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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

かがくの ノーベルしょうは、どうして 3人までなの? ── ゆいごんには 書いて ないのに

科学のノーベル賞はなぜ「3人まで」なのか ── 遺言に書かれていない決まりと、千人のチーム

科学のノーベル賞はなぜ3人までなのか ── 遺言ではなく財団規程にある規則と、大規模共同研究とのずれ

分野:歴史・文化

ぶつり・かがく・いがくの ノーベルしょうは、1つの しょうを 3人までしか もらえません。ところが、この 「3人まで」は、ノーベルさんの ゆいごんには 書いて ないと いわれて います。

では、この 上げんは どこに 書いて あるのでしょう。いつ できたのかは、しりょうに よって ちがって います。せんにん いじょうの チームが みつけた ことでも 3人しか えらべない ことに ついて、いま ある 話しあいも しょうかいします。

物理学・化学・医学のノーベル賞は、1つの賞を3人までしか受け取れません。ところが、この「3人まで」は、ノーベルが残した遺言には書かれていないと説明されています[1]。

では、この上限はどの規程にあるのでしょうか。いつ加わったのかは、資料によって年が食い違っています。千人を超える研究者のチームが見つけた成果でも、賞を受け取れるのは3人です。このメモを読むと、決まりのありかと、いま研究者のあいだで起きている議論が分かります。

ノーベル賞の物理学・化学・医学の各賞には、受賞者は3人までという上限がある。しかしこの上限は、ノーベルの遺言ではなく、ノーベル財団の規程にある決まりで、遺言は人数の上限に触れていない[1][2]。

ではその上限はどの規程にあり、導入時期について資料はどう食い違うのか。2017年の物理学賞は千人を超える共同研究から3人が選ばれた[5]。このメモは、遺言・規程・公式の解説・報道をつき合わせ、上限の出どころと、年が割れている点、現代の科学とのずれをめぐる議論が分かるようにまとめる。

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1. 「3人まで」は、どこに 書いて あるの?

1. 「3人まで」が書かれていたのは、遺言ではなかった

1. 遺言に上限はなく、規程に上限がある

ノーベルさんは、1895ねんに ゆいごんを のこしました。おかねの りしを、ぶつり・かがく・いがく・ぶんがく・へいわの 5つの ぶんやに わけて、それぞれ 「1人」に おくる、という かたちで 書かれて います[4]。

「3人まで」とは、書いて ありません[1]。

3人までと きめて いるのは、ノーベルざいだんの きまりです。2人か 3人で した しごとは いっしょに おくる。でも、3人より おおくには わけては いけない、という きまりです[2]。

ノーベルが遺言を書いたのは1895年です。遺産の利子を5つに等分して、物理学・化学・生理学医学・文学・平和の各部門に、それぞれ「1人」の受賞者へ、という形で書かれています[4]。人数の上限には触れていません[1]。

上限を定めているのは、ノーベル財団の規程です。2人または3人で成し遂げた仕事は、共同で授与する。ただし、賞金を3人より多くの人に分けてはならない、という内容です[2]。また、賞金を、それぞれ賞に値する2つの仕事に半分ずつ分けることもできます[2]。

遺言は、だれが選ぶかも決めていました。物理と化学はスウェーデン王立科学アカデミー、医学はカロリンスカ研究所、文学はスウェーデン・アカデミー、平和はノルウェー議会が選ぶ5人の委員会です。国籍は考えず、いちばんふさわしい人に、とも書かれています[4]。

この決まりは、いつ加わったのか

ここで、資料が食い違います。ラスカー財団は「1968年に財団が正式に最大3人と決めた」と書きます[1]。ノーベル賞の公式の解説は、財団と授賞機関の規程を具体化するなかで、3人までの規則が加えられたと書き、年は挙げていません[3]。サイエンティフィック・アメリカンの記事は1898年としていますが、根拠は書かれていません[2]。

このメモでは、年は決めません。「遺言ではなく、あとから財団の規程にあった決まり」までが、資料で確かめられることです。なぜ3人なのかを、当時の公式の理由として説明した資料は、見つけられていません。

