1. いろを かえる しくみは どうなって いるの?
1. 色を変える仕組み ── 3種類の細胞と、放射状の筋肉
1. 皮膚の色に関わる細胞 ── 色素胞・虹色素胞・白色素胞
まずは 色の はなしから です。タコや イカの ひふには、色に かかわる ものが、おもに 3しゅるい あります。しゅるいや ばしょで、ちがう ことも あります[7]。そのうち ひとつは、色の つぶが 入った 小さな ふくろ です。
この ふくろの まわりには、数十本の 細い 筋肉が ついて います。筋肉が ちぢむと、ふくろが ひろがって、色が 見えます[7]。
ほかには、ひかりを はねかえして きらきら 見せる そうと、まわりの ひかりを そのまま はねかえして 白く 見せる そうが あります[7]。
ここまでが 「色」の しくみ です。色とは べつに、ひふの かたちも かわります。
2. ひふの ひょうめんが ぶつぶつに なるって ほんとう?
2. つるつるの皮膚が、でこぼこに変わる
2. 乳頭(papillae) ── 平らな皮膚を立体にする器官
タコや コウイカなどの ひふは、つるつるの たいらな 場所から、ぼこぼこの りったいの 場所へ、すばやく かわる ことが できます[1]。
この へんかを している ぶぶんが、ひふの 上に ある 小さな とっき、「にゅうとう」と よばれる ものです。人の からだの 「にゅうとう」とは べつの ものです[1]。
とっきの かたちは、まるい ものや、とげの ような ものなど、いろいろ あります。2014年の 研究では、タコと コウイカの 6しゅを くらべて、9つの かたちが 見つかった と ほうこくされました[2]。
3. なんで ひふの ひょうめんまで かえるの?
3. 手ざわりまでまねる理由 ── かくれるための追加の手がかり
3. 皮膚の質感を変えるカムフラージュ
この とっきは、まわりの ものの こまかい きめに あわせて、かくれるために つかわれる と いわれます[6]。
いわは、ごつごつ して います。かいそうは、ひらひら して います。きめを あわせて、まわりに なじむ ために つかわれると かんがえられて います。
ある けんきゅうしゃは、この りったいの きめも、かくれる ための だいじな てがかりだ、と せつめい して います[6]。
こんな ふうに ひふの かたちまで かえられるのは、タコや イカの なかまの とくちょう と いわれて います[8]。
色だけでは足りないとき
乳頭は、周りにある物の細かなきめをまねして、その場になじむために使われると考えられています。研究者の一人は、この立体的な質感を、背景にかくれるための大事な「追加の要素」だと説明しています[6]。
ごつごつした岩の前で、色だけ岩に似せても、平らな皮膚では、影のでき方が岩とちがいそうです。質感まで合わせると、その差が減ると考えられます。質感を合わせて背景になじむために使われると考えられています。
ほかの動物にはない特徴
皮膚の筋肉と水圧のような力で、単純なものから複雑なものまで皮膚の起伏を変えられることは、頭足類(タコ・イカ・コウイカ)に特有の特徴だと紹介されています[8]。「唯一」と言い切れるかは、まだ研究の途中です。
4. ほねが ないのに、どうやって たてて いるの?
4. 骨のない体で突起を立てる ── 筋肉性静水骨格
4. 筋肉性静水骨格としての乳頭
タコには、からだを ささえる かたい ほねが ありません。それでも、とっきが たちます。ひみつは、筋肉です。
とっきの なかには、ぐるっと まるく のびる 筋肉と、よこに のびる 筋肉が あります。これらが いっしょに ちからを 入れると、とっきが もちあがります。さきを ひふの 下へ ひっぱる 筋肉が ちぢむと、また ひっこみます[3]。
水の 入った ふくろを ぎゅっと おすと、かたく なりますね。それに にた かんじで、たてる 筋肉が そのまま とっきの かたちを ささえて います。ただし 本当の とっきは、ふくろでは なく、筋肉の かたまりです[2]。
乳頭は、立たせる筋肉が同時に形も支える「筋肉性静水骨格」というつくりだと考えられています[3]。
3つの筋肉の役わり
円形の筋肉と水平方向の筋肉が協力して乳頭を持ち上げます。引き込む役の筋肉が縮むと、先端が体表へ引き下げられます[3]。骨のような硬い支えは要りません。
コウイカでは、単純な円錐形の乳頭がこの仕組みで働くことが、先の研究で確立されていたと報告されています[2]。
仕組みは一つとは限らない
コウイカの一種(Sepia apama)の顔のうね状の乳頭では、筋肉が縮むと、上の皮膚の層が外へたわんで盛り上がる、別の仕組みが見つかりました[3]。乳頭の仕組みは、種や場所によって一様ではないようです。
5. とっきが たつのは、どれくらい はやいの?
5. 乳頭が1秒かからずに立つ
5. 立ち上がりの速さ ── コウイカで1秒未満
コウイカでは、とっき 1こが 1びょうよりも みじかい 時間で、すっかり たつ ことも、ひっこむことも できた と ほうこくされて います[4]。
「いち、に」と 数える まえに、ひふの ひょうめんが かわる ことに なります。
この 数字は コウイカで 見つかった ものです。タコに そのまま あてはまるかは、この 記事では 言えません。
生きているコウイカで、乳頭1つは1秒未満で完全に立つ、あるいは引っこむことができると報告されています[4]。「いち、に」と数えるより短い時間です。
この数値はコウイカの観察です。タコにそのままあてはめることはできません。タコの記述は、似た構造があるという程度にとどめます。
iScience(2018)は、生きたコウイカで個々の乳頭が1秒未満で完全に展開または収縮しうることを報告している[4]。
この値はコウイカ(Sepia officinalis)での観察であり、タコ類へ直接あてはめられない。速度・神経・保持に関する実験は、本稿で扱う範囲ではコウイカが中心である。
6. たてろという めいれいは、どこから くるの?
