うちゅうの ふくらみかたが、はやく なって いる

暗黒エネルギー ── 宇宙の膨張が速くなっている話

暗黒エネルギー ── 宇宙の膨張が速くなっている話

分野:宇宙・天文

うちゅうは、いまも ふくらみつづけて います。じゅうりょくが あるのだから、その ふくらむ スピードは、だんだん おそく なって いる はずだと、みんな おもって いました。

でも、1998年に なって、ぎゃくの ことが わかりました。 ふくらむ スピードは、おそく なるどころか、はやく なって いたのです。この きじでは、その りゆうを さぐって いきます。

宇宙は、いまも膨張しつづけています。重力があるのだから、その膨張のスピードは、だんだんおそくなっているはずだと、みんな思っていました。

でも、1998年になって、逆のことがわかりました。膨張のスピードは、おそくなるどころか、速くなっていたのです。この記事では、その理由をさぐっていきます。

宇宙は膨張しているが、重力があるのだから、その膨張はだんだん遅くなっているはずだ。1998年、2つの独立したチームが、遠くの超新星を使ってこの「減速」を測ろうとしたところ、まったく逆の結果が出た。宇宙の膨張は、遅くなるどころか、速くなっていたのだ。

アインシュタインが「人生最大のしっぱい」と呼んだ考えが、80年後に思わぬ形で戻ってきた、暗黒エネルギーをめぐる発見の歴史をたどる。

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1. 「人生さいだいの しっぱい」

1. 「人生最大のしっぱい」

1. アインシュタインの宇宙項と、のちの後悔

アインシュタインは、じぶんの りろんを つかって、うちゅう ぜんたいの かたちを かんがえようと しました。それは 1917年の ことでした。でも、けいさんの上では、うちゅうは じゅうりょくで つぶれて しまう はずでした[2]

そこで アインシュタインは、けいさんに「うちゅうこう」と いう、じゅうりょくを おしかえす ちからを もつ、あたらしい こうもくを つけくわえました。これで、うちゅうは つぶれも ふくらみも しない、じっと した ものに なりました [2]

でも その後、うちゅうは じっさいには ふくらんで いる ことが わかりました。そこで アインシュタインは、この「うちゅうこう」を、「じぶんの 人生で さいだいの しっぱいだった」と 言って、とりさげたと つたえられて います [2]

アインシュタインは、自分の理論を使って、宇宙全体のかたちを考えようとしました。それは1917年のことでした。でも、計算の上では、宇宙は重力でつぶれてしまうはずでした[2]

とりさげられた「宇宙項」

そこでアインシュタインは、計算に「宇宙項」という、重力をおしかえす力を持つ、新しい項目をつけくわえました。これで、宇宙はつぶれもふくらみもしない、じっとしたものになりました[2]

でもその後、宇宙は実際にはふくらんでいることがわかりました。そこでアインシュタインは、この「宇宙項」を、「自分の人生で最大のしっぱいだった」と言って、とりさげたと伝えられています[2]

一般相対性理論の方程式を宇宙全体に適用しようとしたアインシュタインは、1917年、ある問題に直面した。方程式をそのまま解くと、物質どうしの重力によって宇宙は収縮してしまい、当時信じられていた「静的な宇宙」を導けなかったのである[2]

とりさげられた「宇宙項」

そこで彼は、方程式に「宇宙項(cosmological constant、記号 λ)」という項を人為的に追加した。これは、重力に逆らって空間を押し広げる方向にはたらく、一種の反発力(斥力)を表す項であり、この力と重力をつり合わせることで、宇宙を静止させて安定させた[2]

しかし1929年、エドウィン・ハッブルの観測により、宇宙が実際には膨張していることが判明すると、宇宙項を導入する理由は失われた。物理学者ジョージ・ガモフの回想によれば、アインシュタインはのちにこの宇宙項について、「自分が生涯で犯した最大の過ち」と語ったという。この発言の真偽は長く議論されてきたが、別記事で扱った物理学者ジョン・ホイーラーを含む複数の証言者が、プリンストンで同様の発言を聞いたと証言しており、実際に語られた可能性が高いとされている[2]

