1. 三つの しんぞうは、どこに あるの?
1. 3つの心臓は、どこにあるのか
1. 心臓の数と位置 ── 鰓心臓2つ+体心臓1つ
タコの しんぞうの 一つは、体に 血を おくる ふつうの しんぞうです。のこりの 二つは、左と 右の えらの ねもとに あります[1]。
えらの ねもとに ある 二つは、えらしんぞうと よばれます。一つずつが、小さな 一つの へやで できて います[5]。
体に 血を おくる 方は、体しんぞうと よばれます。イカも、おなじ ように 三つ もって います[1]。
2. どうして しんぞうを 分けたの?
2. 「えらを通ると弱くなる」という説明
2. 役割分担の説明と、「設計より工学」という評価
えらは、細かい すきまが たくさん ある ところです。血が そこを とおると、いきおいが よわく なる、と いわれます[6]。
あみの 目を 水が とおる と、いきおいが へる ような ものです。そこで、えらの 手前で 一どおして、えらを 出た 血は 体しんぞうが もう 一ど おす、と 考えられて います。ただし 本当の 血の 流れは、あみでは なくて、ほそい 血の くだの 中です。
タコの 血は、くだの 中を 流れます。その ため 血の あつさを 高く する くふうが、いくつも かさなって いる、と いわれます[3]。
えらを出た血は、勢いを失う
えらは細い血管が集まった場所です。そこを通った血は圧力が低い状態で出てくるので、もう一度押し出す心臓が要る、と説明されています[6]。鰓心臓は「えらへ押す」役、体心臓は「全身へ送る」役という分担です。
他の貝の仲間と違う流れ方
頭足類は、血が血管の中を流れる閉鎖循環をもちます。1987年の総説は、えらへ血を押す補助のポンプ(鰓心臓)、拍動する静脈、他の軟体動物より高い血圧の3つを組み合わせて、循環を保っていると述べます[3]。
この総説の題は「設計よりも工学の勝利」です[3]。もとの体のつくりに無理があっても、しくみを足して間に合わせている、という評価として読めます。
役割分担については、えらを通過した血は低圧で出てくるため、体循環に入る前に再加圧する心臓が必要になる、という説明がある[6]。
WellsとSmithは1987年の総説で、頭足類が閉鎖循環をもち、その循環を補助ポンプ(鰓心臓)、拍動する静脈、他の軟体動物より高い体循環血圧を組み合わせていると論じた[3]。論文題は「The performance of the octopus circulatory system: A triumph of engineering over design」で、開放循環を基本とする軟体動物の設計の上に、工夫を重ねた循環という位置づけである。
なぜ3つに進化したかについては、確定した説明は示されていない。筋肉質で機敏に動く体が大量の酸素を要するため、と水族館の解説は述べるが、「いわれている」の域である[1]。
3. タコの 血は、なぜ 青いの?
3. 銅でできた青い血と、寒い海
3. ヘモシアニン ── 銅を含む呼吸色素と温度の影響
人の 血が あかいのは、酸素を はこぶ ぶぶんに、てつが 入って いる からです。タコの 血は、銅を つかった ものを もって います[6]。
それは、ヘモシアニンと いう ものです。ふだんは 色が ありませんが、酸素と くっつくと 青く なります。だから、タコの 血は 青く 見える ことが あります[1]。
タコの 体は、ほとんど 筋肉です。すばやく 動くには 酸素が たくさん いるので、しんぞうが 三つに なった、と いわれます。ただし これは 理由を 考えた 話で、たしかな 答えでは ありません[1]。
鉄ではなく銅で運ぶ
人の血は、鉄を含むヘモグロビンで酸素を運びます。タコは銅を含むヘモシアニンを使います[6]。ヘモシアニンは、酸素を運んでいないときは無色で、酸素と結びつくと青くなるため、血が青く見えることがあります[1]。
寒さで、酸素は手放しにくくなる
ヘモシアニンは、冷たいほど酸素をしっかりつかんで放しにくくなる傾向があります。南極のタコ(Pareledone charcoti)では、酸素をつかむ力を下げ、運べる量を増やすことで、氷点下近い水温でも酸素を届けやすくしていると報告されています[4]。全種が同じ値というわけではありません。
筋肉と酸素
水族館の解説では、体のほとんどが筋肉で、機敏に動かすのに大量の酸素が要るため、心臓が3つできたといわれる、と紹介されています[1]。これも理由の一つの説明であって、確かめられた事実ではありません。
4. あるくのと およぐのでは、なにが ちがう?
