1. 月に ある 鏡って なあに?
1. 月の上に置かれた鏡で、距離を測る
1. 月面反射鏡とレーザー測距 ── 往復時間から数ミリの精度で
1969ねんの 7月、アポロ11ごうの ひこうしが、月の 上に 鏡を おきました[3]。ふつうの 鏡では ありません。光が 来た 道を そのまま もどるように 作られて います。
地球から この 鏡めがけて、とても 細い ひかりを 打ちます。光が 行って もどって くるまでの 時間を はかれば、月までの 道のりが わかります。この やりかたで、数ミリの ちがいまで はかれる と いいます[1]。
では、はかって みると、月は どうなって いたのでしょう。
2. 月は 1ねんで どれだけ うごくの?
2. 1年に約3.8cm ── 爪がのびる速さくらい
2. 後退速度 ── 年38.30±0.08mmという値
月は 1ねんに 3.8センチメートル ほど、地球から とおざかって います[1]。じょうぎで 3.8センチを 見てください。それが 1ねんぶんの うごきです。
手の ゆびの つめが のびる はやさと おなじくらいだ、と せつめいする 人も います[7]。月までの 道のりは 38万キロメートル あまり あります[2]。それに くらべれば、ほんの わずかです。
でも どうして 月は はなれて いくのでしょう。
3. だれが 月を おして いるの?
3. 潮のふくらみが、月を前へ引っぱる
3. 潮汐のふくらみのずれと角運動量の移動
おして いるのは、地球の うみの しおです。うみの 水は、月に ひかれて、月の ほうへ ふくらみます。
ところが 地球は くるくる 回って います。その ため ふくらみは、月の まうしろから すこし ずれて しまいます。ずれた ふくらみは 水が たくさん ある ぶん、月を まえへ ひっぱります[4]。
ぶらんこを 動く 向きに あわせて おすと、どんどん 高く なりますね。月も 回る 向きに ひっぱられて、すこしずつ とおくへ 行きます。ただし 本当の 月は、行ったり 来たりは していません。丸い 道を 回りながら、その 道が 大きく なるのです。
そのとき 地球の 回る いきおいは、月へ わたされます。ですから 月が 自分の 力で はなれて いくのでは ありません[5]。
地球の海は、月の引力で月の方向にふくらみます。ところが地球は自転しているので、海の水は海底にこすられながら引きずられ、ふくらみは月の真下より少し東へずれてしまいます。
ふくらみには大量の水があるため、そのずれた位置から月を軌道の前方へ引っぱる力が生まれます[4]。ぶらんこが進む向きに背中を押されると高く上がるのと似ています。ただし月は往復せず、円に近い道を回り続けるので、押されると軌道が大きくなって遠ざかります。
このとき、地球の自転のエネルギーと回転の勢い(角運動量)が、月の軌道運動へ移ります。ただしエネルギーの大部分は、潮汐摩擦で熱になります[5]。月が自力で離れているのではなく、地球の自転から勢いをもらっているのです。
では、勢いを手放した地球のほうは、どうなるのでしょうか。
4. 1日は どれくらい のびるの?
4. 地球の1日は、100年で約0.0016秒のびる
4. 1日の長さの増加 ── 100年で約1.6ミリ秒
地球の 回る いきおいが へると、地球は すこし ゆっくり 回ります。すると 1日が ほんの すこし 長く なります。
その 長さは、100ねんで 0.0016びょう ほどです[4]。1ねんでは ありません。100ねんかけて、まばたきよりも ずっと みじかい 時間です。
今の 人には 気づけません。では むかしの 1日は、どれくらい みじかかったのでしょう。
5. サンゴの 石は なにを つたえるの?
5. 4億年前のサンゴ化石は、1年を400日以上と数えた
5. 化石に残る1日の長さ ── デボン紀のサンゴ、潮汐リズマイト
サンゴの 化石には、1日ごとに できたと 考えられる 細い すじが のこって います。1年の あいだに できた すじの 数を 数えると、その 年の 日数が わかります。
4おく年 まえの サンゴを しらべた 学者は、1年が 400日より 多かった と 発表しました[6]。1年の 長さは かわらないので、そのころの 1日は 今より みじかかった と いう ことです。
ただ、4おく年も まえの ことなので、くわしい 数字には はばが あります。
6. 3.8センチを かけざんして いいの?
