1. 40と 120は、3ばい うるさい?
1. 図書館の40と飛行機の120は、3倍のうるささではない
1. 音の目安の表と、80dBの差が意味するもの
京都市の しりょうに、音の 大きさの 目安が のっています[1]。木の 葉が ふれあう 音は 20。ささやき声は 30。図書館の 中は 40。ふつうの 会話は 60。電車の 中は 80。電車が 通る ときの ガードの 下は 100。ひこうきの エンジンの 近くは 120です。
ここで 40と 120を くらべます。数字は 3ばい。でも 同じ ように はかると、音の 強さは、なんと 1おくばい ちがいます。
どうして、数が こんなに 小さいのでしょう。ただし これは 目安で、はかる 場所や 場面で かわります[1]。
身近な音の目安
京都市の資料に、音の大きさの目安が載っています。木の葉のふれあう音が20デシベル、ささやき声が30、図書館の中が40、普通の会話が60、電車の中が80、電車が通るときのガード下が100、飛行機のエンジンの近くが120です[1]。その場の状況や条件で感じ方や大きさは違う、という注意書き付きの目安です。
80の差は、80倍ではない
図書館(40)と飛行機のエンジンの近く(120)では、差が80です。数字だけ見れば3倍ですが、音のエネルギーで比べると、10を8回かけた1億倍にあたります(計算は3章で書きます)。
数字が小さいまま、これだけ大きな差を表せる。その仕組みを知るには、まず「0」が何なのかを知る必要があります。
京都市「騒音と振動のてびき」は、音の大きさの目安として、20dBを木の葉のふれあう音、30dBをささやき声、40dBを図書館の中、60dBを普通の会話、80dBを電車の中、100dBを電車が通るときのガード下、120dBを飛行機のエンジンの近くとする[1]。同資料は、これらが目安であり、その場の状況や条件で感じ方や大きさが異なると注記している。
図書館と飛行機のエンジン近くの差は80dBだ。数字は3倍だが、10dBごとにエネルギーが10倍になる関係[2]を使うと、80÷10=8で10⁸、つまり1億倍になる。音圧の比なら20dBで10倍だから、80÷20=4で1万倍だ。どの量の比を言っているかで倍率が変わる点は、3章で扱う。では、この物差しの起点である0dBとは、何なのか。
2. 0は、しずかな ことでは ない
2. 0デシベルは「無音」ではなく「基準」
2. 基準音圧20μPaと、負のdB
「0デシベル」と 聞くと、音が ぜんぜん ない ことだと 思いませんか。じつは ちがいます。
0は、くらべる ための 出発点です。空気の 中では、20マイクロパスカルという 音の 強さが、その 出発点に なっています[3]。これは、1キロヘルツの 音が、やっと 聞こえる くらいの 目安と いわれます。
だから、これより 小さな 音は、0より 小さい 数、つまり マイナスで 表します。0は 音が ない ことでは なく、「ここを 出発点に しよう」という 決まりなのです。
ただし、聞こえる 小ささは 人や 年で ちがいます[3]。
0は出発点
デシベルは、何かを基準にした比を表す方法です。空気中の音の場合、基準は20マイクロパスカル(20×10⁻⁶パスカル)の音圧で、1キロヘルツの音がやっと聞こえる目安とされています[3]。この基準と同じ大きさの音が0デシベルです。
ですから、0デシベルは絶対的な静けさではありません。基準より小さい音は、マイナスのデシベルになります[3]。
耳の得意な高さ
基準の値は、あくまで目安です。可聴下限には個人差や年齢による違いがあります。人の耳は2,000〜5,000ヘルツの音にいちばん敏感だとされ、騒音のはかり方では、その敏感さに合わせた補正を加えて、デシベルで表します[1]。
では、なぜ「何倍か」を、そのまま数で言わないのでしょう。
空気中の音圧レベルの基準音圧は、p₀=20μPa(20×10⁻⁶Pa)で、1kHzの音がやっと聞こえる目安として使われる[3]。0dB SPLは基準音圧と等しいことを表すだけで、絶対的な無音ではない。基準より小さな音圧は負のdBになる[3]。したがって、0dBという数字を「聞こえない」と読むと誤りになる。
