (2つのモードとBLの消去、量子の電気標準について。英語)
  5. Wikipedia「Kibble balance」。https://en.wikipedia.org/wiki/Kibble_balance (発明者と改名、重力測定と真空について。二次資料・英語)
  6. NPL「Kibble balance」。https://www.npl.co.uk/kibble-balance (装置の説明と開発時期について。英語)
  7. El Haddad et al. "Measurement of the Planck constant at the NIST" arXiv:1708.02473(Metrologia, 2017)。https://arxiv.org/abs/1708.02473 (NIST-4の測定について。英語)
  8. Science News「This tabletop device turns the quantum definition of the kilogram into real mass」。https://www.sciencenews.org/article/tabletop-device-turns-quantum-definition-kilogram-real-mass (卓上型の紹介について。報道・英語)

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