1. 「じゅんばんに かわる」って ほんとう?
1. 「順番に交代している」という説明
1. 一般向けの説明と、研究が示すもの
日本語の ホームページには、そとがわの ペンギンが こおらないように、じゅんばんに いちを かえて いる、と 書かれて います[5]。
ペンギンが 「つぎは きみだよ」と 話しあうので しょうか。そうとは 考えにくいのです。
けんきゅうしゃたちが 見つけた ことは、もう すこし ふしぎでした。この 先で ひとつずつ 見て いきます。
おしくらまんじゅうのような説明
日本語の解説サイトには、ハドルの外側のペンギンが凍えないように、順番に位置を変えていることが知られている、と書かれています[5]。子どもにも思いうかぶ、分かりやすい説明です。
でも、鳥が順番を決めているのだろうか
研究を読むと、少し様子がちがいます。鳥どうしが順番を決める仕組みではなく、一羽ずつの小さな動きが積み重なっています。研究者が示しているのは、一羽ずつの小さな動きの積み重ねです。以下、その中身を順に見ます。
日本語の解説サイトは、ハドルの外側の個体が凍えないよう、順番に位置を変えることが知られていると説明する[5]。一般向けの表現としては分かりやすい。
ただし、個体が順番を取り決めて交代するという証拠は、本メモが参照した研究には見当たらない。以下で扱う研究が示すのは、一羽ずつの局所的な動きと、その集積としての熱の分配である。「順番に」は、その結果を言い表した言葉と読むのが安全だろう。
2. あつまると、そとに でる ぶぶんが へる
2. 寒さにさらされる面が減る
2. 体表面の露出の減少 ── ハドルの省エネの主因
ペンギンが ひとりで いると、体の まわりぜんぶが つめたい 空気に ふれます。あつまると、おなかや よこの 大きな ぶぶんは、なかまに くっついて 空気に ふれなく なります。
おふろで、ひざを かかえて 小さく なると、あたたかい のと にて います。ただし、ペンギンの 体は おふろの おゆでは ありません。
けんきゅうでは、この 「つめたい 空気に ふれる ぶぶんが へる こと」が、あたたかさの 大きな りゆうと 考えられて います[4]。
3. かぜを よける だけでも ちがう
3. 風よけの効果と、外縁の弱点
3. 風よけによる代謝の低下
風が つよいと、おなじ 気おんでも もっと さむく かんじます。ペンギンたちは、なかまを 風よけに します。
けんきゅうでは、はなれて いる ペンギンより、ゆるく あつまった ペンギンは、つかう エネルギーが 39%へって いました[4]。この ちがいには、風よけが かかわって いると されて います。
ぎゅっと つめて うごく ペンギンは、ゆるい むれよりも、さらに 21%へって いたと いいます[4]。ただし、この 二つの すうじは くらべる もとが ちがうので、たしたり しないで ください。
ゆるい群れでも省エネになる
ばらばらに離れている鳥にくらべて、ゆるく集まっている鳥の代謝(生きるために使うエネルギー)は39%低く、この差には風よけが寄与していると報告されています[4]。
さらに詰めると
密集して自由に動ける鳥は、ゆるい群れの鳥よりさらに平均21%低かったそうです。39%と21%は比べる相手が別なので、足し算はできません。
外縁はどうか
それでも、風を直接受けるのは外縁の鳥です。この弱点を、群れ全体でどう分け合っているのかが次の問いです。
4. ひとりずつの ルールだけで、みんな あたたまる
4. 「自分の熱を守る」だけで公平になる
4. 個体モデル ── 熱損失の最小化が等しい暖かさを生む
2012ねんの けんきゅうでは、コンピューターで ペンギンの むれを つくりました。ルールは ひとつだけです。「風を いちばん うけて いる ペンギンは、風の あたりにくい ほうへ うごく」。
すると、だれか ひとりが ずっと さむい ままには なりませんでした。みんなが ほとんど おなじくらい、むれの あたたかさに あずかれたと いいます[3]。
ペンギンに しれいかんは いません。それでも、それぞれが じぶんを まもろうと するだけで、いつのまにか みんなに じゅんばんが まわって くる かたちに なります。ただし、これは 計算の けっかで、じっさいの ペンギンの 話では ありません。
コンピューターの中のハドル
2012年の研究は、ペンギンのハドルを計算モデルで再現しました。仮定はひとつだけで、風を最も受ける外縁の個体が、風下側の守られた場所へ移る、というものです[3]。
結果は「ほぼ平等」
各個体が自分の熱損失を減らそうとするだけで、全員がほぼ等しくハドルの暖かさにあずかれる、という結果になりました[3]。司令塔も、交代のルールも置いていません。
これはモデルの計算です。ペンギンが本当にこの規則で動いているかどうかは、別に確かめる必要があります。
2012年のPLOS ONEのモデル研究は、風を最も強く受ける外縁の個体が風下側の守られた場所へ移動し、各個体が自分の熱損失を最小化しようとするという単一の仮定だけで、全員がほぼ等しくハドルの暖かさに近づけることを示した[3]。
この結果は計算によるもので、実測ではない。それでも、「順番を取り決める個体や司令塔がなくても、局所的な規則の積み重ねが公平な配分を生みうる」という、一般向けの説明とは別の筋道を示している。
5. ほんものの ペンギンでも、みんな あたたかかった?
