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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

光ファイバーは どうして 光で じょうほうを はこべるの?

光ファイバーは、なぜ光で情報を運べるのか

光ファイバー通信の原理:全反射、ガラスの純度、光の点滅

分野:技術

光は まっすぐ すすみます。それなのに、まがった ほそい ガラスの 中を、光が とおりぬけて いきます。どうして そんな ことが できるのでしょうか。1841ねんの、水の 実験じっけんから 見て いきましょう。

光はまっすぐ進むはずなのに、曲がりくねった細いガラスの中を進んでいきます。その理由は、全反射というしくみです。ところが、これだけでは遠くまで届きませんでした。届くようになったのは、ガラスの「純度」に目を向けた人たちがいたからです。そのあと、光がどうやって情報になるのかまで、たどります。

光ファイバーは、コアとクラッドの屈折率のわずかな差による全反射で、光を閉じこめて運ぶ。長距離で使えるかどうかを分けたのは、形よりもガラスの純度だった。1966年のカオらの論文から1970年のコーニング社の成果までを、公開されている解説と技術記事をつき合わせて整理し、光の点滅で信号を送る部分もあわせて見る。

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1. 水の ながれに のる 光

1. 水の流れに沿って進む光:1841年の実験

1. 水の噴流に光を通す:コラドンの実験(1841年)

スイスの コラドンという 人が、1841ねんに、ジュネーブで おもしろい 実験じっけんを したと いわれて います。水の ふき出しに 光を 当てると、光は 水の ながれに そって、曲がって すすんだのです[4]。

あとで、ティンダルという 人が おなじような 実験じっけんを して、たくさんの 人に 知られる ように なりました。光は、まっすぐしか すすめない わけでは なかったのです。

スイスのコラドンは1841年、ジュネーブで、水の噴流(勢いよく出る水の流れ)に光を通す実験をしました。報告は翌1842年です[4]。光は水の流れに沿って、流れの曲がりといっしょに進んだ、と伝えられています。

のちにティンダルが同じような実演をして、この現象は広く知られるようになりました。ティンダルが実演した年は資料によって分かれるため、ここでは年を書きません[4]。

光をあやつるのに、鏡を並べる必要はありませんでした。水そのものが、光の通り道になったのです。では、なぜ水の中に光が閉じこめられたのでしょうか。その答えは、あとの章で出てきます。

スイスのコラドン(Colladon)は、1841年にジュネーブで、水の噴流に光を通し、光が水の流れに沿って曲がる実験を行い、翌1842年にその内容を報告した[4]。のちにティンダル(Tyndall)が同様の実演を行って広く知られたが、その年は資料によって食い違う。1854年(王立研究所)とするものと1870年(王立協会)とするものがある[4]。

光ファイバーの原型ともいえるこの実験は、光を「曲げて運ぶ」発想がすでに19世紀半ばにあったことを示している。ただし、水の噴流は長距離の通信には向かない。ガラスの繊維で同じことをするには、光が逃げないしくみと、光が弱らないガラスの、両方が要った。

2. ガラスの ひもは 2そう

2. 中心と外側、2層のガラス

2. コアとクラッド:2層構造と寸法

光ファイバーを 切って 中を 見ると、まん中の ほそい ぶぶんと、そのまわりを つつむ ぶぶんが あります。どちらも ガラスです。まん中を「コア」、まわりを「クラッド」と いいます[1]。

光が とおる ところは、まん中の コアです。コアは、とても ほそく つくって あります。

光ファイバーは、中心の「コア」と、それを包む「クラッド」という、2層のガラス繊維でできています[1]。光が進むのは、中心のコアです。

標準的なシングルモードの光ファイバーだと、コアの直径は約9マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)、クラッドの直径は125マイクロメートルです[3]。コアはクラッドの14分の1ほどの太さしかありません。

2層のガラスは、どちらも石英ガラスです。ただし、光の進み方が少しだけ違うように作られています。この「少しの違い」が、次の章の主役です。

光ファイバーは、中心のコアと外側のクラッドの2層のガラス繊維でできており、光はコアに閉じこめられて進む[1]。標準的なシングルモード光ファイバー(石英ガラス)では、コア径が約9μm、クラッド径が125μmである。コアの直径はクラッドの約14分の1(9÷125≒0.07)になる[3]。

コアとクラッドは屈折率がごくわずかにしか違わない。ある資料には1.467と1.462の例があるが、数値はファイバーごとに異なる[3]。この数値は検索結果に出た要約で確認したもので、原典の一覧表までは確かめていない。

3. 光が とびはねる しくみ

3. 光が外へ出ない理由:全反射

3. 全反射:屈折率の差が光を閉じこめる

池で 水切りを した ことは ありますか。石を 水の 上に、よこから すべらせるように 投げると、ぽん、ぽんと はずんで すすみます。光ファイバーの 中の 光も、コアと クラッドの さかいめで、はずむように すすんで いきます。

これを「ぜんはんしゃ」と いいます。ただし、ほんとうは 石では なくて 光です。かべに かがみが はって あるのでも ありません[2]。コアと クラッドで、光の すすみ方が ちがうから、光は さかいめで ぜんぶ はね返されて、コアから 出られなく なるのです。