この基準は1kHzの音を前提にした目安で、可聴下限は個人や年齢でも変わる。京都市の資料によれば、人の耳は2,000〜5,000Hzの音に最も敏感で、騒音は周波数ごとの聴感補正を加えた騒音レベルをdBで表す[1]。同じdBの数字でも、何をどう測ったかで意味が変わるということだ。次に、基準との比を、なぜわざわざ「ゼロの数」で表すのかを見る。
3. 1おくばいを、小さな 数で
3. 1兆倍の幅を、0から120に収める
3. 対数で表す理由 ── 10log₁₀と20log₁₀の使い分け
0の 音と 120の 音を、同じ やりかたで はかって くらべると、音の 強さは 1ちょうばい ちがいます。120は 目安の ひとつです。1ちょうは、1の あとに 0が 12こ ならぶ 数です[3]。
この まま 書くと たいへんです。そこで デシベルは、音の 強さが 10ばいに なるたび、数字を 10 ふやすと 決めたのです[2]。0が 12こなら、10が 12回で 120です。
これなら、ささやき声から ひこうきまで、0から 120までの 数に 入ります。
ただし、音の「おし出す 力」(おんあつ)で くらべると、おんあつは 100万ばいの ちがいです。エネルギーの ちがいの 半分、0の 数は 6こで すみます。どちらで くらべるかで、計算の しかたが かわります。
もう ひとつ。人の 耳は、音の 強さを 0の 数のように、ゆっくり ふえる ものとして 感じる、といわれます[2]。デシベルは、耳の かんじにも 合っています。
ゼロの数を数える
基準の音(0デシベル)と、痛みを感じ始めることがある音(およそ120〜134デシベルとされます)を比べると[3]、同じ条件で測った場合、120デシベルの差は音のエネルギー(強さ)の比で10¹²、つまり1兆倍にあたります。音圧で見れば100万倍です[3]。
これをそのまま書くのは大変です。そこでデシベルは、エネルギー(電力)が10倍になるごとに10デシベル上がると決めました。式で書くと、電力の比のときは10×log₁₀、音圧や電圧のような振幅の比のときは20×log₁₀です[2]。120÷10=12で、1兆倍が「120」に収まります。
なぜ電力と音圧で式が違うのか
エネルギーは、音圧を2乗したものに比例します。音圧が10倍になるとエネルギーは100倍で、20デシベルです。ですから、同じ「20デシベル」でも、電力なら100倍、音圧なら10倍のことを指します[2]。
耳の感じ方にも合う
人の音の感じ方は、強さそのものではなく、その対数に近いといわれます[2]。強さが1兆倍になっても、感じる大きさが1兆倍になるわけではありません。対数で表すのは、数字を短くするだけでなく、感じ方にも都合がよい方法です。
ところが、ここに落とし穴があります。
0dB(20μPa)から120dBまでは、同じ条件で測った音圧レベルの差として、音圧の比で10⁶、音響パワー(強さ)の比で10¹²に相当する(120÷10=12、120÷20=6)[3]。痛みを感じ始めることがある音圧レベルは、およそ120〜134dB SPLと紹介される[3]。1つの二次資料の記述なので、ここでは目安として扱う。
この幅を直接の倍率で書くと桁が多すぎる。そこでdBは比の対数を使い、電力の比は10log₁₀、電圧・音圧などの振幅の比は20log₁₀で計算する[2]。電力が10倍になれば10dB、振幅が10倍になれば20dBだ[2]。エネルギーが振幅の2乗に比例するので、振幅の10倍はエネルギーの100倍にあたり、両者は矛盾しない。
対数を使う理由はもう1つある。人が感じる音や光の強さは、強さそのものより、その対数に近いといわれる[2]。そのため、dBの数字の並びは、耳の感覚にも近い。ただし、この「近い」は感覚の広い範囲での傾向を指し、厳密な一致ではない。では、その感覚の側から見ると、「2倍」は何dBなのか。
4. 3上がると、2ばいうるさい?