6. 指令は脳だけから出るのか ── 星状神経節という中継点
6. 乳頭の運動神経と星状神経節
とっきを うごかす 神経の しんごうは、脳の すぐ そばでは なく、からだの 外がわに ある 「せいじょうしんけいせつ」と いう ところに、あつまって いる ことが わかりました[4]。
ここは、神経が ほかの 神経に つながる 中つぎの 場所のような ものです。めいれいが 脳から こない、という 意味では ありません。脳からの しじが ここを 通って とっきに とどきます[4]。
コウイカでは、乳頭を動かす運動神経の細胞は、脳ではなく、外套膜側にある星状神経節という部分の内側の壁にあると報告されています[4]。
ここで注意したいのは、星状神経節は中継点だということです。「脳が関わらない」という意味ではありません。指令は脳から来て、ここを経由して乳頭に届きます。
コウイカでは、乳頭の運動神経(motoneurons)は、脳ではなく外套膜側の星状神経節の腹側内側壁にあるとされる(iScience 2018)[4]。
星状神経節は中継点であり、指令の起点は脳にあると考えられる。「脳が関与しない」と読むのは誤りである。
7. しんけいを きっても、とっきは たったまま なの?
7. 神経を切っても1時間以上立ち続ける
7. 神経切断後の保持 ── ラッチブリッジ様の機構の示唆
コウイカで、とっきに くる 神経を きっても、とっきは 1時間より 長く、たったままだった と ほうこくされて います[4]。
ちからを ぬかなくても、たった かたちを たもてる しくみが あるのかも しれません。かいが からを とじたままに できる ことに にている、という せつめいを した 記事も あります[5]。
ただ、これは 「そうかもしれない」と いう だんかいの はなしです。ここで しょうかいしたのは コウイカの ほうこくです。
8. たてるか どうかは、さわって きめて いるの?
8. 何を手がかりに立てるのか ── 触覚ではなく視覚
8. 視覚による制御 ── 触覚情報を変えても変わらない
コウイカの とっきは、おもに 目で 見た ものに よって きまる、と ほうこくされて います[4]。
さわった かんじを かえても、とっきの 出かたは かわらなかった そうです[4]。
つまり、目で 見て 「ここは ごつごつして いる」と はんだんして いる ようです。ここで しょうかいしたのは コウイカの けっかです。
コウイカの乳頭は、主に視覚で決まることが報告されています。触覚の情報を変えても、乳頭の出方は変わりませんでした[4]。
目で背景を見て、必要な質感を選ぶ。手触りを確かめて決めているわけではなさそうです。ここで紹介したのはコウイカの結果です。
コウイカの乳頭の発現は視覚に強く依存し、触覚情報を操作しても変化しなかったと報告されている(Allen ら 2009、iScience 2018)[4]。
ここで紹介したのはコウイカでの結果である。
9. もっと 知りたく なったら
9. 自分でも調べてみたくなったら
9. 自分でも調べてみたくなったら
いえや こうえんで
いえの 中や 近くで、色は にて いるのに、さわると ちがう ものを さがして みましょう。はっぱと 石、木の いたと かべ、などです。色と さわりごこちは、べつべつに あることが わかります。
すいぞくかんで
もし すいぞくかんで タコや イカの なかまを 見る ことが あったら、まわりの ものと ひふの さわりごこちが どう かわるか、見て みましょう。すぐには かわらない ことも あります。
色と手ざわりを別々に探す
家の中や公園で、色はにているのに、触ると違うものを探してみましょう。葉と石、木の板と壁などです。色と質感は、別々に比べられることがわかります。
水族館で
水族館でタコやイカの仲間を見る機会があれば、周りの物によって皮膚の見た目がどう変わるか見てみます。見られるかどうかは、そのときの様子しだいです。水槽をたたいたり、ガラスにフラッシュを当てたりしないようにしましょう。
もっと知りたいとき
水族館の解説や、日本語で書かれた頭足類の本を探すと、色や質感の話が出てくるかもしれません。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で実際に使った資料だけを載せています。多くは英語の論文や要旨で、コウイカでの研究が中心です。用途は各項目の末尾に記しました。
- Allen et al. 2013, Journal of Morphology(PubMed) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23378271/ (平らから立体への変化、乳頭の名前)
- Allen, Bell, Kuzirian, Hanlon, Comparative morphology of changeable skin papillae in octopus and cuttlefish, J Morphol 275, 2014 https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmor.20221 (6種・9タイプの比較、円錐形乳頭の働き。要旨の範囲)
- SICB要旨 Functional morphology of changeable skin papillae in octopus and cuttlefish https://sicb.org/abstracts/functional-morphology-of-changeable-skin-papillae-in-octopus-and-cuttlefish/ (筋肉の役わり、たわみによる別の仕組み)
- Neural Control of Dynamic 3-Dimensional Skin Papillae for Cuttlefish Camouflage, iScience 2018 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6059360/ (立つ速さ、星状神経節、神経を切る実験、視覚による制御)
- Futurity「octopus and cuttlefish papillae」 https://www.futurity.org/octopus-and-cuttlefish-papillae-1682212-2/ (貝の仕組みに似るという説明)
- Science Friday「Secrets of cephalopod camouflage」 https://www.sciencefriday.com/articles/secrets-of-cephalopod-camouflage/ (かくれるための質感の意味)
- Mäthger et al., Mechanisms of structural coloration in cephalopods https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2706477/ (皮膚の色の3層)
- Frontiers in Physiology 2017 https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2017.00393/full (頭足類に特有とされる皮膚の起伏の変化)
なおした ところ
更新履歴
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