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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

月は 1ねんで どれだけ とおく なるの? ── うみの しおが おしあげる

月は毎年3.8cm遠ざかっている ── 海の潮が月を押し上げ、1日をのばす

月の後退(年約3.8cm)と潮汐摩擦 ── 月面反射鏡、角運動量の移動、化石が示す1日の長さ

分野:宇宙・天文

月の 上には、アポロの ひこうしが おいた 鏡かがみが あります。地球から そこへ ひかりを 当てると、月が すこしずつ とおく なって いる ことが わかります。

おしあげて いるのは、うみの しおです。それが 1日の 長さと どう つながるのか、サンゴの 石に 書かれた しるしも 見て いきます。

月の表面には、アポロの宇宙飛行士たちが置いた鏡があります。地球からそこへレーザーを撃つと、月が1年に約3.8cmずつ遠ざかっていることが読み取れます。

月を押しているのは、地球の海の潮です。その裏側で地球の1日が長くなっていること、4億年前のサンゴの化石が伝える昔の1日、そして「毎年3.8cm」をそのまま掛け算できない理由まで、資料を見ながらたどります。

月面に置かれた反射鏡へのレーザー測距により、月は年約3.8cmの割合で地球から遠ざかっていることが分かっている。原因は、海の潮汐摩擦を通じて地球の自転から月の軌道へ角運動量が移ることである。

測定の方法、移動の仕組み、1日の長さの変化、化石に残る過去の日数、そして現在の速さを過去へ延長できない理由を、出典に当たりながら整理する。

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1. 月に ある 鏡かがみって なあに?

1. 月の上に置かれた鏡で、距離を測る

1. 月面反射鏡とレーザー測距 ── 往復時間から数ミリの精度で

1969ねんの 7月、アポロ11ごうの ひこうしが、月の 上に 鏡かがみを おきました[3]。ふつうの 鏡かがみでは ありません。光が 来た 道を そのまま もどるように 作られて います。

地球から この 鏡かがみめがけて、とても 細い ひかりを 打ちます。光が 行って もどって くるまでの 時間を はかれば、月までの 道のりが わかります。この やりかたで、数ミリの ちがいまで はかれる と いいます[1]。

では、はかって みると、月は どうなって いたのでしょう。

1969年7月、アポロ11号の宇宙飛行士は、月面に「レーザー測距用の反射鏡」を設置しました[3]。光が来た方向へそのまま跳ね返るよう、小さなガラスのプリズムを並べた鏡です。

地球からこの鏡にレーザーの光を短く撃ち、跳ね返って戻ってくるまでの時間を測ります。光の速さは分かっているので、往復時間から距離が出ます。NASAの解説では、数ミリ以内の精度で距離が分かるとされています[1]。

同じ測定を何十年も続けると、月までの距離が少しずつ変わっていくのが見えてきました。

1969年7月、アポロ11号が月面にレーザー測距用の反射鏡(Laser Ranging Retroreflector)を設置した。NASAの資料では、アポロ11号と14号の反射鏡はコーナーキューブ(石英ガラスのプリズム)100個ずつ、15号は300個で構成される[3]。

地球からレーザーパルスを撃ち、反射鏡で跳ね返って戻るまでの時間を測る。光速は既知なので往復時間から距離が求まり、その精度は数ミリ以内とされる[1]。数十年分の測定が積み重なると、月までの距離が一定でないことが読み取れる。

2. 月は 1ねんで どれだけ うごくの?

