1. むかしの じゅうでんきは、ほかの 会社の でも 使えたの?
1. 2004年より前は、メーカーごとに充電の仕様が違った
1. なぜ古い充電器は合わないのか ── 2004年以前のメーカー独自仕様とドコモの統一
おうちの ひきだしの おくに、ふるい じゅうでんきが ねむって いませんか。いまの スマートフォンに さそうと、形が ちがって はいらない ことが あります。
むかしは、携帯電話を つくる 会社ごとに、じゅうでんの しくみを 自分で きめて いました。NTTドコモは、2004ねんより まえは そうだったと せつめいして います[1]。
2004ねん いこうの FOMA という 電話では、じゅうでんの きまりを そろえて、ACアダプタ(コンセントに さす 部分)を みんなで 使える ものに した、と いいます[1]。
ただし これは ドコモ 1しゃの はなしです。日本ぜんぶが そろった という ことでは ありません。
引き出しの奥に、使わなくなった携帯電話の充電器が眠っている家は多いと思います。今のスマートフォンに差そうとしても、形が合わないことがあります。
NTTドコモの技術解説によると、2004年より前は、各メーカーが独自に充電の仕様を設計していました。2004年以降のFOMA端末では、充電の仕様を統一し、ACアダプタを共通化したと説明されています[1]。
この説明は、ドコモ1社の話です。日本の携帯電話全体が、このとき1つにそろったという意味ではありません。
ここに出てくる「ACアダプタ」は、コンセントの交流の電気を、機器に合う直流に変える部品です。充電器と呼ばれるものの中身は、ほとんどこれです。
引き出しの奥の古い充電器が、今のスマートフォンに合わないのはなぜか。NTTドコモの技術解説によれば、2004年より前は各メーカーが独自の充電仕様を設計していた。ところが2004年以降のFOMA端末では、充電仕様を統一し、ACアダプタを共通化したという[1]。
ただし、これは1事業者の取り組みであり、国内全体の統一ではない。
「統一」が事業者単位から始まったことは、後の業界規模の動き(次章)と対比すると位置づけが見えやすい。では、業界全体で共通化を約束したのは、いつのことか。
2. 「みんなで そろえよう」と、いつ やくそくしたの?
2. 2009年、業界が「充電器の共通化」を約束した
2. 業界はいつ、共通化を約束したのか ── 2009年のGSMA宣言とITU-T L.1000
2009ねんの 2がつ、せかいの 携帯電話の 会社など 17しゃが、ある 約束を はっぴょうしました。2012ねんまでに、じゅうでんきを 共通に しよう、という ものです[2]。
つかう 形は Micro-USB(マイクロ ユーエスビー)。つかって いない ときに 使う 電気を へらす ことも ねらいでした[2]。
おなじ 年の 10がつには、せかいの 国ぐにが つくる きかん ITU が、Micro-USB を もとに した「ユニバーサル じゅうでん」の きまりを みとめました[3]。これから できる 電話にも、おなじ じゅうでんきを 使える ように する ものです。
ただし どちらも、ほうりつでは ありません。みんなで する やくそくや、すすめる きまりでした。
2009年2月、GSMA(世界の携帯電話事業者の団体)と、携帯メーカー・通信事業者17社が、2012年までに携帯電話の充電器を共通化する方針を発表しました。Micro-USBを使い、待機時の消費電力を減らすことも目標に含まれていました[2]。
同じ年の10月には、国連の機関であるITUが、Micro-USBを基にした「ユニバーサル充電ソリューション」を承認しました(勧告ITU-T L.1000)。同じ充電器を将来の機種でも使えるようにし、効率は4つ星以上を求める内容でした[3]。
どちらも、法律ではありません。業界の自主的な約束と、国際的な勧告です。また、L.1000には2019年7月の現行版があり、2009年当初の内容と同じとは限りません。
1社の統一を、業界全体に広げようという動きはあったのか。あった。2009年2月、GSMAと携帯メーカー・通信事業者17社は、2012年までに携帯電話の充電器を共通化する方針を発表した。採用するのはMicro-USBで、待機時消費電力の削減も掲げた[2]。
約束は業界の内側にとどまらなかった。同年10月、ITUがMicro-USBを基にした「ユニバーサル充電ソリューション」を承認している(ITU-T L.1000)。同じ充電器を将来の全機種で使えるようにする内容で、効率は4つ星以上を求めた[3]。ただし、現行のL.1000は2019年7月版が最新で、2009年当初の版と内容が同一とは限らない。
いずれも法的拘束力のある規則ではなく、業界の自主的な取り決めと国際勧告である。では、目標年の2012年に何が起きたのか。
3. 「どっちむきでも させる」形は、いつ でて きたの?