4. 動き回ると、心臓はどう変わるのか
4. 1987年の研究で、運動中の血圧・血流と心拍数を調べた
1987年に、大きな しらべが ありました。うごきまわる マダコの、大きな 血の くだの 血の あつさと 流れを、はかった のです[2]。
タコが 動きまわると、血の あつさも、血の 流れも、およそ 二ばいに なりました。ところが、しんぞうの うごく はやさは、あまり かわりませんでした[2]。
はやく うごく のでは なく、一どに おくる 血の りょうを ふやして、間に あわせた のです。それを 受けもつのは、体しんぞうです[2]。
5. およぐと、しんぞうが とまるって ほんとう?
5. 噴射で泳ぐと、脈が途切れる
5. 噴射遊泳 ── 拍動停止・酸素の借り・数メートルの限界
タコは、体の 中の 水を ぎゅっと おし出して、ジェットのように すすむ ことが できます。この ときに、体しんぞうの 動きが 止まる、と 書かれて います[2]。
水を おし出す とき、体の 中の 水を ためる ところの 力が 高く なります。すると 血の くだの 血が、もどれなく なる らしい、と 考えられて います[2]。
ただし、およいで いる 間ずっと 止まる わけでは なく、血の ながれが 少しの あいだ とぎれる のだ、と いわれて います[7]。
タコが かりられる 酸素は、ほんの すこしです。ジェットで すすめるのは、数メートル ほどまで だと 書かれて います[2]。
6. もっと しりたく なったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
タコの 動画や 図かんで、あるく ところと、およぐ ところを 見くらべて みましょう。どちらが 多いか、数えて みても おもしろいです。
でかけて できること
水族館や、おみせの すいそうで、タコを 見る ときが あれば、しばらく 見て いましょう。動きが かわる 場面を さがして みます。
ガラスを たたいたり、手を 入れたり しては いけません。
今日できること
タコが登場する動画や図鑑で、歩いている場面と噴射で進む場面を探し、どちらが多いか数えてみましょう。噴射のあと、しばらく止まっているように見えるかどうかも、確かめられるかもしれません。
出かけてできること
水族館などでタコを見られたら、少し長く観察してみましょう。歩いている時間と、勢いよく動く時間のどちらが長いかを比べられます。展示の水槽は、たたいたり触れたりしないでください。
もっと知りたいとき
この記事の第4章を読み返して、何がおよそ2倍になり、何がほとんど変わらなかったのかを、自分の言葉で3行にまとめてみましょう。まとめたあとで、なぜ「1回に送る量」が増えたと言えるのかも考えてみてください。
今日できること
第4章の記述から、2倍になったもの(平均血圧・脈圧の振幅・血流)と、ほぼ変わらなかったもの(拍動数)を表に整理してみる。そのうえで、心拍出量の増加が1回拍出量だけでまかなわれたと言える理由を、自分の言葉で説明してみる。
出かけてできること
水族館でタコの動きを観察するときは、歩行・噴射の各所要時間を測ってみる。数メートル以内という限界が、実際の動きと合うかを見比べられる。水槽には触れない。
資料を読むなら
- Wells et al. 1987(J. Exp. Biol.)── 動き回るマダコの血圧・血流
- Wells & Smith 1987(Experientia)── タコの循環の総説
- Oellermann et al. 2015(Frontiers in Zoology)── ヘモシアニンと温度
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
水族館の解説と、論文の要旨・二次資料をつき合わせた。論文の本文までは読めていないものがある。
- 豊海おさかなミュージアム「イカ・タコとはどういう生き物なのか?」 https://museum.suisan-shinkou.or.jp/guide/ika-tako/3818/ (心臓が3つであること、青い血、筋肉と酸素)
- Wells et al. 1987, J. Exp. Biol. 131:175-187「Blood flow and pressure changes in exercising octopuses」要旨 https://journals.biologists.com/jeb/article-abstract/131/1/175/5279/Blood-Flow-and-Pressure-Changes-in-Exercising (運動中の血圧・血流、噴射中の心停止、酸素負債)
- Wells & Smith 1987, Experientia 43:487-499「The performance of the octopus circulatory system: A triumph of engineering over design」 https://link.springer.com/article/10.1007/BF02143577 (閉鎖循環と補助ポンプ。要旨のみ)
- Oellermann et al. 2015, Frontiers in Zoology https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4403823/ (ヘモシアニンと温度、南極のタコ)
- Wikipedia「Branchial heart」 https://en.wikipedia.org/wiki/Branchial_heart (鰓心臓の数と位置)
- Live Science「How many hearts does an octopus have?」 https://www.livescience.com/how-many-hearts-does-an-octopus-have (役割分担の説明、銅の血。検索要旨で確認)
- ScienceBlog「octopus three hearts jet swimming」 https://scienceblog.com/t-octopus-three-hearts-jet-swimming-systemic-heart-stops/ (噴射中に脈が一時途切れること)
なおした ところ
更新履歴
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