2. 1年に約3.8cm ── 爪がのびる速さくらい

2. 後退速度 ── 年38.30±0.08mmという値

月は 1ねんに 3.8センチメートル ほど、地球から とおざかって います[1]。じょうぎで 3.8センチを 見てください。それが 1ねんぶんの うごきです。

手の ゆびの つめが のびる はやさと おなじくらいだ、と せつめいする 人も います[7]。月までの 道のりは 38万キロメートル あまり あります[2]。それに くらべれば、ほんの わずかです。

でも どうして 月は はなれて いくのでしょう。

月は地球から、1年に約3.8cmずつ遠ざかっています[1][2]。ある解説は、これを「平均的な人の爪がのびる速さ」にたとえています[7]。

地球と月の中心どうしの平均距離は約38万5000kmです[2]。3.8cmという動きは、その距離に比べればごくわずかですが、測定は数ミリの精度なので、たしかに見分けられます。

月は誰かが押しているわけでもないのに、なぜ離れていくのでしょうか。

NASAのJPLとNASAの日食解説は、月が年約3.8cmの割合で遠ざかっていると述べる[1][2]。1970〜2015年のレーザー測距では年38.30±0.08mmという値が示されている[5]。ある解説はこの速さを、人の爪がのびる速さと同程度と例えている[7]。

地球と月の中心間の平均距離は約385,000kmである[2]。ただし、この約3.8cmは近年の測定値であり、過去も同じ速さだったとは限らない(6章)。

では、月を押し上げる力の正体は何か。

3. だれが 月を おして いるの?

3. 潮のふくらみが、月を前へ引っぱる

3. 潮汐のふくらみのずれと角運動量の移動

おして いるのは、地球の うみの しおです。うみの 水は、月に ひかれて、月の ほうへ ふくらみます。

ところが 地球は くるくる 回って います。その ため ふくらみは、月の まうしろから すこし ずれて しまいます。ずれた ふくらみは 水が たくさん ある ぶん、月を まえへ ひっぱります[4]。

ぶらんこを 動く 向きに あわせて おすと、どんどん 高く なりますね。月も 回る 向きに ひっぱられて、すこしずつ とおくへ 行きます。ただし 本当の 月は、行ったり 来たりは していません。丸い 道を 回りながら、その 道が 大きく なるのです。

そのとき 地球の 回る いきおいは、月へ わたされます。ですから 月が 自分の 力で はなれて いくのでは ありません[5]。

地球の海は、月の引力で月の方向にふくらみます。ところが地球は自転しているので、海の水は海底にこすられながら引きずられ、ふくらみは月の真下より少し東へずれてしまいます。

ふくらみには大量の水があるため、そのずれた位置から月を軌道の前方へ引っぱる力が生まれます[4]。ぶらんこが進む向きに背中を押されると高く上がるのと似ています。ただし月は往復せず、円に近い道を回り続けるので、押されると軌道が大きくなって遠ざかります。

このとき、地球の自転のエネルギーと回転の勢い(角運動量)が、月の軌道運動へ移ります。ただしエネルギーの大部分は、潮汐摩擦で熱になります[5]。月が自力で離れているのではなく、地球の自転から勢いをもらっているのです。

では、勢いを手放した地球のほうは、どうなるのでしょうか。

月の引力で海には潮のふくらみができるが、地球の自転と海底との摩擦によって、ふくらみは地球と月を結ぶ線から東側へずれる。ふくらみには大量の質量があるため、その重力が月を軌道の前方へ引く[4]。

その結果、エネルギーと角運動量が地球の自転から月の軌道運動へ移る。地球の自転は遅くなり、月は押し上げられて遠ざかる[5]。ただし移るエネルギーの大半は、潮汐摩擦で熱になる[5]。月が自力で離れるのではなく、地球の自転から回転の勢いを受け取っている点が要点である。

潮が生じる仕組みそのものは、別のメモで扱っている。ここでは月に及ぼす反作用だけを見る。

4. 1日は どれくらい のびるの?

4. 地球の1日は、100年で約0.0016秒のびる

4. 1日の長さの増加 ── 100年で約1.6ミリ秒

地球の 回る いきおいが へると、地球は すこし ゆっくり 回ります。すると 1日が ほんの すこし 長く なります。

その 長さは、100ねんで 0.0016びょう ほどです[4]。1ねんでは ありません。100ねんかけて、まばたきよりも ずっと みじかい 時間です。

今の 人には 気づけません。では むかしの 1日は、どれくらい みじかかったのでしょう。

自転が遅くなると、1日は少しずつ長くなります。その長さは、100年で約0.0016秒(約1.6ミリ秒)と説明されています[4]。この値は天文の解説書にある数字です。歴史に残る観測記録から推定した別の値では、100年で約1.72ミリ秒と出ています[5]。