5. 実際に測ってみると
5. 実測 ── 個体標識ペンギン8羽の記録
けんきゅうしゃは、ペンギン 8わの 羽に、きおんを はかる 小さな そうちを つけました。この そうちの きろくから、むれの 中に いる 時間の わりあいが ちがっても、しらべた ペンギンの きろくでは、どの ペンギンも あたたかい ばしょに ていきてきに ちかづけて いたと ほうこくされて います[1]。
ずっと ぎゅっと あつまって いるのでは ありません。あつまって いる 時間は、ぜんたいの 38%くらいで、ひとつの まとまりは へいきん 1.6時間ほど でした[1]。ひとつの まとまりは みじかく、長さも まちまちでした。
しらべた のは 8わです。ぜんぶの ペンギンが そうだと までは、いえません。
6. ちいさな 一ぽの なみ
6. 30〜60秒ごとに起こる小さな一歩
6. 波のような動きと、その役割の提案
ゆらゆらと、ペンギンたちが ほとんど 同じ ときに ちいさく 一ぽ ずつ うごく ことが あるそうです。30びょうから 60びょうごとに おきて、なみのように むれの ぜんぶに つたわって いくと ほうこくされて います[2]。
この 動きの やくわりについて、研究した 人たちは、むれを ぎゅっと つめなおす こと、むれ ぜんたいが うごいたり、小さな むれが くっついたり する こと、などを かんがえて います[2]。ただし、これは 「こうでは ないか」という ていあんです。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
おうちで、じぶんの 体で ためして みましょう。すずしい へやで、さきに どちらの しせいから ためすか きめて、おなじ へやで 30びょうずつ くらべます。手足を ひろげて 立つのと、ひざを かかえて ちいさく すわるのです。どちらが さむく ないか 考えます。さむく なったり くるしく なったら、すぐ やめましょう。
ペンギンの ことを もっと 知りたい ときは、ホームページ「きこうへんどう いきもの だいちょうさ」も 日本語で 読めます。
今日できること:涼しい部屋で、先に試す姿勢を決め、同じ部屋で手足を広げて立った姿勢とひざを抱えて小さく座った姿勢を30秒ずつ試し、どちらが寒さを感じにくいか比べてみてください。体が外の空気にふれる面積の話を、体で確かめる方法です。冷えたり苦しくなったりしたら、すぐやめましょう。
公式情報:日本語の解説として、「気候変動いきもの大調査」(ccbio.jp)があります。研究の原典は、出典欄の論文です。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:ペンギンの群れの行動を扱った学術論文と、日本語の一般向けサイトを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Gilbert et al. (2006) Physiology & Behavior、著者原稿(arXiv)。https://arxiv.org/pdf/q-bio/0701051 (ハドルの時間の割合と長さ、8羽の記録について)
- Coordinated Movements Prevent Jamming in an Emperor Penguin Huddle, PLOS ONE (2011)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3106014/ (30〜60秒ごとの波のような動きと、その役割の提案について)
- Modeling Huddling Penguins, PLOS ONE (2012)。https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0050277 (個体ルールだけで熱を公平に分け合えるモデルについて)
- Energy saving processes in huddling emperor penguins: from experiments to theory, Journal of Experimental Biology。https://journals.biologists.com/jeb/article/211/1/1/17434/Energy-saving-processes-in-huddling-emperor (体表面の露出の減少と風よけによる省エネの内訳について)
- 気候変動いきもの大調査。https://ccbio.jp/topics/k003 (「順番に位置を変える」という一般向けの説明について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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