4. 3デシベルの「2倍」と、耳の「2倍」はちがう
4. エネルギーの2倍(約3dB)と、感じる大きさの2倍(約10dB)
「3デシベル ふえると、2ばいに なる」と 聞いた ことが あるかもしれません。これは 半分だけ 正しい 話です。
3デシベル ふえると、音の エネルギーが 2ばいに なります[2]。けれど、耳が「2ばい 大きい」と かんじる のは、およそ 10デシベル ふえた ときと いわれます[4]。
つまり、エネルギーが 2ばいに なっても、耳には 少しだけ 大きく なった ぐらいに 聞こえます。数字と 耳の かんじは、そのまま 同じでは ありません。
ただし 10デシベルは 目安です。音の 高さや 人によって かわります[4]。
2つの「2倍」
電力の比が2倍になると、約3デシベル変わります(10×log₁₀2≒3.01)[2]。ここで言う「2倍」は、音のエネルギーの話です。
いっぽう、耳が「2倍の大きさに聞こえる」のは別の話です。心理的な音の大きさの単位ソーンでは、1キロヘルツの音が10デシベル上がると、感じる大きさはほぼちょうど2倍になるとされています[4]。
どう読めばよいか
1キロヘルツの音なら、エネルギーが2倍でも、耳には「少し大きくなった」程度に聞こえるはずです。1キロヘルツの単一の音なら、エネルギーを10倍にして、ようやく「2倍の大きさ」に近くなります。
ただし、これは1キロヘルツの単一の音の場合です。周波数がちがう音や、幅広い音が混ざった音では、別の計算が必要になります[4]。「10デシベルで2倍に聞こえる」は、目安として使い、音や人によって変わると覚えておくのが安全です。
電力の比が2または1/2になると、約3dB変わる(10log₁₀2≒3.01)[2]。これは物理量としてのエネルギー比の話だ。一方、感じる大きさの単位ソーンでは、1kHzで10dB(10フォン)上がるごとに、感じる大きさはほぼちょうど2倍になる[4]。
したがって、「3dBで2倍」はエネルギー、「10dBで2倍」は聴感という別の量の話で、混ぜると誤解が生じる。耳の感覚ではエネルギーを約10倍にして初めて、ほぼ2倍の大きさに聞こえる、という読み方になる。ただしこれは単一周波数の音についての関係で、周波数が変わる場合や広帯域の音では別の計算が要る[4]。原論文(ソーンの提案)は今回直接確認しておらず、二次資料にもとづく。
数字が同じ「2倍」でも、測っている量がちがう。では、こんな使い分けをする単位は、そもそも何のために作られたのか。
5. もとは 電話線の ための ものさし
5. 生まれは音ではなく、電話線だった
5. マイル・ケーブルから伝送単位、そしてデシベルへ
デシベルは、音の ために 作られた ものでは ありません。もとは、電話の 線を 通る あいだに、声の 電気が どれだけ 弱く なるかを はかる ものでした[2]。
むかしは、「決まった 電話線を 1マイル 通った ぶん」を 1つと 数えていました。1マイルは およそ 1.6キロです。1924年ごろ、アメリカの ベル電話けんきゅうじょが、新しい 数え方に かえました[2]。
その 数え方は 1928年ごろ、「デシベル」と 名まえが つきました。電話を 広めた ベルさんに ちなんだ「ベル」の、10分の 1の ことです[2]。ただし ベルさん自身が 作った わけでは なく、あとから 名まえを つかったのです。
電話線の「弱まり」をはかる
デシベルは、もとは電話線を通るうちに信号が弱まる量を表すために生まれました。1920年代の半ばまで、その損失は「標準ケーブル1マイル分」を単位にして表していました。1マイルは約1.6キロメートルです。1924年、アメリカのベル電話研究所が、新しく「伝送単位」を提案し、置きかえたとされます[2]。
名前の由来
1928年、ベル・システムは、この伝送単位を「デシベル」と改名したとされます。名前は、電話の先駆者アレクサンダー・グラハム・ベルにちなむ「ベル」の10分の1という意味です[2]。ベルそのものは実用では大きすぎたため、10分の1のデシベルのほうが広く使われました。
ベル本人が単位を作ったのではなく、名は後から敬意を込めてつけられました。なお、この経緯は二次資料にもとづいていて、当時の論文の原文は今回確認していません。
音を測る道具としてのデシベルは、この電話の「比」の考え方を、音に借りたものなのです。
デシベルの出発点は電話線の損失の表し方だ。1920年代半ばまで、損失は標準ケーブル1マイル分(MSC)で表された。1924年にベル電話研究所が伝送単位(TU)を提案してこれに置きかえた[2]。1マイルは約1.6kmで、1TUは1MSCにほぼ等しい(1TU=1.056MSC)とされる[2]。
1928年、ベル・システムはTUを、新たに定義した「ベル」の10分の1の単位として「デシベル」と改名した。ベルはアレクサンダー・グラハム・ベルにちなむ[2]。ベルは実用には大きすぎ、デシベルが使われた。ベル本人が単位を作ったわけではない。改名の年は二次資料で報じられるもので、1929年の論文(Bell System Technical Journal)の原文は今回確認できていない。
デシベルは、量そのものではなく、基準に対する比を表す方法だ。ベル(B)とネーパ(Np)は次元のない比の単位で、SIには含まれないがSIと併用できるとされる[5]。音に使うときは音圧レベルという別の名前がつき、基準は20μPaと決まっている。何が基準かで意味が変わるので、dBは数字だけでは足りない。