ノーベルの遺言(1895年11月27日)は、遺産の利子を5等分し、物理学・化学・生理学医学・文学・平和の各部門に、それぞれ「1人(the person)」の形で贈るよう書いている。人数の上限には言及がない[4][1]。遺言は、物理・化学の選考をスウェーデン王立科学アカデミー、医学をカロリンスカ研究所、文学をスウェーデン・アカデミー、平和をノルウェー議会が選ぶ5人の委員会に委ね、国籍を考慮せず最もふさわしい人に、と定める[4]。

では上限はどこにあるのか。ノーベル財団規程(第4条)は、2人または3人で成し遂げた仕事には共同で授与するとし、いかなる場合も賞金を3人より多くに分けてはならないと定める。賞金を、それぞれ賞に値する2つの仕事に等分してもよい[2]。つまり遺言の枠の中に、財団があとから運用のルールを置いた形だ。

この規程の3人上限がいつ加わったかは、出典が割れる。ラスカー財団は「1968年にノーベル財団が正式に最大3人と決めた」とし[1]、ノーベル賞公式の医学部門解説は、財団と授賞機関の規程を具体化する過程で3人までの規則が加わったと述べ、年は明記しない(財団設立の規程は1900年)[3]。サイエンティフィック・アメリカンは1898年とするが根拠は不明だ[2]。導入時期は年を断定せず、複数の説があると読むのが妥当だ。

2. 3人で わけると、どう なるの?

2. 3人で分けると、賞はどう分かれるのか

2. 配分の決まりと、共同受賞が増えた50年

ノーベルしょうの はじめの 50ねんほどは、ほとんどが 1人か 2人に おくられました[1]。

3人で わける ときは、3人に 3ぶんの 1ずつ。または、1人が 半分で、のこりの 2人が 4ぶんの 1ずつです[3]。

いがくしょうで 数えると、1901ねんから 1950ねんまでの もらった 人は 59人でした。1951ねんから 2000ねんまでは 113人です[3]。みんなで やる けんきゅうが ふえた ことなど、いくつかの わけが あったと せつめい されて います。

最初の約50年(1901〜1950年)、賞はほとんど1人か2人に贈られました[1]。医学賞の受賞者は、1901〜1950年で59人、1951〜2000年では113人と、ほぼ倍になっています[3]。

3人で分けるときの配分は、3人が3分の1ずつ。または、1人が2分の1、残り2人が4分の1ずつです[3]。上限が決めているのは受賞者の人数です。賞金の分け方は、受賞者の人数や選考結果によって異なります。物理・化学・医学の賞では、その後の50年で約3分の1が3人の共同受賞になったといいます[1]。

チームで進める研究が増えたことなど、いくつかの要因が背景にあったと説明されています。ただ、それが「なぜ3人まで」の答えになるわけではありません。

初期のノーベル賞は、1901〜1950年ごろはほとんど1人か2人に贈られ、例外は少なかった[1]。ところが医学賞の受賞者は、1901〜1950年で59人、1951〜2000年で113人と、後半の50年に大きく増えた[3]。物理・化学・医学の賞の約3分の1が、その後の50年で3人の共同受賞になった[1]。

3人で分けるときは、3人に3分の1ずつ、または1人に2分の1、残り2人に4分の1ずつという配分になる[3]。上限は人数にかかり、割合は受賞者の数で変わる点に注意したい。

3. せんにんの チームで みつけたのに、3人?

3. 千人のチームの成果に、なぜ3人の名前が並ぶのか

3. 2017年の物理学賞 ── 千人超の共同研究と3人の受賞

2017ねんの ぶつりがくしょうは、「じゅうりょくは」を みつけた しごとに おくられました。じゅうりょくはは、おもい ほしなどが おおきく うごいた ときに うまれ、なみのように ひろがって くる ものです。

この しごとを した LIGO(ライゴ)は、20か国 いじょう、せんにんを こえる けんきゅうしゃの チームです[5]。

もらったのは、ワイスさん、バリッシュさん、ソーンさんの 3人でした。しょうの はんぶんを ワイスさん、のこりの はんぶんを ほか 2人が わけました[5]。

2017年の物理学賞は、LIGOによる重力波の観測に贈られました。LIGOは20か国以上、千人を超える研究者が加わる共同プロジェクトです[5]。

受賞したのは、ライナー・ワイス、バリー・バリッシュ、キップ・ソーンの3人です。賞の2分の1をワイス、残りの2分の1をバリッシュとソーンが共同で受けました[5]。

規程では、受賞者は3人までです。この差が、次の章の議論につながります。

3人上限と現代の研究のずれが、いちばん目に見える形で出たのが、2017年の物理学賞だ。重力波の直接観測に対する受賞で、賞の2分の1がライナー・ワイス、残り2分の1がバリー・バリッシュとキップ・ソーンに共同で贈られた[5]。