3. 2012年のLightning、2014年のType-C ── 向きを選ばない口
3. 目標の年に現れたのは別の口だった ── 2012年Lightning、2014年USB Type-C
その 2012ねんの 9がつ12にち、Apple(アップル)の iPhone 5 と いっしょに、あたらしい さしこみ口が でて きました。Lightning(ライトニング)です[4]。
まえの 30ぽんの ピンの 口に かわる もので、ピンは 8ぽん。どちらの むきでも さす ことが できます[4]。ただし、USB ではなく、Apple だけの きまりです。
2年後の 2014ねん 8がつ11にちには、USB Type-C(タイプ シー)の きまりが、USB-IF という なかまの あつまりから ひらかれました。ピンは 24ぽんで、こちらも うえ したの どちらでも させます[5]。
2009ねんの やくそくの ねらいの 年に、べつの 形が うまれて いた ことが わかります。
2012年9月12日、AppleはiPhone 5とともにLightningを発表しました。それまでの30ピンのドックコネクタに代わる8ピンの端子で、向きを気にせず差せます[4]。ただしLightningはAppleの独自規格で、USBではありません。
2014年8月11日には、USB Type-Cの規格1.0がUSB-IF(USBの仕様を決める団体)から公開されました。ピンは24本で、こちらも上下どちら向きでも差せます[5]。
2009年の共通化の約束で目標にされた2012年に、業界とは別の形の端子が登場していたことになります。
目標年の2012年に登場したのは、Micro-USBではなかった。Appleは9月12日、iPhone 5とともにLightningを導入し、30ピンのドックコネクタから置き換えた。8ピンで、リバーシブル(向きを問わず接続できる)だが、USBではなくApple独自規格だ[4]。
もう一つの答えは、2年後に出る。USB-IFが2014年8月11日に公開したUSB Type-C仕様1.0で、こちらは24ピンのリバーシブルコネクタである[5]。
2009年の宣言が掲げた目標年の前後に、Micro-USBとは別のコネクタが2種類(独自1、標準1)出そろったことになる。同じ形の口なのに、なぜケーブルごとに能力が違うのか。
4. 同じ 形なのに、どうして 速さが ちがうの?
4. 見た目が同じUSB-Cでも、ケーブルの中身が違う
4. 同じ形なのに能力が違うのはなぜか ── 60W・100W・240Wとe-Marker
USB-C の ケーブルの 中を、水の ホースに たとえて みます。口の 形は おなじでも、中の 通り道の 太さが ちがえば、いちどに ながせる 水の りょうも ちがいます。ただし ほんとうは 水では なく 電気で、太さは 電気の 大きさや 線の かずの ちがいです。
USB-C の ケーブルには、60ワットまで おくれる ものと、100ワットまで おくれる ものが あります[6]。あたらしい きまりの 上では、240ワットまで おくれる ものも あります[6]。60ワットの 4ばいです。
USB 2.0 用の ケーブルは、中の 線が すくなく、USB 2.0 の つうしんと 電気の やりとりしか できません[5]。
おおくの ケーブルには、e-Marker(イーマーカー)という 小さな チップが はいって いて、「わたしは ここまで できます」と きかいに つたえます[5]。
240ワットは いちばん 大きい ばあいです。手もとの ケーブルや じゅうでんきが、そこまで 出せる とは かぎりません。
USB-Cケーブルの中身を、水道のホースに例えてみます。口の形が同じでも、中の通り道が太いか細いかで、一度に流せる水の量は変わります。ただし本当は水ではなく電気で、違いは電圧・電流の大きさや配線の数です。
USB-IFの資料などによると、標準のケーブルは3A・20Vまで(最大60W)で、従来の5A・20Vなら最大100Wまで送れます。さらにUSB PD 3.1の拡張範囲(EPR)では、5Aのまま電圧を最大48Vまで上げて、最大240Wまで規格が想定されています[6]。100Wは20Vのときの値で、5Aだから100Wが上限、というわけではありません。240Wは60Wの4倍、100Wは60Wの約1.7倍です。
通信の面でも違いがあります。USB 2.0用のType-Cケーブルは配線が少なく、USB 2.0の通信と電力供給だけができます[5]。多くのケーブルには、e-Markerというチップが入っていて、ケーブルの能力を機器に伝えます[5]。
240Wはあくまで最大値です。手持ちのケーブルや充電器が、そこまで出せるとは限りません。