6. 数字を 見たら、たずねたい こと
6. 「何dB」と聞いたら、確かめたい2つのこと
6. 基準と測り方を確かめる ── 環境基準の読み方
「60デシベル」と 聞いたら、たずねて みましょう。「何を きじゅんに した 数字?」「どこで はかった 数字?」
音の デシベルなら きじゅんは 20マイクロパスカルです。でも 電気の 話なら、ほかの きじゅんが あるかもしれません。
京都市の しりょうに よると、まちの 音の 決まりは、住む ための 地いきで 昼は 55デシベル いか、夜は 45デシベル いかです[1]。ぐっすり ねむれる 目安は、だいたい 40デシベル いかと いわれます。
基準と測り方
デシベルは、基準に対する比の表し方なので、何を基準にしたかで意味が変わります。音圧レベルなら基準は20マイクロパスカルです[3]。電力や電圧の比で使うときは、別の基準があります。
くらしの目安
京都市の資料(令和6年版)では、道路に面しない住居地域の騒音の環境基準は、昼間55デシベル以下・夜間45デシベル以下です。また、だいたい40デシベル以下なら、睡眠の妨げはないといわれます[1]。環境基準は改正されることがあるので、今の値は環境省などの公式情報で確かめるのが確実です。
数字を見たら、「何の比か」と「どうやって測ったか」を思い浮かべる。それだけで、デシベルの数字の読み方が変わります。
7. うちの 中の 音を、ならべて みよう
7. 家の中の音を、予想して並べてみる
7. 出口 ── 予想と資料の読みどころ
うちの 中で、音を 3つ さがします。たとえば 時計の 音、話し声、水の 音。おうちの 人と いっしょに 聞いて みましょう。
その 3つを、しずかな じゅんに ならべます。つぎに、京都市の 目安の 表を 見て、「これは 30くらいかな、60くらいかな」と 予想して みます。
大きな 音を 出したり、耳を 近づけすぎたり しないでください。あくまで 予想で、正しい 数は はかれません。
家の中の音を3つ選び、静かな順に並べてみましょう。たとえば、時計の音、話し声、テレビの音などです。次に、京都市の目安の表[1]と見比べて、それぞれ何デシベルくらいかを予想します。
予想が当たるかどうかは、大切ではありません。「この音の差は、数字ではいくつだろう」と考えるのが目的です。大きな音を出したり、耳を音源に近づけすぎたりしないよう、注意してください。
もっと知りたくなったら、京都市の「騒音と振動のてびき」[1]を開いてみてください。日本語で読めて、音の目安が表になっています。
家の中の音を3つ選んで静かな順に並べ、京都市の目安の表[1]に照らして何dBくらいかを予想してみるとよい。大きな音を出したり、耳を音源に近づけすぎたりしない。正確な値は騒音計がなければ測れないので、あくまで予想にとどめる。
資料を読むなら、目安の表と環境基準は京都市の資料[1]が日本語で読める。3dBと10dBの関係の背景は、ソーンの解説[4]から入れる。また、電話の損失としてのデシベルの歴史は、二次資料にもとづく。ITU-T G.100.1やBIPMのSI文書(SI Brochure)も、定義を確かめる入口になる。さらに、1929年のBell System Technical Journalの論文まで遡れるはずだが、今回は原文を確かめておらず、さらに調べる価値のある問いだ。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:京都市の資料、およびデシベルなどの解説(Wikipedia)を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。Wikipediaは二次資料なので、本文では「とされる」と書いた部分がある。定義や式、基準音圧の一次的な確認先としては、ITU-T G.100.1やBIPMのSI文書(SI Brochure)がある(今回は原文を確かめていない)。歴史の部分は二次資料にもとづく。
- 京都市「騒音と振動のてびき」(令和6年版)。https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000145/145318/240401souonntebiki.pdf (音の大きさの目安、耳の敏感さ、環境基準について)
- Decibel(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Decibel (デシベルの由来、計算式、3dBの関係について。二次資料)
- Sound pressure(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Sound_pressure (基準音圧20μPaと、痛みを感じ始める音圧について。二次資料)
- Sone(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Sone (感じる大きさが2倍になる目安について。二次資料)
- Neper(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Neper (ベルとネーパがSIと併用できる単位であることについて。二次資料)
なおした ところ
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