ところが、この観測を担ったLIGOは、20か国以上、千人を超える研究者の共同プロジェクトである[5]。規程は「3人より多くに分けてはならない」と定めるため[2]、千人規模の成果でも受賞できるのは最大3人になる。

4. 2人だけが えらばれた わけは?

4. 「5000人が名乗るのは望まない」── 委員長の説明

4. 2013年の物理学賞と、委員長の説明が示すもの

2013ねんの ぶつりがくしょうは、ヒッグスさんと アングレールさんの 2人でした。ヒッグスりゅうしを みつけた のは、ATLAS(アトラス)と CMS(シーエムエス)という 2つの じっけんで、あわせて 数せんにんの ひとたちです[6]。

この ときの いいんちょうは、上げんを まもる わけを 「5000人もが ノーベルしょうを もらった 人だと 名のって ほしく ない」と 話したと つたえられて います[6]。

これは いいんちょう 1人の 話で、きまりの 公しきな わけでは ありません。

2013年の物理学賞は、ピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレールの2人でした。ヒッグス粒子を検出したのは、LHCの2つの実験(ATLASとCMS)に参加した数千人です。1964年の理論に貢献した人は6人いたと伝えられていますが、選考の理由は2063年まで公開されません[6]。なぜ2人だったのかは、いまは推測しかできません。

このときのノーベル物理学委員会の委員長、ラース・ブリンクは、上限を守る理由を「5000人もがノーベル賞受賞者を名乗ってほしくない」と説明したと、フィジックス・ワールド誌は伝えています[6]。ただしこれは委員長個人の発言で、規程の公式な理由ではありません。

2013年の物理学賞は、ピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレールの2人だった。ヒッグス粒子は、LHCの2つの実験(ATLASとCMS)に参加した数千人が検出したものだ。1964年の理論に貢献したのは6人いたとされるが、選考理由は2063年まで非公開となっている[6]。なぜ2人だったのかは、推測で書けない。

では、上限は何のために守られているのか。当時のノーベル物理学委員会委員長ラース・ブリンク(ぶりんく)は、「5000人もがノーベル賞受賞者を名乗ってほしくない」と述べたと、フィジックス・ワールド誌は伝える[6]。これは委員長個人の発言であって、規程の公式な理由として書かれたものではない点に注意が要る。

5. 「3人まで」は、これから どう なるの?

5. 団体がもらえる平和賞と、変わらない科学の3人

5. 平和賞との違いと、上限をめぐる議論のいま

ノーベルへいわしょうだけは、だんたいに おくることが できます。3人より おおい 人の あつまりでも もらえます。2017ねんの ICAN(アイキャン)や、2020ねんの こくれん せかいしょくりょう けいかく(WFP)が れいです[7]。

ぶつり・かがく・いがくの しょうは、だんたいには おくれません[7]。

ぶつりがくしゃの キーティングさんは、3人までの きまりが 「1〜2人の てんさいだけが せいかを だす」という 見かたを つよく してしまう、と ひはんしました[6]。かがくしょうの いいんかいの ひとは、へんこうの よていは ない、と 話しました。ただし、これは そのときの 話で、いまは どうなのか わかりません[6]。

みなさんは、どう 思いますか。

ノーベル賞のうち、団体(機関)に授与できるのは平和賞だけです。3人を超える人の集まりでも受賞でき、2017年のICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)や、2020年の国連世界食糧計画(WFP)が例です。科学の3賞は、個人にしか贈られません[7]。

大規模な共同研究が増えた今の科学には、3人上限が合わないという声が、研究者から出ています。物理学者のブライアン・キーティングは、上限が「1〜2人の天才だけが成果を出す」という見方を強めてしまう、と批判しました[6]。一方、化学賞の委員会の幹事は、変更の予定はないと述べています。ただしこれは発言当時のことで、いまの状況は確認できていません[6]。