のびるのは「100年で」であって、1年ではありません。まばたきの一瞬よりずっと短い時間で、人の一生では気づけません。

けれども何億年も積もれば、昔の1日は今とかなり違っていたはずです。それを確かめる手がかりが、化石にあります。

潮汐摩擦の結果、1日の長さは100年で約0.0016秒(約1.6ミリ秒)のびると説明される[4]。前者は解説書の値で、歴史記録に基づく別の推定では100年あたり約1.72ミリ秒である[5]。求め方で数字が少し違う。1年あたりではなく100年あたりの値である点にも注意が要る。

この変化は人間の時間尺度ではほとんど感じ取れないが、地質学的な長さにわたって積み重なると、過去の1日は現在と大きく違ったと考えられる。その検証に使われるのが化石記録である。

5. サンゴの 石は なにを つたえるの?

5. 4億年前のサンゴ化石は、1年を400日以上と数えた

5. 化石に残る1日の長さ ── デボン紀のサンゴ、潮汐リズマイト

サンゴの 化石には、1日ごとに できたと 考えられる 細い すじが のこって います。1年の あいだに できた すじの 数を 数えると、その 年の 日数が わかります。

4おく年 まえの サンゴを しらべた 学者は、1年が 400日より 多かった と 発表しました[6]。1年の 長さは かわらないので、そのころの 1日は 今より みじかかった と いう ことです。

ただ、4おく年も まえの ことなので、くわしい 数字には はばが あります。

サンゴの化石には、日ごとの成長線と、年ごとの層が残っています。1年分の層の中の成長線を数えれば、その年の日数が分かります。

古生物学者のジョン・ウェルズは1963年、約4億年前(中期デボン紀)のサンゴを調べ、1年が400日を超えていたと報告しました[6]。1年の長さが今と同じなら、1日は今の24時間より短く、計算するとおよそ22時間になります。

別の化石記録からは、約7000万年前の1日は約23.5時間と推定されています[5]。時代をさかのぼるほど短くなる、という向きは同じです。ただ、古いほど推定の幅は大きくなります。

古生物学者J・W・ウェルズは1963年(Nature)に、サンゴ化石の日ごとの成長線と年ごとの層を数え、中期デボン紀に年間400日超あったと報告した、と紹介されている[6]。年の長さが同じなら、1日は現在より短く、8760時間÷400日でおよそ22時間になる。

堆積層のリズム(潮汐リズマイト)からは、約6億2000万年前の1日が21.9±0.4時間と推定され、約7000万年前は約23.5時間と推定されている[5]。古い時代ほど誤差が大きい推定である。

複数の化石記録が、過去に遡るほど1日が短いという同じ向きを示している点が、潮汐摩擦の議論を支えている。

6. 3.8センチを かけざんして いいの?

6. 「毎年3.8cm」を何億年分も掛け算できない理由

6. 一定でない後退速度 ── 15億年前の矛盾と皆既日食の終わり

3.8センチを 何おく年ぶんも かけざんすると、大きな 数に なります。でも それは まちがいです。

今の はやさが むかしも つづいたと すると、およそ 15おく年 まえに 月は 地球に くっついて しまいます。でも 月は それより ずっと 古い ことが わかって います。計算と あわないので、むかしは もっと ゆっくり だった はずです[7]。

月が とおざかると、空で 小さく 見えます。だから いつか 月は 太陽を かくしきれなく なり、日食で 月が 太陽を すっぽり かくす ことが なくなる のです。それは 6おく年 あとから、と いう 話も あります。でも 目安に すぎません[7]。

年3.8cmは近年の測定値です。この速さが過去もずっと続いたと仮定して逆算すると、約15億年前に地球と月がくっついてしまいます。月は少なくとも約44.6億年前からあるという証拠と合わないので、過去の速さはもっと小さかったはずです[7]。