違いを決めるのは、電圧と電流の組み合わせだ。ケーブルの電力は、3A・20Vで最大60W(20×3)、従来の5A・20Vで最大100W(20×5)になる。さらにUSB PD 3.1のEPRでは、5Aのまま電圧を48Vまで上げ、240W(48×5)まで想定されている。100Wは20V条件での値で、「5A=100W」ではない。USB-IFは、100W(20V・5A)から28V(140W)・36V(180W)・48V(240W)への拡張を掲げる[6]。3A=60W、5A=100Wの対応はウィキペディアの記述による[5]。
では、能力のちがいは機器にどう伝わるのか。同じ形のコネクタでも配線が異なり、USB 2.0用のType-Cケーブルは配線が少なく、USB 2.0の通信と電力供給に限られる。多くのケーブルはe-Markerチップを持ち、ケーブルの能力を機器側に伝える[5]。60Wの4倍が240Wである(筆者計算)。
ただし240Wは規格上の最大値であり、実際のケーブルや充電器が出せるとは限らない。
5. ヨーロッパは、どうして「USB-C に そろえる」と きめたの?
5. EUは、なぜUSB-Cの充電口を義務にしたのか
5. EUはなぜ規則にしたのか ── 指令2022/2380と、電子ごみの見積もり
ヨーロッパの EU という グループは、きまりを つくりました。2024ねん 12がつ28にち いこうに EU で うられる、携帯電話、タブレット、デジタルカメラ、ヘッドホン、もちはこびの ゲームきなどは、USB-C の じゅうでん口が 義務に なりました[7]。ノートパソコンは 2026ねん 4がつ28にちからです[7]。
はやく じゅうでんする ための つうしんの しかた(USB PD)も そろえます。ただし、どの じゅうでんきでも かならず おなじ 速さに なる、という ことでは ありません。じゅうでんきが ついて いる かどうかを えらべる ように して、はこには じゅうでんの とくちょうを 書きます[7]。
りゆうの ひとつは、ごみと おかねです。EU の 見つもりでは、携帯電話の じゅうでんきは 1年に 1万1000トンの 電子ごみに なって います。むだな じゅうでんきを 買わなく なれば、1年に さいだい 2おく 5000まん ユーロ、へらせると いいます[8]。「さいだい」ですから、上の ほうの 数字です。
2023ねんに でた iPhone 15 は、はじめての USB-C の iPhone です。EU の きまりに あわせる ことが、はいけいに あったと いわれます[4]。2025ねん 2がつまでに、うって いる iPhone は ぜんぶ USB-C に なりました[4]。
これは EU で うる ものの はなしです。日本で おなじ きまりが あるかは、この 記事では しらべて いません。
EUは指令2022/2380で、携帯電話・タブレット・デジタルカメラ・ヘッドホン・携帯ゲーム機などについて、2024年12月28日以降にEU市場に出すものにはUSB-Cの充電口を必須としました。ノートパソコンは2026年4月28日からです[7]。
急速充電の通信方式(USB PD)もそろえます。ただし、どの充電器でも必ず同じ速さになるという意味ではありません。充電器つきかなしかを選べるようにして、充電の特徴を箱に表示します。充電器の別売りの影響は、2026年12月までに欧州委員会が報告することになっています。別売りが義務になったわけではありません[7]。
理由の1つは、電子ごみと費用です。欧州議会などの見積もりでは、携帯電話の充電器は年に約1万1000トンの電子ごみになっており、不要な充電器の購入を年に最大2億5000万ユーロ減らせるとされます[8]。「最大」なので、上限に近い数字です。
この動きを受けて、2023年発表のiPhone 15とiPhone 15 Plusが、初のUSB-C搭載iPhoneになりました。EUの規則への対応が背景にあったと説明されています。2025年2月までに、販売中のiPhoneはすべてUSB-Cになりました[4]。
これはEU市場の話です。日本に同じ規則があるかは、この記事では調べていません。
業界の約束や標準だけでは、充電口はそろわなかったのか。EUは規則で、そろえる側に回った。EU指令2022/2380は、携帯電話・タブレット・デジタルカメラ・ヘッドホン・携帯ゲーム機などについて、2024年12月28日以降にEU市場へ出す製品にUSB-Cの充電口を必須とした。ノートPCは2026年4月28日からである[7]。
ただし、そろえるのは口の形だけではない。急速充電の通信方式(USB PD)も調和させる。とはいえ、どの充電器でも同じ速さになると定めたわけではない。充電器つき・なしの選択肢と、箱への充電特性の表示も求める。充電器の別売りの影響は、2026年12月までに欧州委員会が報告する。別売り自体は義務化されていない[7]。