2. とおくの ばくはつを ものさしに する

2. 遠くの爆発をものさしにする

2. Ia型超新星という「標準光源」

うちゅうの ふくらむ スピードが かわって きたかを しらべるには、とても とおい てんたいまでの きょりを、せいかくに はからなければ なりません。

そこで つかわれたのが、「アイエーがた ちょうしんせい」と いう、ある しゅるいの ほしの ばくはつです。この ばくはつは、どれも よく にた あかるさで おこる ことが わかって いました。[1] おなじ あかるさの でんきゅう なら、とおくに ある ものほど、 くらく 見えます。この しくみを つかって、きょりを はかったのです。

宇宙の膨張するスピードがかわってきたかを調べるには、とても遠い天体までのきょりを、正確にはからなければなりません。

おなじ明るさで光る爆発

そこで使われたのが、「Ia型超新星」という、ある種類の星の爆発です。この爆発は、どれもよくにた明るさでおこることがわかっていました。[1]おなじ明るさの電球なら、遠くにあるものほど、暗く見えます。このしくみを使って、きょりをはかったのです。

宇宙膨張の速さの変化を測定するには、非常に遠方の天体までの距離を精密に決定する必要がある。

おなじ明るさで光る爆発

この目的に使われたのが、「Ia型超新星」という、ある種類の星の爆発だった。その絶対的な明るさ(放出するエネルギーの量)は似ていることが知られており、距離の測定に使える「標準光源」として利用された[1]

絶対的な明るさが分かっていれば、地球から観測される見かけの明るさから、その天体までの距離を逆算できる(遠いものほど暗く見えるため)。この性質から、Ia型超新星は宇宙論的な距離測定における「標準光源」として利用されるようになった[3]

3. よそうと ぎゃくの けっか

3. 予想と逆の結果

3. 予想を裏切った観測結果

2つの けんきゅうチームが、それぞれ べつべつに、とおくの アイエーがた ちょうしんせいを かんそくして いたのは、 1990年代の ことでした[1]

どちらの チームも、うちゅうの ふくらむ スピードが、 じゅうりょくの せいで だんだん おそく なって いる ことを しめす データが 出ると よそうして いました [1]

ところが、けっかは よそうと まったく ぎゃくでした。 とおくの ちょうしんせいは、よそうより くらく 見えました。くらいと いう ことは、よそうより とおくに あると いう ことです。うちゅうは、おそく なる どころか、はやく ふくらんで いたのです [1]

2つの研究チームが、それぞれべつべつに、遠くのIa型超新星を観測していたのは、1990年代のことでした[1]

くらすぎた超新星

どちらのチームも、宇宙の膨張するスピードが、重力のせいでだんだんおそくなっていることを示すデータが出ると予想していました[1]

ところが、結果は予想とまったく逆でした。遠くの超新星は、予想より暗く見えました。暗いということは、予想より遠くにあるということです。宇宙は、おそくなるどころか、速くふくらんでいたのです[1]

ソール・パールムッター率いる「超新星宇宙論プロジェクト(SCP)」と、ブライアン・シュミット率いる「高赤方偏移超新星探索チーム」(赤方偏移とは、遠ざかる天体からの光の波長が引き伸ばされる現象で、天体の後退速度の指標になる)という、2つの独立した研究チームが、それぞれ遠方のIa型超新星の観測を、1990年代に進めていた[1]

くらすぎた超新星

両チームとも、物質どうしの重力によって宇宙膨張が徐々に減速している証拠が得られると予想していた。1997年、SCPのガーソン・ゴールドハーバーが、データの中にこの予想と食い違う兆候を最初に見出し、同じ年、Berkeleyで研究していたアダム・リースも独立に同様の異常に気づいた[1]

観測された遠方の超新星は、減速している宇宙を仮定した場合の予測より、一様に暗かった。明るさが距離の指標である以上、これは超新星が予想よりも遠い距離にあることを意味する。すなわち、宇宙の膨張は減速するどころか、加速していたのである[1]。ここでいう「加速膨張」は、遠方の銀河どうしが遠ざかる速さが時間とともに増していくことを指す。膨張率を表すハッブルパラメータが増える、という意味とは限らない[3]

4. 名まえの ない、あたらしい もの

4. 名前のない、新しいもの

4. ノーベル賞と、「暗黒エネルギー」の名づけ

うちゅうの ふくらみを はやめる ちからが あるなら、その もとに なる、なにかが あるはずです。学者たちは、この 目に 見えない、なぞの もとを「あんこくエネルギー」と よぶ ことに しました[1]

