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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

みそは どうして ながもち するの?

味噌はなぜ長持ちするのか ── 塩だけではない、微生物たちの分担

味噌の保存性と発酵 ── 塩分11〜13%、耐塩性の酵母・乳酸菌、麹の酵素、乳酸の抗菌作用

分野:生きもの

みそは、なんかげつ おいて おいても、すぐには だめに なりません。しおが たくさん 入って いるからでしょうか。

ところが、しおだけでは おさえられない ばいきんが いる、という 高校生の 実験じっけんが あります。みその 中で なにが はたらいて いるのかを 見て いきます。

味噌は、冷蔵庫の奥に何か月置いても、すぐには傷みません。ふつうは「塩がたくさん入っているから」と説明されます。

ところが、長野県の高校生が、味噌と同じ12%の塩水の寒天を大腸菌に近づけたところ、大腸菌は止まりませんでした[5]。では、味噌の中では何が菌の増えすぎを防いでいるのでしょうか。塩、塩に強い微生物、麹の酵素の順に見ていきます。

味噌の食塩濃度は11〜13%が一般的だが[1]、長野県の高校生の実験では、12%の食塩を含む寒天は大腸菌の増殖を抑える円をつくらなかった[5]。塩だけでは説明がつかないことになる。

塩による抑制、耐塩性の酵母・乳酸菌の働き、麹菌の酵素による分解、熟成中の色の変化を、複数の資料を突き合わせて整理する。

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1. みそは くさらないのかな?

1. 味噌は「腐らない」のではなく、働き続けている

1. 味噌は何からでき、どう熟成するのか ── 大豆・米麹・塩と、熟成の幅

みそは、だいずと、こうじと、しおで つくります。こうじは、こめなどに 「こうじきん」と いう カビの なかまを はやしたものです。

これらを まぜて、あたたかい ところに おくと、みその 中で 小さな いきものが はたらきます。これを はっこうと いいます。

みそは、なにも おこらないから ながもち するのでは ありません。しおや、しおに 強い びせいぶつなど、いくつかの はたらきが、みその ながもちに かかわって います。

じゅくせいに かかる 時間は、1か月くらいから、何年までと、いろいろです[1]。

味噌は、大豆に麹と塩を混ぜてつくります。麹は、麹菌というカビの仲間を米や麦などに育てたものです。

仕込んだ味噌は、ふつう25〜30℃ほどで熟成させます。熟成期間は1か月ほどのものから、年単位のものまでさまざまです[1]。

この間、味噌の中では微生物が働き続けます。「何も起きないから長持ちする」のではなく、「決まった微生物の仕事が続くことで守られる」と考えるほうが、実際に近いようです。

味噌は、蒸した大豆に麹と食塩を混ぜて発酵・熟成させた食品である。総説によると、熟成温度は25〜30℃に管理され、期間は1か月程度から数年に及ぶ[1]。

本稿では「保存性」を、無菌状態が保たれることではなく、望ましい微生物だけが優勢になる状態が続くこととして扱う。以下、その根拠を塩分・微生物・酵素・色の変化の順に見る。

2. しおは、どんな はたらきを するの?

2. 塩は、悪い菌が増えにくい場をつくる

2. 塩分11〜13%と、望ましくない微生物の抑制

みそに 入って いる しおは、100の うち 12ほどです。せいかくには、11から 13くらいが ふつうです[1]。

しおが たくさん あると、よくない びせいぶつは ふえにくく なります。しおづけの さかなが ながもち するのと にて います。

ただし、これは いくつかの はたらきの ひとつです。つぎの 章で、しおの 中でも 元気な なかまを しょうかいします。

市販の味噌の塩分は、全体では5〜13%と幅がありますが、ふつうは11〜13%ほどです[1]。総説では、塩と水が、望ましくない微生物の増殖を抑える大切な要素とされています。

塩辛い環境では、多くの菌は水を保てず、増えにくくなります。塩漬けの魚が日持ちするのと、似た考え方です。ただし、味噌が長持ちする理由は塩だけではありません。次の章で、塩の中でも働ける微生物を紹介します。

