1. 「3人まで」は、どこに 書いて あるの?
1. 「3人まで」が書かれていたのは、遺言ではなかった
1. 遺言に上限はなく、規程に上限がある
ノーベルさんは、1895ねんに ゆいごんを のこしました。おかねの りしを、ぶつり・かがく・いがく・ぶんがく・へいわの 5つの ぶんやに わけて、それぞれ 「1人」に おくる、という かたちで 書かれて います[4]。
「3人まで」とは、書いて ありません[1]。
3人までと きめて いるのは、ノーベルざいだんの きまりです。2人か 3人で した しごとは いっしょに おくる。でも、3人より おおくには わけては いけない、という きまりです[2]。
ノーベルが遺言を書いたのは1895年です。遺産の利子を5つに等分して、物理学・化学・生理学医学・文学・平和の各部門に、それぞれ「1人」の受賞者へ、という形で書かれています[4]。人数の上限には触れていません[1]。
上限を定めているのは、ノーベル財団の規程です。2人または3人で成し遂げた仕事は、共同で授与する。ただし、賞金を3人より多くの人に分けてはならない、という内容です[2]。また、賞金を、それぞれ賞に値する2つの仕事に半分ずつ分けることもできます[2]。
遺言は、だれが選ぶかも決めていました。物理と化学はスウェーデン王立科学アカデミー、医学はカロリンスカ研究所、文学はスウェーデン・アカデミー、平和はノルウェー議会が選ぶ5人の委員会です。国籍は考えず、いちばんふさわしい人に、とも書かれています[4]。
この決まりは、いつ加わったのか
ここで、資料が食い違います。ラスカー財団は「1968年に財団が正式に最大3人と決めた」と書きます[1]。ノーベル賞の公式の解説は、財団と授賞機関の規程を具体化するなかで、3人までの規則が加えられたと書き、年は挙げていません[3]。サイエンティフィック・アメリカンの記事は1898年としていますが、根拠は書かれていません[2]。
このメモでは、年は決めません。「遺言ではなく、あとから財団の規程にあった決まり」までが、資料で確かめられることです。なぜ3人なのかを、当時の公式の理由として説明した資料は、見つけられていません。
ノーベルの遺言(1895年11月27日)は、遺産の利子を5等分し、物理学・化学・生理学医学・文学・平和の各部門に、それぞれ「1人(the person)」の形で贈るよう書いている。人数の上限には言及がない[4][1]。遺言は、物理・化学の選考をスウェーデン王立科学アカデミー、医学をカロリンスカ研究所、文学をスウェーデン・アカデミー、平和をノルウェー議会が選ぶ5人の委員会に委ね、国籍を考慮せず最もふさわしい人に、と定める[4]。
では上限はどこにあるのか。ノーベル財団規程(第4条)は、2人または3人で成し遂げた仕事には共同で授与するとし、いかなる場合も賞金を3人より多くに分けてはならないと定める。賞金を、それぞれ賞に値する2つの仕事に等分してもよい[2]。つまり遺言の枠の中に、財団があとから運用のルールを置いた形だ。
この規程の3人上限がいつ加わったかは、出典が割れる。ラスカー財団は「1968年にノーベル財団が正式に最大3人と決めた」とし[1]、ノーベル賞公式の医学部門解説は、財団と授賞機関の規程を具体化する過程で3人までの規則が加わったと述べ、年は明記しない(財団設立の規程は1900年)[3]。サイエンティフィック・アメリカンは1898年とするが根拠は不明だ[2]。導入時期は年を断定せず、複数の説があると読むのが妥当だ。
2. 3人で わけると、どう なるの?
2. 3人で分けると、賞はどう分かれるのか
2. 配分の決まりと、共同受賞が増えた50年
ノーベルしょうの はじめの 50ねんほどは、ほとんどが 1人か 2人に おくられました[1]。
3人で わける ときは、3人に 3ぶんの 1ずつ。または、1人が 半分で、のこりの 2人が 4ぶんの 1ずつです[3]。
いがくしょうで 数えると、1901ねんから 1950ねんまでの もらった 人は 59人でした。1951ねんから 2000ねんまでは 113人です[3]。みんなで やる けんきゅうが ふえた ことなど、いくつかの わけが あったと せつめい されて います。
最初の約50年(1901〜1950年)、賞はほとんど1人か2人に贈られました[1]。医学賞の受賞者は、1901〜1950年で59人、1951〜2000年では113人と、ほぼ倍になっています[3]。
3人で分けるときの配分は、3人が3分の1ずつ。または、1人が2分の1、残り2人が4分の1ずつです[3]。上限が決めているのは受賞者の人数です。賞金の分け方は、受賞者の人数や選考結果によって異なります。物理・化学・医学の賞では、その後の50年で約3分の1が3人の共同受賞になったといいます[1]。
チームで進める研究が増えたことなど、いくつかの要因が背景にあったと説明されています。ただ、それが「なぜ3人まで」の答えになるわけではありません。
3. せんにんの チームで みつけたのに、3人?