解説では、後退の速さは一定でなく、急に進む時期と変化の小さい時期が混ざっていたのだろうと述べられています[7]。今の速さが過去より大きい理由には、わかっていない部分が残っています。

月が遠ざかると、空での見かけの大きさは小さくなります。同じ解説によれば、皆既日食は約6億2000万年後から減り始めます[7]。最後の日食がいつかについては、もっと先とする数字もあり、あくまで目安です。

現在の年約3.8cmという速さを過去へそのまま延長すると、約15億年前に地球と月が接することになり、月が少なくとも約44.6億年前からあるという証拠と矛盾する。したがって過去の後退速度は現在より小さく、しかも一定ではなく、急に進む時期と変化の小さい時期が混在したと考えられている[7]。

現在の速さが過去の平均より大きい理由(海の形や共鳴の影響など)は、今回の資料の範囲では確かめていない。わかっていない部分が残る。

月が遠ざかると見かけの大きさが小さくなり、皆既日食はやがて起きなくなる。同じ資料は、減り始めを約6億2000万年後としている[7]。最後の皆既日食の時期は文献により約6億年〜12億年と数字が異なり、速度が一定でないため目安にとどまる。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

じょうぎで 3.8センチを はかって、えんぴつで しるしを つけましょう。それが 月の 1ねんぶんです。つぎに 自分の 手の つめの 長さを 見て、そのままに して おきます。1か月 たったら、つめは どれだけ のびたか、じょうぎで くらべて みましょう。1か月の あいだは、つめを 切る 前に 長さを 見て おきましょう。

本を 読むなら

としょかんで「月」や「潮しお」の 本を さがして みましょう。月が 遠ざかる 話は、天文の 本に のって いる ことが あります。

今日できること

定規で3.8cmを測り、自分の爪の先に当ててみましょう。爪の長さを定規で測って書き留め、1か月後にのびた分を測り直します。月の1年分の動きと、爪の1か月分を比べると、どちらが速いか自分で確かめられます。爪を切る前に測るのがコツです。

もっと調べるなら

爪の代わりに、家の中でのびていくものを1つ選んで、定規で1か月の変化を記録してみるのもおすすめです。「1年で3.8cm」が、どれくらいゆっくりした動きなのか実感できます。

今日できること

定規で3.8cmを測り、1年分の月の動きを目で確かめる。自分の爪の長さを記録し、1か月後に測り直して、月の1年分の後退量と比べる。実際の爪ののびは人により異なるので、自分の測定値を基準にする。

比べてみるなら

爪のほかに、家の中でゆっくりのびるもの(観葉植物の新芽など)を1つ選び、同じように1か月ぶんの変化を測ると、「年3.8cm」がどれくらいの速さか体感できる。3.8cmを1か月に直すと約3mmで、自分の測定値と並べて比べられる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数字や仕組みを整理するために、次の資料を参考にしました。

  1. NASA JPL「The Apollo Experiment That Keeps on Giving」 https://www.jpl.nasa.gov/news/the-apollo-experiment-that-keeps-on-giving/ (月が年約3.8cm遠ざかる値、測定の方法と精度)
  2. NASA Eclipse「Lunar Science Findings from Laser Ranging」 https://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEhelp/ApolloLaser.html (3.8cmの別の確認、平均距離)
  3. NASA「Apollo 11 Mission Overview」 https://www.nasa.gov/general/apollo-11-mission-overview/ (反射鏡の設置と構成)
  4. Astronomy Notes「Tides Slow Earth Rotation」 https://www.astronomynotes.com/gravappl/s10.htm (潮のふくらみが月を引く仕組み、1日ののび)
  5. Wikipedia「Tidal acceleration」 https://en.wikipedia.org/wiki/Tidal_acceleration (角運動量の移動、精密な後退値、化石の推定)
  6. Wikipedia「Rugosa」 https://en.wikipedia.org/wiki/Rugosa (ウェルズのサンゴ研究の紹介)
  7. Eos「The End of the Eclipse」 https://eos.org/features/the-end-of-the-eclipse (後退速度が一定でない話、皆既日食の終わり、爪のたとえ)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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