1. いたみは、いつ ごろ でるの?
1. 「遅れて出る痛み」には名前がある
1. 遅発性筋痛(DOMS)── 定義と現れる時期
うんどうの あとに、じわじわ でて くる きんにくの いたみには、なまえが あります。「ちはつせいきんつう」と いいます。むずかしい ことばですが、「おくれて くる いたみ」と いう いみです[1]。
いたみが ひどく なるのは、うんどうの つぎの日から 二、三日 あとの ことが 多い ようです[2]。かならず つぎの日とは かぎりません。
いなずまが ひかって、あとから ごろごろと きこえる ときと、ちょっと にて います。ただし、おとの おくれは 空気の せい。きんにくつうが おくれる わけは、まだ はっきり しません。
2. 乳酸の せいでは ないの?
2. 「乳酸がたまるから」という説明の行方
2. 乳酸説の後退 ── 乳酸は約1時間で戻る
むかしは「乳酸が たまるから いたい」と、よく いわれて きました。でも いまは、この せつめいは あまり つかわれなく なって います[1]。
乳酸は、うんどうの あと 一じかん ぐらいで ふつうの りょうに もどると いう けんきゅうが あります。あとから くる いたみの りゆうには、なりにくい からです[4]。
これは 二じ しりょうに かいてある ことです。ほかの しりょうでも、たしかめて みたく なります。
3. どんな うんどうで いたく なるの?
3. 引き金は「慣れない動き」と「ブレーキをかける力」
3. 引き金 ── 慣れない運動と伸張性収縮
ふだん しない うごきを した ときに、いたく なりやすいと いわれます。とくに、うんどうの なかでも「のびながら ちからを だす」うごきが あやしいと されて います[2]。
たとえば、やまを おりる とき。あしの きんにくは、からだが すとんと おちないように、のびながら ふんばります。
ひっぱられながら ふんばる うごきを すると、きんにくの ちいさな ところに ふたんが かかると かんがえられて います。
4. きんにくが きずついて いるの?
4. 「筋肉が切れた」のとは違う、目に見えない傷
4. 損傷説の位置づけ ── 超微細構造の損傷と、未解明の仕組み
いたみの もとは、きんにくの 「とても ちいさな きず」だと かんがえる 人も います。けんびきょうで やっと みえる ぐらいの、さいぼうの なかの きずです[2]。
きんにくが ぶちっと きれる わけでは ありません。
ただ、この かんがえも ぜんぶ ただしい とは いえません。きずが なくても いたみが でる ことも あると、わかって きたからです[1]。
5. にどめは、かるく なるって ほんと?
5. 同じ運動の2回目は、痛みが軽くなる
5. 反復bout効果 ── 2回目以降に症状が軽くなる
いたく なった あと、おなじ うんどうを もう いちど すると、いたみが かるく なる ことが あります。「はんぷくbout こうか」と いいます。からだが 「なれた」のかも しれません。
この 「まもる ちから」は、はんとしぐらい つづく ことが あると ほうこく されて います[3]。
ただし、こじんで ちがいます。ずっと なにも しない 日が つづくと、うすれて いくとも いわれます[4]。
最初に痛くなる運動をしたあと、同じ運動をもう一度すると症状が軽くなることが知られています。これを「反復bout効果」と呼びます。boutは「一回の運動のまとまり」を意味する言葉です[3]。
どのくらい続くのか
この保護の効果は、運動の間が最大24週間(約半年)あいても続くことがあると報告されています。ただし、これは上限の目安で、個人差や運動の種類でも変わります[3]。二次資料では、約1年たつと検出できなくなり、最大筋力の40%というごく軽い運動でも、次の損傷に対して20〜60%の防御になるとされています[4]。ただしこれは二次資料の数字なので、「とされる」にとどめておきます。
最初に損傷を起こす運動(damage bout)のあと、同じ運動を繰り返すと症状が軽くなる。この保護効果は反復bout効果(repeated-bout effect, RBE)と呼ばれ、運動の間隔が最大24週間(約半年)あいても続くことがある、と報告されている[3]。24週は上限の目安で、個人差や運動の種類で変わる。
二次資料には、効果は約1年で検出できなくなること、最大筋力の40%というごく軽い最初の運動でも、次の損傷に対して20〜60%の防御になることが記されている。ただしこれは英語版Wikipediaが引用する総説(Nosaka 2008)の内容で、原文は有料のため確認していない[4]。数字は断定せず、「〜とされる」程度に扱う。
6. いたみの ひみつは、どこまで わかった?