6. 「毎年3.8cm」を何億年分も掛け算できない理由
6. 一定でない後退速度 ── 15億年前の矛盾と皆既日食の終わり
3.8センチを 何おく年ぶんも かけざんすると、大きな 数に なります。でも それは まちがいです。
今の はやさが むかしも つづいたと すると、およそ 15おく年 まえに 月は 地球に くっついて しまいます。でも 月は それより ずっと 古い ことが わかって います。計算と あわないので、むかしは もっと ゆっくり だった はずです[7]。
月が とおざかると、空で 小さく 見えます。だから いつか 月は 太陽を かくしきれなく なり、日食で 月が 太陽を すっぽり かくす ことが なくなる のです。それは 6おく年 あとから、と いう 話も あります。でも 目安に すぎません[7]。
年3.8cmは近年の測定値です。この速さが過去もずっと続いたと仮定して逆算すると、約15億年前に地球と月がくっついてしまいます。月は少なくとも約44.6億年前からあるという証拠と合わないので、過去の速さはもっと小さかったはずです[7]。
解説では、後退の速さは一定でなく、急に進む時期と変化の小さい時期が混ざっていたのだろうと述べられています[7]。今の速さが過去より大きい理由には、わかっていない部分が残っています。
月が遠ざかると、空での見かけの大きさは小さくなります。同じ解説によれば、皆既日食は約6億2000万年後から減り始めます[7]。最後の日食がいつかについては、もっと先とする数字もあり、あくまで目安です。
現在の年約3.8cmという速さを過去へそのまま延長すると、約15億年前に地球と月が接することになり、月が少なくとも約44.6億年前からあるという証拠と矛盾する。したがって過去の後退速度は現在より小さく、しかも一定ではなく、急に進む時期と変化の小さい時期が混在したと考えられている[7]。
現在の速さが過去の平均より大きい理由(海の形や共鳴の影響など)は、今回の資料の範囲では確かめていない。わかっていない部分が残る。
月が遠ざかると見かけの大きさが小さくなり、皆既日食はやがて起きなくなる。同じ資料は、減り始めを約6億2000万年後としている[7]。最後の皆既日食の時期は文献により約6億年〜12億年と数字が異なり、速度が一定でないため目安にとどまる。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
じょうぎで 3.8センチを はかって、えんぴつで しるしを つけましょう。それが 月の 1ねんぶんです。つぎに 自分の 手の つめの 長さを 見て、そのままに して おきます。1か月 たったら、つめは どれだけ のびたか、じょうぎで くらべて みましょう。1か月の あいだは、つめを 切る 前に 長さを 見て おきましょう。
本を 読むなら
としょかんで「月」や「潮」の 本を さがして みましょう。月が 遠ざかる 話は、天文の 本に のって いる ことが あります。
今日できること
定規で3.8cmを測り、自分の爪の先に当ててみましょう。爪の長さを定規で測って書き留め、1か月後にのびた分を測り直します。月の1年分の動きと、爪の1か月分を比べると、どちらが速いか自分で確かめられます。爪を切る前に測るのがコツです。
もっと調べるなら
爪の代わりに、家の中でのびていくものを1つ選んで、定規で1か月の変化を記録してみるのもおすすめです。「1年で3.8cm」が、どれくらいゆっくりした動きなのか実感できます。
今日できること
定規で3.8cmを測り、1年分の月の動きを目で確かめる。自分の爪の長さを記録し、1か月後に測り直して、月の1年分の後退量と比べる。実際の爪ののびは人により異なるので、自分の測定値を基準にする。
比べてみるなら
爪のほかに、家の中でゆっくりのびるもの(観葉植物の新芽など)を1つ選び、同じように1か月ぶんの変化を測ると、「年3.8cm」がどれくらいの速さか体感できる。3.8cmを1か月に直すと約3mmで、自分の測定値と並べて比べられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
数字や仕組みを整理するために、次の資料を参考にしました。
- NASA JPL「The Apollo Experiment That Keeps on Giving」 https://www.jpl.nasa.gov/news/the-apollo-experiment-that-keeps-on-giving/ (月が年約3.8cm遠ざかる値、測定の方法と精度)
- NASA Eclipse「Lunar Science Findings from Laser Ranging」 https://eclipse.gsfc.nasa.gov/SEhelp/ApolloLaser.html (3.8cmの別の確認、平均距離)
- NASA「Apollo 11 Mission Overview」 https://www.nasa.gov/general/apollo-11-mission-overview/ (反射鏡の設置と構成)
- Astronomy Notes「Tides Slow Earth Rotation」 https://www.astronomynotes.com/gravappl/s10.htm (潮のふくらみが月を引く仕組み、1日ののび)
- Wikipedia「Tidal acceleration」 https://en.wikipedia.org/wiki/Tidal_acceleration (角運動量の移動、精密な後退値、化石の推定)
- Wikipedia「Rugosa」 https://en.wikipedia.org/wiki/Rugosa (ウェルズのサンゴ研究の紹介)
- Eos「The End of the Eclipse」 https://eos.org/features/the-end-of-the-eclipse (後退速度が一定でない話、皆既日食の終わり、爪のたとえ)
なおした ところ
更新履歴
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