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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

タコは しんぞうが 三つ あるのに、どうして およぎつづけないの?

心臓が3つのタコが、長く泳がず海底を歩くわけ

タコには心臓がなぜ3つあるのか、泳ぐと何が起きるのか

分野:生きもの

タコには、心臓しんぞうが 三つ あります。それなら、いつも いきおいよく およげそうです。でも タコは、海の そこを あるく ことが 多い 生きものです。

三つの しんぞうは、なにを して いるのでしょう。およぐと どうなるのでしょう。しらべた ことを、いっしょに 見て いきましょう。

タコの心臓は3つあります。力が強そうな生きものなのに、長い距離を泳ぐことはなく、海底を歩くように動くことが多いようです。

3つの心臓はそれぞれ何をしているのか。泳ぐと体の中で何が起こるのか。水族館の解説と、動くタコの血圧を測った研究の要旨から、順番に見ていきます。

タコの心臓は3つある。左右のえらの根元にある2つの鰓心臓と、全身へ血を送る1つの体心臓だ[1]。それでもマダコが噴射で長く泳げないことは、1987年の実測(背側大動脈の血圧・血流の記録)から、酸素の借りの小ささと拍動の停止という形で説明されている[2]。

このメモでは、役割分担の説明、銅を使う青い血、運動中の循環の変化を、水族館の解説・1987年の総説・論文の要旨などを突き合わせて整理する。「なぜ3つか」は仮説を含むため、確かな部分と分けて書く。

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1. 三つの しんぞうは、どこに あるの?

1. 3つの心臓は、どこにあるのか

1. 心臓の数と位置 ── 鰓心臓2つ+体心臓1つ

タコの しんぞうの 一つは、体に 血を おくる ふつうの しんぞうです。のこりの 二つは、左と 右の えらの ねもとに あります[1]。

えらの ねもとに ある 二つは、えらしんぞうと よばれます。一つずつが、小さな 一つの へやで できて います[5]。

体に 血を おくる 方は、体しんぞうと よばれます。イカも、おなじ ように 三つ もって います[1]。

体の中の配置

タコの3つの心臓のうち、2つは左右のえらの根元にあり、鰓心臓(えらしんぞう)と呼ばれます。残る1つは全身へ血を送り出す体心臓です。水族館の解説では、イカやタコは普通の心臓のほかに、左右のえらの根元に、血液を巡らせる臓器を持つと説明されています[1]。

鰓心臓は必ず左右一対で、えらの根元にあり、一つひとつが1つの部屋でできています。えらへ向かう静脈を通して血を押し出します[5]。

頭足類の心臓は、全身に血を送る体心臓(主心臓)1つと、左右のえらの根元に置かれた鰓心臓2つからなる[1]。鰓心臓は常に対をなし、それぞれ単室で、鰓前静脈を通してえらへ血を押し出す[5]。

つまり血の流れは、体から戻った血を鰓心臓がえらへ送り、えらで酸素を受け取った血を体心臓が全身へ送る、という二段構えになる。これは1つの心臓ですべてを担う脊椎動物の循環との大きな違いである。

2. どうして しんぞうを 分けたの?

2. 「えらを通ると弱くなる」という説明

2. 役割分担の説明と、「設計より工学」という評価

えらは、細かい すきまが たくさん ある ところです。血が そこを とおると、いきおいが よわく なる、と いわれます[6]。

あみの 目を 水が とおる と、いきおいが へる ような ものです。そこで、えらの 手前で 一どおして、えらを 出た 血は 体しんぞうが もう 一ど おす、と 考えられて います。ただし 本当の 血の 流れは、あみでは なくて、ほそい 血の くだの 中です。

タコの 血は、くだの 中を 流れます。その ため 血の あつさを 高く する くふうが、いくつも かさなって いる、と いわれます[3]。

えらを出た血は、勢いを失う

えらは細い血管が集まった場所です。そこを通った血は圧力が低い状態で出てくるので、もう一度押し出す心臓が要る、と説明されています[6]。鰓心臓は「えらへ押す」役、体心臓は「全身へ送る」役という分担です。

他の貝の仲間と違う流れ方

頭足類は、血が血管の中を流れる閉鎖循環をもちます。1987年の総説は、えらへ血を押す補助のポンプ(鰓心臓)、拍動する静脈、他の軟体動物より高い血圧の3つを組み合わせて、循環を保っていると述べます[3]。

この総説の題は「設計よりも工学の勝利」です[3]。もとの体のつくりに無理があっても、しくみを足して間に合わせている、という評価として読めます。

役割分担については、えらを通過した血は低圧で出てくるため、体循環に入る前に再加圧する心臓が必要になる、という説明がある[6]。

WellsとSmithは1987年の総説で、頭足類が閉鎖循環をもち、その循環を補助ポンプ(鰓心臓)、拍動する静脈、他の軟体動物より高い体循環血圧を組み合わせていると論じた[3]。論文題は「The performance of the octopus circulatory system: A triumph of engineering over design」で、開放循環を基本とする軟体動物の設計の上に、工夫を重ねた循環という位置づけである。

なぜ3つに進化したかについては、確定した説明は示されていない。筋肉質で機敏に動く体が大量の酸素を要するため、と水族館の解説は述べるが、「いわれている」の域である[1]。

3. タコの 血は、なぜ 青いの?