池で水切りをすると、石は浅い角度で水面に当たったときだけ、はずんで進みます。光ファイバーの中の光にも、少し似たことが起きています。コアからクラッドとの境目へ浅い角度で当たった光は、外へ出ずに、すべて中へ跳ね返されます。これが全反射です[2]。

全反射が起きるには条件があります。光が屈折率の大きい物質から小さい物質へ向かうことと、境界面にかなり浅い角度(垂線から測った角が臨界角より大きい状態)で当たることです[2]。コアの屈折率をクラッドより高くしてあるのは、このためです。

よくある誤解は、ガラスの内側に鏡が貼ってある、というものです。実際には鏡ではなく、2つのガラスの屈折率の差だけで光が閉じこめられています[2]。ただ、閉じこめただけでは遠くまで届きません。光がガラスの中で弱まることが、次の章の問題になります。

全反射は、光が屈折率の大きい物質から小さい物質へ向かい、入射角(境界面の垂線から測った角)が臨界角より大きいとき、境界面ですべて反射される現象である[2]。光ファイバーは、コアの屈折率をクラッドより高くすることで、コア内で全反射をくり返させ、光をコアに閉じこめる[2][1]。

誤解しやすい点として、境界に鏡が貼ってあるわけではない[2]。全反射は、屈折率の差だけで起きる。1章の水の噴流の場合に何が境界になっていたかは、今回の資料では確かめていない。

4. 光は きえて いく

4. 問題は形ではなく、ガラスの汚れだった

4. 損失の壁:カオらの1966年の見通し

ところが、光を とおす 道が できても、光が どんどん 弱く なる もんだいが ありました。むかしの ガラスを たばねた ファイバーでは、たった 10メートル すすむだけで、光は 10ぶんの 1に なって しまいます[6]。

1966ねんに、カオさんと ホッカムさんは「ガラスに 入って いる まじりものを へらせば、ずっと 光が とどく はずだ」と 考えました[5]。ガラスの かたちでは なく、まじりものが もんだいだと 見ぬいたのです。

光の通り道ができても、もう一つ壁がありました。光がガラスの中で弱くなることです。そのころ使われていた、ガラスを束ねたファイバーは、1メートル進むごとに光が約1デシベル弱くなりました[6]。10メートルで光の強さは10分の1、100メートルなら100億分の1です。

1966年、カオとホッカムは、ガラスの繊維の損失を1キロメートルあたり20デシベル未満にできる、と論じました[5]。そのころの大きな損失は、ガラスの構造そのものではなく、混ざった不純物が原因だと考えたのです[5]。

20デシベルは、光の強さが100分の1になる大きさです。1キロメートル進んでも、光の1パーセントは残ります[5]。数字だけ見ると小さな残りですが、それまでの束ねたファイバーは1メートルで1デシベル弱っていたので、1キロメートルあたり約980デシベルを減らさなければならない計算でした[6]。

カオが「光ファイバーを発明した」わけではありません。実現できる道筋を示したのが、この論文でした[5]。

損失の単位にはデシベル(dB)が使われ、20 dB/kmは、1km進むと光の強さが100分の1(1%)になる損失である[5]。−10 dBで10分の1、−20 dBで100分の1という対応で、「20倍」ではなく10の−2乗にあたる。

当時の束ねたファイバーは、損失が1mあたり約1 dBだった[6]。1 dB/mは1000 dB/km級に相当し、10mで10分の1、100mで10−10(100億分の1)になる。20 dB/kmに下げるには約980 dB/kmの改善が必要で、桁違いの目標だった[6]。

1966年、カオ(Kao)とホッカム(Hockham)は、ガラスファイバーの損失を20 dB/km未満にできると論じ、当時の大きな損失はガラス自体の構造ではなく不純物によるものだと考えた[5]。カオが光ファイバーを「発明した」わけではなく、実現の道筋を示した、という位置づけになる[5]。原典(Proc. IEE)の本文までは確認しておらず、この記述は技術記事の要約による。

5. きれいな ガラスを つくる

5. 1970年、目標を下回るガラス

5. コーニング社の17 dB/km(1970年)とその後

1970ねんの 8月、アメリカの コーニングという 会社の 人たちが、とても すきとおった ガラスの ファイバーを つくりました。1キロメートル すすんでも、光が 50ぶんの 1ほど のこる ガラスでした[6]。

つくる とき、コアには わざと ちょっとだけ べつの ものを まぜて、光の すすみ方を かえて ありました[7]。じゃまな まじりものを へらす ことと、わざと まぜる ことは、ちがう おはなしです。

1970年8月、アメリカのコーニング社のマウラー、シュルツ、ケックらが、20デシベルを下回る光ファイバーを作りました。8月7日にケックが29メートルの試料を測ると、1キロメートルあたり17デシベルでした[6]。1キロメートル進んだ光は、計算では約2パーセント残ります。

クラッドは純粋なシリカ、コアはチタンを加えたシリカでした[6]。コアにわざと不純物を制御して加えたのは、屈折率を調整するためです。気相堆積という方法で、光を散らす空気のすき間を作らないようにして、層を重ねました[7]。