この はっけんは とても 大きな もので、2011年、 はっけんを リードした 3人の学者、パールムッター、シュミット、リースに、ノーベル物理学しょうが おくられました [1]

宇宙のふくらみを速める力があるなら、そのもとになる、なにかがあるはずです。学者たちは、この目に見えない、なぞのもとを「暗黒エネルギー」と呼ぶことにしました[1]

3人へのノーベル賞

この発見はとても大きなもので、2011年、発見をリードした3人の学者、パールムッター、シュミット、リースに、ノーベル物理学賞がおくられました[1]

宇宙膨張を加速させる、重力を押し返すような性質を持つと考えられる未知の成分に対して、天文学者たちは「暗黒エネルギー」という名前を与えた[1]

3人へのノーベル賞

この発見の重要性が認められ、2011年のノーベル物理学賞は、ソール・パールムッター、ブライアン・シュミット、アダム・リースの3人に授与された。授与理由は「遠方の超新星の観測による、宇宙の加速膨張の発見」だった[1]。パールムッターが賞の半分を、残る半分をシュミットとリースが分け合った[1]

5. いまも わからない、その しょうたい

5. いまも分からない、その正体

5. 宇宙の68%を占める、正体不明の存在

あんこくエネルギーは、いまの うちゅうの やく68%を しめると かんがえられて います (くわしくは べつの きじへ)。でも、それが 本当は なに なのかは、いまも わかって いません。

アインシュタインが とりさげた「うちゅうこう」が、かたちを かえて もどって きたのでは ないか、と かんがえる 学者も います。それとも、なにか べつの、もっと ふしぎな ものなのか。

2025年には、DESIと いう かんそく けいかくが、あんこくエネルギーの つよさが 時間で かわって いるかも しれないと いう ヒントが ふえた、と はっぴょうしました[4]。でも 2026年の あたらしい かいせきでは、その ヒントが うすく なる かのうせいも 出て きて、まだ けつろんは 出て いません[5]

暗黒エネルギーは、いまの宇宙の約68%をしめると考えられています(くわしくは別の記事へ)。でも、それが本当はなになのかは、いまもわかっていません。

宇宙項の再来か、それとも

アインシュタインがとりさげた「宇宙項」が、かたちをかえてもどってきたのではないか、と考える学者もいます。それとも、なにかべつの、もっとふしぎなものなのか。

2025年には、DESIという観測計画が、暗黒エネルギーの強さが時間でかわっているかもしれないというヒントが強まった、と発表しました[4]。ところが、2026年の新しい解析では、そのヒントがうすれるかもしれない結果も出てきて、まだ結論は出ていません[5]

現在の宇宙論の標準模型(Λ-CDMモデル。宇宙項λと暗黒物質を組み込んだ、宇宙の進化を説明する標準的な理論体系)によれば、暗黒エネルギーは宇宙全体のエネルギー・物質の約68%を占め、暗黒物質(約27%)と通常の物質(約5%)を大きく上回っている(詳しくは別記事「見えないものの見つけ方」を参照)

宇宙項の再来か、それとも

その正体については、大きく2つの立場がある。1つは、アインシュタインが放棄した宇宙項そのものが、時間とともに変化しない一定の値として存在するという説明。もう1つは、「クインテッセンス」と呼ばれる、時間とともに強さが変化しうる未知のエネルギー場だとする説明である。

国際共同観測プロジェクトDESI(暗黒エネルギー分光装置)は、2024年に、暗黒エネルギーの強さが時間とともに変化している可能性を示すデータのかたよりを報告し、2025年3月に公表した最初の3年分のデータ(DR2)では、その証拠が強まった[4]。一方、2026年7月に発表された新しい解析(ライマンα森の相関関数全体をモデル化する「フルシェイプ解析」)では、測定値がΛ-CDMモデルの側に寄り、これまでのヒントが消えるのか、より複雑なモデルが必要なのかは、まだ決まっていない[5]。動的な暗黒エネルギーが本当に必要かどうかは、現時点では未確定で、今後の観測による検証が続いている。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