3. 銅でできた青い血と、寒い海

3. ヘモシアニン ── 銅を含む呼吸色素と温度の影響

人の 血が あかいのは、酸素さんそを はこぶ ぶぶんに、てつが 入って いる からです。タコの 血は、銅どうを つかった ものを もって います[6]。

それは、ヘモシアニンと いう ものです。ふだんは 色が ありませんが、酸素さんそと くっつくと 青く なります。だから、タコの 血は 青く 見える ことが あります[1]。

タコの 体は、ほとんど 筋肉きんにくです。すばやく 動くには 酸素さんそが たくさん いるので、しんぞうが 三つに なった、と いわれます。ただし これは 理由を 考えた 話で、たしかな 答えでは ありません[1]。

鉄ではなく銅で運ぶ

人の血は、鉄を含むヘモグロビンで酸素を運びます。タコは銅を含むヘモシアニンを使います[6]。ヘモシアニンは、酸素を運んでいないときは無色で、酸素と結びつくと青くなるため、血が青く見えることがあります[1]。

寒さで、酸素は手放しにくくなる

ヘモシアニンは、冷たいほど酸素をしっかりつかんで放しにくくなる傾向があります。南極のタコ(Pareledone charcoti)では、酸素をつかむ力を下げ、運べる量を増やすことで、氷点下近い水温でも酸素を届けやすくしていると報告されています[4]。全種が同じ値というわけではありません。

筋肉と酸素

水族館の解説では、体のほとんどが筋肉で、機敏に動かすのに大量の酸素が要るため、心臓が3つできたといわれる、と紹介されています[1]。これも理由の一つの説明であって、確かめられた事実ではありません。

タコの酸素運搬は、鉄を含むヘモグロビンではなく、銅を含むタンパク質ヘモシアニンによる[6]。ヘモシアニンは無色だが、酸素と結合すると青色になり、血が青く見えることがある[1]。ただし銅の記述は二次資料に基づく。

ヘモシアニンの酸素親和性は、低温で高まり、組織で放出されにくくなる傾向がある。これに対し、南極のPareledone charcotiでは、酸素親和性の低下と運搬能力の増強が、氷点近い環境での酸素供給を助けると報告された[4]。種による差があり、一律ではない。

4. あるくのと およぐのでは、なにが ちがう?

4. 動き回ると、心臓はどう変わるのか

4. 1987年の研究で、運動中の血圧・血流と心拍数を調べた

1987年に、大きな しらべが ありました。うごきまわる マダコの、大きな 血の くだの 血の あつさと 流れを、はかった のです[2]。

タコが 動きまわると、血の あつさも、血の 流れも、およそ 二ばいに なりました。ところが、しんぞうの うごく はやさは、あまり かわりませんでした[2]。

はやく うごく のでは なく、一どに おくる 血の りょうを ふやして、間に あわせた のです。それを 受けもつのは、体しんぞうです[2]。

動き回るタコで測る

1987年の研究では、自由に動けるマダコの背側大動脈で、血圧と血流を記録しました[2]。動き回ると、平均血圧、拍動の振れ幅、血流はそれぞれおよそ2倍になりました。一方、拍動の回数はほとんど変わりませんでした[2]。

増やしたのは、1回に送る量

要旨によると、運動で必要になる血流の増加は、ほぼ体心臓が1回に送り出す量を増やすことだけでまかなわれています[2]。心臓の速さでなく、1回ごとの力強さで対応する形です。

Wellsらは1987年、自由に動く個体のマダコ(Octopus vulgaris)で、背側大動脈の血圧と血流を記録した。動き回ると、平均血圧・脈圧の振幅・血流がそれぞれ約2倍になり、拍動数はほとんど変化しなかった。2倍になったのは血圧・振幅・流量であり、心拍数ではない[2]。

運動で必要となる心拍出量の増加は、ほぼ体心臓の1回拍出量の増加だけで達成されると結論している[2]。

5. およぐと、しんぞうが とまるって ほんとう?