6. 神経の研究が近づいている「なぜ痛いのか」
6. 神経側の研究 ── 痛覚受容器の感作とイオンチャネル
さいきんは、きんにくを うごかす「しんけい」の ほうから しらべる けんきゅうも すすんで います。いたみを かんじる しくみの、いちぶが みえて きました[1]。
ただし、これは どうぶつを つかった けんきゅうです。人でも おなじかは、まだ いえません。
「なぜ、あとから いたく なるの?」の こたえは、まだ ぜんぶ みつかって いません。
近年は、筋肉痛のモデルにした動物を使った研究から、痛みを感じ取るセンサー(痛覚受容器)の感度が神経の栄養になる物質の働きで上がることや、痛みに関わるイオンの通り道(イオンチャネル)の性質が変わることなど、神経の仕組みの一端が明らかになりつつあります[1]。
ただし、これは動物実験の知見です。人でも同じことが起きていると決まったわけではなく、「なぜ遅れて痛むのか」の決定的な答えも、まだありません[1]。
近年、DOMSモデル動物を用いた研究から、神経栄養因子による痛覚受容器の感作や、痛み関連イオンチャネルのモーダルシフトを介した神経化学的機構の一端が明らかになりつつある[1]。ただし動物実験の知見であり、ヒトで同じ機構が働くと断定はできない。
また、なぜ「遅れて」痛みが出るのかを決定的に説明する資料は、今回参照した範囲には見当たらない。損傷説・乳酸説の後退・神経機構と、説明は少しずつ更新されている段階と読める。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
いま できること
ふだん しない うごきを した 日の あと、どこが いたく なるか、いつ いたく なるか、なんにち つづくかを、おうちの 人と はなして みましょう。むりに うんどうを する ひつようは ありません。
もし いたみが とても つよい、ながく つづく ときは、おうちの 人や おいしゃさんに はなして ください。
しりょうを よむなら
としょかんで「きんにくの ひみつ」や「うんどう」の ほんを さがして みましょう。
今日できること
山道や階段をたくさん使った日のあと、痛みが出た場所と、出始めた時間、いつ軽くなったかを、日記に一言書いてみましょう。「2日目のほうが痛い」など、この記事の話と合うか、合わないか、自分で見比べられます。痛みを試すための運動はしないでください。
強い痛みが続くときなど、気になることは家の人や医師に相談してください。
資料を読む
図書館では「運動生理学」「スポーツ科学」の棚に、筋肉の仕組みの本があります。この記事は入り口にすぎません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
遅発性筋痛(DOMS)の説明は、学会誌の要旨、総説、実験論文、二次資料を突き合わせている。二次資料の数字は「〜とされる」にとどめた。
- 田口徹「遅発性筋痛(いわゆる運動後の筋肉痛)はどこまでわかったか」『医学のあゆみ』289(10), 2024 https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.32118/ayu289100740 (DOMSの定義、乳酸説の後退、機序未解明、神経機構の研究)
- Hotfiel T et al. 2018, Sportverletz Sportschaden 32(4):243-250 https://cris.fau.de/publications/212295031 (伸張性・不慣れな運動、超微細な損傷、ピーク時期)
- Connolly DAJ et al. 2002, Journal of Sports Science and Medicine 1(3):80 https://jssm.org/jssm-01-80.xml (反復bout効果、階段昇降実験での痛みのピーク)
- Wikipedia「Delayed onset muscle soreness」 https://en.wikipedia.org/wiki/Delayed_onset_muscle_soreness (二次資料。乳酸の値が戻る時間、反復bout効果の持続、短縮性運動)
なおした ところ
更新履歴
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