味噌の食塩含量は5〜13%と幅があり、一般には11〜13%である。塩と水は、望ましくない微生物の増殖を抑える主要因子とされる[1]。

この記事では、塩による抑制を保存性の第一の要素として置き、次章以降で、塩だけでは説明しきれない部分を検討する。

3. しおの 中で はたらく なかま

3. 塩に強い酵母と乳酸菌が主役になる

3. 耐塩性酵母 Zygosaccharomyces rouxii と乳酸菌 Tetragenococcus halophilus

みそづくりで はたらく 小さな いきものは、おもに 3つです。こうじきんと、酵母こうぼと、乳酸菌にゅうさんきんです。

この うち 酵母こうぼと 乳酸菌にゅうさんきんは、しおが こい ところでも はたらける なかまです[1]。ふつうの ばいきんが こまる しおの 中で、ちゃんと しごとを します。

しおに 強い なかまは、しおが おおい ところでも かつどうできる びせいぶつです。

しおが こすぎると、酵母こうぼも よわって しまいます。ちょうど よい こさが あるのです[4]。

味噌づくりの主役は、麹菌、塩に強い酵母(Zygosaccharomyces rouxii)、塩に強い乳酸菌(Tetragenococcus halophilus)の3つです[1]。

酵母は、塩が約23%(4M)までなら耐えられるとされます。乳酸菌は塩5〜10%でいちばんよく育ち、24%という高い濃度でも生き残ると報告されています[1]。ただし、これは耐えられる範囲の話で、味噌の中での働きやすさをそのまま示す数字ではありません。

福井県の試験場の資料は、味噌に含まれる水分に対する食塩の割合(対水塩分濃度)が高すぎると、酵母の働きが弱まると示しています。仕込み時は22%以下に調整するとよく、30℃を超えても酵母は弱まるそうです[4]。この「対水」の数字は、味噌全体の塩分の約12%より大きく出る点に注意が必要です。

総説は、味噌醸造の主役を、麹菌(Aspergillus oryzae)、耐塩性酵母(Zygosaccharomyces rouxii、ジゴサッカロミセス・ルーキシー)、耐塩性乳酸菌(Tetragenococcus halophilus、テトラゲノコッカス・ハロフィルス)としている[1]。

報告によれば、酵母は約4M(約23%)の塩まで耐え、乳酸菌は塩5〜10%で最もよく増殖し、最大24%でも生残する[1]。この数値は耐えうる上限であって、味噌の塩分そのものではない。

福井県の資料は、味噌の水分に対する食塩の割合(対水塩分濃度)が高すぎると酵母の働きが弱まるため、22%以下に調整するよう示している。30℃を超えても酵母は弱まる[4]。対水塩分濃度は、味噌全体の塩分より高い数値になる。

4. しおだけでは、とまらなかった

4. 高校生の実験 ── 12%の塩だけでは大腸菌が止まらなかった

4. 阻止円の実験 ── 塩以外の抗菌要因

ながの県の 高校生が、実験じっけんを しました。大腸菌だいちょうきんを ぬった ところに、みそと おなじ こさの しおを ふくんだ 寒天を おきました[5]。

大腸菌だいちょうきんが いなくなる 円は、できませんでした。しおだけでは、おさえられなかったのです。

いっぽう、みその 中から とりだした 乳酸菌にゅうさんきんや、乳酸にゅうさんを おいた ところでは、大腸菌だいちょうきんを おさえる 円が できました。乳酸にゅうさんは、乳酸菌にゅうさんきんが つくる すっぱい もとです。

これは 高校生の 学校での 実験じっけんです。みその ひみつは、しおだけでは ないのかも しれない、と 考えるヒントに なります。

長野県の諏訪清陵高校の生徒は、大腸菌を塗った培地の上に、味噌と同じ12%の塩分の寒天を置きました。菌を抑える透明な円(阻止円)は、できませんでした[5]。

一方、味噌から分けた乳酸菌や、濃度8%以上の乳酸を置いたところでは、大腸菌を抑える円ができたそうです[5]。生徒たちは、塩のほかにも味噌の抗菌作用に関わるものがあるのでは、と考えました。