5. 噴射で泳ぐと、脈が途切れる

5. 噴射遊泳 ── 拍動停止・酸素の借り・数メートルの限界

タコは、体の 中の 水を ぎゅっと おし出して、ジェットのように すすむ ことが できます。この ときに、体しんぞうの 動きが 止まる、と 書かれて います[2]。

水を おし出す とき、体の 中の 水を ためる ところの 力が 高く なります。すると 血の くだの 血が、もどれなく なる らしい、と 考えられて います[2]。

ただし、およいで いる 間ずっと 止まる わけでは なく、血の ながれが 少しの あいだ とぎれる のだ、と いわれて います[7]。

タコが かりられる 酸素さんそは、ほんの すこしです。ジェットで すすめるのは、数メートル ほどまで だと 書かれて います[2]。

心臓が止まる

同じ研究の要旨は、噴射推進には心臓の停止が伴う、と述べます[2]。外套腔(体の中の水をためる空間)の圧が上がると、静脈が血を戻せなくなることが示唆されています[2]。

ただし、「泳いでいる間ずっと止まる」わけではありません。二次資料は、噴射のあいだ脈が一時途切れる、と説明しています[7]。何秒止まるかは、要旨には書かれていません。

数メートルが限界

タコが酸素を借りられる量はごく小さく(およそ体重1kgあたり22ml)、マダコの噴射による移動は、数メートルを超える距離では難しいと見積もられています[2]。これが、海底を歩くように動く理由の一つだと考えられます。

同じ要旨は、噴射推進に心停止が伴うと述べる。外套膜圧の上昇による勾配に逆らって、静脈系が血液を戻せないことが示唆されている[2]。ただし停止の長さや、遊泳全体を通じての停止かどうかは、要旨からは分からない。二次資料は、脈が一時途切れるのであって全区間で止まるわけではない、と説明している[7]。

また、マダコが負える酸素負債は約22 mlO2/kgと小さく、噴射での移動は数メートルを超える距離では難しいと推定されている[2]。海底を歩く動きが多いことと矛盾しないが、それが理由だと断定できる資料はない。

6. もっと しりたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

タコの 動画や 図かんで、あるく ところと、およぐ ところを 見くらべて みましょう。どちらが 多いか、数えて みても おもしろいです。

でかけて できること

水族館や、おみせの すいそうで、タコを 見る ときが あれば、しばらく 見て いましょう。動きが かわる 場面を さがして みます。

ガラスを たたいたり、手を 入れたり しては いけません。

今日できること

タコが登場する動画や図鑑で、歩いている場面と噴射で進む場面を探し、どちらが多いか数えてみましょう。噴射のあと、しばらく止まっているように見えるかどうかも、確かめられるかもしれません。

出かけてできること

水族館などでタコを見られたら、少し長く観察してみましょう。歩いている時間と、勢いよく動く時間のどちらが長いかを比べられます。展示の水槽は、たたいたり触れたりしないでください。

もっと知りたいとき

この記事の第4章を読み返して、何がおよそ2倍になり、何がほとんど変わらなかったのかを、自分の言葉で3行にまとめてみましょう。まとめたあとで、なぜ「1回に送る量」が増えたと言えるのかも考えてみてください。

今日できること

第4章の記述から、2倍になったもの(平均血圧・脈圧の振幅・血流)と、ほぼ変わらなかったもの(拍動数)を表に整理してみる。そのうえで、心拍出量の増加が1回拍出量だけでまかなわれたと言える理由を、自分の言葉で説明してみる。

出かけてできること

水族館でタコの動きを観察するときは、歩行・噴射の各所要時間を測ってみる。数メートル以内という限界が、実際の動きと合うかを見比べられる。水槽には触れない。

資料を読むなら

  • Wells et al. 1987(J. Exp. Biol.)── 動き回るマダコの血圧・血流
  • Wells & Smith 1987(Experientia)── タコの循環の総説
  • Oellermann et al. 2015(Frontiers in Zoology)── ヘモシアニンと温度

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

水族館の解説と、論文の要旨・二次資料をつき合わせた。論文の本文までは読めていないものがある。

  1. 豊海おさかなミュージアム「イカ・タコとはどういう生き物なのか?」 https://museum.suisan-shinkou.or.jp/guide/ika-tako/3818/ (心臓が3つであること、青い血、筋肉と酸素)
  2. Wells et al. 1987, J. Exp. Biol. 131:175-187「Blood flow and pressure changes in exercising octopuses」要旨 https://journals.biologists.com/jeb/article-abstract/131/1/175/5279/Blood-Flow-and-Pressure-Changes-in-Exercising (運動中の血圧・血流、噴射中の心停止、酸素負債)
  3. Wells & Smith 1987, Experientia 43:487-499「The performance of the octopus circulatory system: A triumph of engineering over design」 https://link.springer.com/article/10.1007/BF02143577 (閉鎖循環と補助ポンプ。要旨のみ)
  4. Oellermann et al. 2015, Frontiers in Zoology https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4403823/ (ヘモシアニンと温度、南極のタコ)
  5. Wikipedia「Branchial heart」 https://en.wikipedia.org/wiki/Branchial_heart (鰓心臓の数と位置)
  6. Live Science「How many hearts does an octopus have?」 https://www.livescience.com/how-many-hearts-does-an-octopus-have (役割分担の説明、銅の血。検索要旨で確認)
  7. ScienceBlog「octopus three hearts jet swimming」 https://scienceblog.com/t-octopus-three-hearts-jet-swimming-systemic-heart-stops/ (噴射中に脈が一時途切れること)

なおした ところ

更新履歴

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