「不純物を減らす」と「屈折率のために不純物を加える」は、別の話です。使いたくない汚れを取りのぞきながら、必要な成分だけを正確に足す、という両方の作業が同時に行われました。

2009年のノーベル物理学賞の半分は、光ファイバー通信のための、光の伝送に関する画期的な業績としてカオに贈られました[5]。

1970年8月、コーニング社のマウラー、シュルツ、ケックらが20 dB/kmを下回る光ファイバーを実現した。8月7日にケックが29mの試料で17 dB/kmを測り、のちに16.9 dB/kmとなった[6]。17 dB/kmでは、1kmで光は10−1.7、約2%残る。

構成は、純粋なシリカのクラッドと、チタンを加えたシリカのコアである[6]。コアとクラッドとも石英ガラス(シリカは二酸化ケイ素)で、コアに不純物を制御して加え、屈折率を調整した。気相堆積によって空気のすき間(光を散らす)を作らずに層を作った[7]。「不純物を取る」と「屈折率調整のために添加する」は別の操作である。

2009年のノーベル物理学賞の半分は、光ファイバー通信のための光の伝送に関する画期的な業績としてカオに贈られた。残り半分は別の業績(ボイルとスミス)である[5]。ただし、ノーベル財団の公式ページは今回確認できず、受賞理由は技術記事の引用による。

水で 光を 見て みよう

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

コラドンの 実験じっけんの まねを して みましょう。かならず おうちの 人と いっしょに、おふろば か 台所の シンクで やって ください。

水の ふき出しに 光を 当てる

  • ペットボトルの よこに、大人に 小さな あなを あけて もらう。あなを ふさいだ まま、水を 入れます。
  • まわりを くらく して、あなの うしろから かいちゅうでんとうを 当てて、大人に あなの ふさぎを とって もらう。水が 出る すじの 先を 見ると、水の すじが ひかって 見えるでしょうか。

かいちゅうでんとうの 光を、目に 直せつ 当てる ことは しないで ください。

光ファイバーのしくみは、身の回りの水でも、少しだけ確かめられます。

水を使ってためす

  • ペットボトルの側面に、大人に小さな穴を開けてもらう。穴をふさいで水を入れ、お風呂場か台所のシンクの上で試します。
  • 周りを暗くして、穴の後ろから懐中電灯を当てる。穴をあけて、水の筋を見てみましょう。水の筋が光って見えたら、それが1841年の実験の家庭版です。

懐中電灯の光を目に直接当てないでください。ふつうの懐中電灯なら、光の強さは問題ありませんが、レーザーポインターなどは使わないでください。

読んでみる

通信事業者や総務省などが、光回線の解説を公開しています。1と0の点滅が、どこまで詳しく説明されているか、探してみてください。

ペットボトルの側面に穴を開け(大人に頼む)、暗い部屋で穴の後ろから懐中電灯を当て、流れ出る水の筋が光るかを、浴室か台所のシンクの上で確かめられる。コラドンの実験の簡単な再現である。光を目に直接当てないこと、レーザーポインターは使わないことが条件である。

より詳しく調べるなら、光ファイバーの規格を定める団体(ITUなど)や、通信事業者・総務省の日本語の公開資料に、損失や信号方式の数値が載っている。まずはそちらで足りる。さらに英語が読めるなら、任意の補足として、カオらの原論文(Proc. IEE、1966年)と、コーニング社の1970年の成果を扱ったOptics & Photonics Newsの記事が、本文の数値の出どころを確かめる助けになる[6]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

記事で使った資料のうち、公開されているものです。図や文章はそのまま写さず、自分の言葉で書きなおしました。

  1. キヤノン サイエンスラボ「光ファイバー」 https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/08.html (コアとクラッドの2層構造)
  2. パンドウイット「光ファイバーの全反射の仕組み」 https://www.panduit.co.jp/column/naruhodo/5306/ (全反射の説明、鏡ではないこと)
  3. サイバネット「光ファイバの基本構造」 https://www.cybernet.co.jp/optservice/column/trust/05.html (コア径・クラッド径)
  4. Laser Focus World, "Colladon's light jet predates Tyndall's light pipe" https://www.laserfocusworld.com/home/article/16546267/colladons-light-jet-predates-tyndalls-light-pipe (コラドンの水の噴流の実験)
  5. Laser Focus World, "A tribute to Charles Kao" https://www.laserfocusworld.com/blogs/article/16571431/a-tribute-to-charles-kao-the-father-of-fiber-optic-communications (カオらの1966年の見通し、損失の意味、2009年の受賞)
  6. Optics & Photonics News, "The Breakthrough Birth of Low-Loss Fiber Optics"(2020年3月) https://www.optica-opn.org/home/articles/volume_31/march_2020/features/the_breakthrough_birth_of_low-loss_fiber_optics/ (それまでの損失、コーニング社の1970年の成果)
  7. Lightwave Online, "Optical fiber spans 30 years" https://www.lightwaveonline.com/network-design/dwdm-roadm/article/16649147/optical-fiber-spans-30-years (屈折率調整の添加物と作り方)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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