これは高校の校内研究のポスターで、査読を受けた論文ではありません。「こういう実験結果がある」という位置づけで読むのがよいでしょう。塩・乳酸・そのほかが、それぞれどれくらい効いているかは、この資料からは分かりません。

長野県諏訪清陵高校のポスター発表によると、大腸菌を塗った培地に、味噌の塩分濃度と同じ12%の寒天を置いても阻止円はできなかった。一方、味噌から分離した乳酸菌や、8%以上の乳酸では、阻止円ができた[5]。生徒は、塩以外にも抗菌作用に関わる要素があると考察した。

査読論文ではなく校内研究であり、乳酸だけの寄与や、塩・乳酸・アルコールなどの重なりの割合は、この資料からは不明である。「塩に加え、乳酸などが関与する可能性を示す一例」にとどめて読むべきだ。

5. こうじの ちからで、あじが できる

5. 麹の酵素が、大豆と米を分解して味をつくる

5. アミラーゼ・プロテアーゼによるでんぷん・たんぱく質の分解

みその あじは、こうじの 酵素こうそが つくります。酵素こうそは、ものを こまかく 分ける はたらきを もつ、小さな どうぐの ような ものです。

ひとつは、でんぷんを あまい 糖とうに かえます。もうひとつは、たんぱくしつを、うまみの もとに かえます[2]。

だいずと こめが、こまかく 分けられて、みその あじに なって いきます。あじが できる ことと、ながもち する ことは、おなじ 中で すすんで います。

麹菌がつくる酵素のうち、味噌でおもに働くのはアミラーゼとプロテアーゼです。アミラーゼは、でんぷんを糖に分けます。プロテアーゼは、たんぱく質をペプチドやアミノ酸に分けます[2]。

大豆や米が分解されると、糖やアミノ酸が増え、味噌の甘みやうま味になります。つまり味の変化と、微生物が住みやすい環境づくりが、同じ発酵の中で進んでいます。

広島県の食品工業技術センターは、麹の酵素を整理している。グルコアミラーゼはでんぷんを糖化し、プロテアーゼはたんぱく質を可溶化してペプチドを生じ、ペプチダーゼはペプチドからアミノ酸を遊離させる[2]。

これらが原料の米・大豆を分解して、味の素材をつくる。分解でできた糖やアミノ酸は、酵母や乳酸菌の栄養にもなりうる。この後半は本稿の推論であり、出典に書かれているわけではない。

6. ながく おくと、いろが かわる

6. 熟成で色が変わり、塩を減らしすぎると傷みやすい

6. 色の変化と、減塩の限界

みそは、ながく おくと、いろが こく なって いきます。これは、あじの もとに なる ものが、すこしずつ かわる からです[1]。

いばらき県の しけんじょうでは、みそを 1年 ほぞんして、いろんな かわり方を しらべました。いちばん 大きく かわったのは、いろでした[6]。

また、しおを へらしすぎると、すっぱく なりすぎたり、ガスが 出たり します。ちょうど よい しおの りょうが あるのです[3]。

熟成中は、メイラード反応という、糖とアミノ酸が結びつく変化が進みます。総説は、これが味噌の色や風味の変化に大きく関わると説明しています[1]。

茨城県工業技術センターの試験では、味噌を常温・20℃・0℃で1年保存したところ、品質の変化の中で色の変化がもっとも激しかったと報告されています[6]。商品として長く売るには、色が変わりにくい味噌が要ると考えられています。

塩を減らしすぎる場合の限界も、資料にあります。農林水産省が消費者庁の検討会に出した資料は、辛口味噌の塩分を25%以上減らすと、通常の方法では発酵しすぎて傷むとしています。乳酸菌が働きすぎて酸っぱくなったり、酵母が異常に増えて炭酸ガスが出たりする、という説明です[3]。ここで言う25%は、減らす割合です。たとえば12%の塩分を25%減らすと9%になります。

熟成中の成分変化には、メイラード反応が大きく関与し、色や風味の変化を生む[1]。茨城県工業技術センターの保存試験(常温・20℃・0℃、1年)でも、品質変化のうち色の変化が最大だった。商品寿命を延ばすには色変化の小さい味噌が要る、と考えられている[6]。