3人上限は科学の3賞に共通するが、平和賞だけは事情が異なる。平和賞は団体(機関)に授与でき、3人を超える人の集まりでも受賞できる。例は、2017年のICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)や、2020年の国連世界食糧計画(WFP)だ。科学の3賞は個人にのみ授与される[7]。

では、大人数の研究が増えた今も、この上限は妥当なのか。研究者からは、現代の科学に合わないという声が出ている。物理学者ブライアン・キーティングは、上限が「支えるネットワークなしに1〜2人の天才だけが成果を出す」という見方を強めると批判した[6]。化学賞委員会の幹事は変更の予定はないと述べたが、それは発言当時のことで、現在の方針は今回の資料では確認できていない[6]。

6. もし じぶんが いいんなら、どう する?

6. もし自分が選ぶ側なら

6. 出口 ── 自分で決めるとしたら、と原典の探し方

みんなで やりとげた ことを ひとつ 思い出して みましょう。うんどうかいの ぜんいんの かつやく、がっしょうコンクール、クラスの 作品などです。

その ときに 「ひとりだけ ごほうびを あげる」と したら、だれに、どうやって きめますか。おうちの 人と、「こまる ところ」を 話して みて ください。

クラスの発表会や文化祭など、みんなで作り上げたものを思い出してみましょう。その成果に「賞を3人まで」と決めるとしたら、どんな決め方があるでしょうか。3人に決められない理由が出てきたら、それがノーベル賞をめぐる議論と同じところです。

もっと知りたくなったら、ノーベル賞の公式サイト[3]や遺言の紹介ページ[4]で、原文が読めます。

自分が選考委員なら、千人の共同研究の賞をどう決めるか。3人に絞る基準、団体に授与する道、規程を変える手続きのどれが妥当かを、この記事の資料(規程の要約[2]、遺言[4]、フィジックス・ワールドの記事[6])から根拠を集めて考えてみよう。

出典は下に挙げた。上限の導入年は資料で割れているので、なぜ資料ごとに年が違うのか、どんな記録があれば決められるのかを考えてみると、調べ方の練習になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:ノーベル賞公式サイトの遺言・解説・プレスリリース、ラスカー財団、サイエンティフィック・アメリカン、フィジックス・ワールドを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。ノーベル賞公式サイトは、今回は検索結果の抜粋で内容を確かめた部分がある。

  1. Lasker Foundation「The rule of three for prizes in science and the bold triptychs of Francis Bacon」。https://laskerfoundation.org/the-rule-of-three-for-prizes-in-science-and-the-bold-triptychs-of-francis-bacon/ (遺言に人数の上限がないこと、1968年説、初期の受賞者数について)
  2. Scientific American「Why chemistry, physics and medicine Nobel Prizes can be shared」。https://www.scientificamerican.com/article/why-chemistry-physics-and-medicine-nobel-prizes-can-be-shared-and-how-that/ (財団規程の共同授与と3人上限の内容、1898年説について)
  3. NobelPrize.org「The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1901-2000」。https://www.nobelprize.org/prizes/themes/the-nobel-prize-in-physiology-or-medicine-1901-2000/ (3人で分ける配分、受賞者数の変化、規則が加わった経緯について)
  4. NobelPrize.org「Alfred Nobel's will」。https://www.nobelprize.org/alfred-nobel/alfred-nobels-will/ (遺言の内容と選考機関について)
  5. NobelPrize.org「The Nobel Prize in Physics 2017 (Press release)」。https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2017/press-release/ (2017年物理学賞の配分とLIGOの規模について)
  6. Physics World「Nobel's three-winner limit does not reflect modern science」。https://physicsworld.com/a/nobels-three-winner-limit-does-not-reflect-modern-science/ (2013年の物理学賞、委員長の発言、上限をめぐる議論について)
  7. NobelPrize.org「Nobel Prize facts」。https://www.nobelprize.org/prizes/facts/nobel-prize-facts/ /「Nobel Prize awarded organisations」。https://www.nobelprize.org/prizes/lists/nobel-prize-awarded-organizations/ (平和賞だけが団体に授与できる点と、その例について)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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