じぶんでも、あんこくエネルギーの はなしを たしかめて みましょう。

あんぜんな ばしょで できる こと

  • おなじ あかるさの でんきゅうを、ちかくと とおくに おいて くらべて みる。 とおくに おくほど くらく 見える ことを、じっさいに たしかめて みましょう(※ちゅうい:あつく なる でんきゅうには さわらないで ください)。
  • 「アインシュタインは 人生さいだいの しっぱいと 言った けど、じつは まちがって いなかった」と いう はなしを、 かぞくに せつめいして みる。 この きじで しょうかいした ないようを、じぶんの ことばで はなして みましょう。
メモの すすめ

きょう 出て きた ことばを 1つだけ ノートに 書いて おきましょう。「うちゅうの ふくらむ スピードは、はやく なって いる」だけで じゅうぶんです。

自分でも、暗黒エネルギーの話を確かめてみましょう。

今日できること

  • おなじ明るさの電球を、近くと遠くにおいてくらべてみる。遠くにおくほど暗く見えることを、実際に確かめてみましょう(※注意:熱くなる電球にはさわらないでください)。
  • 「アインシュタインは人生最大のしっぱいと言ったけど、じつはまちがっていなかった」という話を、家族に説明してみる。この記事で紹介した内容を、自分の言葉で話してみましょう。
メモのすすめ

気になった言葉を1つだけ書いておくと、あとで調べる入口になります。「Ia型超新星って、なぜいつもおなじ明るさで爆発するの?」だけでも十分です。

光の逆2乗則を身近な光源で体感したり、DESIのような最新の観測プロジェクトを調べたりすると、この記事で扱った内容がより具体的につかめます。

手を動かして確かめる

  • スマホの照度センサーアプリを使って、光源からの距離と明るさの関係を測定してみる。明るさが距離の2乗に反比例して弱まることを確かめられます。
  • DESI(暗黒エネルギー分光装置)について調べてみる。2024年から結果を発表している、暗黒エネルギーの性質を探る国際プロジェクトです。2025年と2026年の発表を比べると、結論がまだ動いていることがわかります[4][5]

一次情報にあたる

CERN Courierの記事には、1998年の発見から2011年のノーベル賞までの経緯が、より詳しくまとめられています。

メモのすすめ

気になった数字や言葉を1つだけノートに記録しておきましょう。「暗黒エネルギーが発見されたのは1998年」という一文でもかまいません。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:専門誌・学会誌の解説サイトと、Wikipediaを使っています。

  1. "Discovery of accelerating universe wins Nobel prize" - CERN Courier。 https://cerncourier.com/a/discovery-of-accelerating-universe-wins-nobel-prize/ (1998年の2チームによる発見の経緯、1997年のゴールドハーバー・リースによる異常検出、Ia型超新星の標準光源としての性質、2011年のノーベル物理学賞についての解説)
  2. "Investigating the legend of Einstein's 'biggest blunder'" - Physics Today。 https://physicstoday.aip.org/opinion/investigating-the-legend-of-einsteins-biggest-blunder (1917年のアインシュタインによる宇宙項の導入、1929年のハッブルによる膨張発見後の撤回、「人生最大のしっぱい」発言の史料的検証についての解説)
  3. Accelerating expansion of the universe - Wikipedia(英語版)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Accelerating_expansion_of_the_universe (標準光源としてのIa型超新星の距離測定の原理についての解説)
  4. DESI(暗黒エネルギー分光装置)公式サイト「DESI DR2 Results, March 19: A Guide」(2025年3月19日)。 https://www.desi.lbl.gov/2025/03/19/desi-dr2-results-march-19-guide/ (2025年3月の最初の3年分のデータ(DR2)の結果と、暗黒エネルギーが時間変化している可能性を示す証拠が、初年度の結果から強まったことについての公式解説)
  5. DESI(暗黒エネルギー分光装置)公式サイト「New DESI DR2 Lyman-alpha results shed light on dark energy」(2026年7月30日)。 https://www.desi.lbl.gov/2026/07/30/new-desi-dr2-lyman-alpha-results-shed-light-on-dark-energy/ (2026年7月の新しい解析で、測定値がΛ-CDMモデルの側に寄ったことと、動的な暗黒エネルギーの結論がまだ出ていないことについての公式発表)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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