3. 千人のチームの成果に、なぜ3人の名前が並ぶのか
3. 2017年の物理学賞 ── 千人超の共同研究と3人の受賞
2017ねんの ぶつりがくしょうは、「じゅうりょくは」を みつけた しごとに おくられました。じゅうりょくはは、おもい ほしなどが おおきく うごいた ときに うまれ、なみのように ひろがって くる ものです。
この しごとを した LIGO(ライゴ)は、20か国 いじょう、せんにんを こえる けんきゅうしゃの チームです[5]。
もらったのは、ワイスさん、バリッシュさん、ソーンさんの 3人でした。しょうの はんぶんを ワイスさん、のこりの はんぶんを ほか 2人が わけました[5]。
4. 2人だけが えらばれた わけは?
4. 「5000人が名乗るのは望まない」── 委員長の説明
4. 2013年の物理学賞と、委員長の説明が示すもの
2013ねんの ぶつりがくしょうは、ヒッグスさんと アングレールさんの 2人でした。ヒッグスりゅうしを みつけた のは、ATLAS(アトラス)と CMS(シーエムエス)という 2つの じっけんで、あわせて 数せんにんの ひとたちです[6]。
この ときの いいんちょうは、上げんを まもる わけを 「5000人もが ノーベルしょうを もらった 人だと 名のって ほしく ない」と 話したと つたえられて います[6]。
これは いいんちょう 1人の 話で、きまりの 公しきな わけでは ありません。
2013年の物理学賞は、ピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレールの2人でした。ヒッグス粒子を検出したのは、LHCの2つの実験(ATLASとCMS)に参加した数千人です。1964年の理論に貢献した人は6人いたと伝えられていますが、選考の理由は2063年まで公開されません[6]。なぜ2人だったのかは、いまは推測しかできません。
このときのノーベル物理学委員会の委員長、ラース・ブリンクは、上限を守る理由を「5000人もがノーベル賞受賞者を名乗ってほしくない」と説明したと、フィジックス・ワールド誌は伝えています[6]。ただしこれは委員長個人の発言で、規程の公式な理由ではありません。
2013年の物理学賞は、ピーター・ヒッグスとフランソワ・アングレールの2人だった。ヒッグス粒子は、LHCの2つの実験(ATLASとCMS)に参加した数千人が検出したものだ。1964年の理論に貢献したのは6人いたとされるが、選考理由は2063年まで非公開となっている[6]。なぜ2人だったのかは、推測で書けない。
では、上限は何のために守られているのか。当時のノーベル物理学委員会委員長ラース・ブリンク(ぶりんく)は、「5000人もがノーベル賞受賞者を名乗ってほしくない」と述べたと、フィジックス・ワールド誌は伝える[6]。これは委員長個人の発言であって、規程の公式な理由として書かれたものではない点に注意が要る。
5. 「3人まで」は、これから どう なるの?