減塩の限界も示されている。農林水産省が消費者庁の検討会に提出した資料は、味噌には発酵に適した塩分・水分の範囲があり、辛口味噌の塩分を25%以上低減すると通常の製法では変敗し、安全性に問題が生じるとする。乳酸菌の発酵過多による酸味や、酵母の異常増殖によるガス発生がありうる[3]。この25%は塩分濃度ではなく相対的な低減率で、たとえば12%の25%減は9%にあたる(筆者計算)。

保存性は、塩の量だけでなく、微生物のバランスと温度・水分の範囲が保たれることで成り立つ、と整理できる。

7. うちの みそを 見て みよう

7. 家の味噌を観察してみよう

7. 出口 ── 容器の表示を読む/原典に当たる

おうちに みそが あったら、ようきの うらを 見て みましょう。「げんざいりょうめい」に、なにが 入って いるでしょうか。「しょくえんそうとうりょう」が のって いれば、しおの りょうの めやすが わかります。

おうちの 人と いっしょに ふたを あけて、いろも 見て みましょう。あかるい いろの みそと、こい いろの みそでは、じゅくせいの ようすが ちがうのかも しれません。ただし、においが へんだったり、ふしぎな いろの かびが 見えたりしたら、おうちの 人に 見せて ください。

家に味噌があれば、容器の裏の原材料名と、栄養成分表示の食塩相当量を見てみましょう。塩分の数字は、この記事の「11〜13%」と比べてどうでしょうか。ただし、表示は容器全体に対する量なので、水に対する割合の数字とは別のものです。

家の人といっしょにふたを開けて、色や表面の様子も見比べてみてください。色の濃さは熟成の進み方の手がかりのひとつです。変なにおいやカビのような様子があれば、無理に食べず、家の人に相談してください。

原典を読むなら、味噌づくりの総説[1]と、高校生のポスター[5]が入り口になります。

家庭にある味噌の容器で、原材料名と食塩相当量を確認し、本稿の11〜13%と比べるとよい。ただし、表示は食品全体に対する量で、対水塩分濃度とは別の指標である。色や表面の状態も観察できるが、異臭やカビが見えるときは食べずに家の人に相談する。

原典に当たるなら、総説[1]は英語、広島県[2]、農林水産省資料[3]、福井県[4]、長野県の高校のポスター[5]、茨城県[6]は日本語で読める。水分活性の値や、各要素の効き方の割合は本稿では扱えておらず、資料を探す課題として残る。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:味噌づくりの英語の総説、広島県・福井県・茨城県の公的機関の資料、農林水産省が消費者庁の検討会に出した資料、長野県の高校のポスターを使った。数字の言い換えは筆者が計算した。

  1. Japanese Traditional Miso and Koji Making (PMC). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8307815/ (塩分、微生物、熟成期間・温度、メイラード反応について)
  2. 広島県立総合技術研究所 食品工業技術センター「米麹の酵素」。 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/26/foodfaq3-2.html (麹の酵素の働きについて)
  3. 消費者庁検討会資料(農林水産省提出)味噌の塩分と保存性。 https://www.cao.go.jp/consumer/history/03/kabusoshiki/syokuhinhyouji/doc/141015_shiryou3_2.pdf (塩分を減らしすぎたときの変敗について)
  4. 福井県 食品加工研究所「耐塩性酵母FSM1・FSM2」。 https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/noushi/kikaku/hukyu2_d/fil/m.pdf (対水塩分濃度と酵母の働きについて)
  5. 長野県諏訪清陵高校「みその秘密にせまる」ポスター。 https://www.nagano-c.ed.jp/seiryohs/_src/sc2562/H27miso.pdf (塩の寒天と乳酸を使った実験について)
  6. 茨城県工業技術センター「味噌の品質保持試験」(鈴木英子)。 https://www.itic.pref.ibaraki.jp/publication/doc/research/h11/N28P086.pdf (1年間の保存試験での色の変化について)

なおした ところ

更新履歴

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