5. 団体がもらえる平和賞と、変わらない科学の3人
5. 平和賞との違いと、上限をめぐる議論のいま
ノーベルへいわしょうだけは、だんたいに おくることが できます。3人より おおい 人の あつまりでも もらえます。2017ねんの ICAN(アイキャン)や、2020ねんの こくれん せかいしょくりょう けいかく(WFP)が れいです[7]。
ぶつり・かがく・いがくの しょうは、だんたいには おくれません[7]。
ぶつりがくしゃの キーティングさんは、3人までの きまりが 「1〜2人の てんさいだけが せいかを だす」という 見かたを つよく してしまう、と ひはんしました[6]。かがくしょうの いいんかいの ひとは、へんこうの よていは ない、と 話しました。ただし、これは そのときの 話で、いまは どうなのか わかりません[6]。
みなさんは、どう 思いますか。
ノーベル賞のうち、団体(機関)に授与できるのは平和賞だけです。3人を超える人の集まりでも受賞でき、2017年のICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)や、2020年の国連世界食糧計画(WFP)が例です。科学の3賞は、個人にしか贈られません[7]。
大規模な共同研究が増えた今の科学には、3人上限が合わないという声が、研究者から出ています。物理学者のブライアン・キーティングは、上限が「1〜2人の天才だけが成果を出す」という見方を強めてしまう、と批判しました[6]。一方、化学賞の委員会の幹事は、変更の予定はないと述べています。ただしこれは発言当時のことで、いまの状況は確認できていません[6]。
3人上限は科学の3賞に共通するが、平和賞だけは事情が異なる。平和賞は団体(機関)に授与でき、3人を超える人の集まりでも受賞できる。例は、2017年のICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)や、2020年の国連世界食糧計画(WFP)だ。科学の3賞は個人にのみ授与される[7]。
では、大人数の研究が増えた今も、この上限は妥当なのか。研究者からは、現代の科学に合わないという声が出ている。物理学者ブライアン・キーティングは、上限が「支えるネットワークなしに1〜2人の天才だけが成果を出す」という見方を強めると批判した[6]。化学賞委員会の幹事は変更の予定はないと述べたが、それは発言当時のことで、現在の方針は今回の資料では確認できていない[6]。
6. もし じぶんが いいんなら、どう する?
6. もし自分が選ぶ側なら
6. 出口 ── 自分で決めるとしたら、と原典の探し方
みんなで やりとげた ことを ひとつ 思い出して みましょう。うんどうかいの ぜんいんの かつやく、がっしょうコンクール、クラスの 作品などです。
その ときに 「ひとりだけ ごほうびを あげる」と したら、だれに、どうやって きめますか。おうちの 人と、「こまる ところ」を 話して みて ください。
クラスの発表会や文化祭など、みんなで作り上げたものを思い出してみましょう。その成果に「賞を3人まで」と決めるとしたら、どんな決め方があるでしょうか。3人に決められない理由が出てきたら、それがノーベル賞をめぐる議論と同じところです。
自分が選考委員なら、千人の共同研究の賞をどう決めるか。3人に絞る基準、団体に授与する道、規程を変える手続きのどれが妥当かを、この記事の資料(規程の要約[2]、遺言[4]、フィジックス・ワールドの記事[6])から根拠を集めて考えてみよう。
出典は下に挙げた。上限の導入年は資料で割れているので、なぜ資料ごとに年が違うのか、どんな記録があれば決められるのかを考えてみると、調べ方の練習になる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:ノーベル賞公式サイトの遺言・解説・プレスリリース、ラスカー財団、サイエンティフィック・アメリカン、フィジックス・ワールドを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。ノーベル賞公式サイトは、今回は検索結果の抜粋で内容を確かめた部分がある。
- Lasker Foundation「The rule of three for prizes in science and the bold triptychs of Francis Bacon」。https://laskerfoundation.org/the-rule-of-three-for-prizes-in-science-and-the-bold-triptychs-of-francis-bacon/ (遺言に人数の上限がないこと、1968年説、初期の受賞者数について)
- Scientific American「Why chemistry, physics and medicine Nobel Prizes can be shared」。https://www.scientificamerican.com/article/why-chemistry-physics-and-medicine-nobel-prizes-can-be-shared-and-how-that/ (財団規程の共同授与と3人上限の内容、1898年説について)
- NobelPrize.org「The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1901-2000」。https://www.nobelprize.org/prizes/themes/the-nobel-prize-in-physiology-or-medicine-1901-2000/ (3人で分ける配分、受賞者数の変化、規則が加わった経緯について)
- NobelPrize.org「Alfred Nobel's will」。https://www.nobelprize.org/alfred-nobel/alfred-nobels-will/ (遺言の内容と選考機関について)
- NobelPrize.org「The Nobel Prize in Physics 2017 (Press release)」。https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2017/press-release/ (2017年物理学賞の配分とLIGOの規模について)
- Physics World「Nobel's three-winner limit does not reflect modern science」。https://physicsworld.com/a/nobels-three-winner-limit-does-not-reflect-modern-science/ (2013年の物理学賞、委員長の発言、上限をめぐる議論について)
- NobelPrize.org「Nobel Prize facts」。https://www.nobelprize.org/prizes/facts/nobel-prize-facts/ /「Nobel Prize awarded organisations」。https://www.nobelprize.org/prizes/lists/nobel-prize-awarded-organizations/ (平和賞だけが団体に授与できる点と、その例について)
なおした ところ
更新履歴
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