では、なぜ規則にしたのか。理由の一つが、電子ごみと費用である。欧州委員会・欧州議会の見積もりでは、携帯電話の充電器は年に約1万1000トンの電子廃棄物となり、不要な充電器の購入を年に最大2億5000万ユーロ削減できる[8]。「最大」は上限値で、実績ではない。
この規則は、企業の側の動きも変えた。iPhone 15とiPhone 15 Plus(2023年)は初のUSB-C搭載iPhoneで、EU規則への対応が背景にあったとされる。2025年2月までに、販売中のiPhoneはすべてUSB-Cとなった[4]。日本での同様の規則の有無は、本稿では調べていない。
6. 家の じゅうでんきと ケーブルを、見て みよう
6. 家のケーブルを見比べてみる
6. 出口 ── 手もとのケーブルで確かめる/原典を読む
家に ある ケーブルを、ぜんぶ ならべて みましょう。さしこむ 口の 形は、なん しゅるい あるでしょうか。見るだけで、つないだり ぬいたり しなくて だいじょうぶです。
つぎに、じゅうでんきの 小さな 字を さがします。「W(ワット)」などの 数字が 書いて ある ことが あります。ある ときは、おうちの 人と 見て みてください。わからない ときは、そのままで よいです。
もし、むかしの きかいが ひきだしに あれば、いまの ケーブルと 口の 形を くらべると、この 記事の はなしが 目で わかります。
家にあるケーブルを並べて、口の形が何種類あるか数えてみます。見るだけにして、機器につないだり、抜き差ししたりはしません。
次に、充電器の小さな文字を探します。「W」などの数字が書かれていることがあります。ケーブルに文字がない場合も多いので、見つからなくても問題はありません。使っているときに熱くなっているものには触らないでください。
引き出しに古い機器があれば、今のものと口の形を比べてみます。この記事の話を、目で確かめられます。
原典を読むなら、USB-Cの電力の資料はUSB-IFのページ(英語)[6]、EUの規則は欧州議会の要約(英語)[7]に載っています。
手もとのケーブルを並べ、コネクタの種類を数える。観察のみとし、機器への接続や抜き差しはしない。次に、充電器の表示を探す。W(またはV・A)の数字が記載されていることがあるが、ケーブル側に電力の表示がない場合も多く、見つからなくても問題はない。使用中に熱を持っているものには触れない。
そのうえで、本稿の年表(2004年の統一、2009年の宣言、2012年のLightning、2014年のType-C、2022年のEU指令)のどこに自分の機器が入るかを考える。分類は、自分の持ち物についてだけ行う。
原典に当たるなら、USB-IFのUSB Charger / Power Deliveryのページ[6]、欧州議会立法観測所の指令要約[7]、欧州議会の2022年6月の発表[8]が英語で読める。日本語の資料は、NTTドコモの解説[1]がある。指令本文(EUR-Lex)やUSB Type-C仕様書も、追うなら読んでみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:企業の技術解説、業界団体・国際機関の発表を報じた記事、USB-IFのページ、欧州議会の資料、ウィキペディアを使いました。倍率の計算は筆者が行いました。
- NTTドコモ「端末の電源系と電池パック」。 https://www.docomo.ne.jp/corporate/technology/rd/tech/terminals/packs_and_chargers/02/ (2004年前後の充電仕様の統一)
- TechCrunch「2012: Year of the universal mobile charger」(2009年2月17日)。 https://techcrunch.com/2009/02/17/2012-year-of-the-universal-mobile-charger (2009年の共通化の方針発表)
- TechCrunch「ITU approves standard for universal phone charger」(2009年10月26日)。 https://techcrunch.com/2009/10/26/itu-approves-standard-for-universal-phone-charger/ (ITU-T L.1000の承認)
- Wikipedia「Lightning (connector)」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Lightning_(connector) (Lightningの登場、iPhoneのUSB-C移行)
- Wikipedia「USB-C」。 https://en.wikipedia.org/wiki/USB-C (Type-Cの公開、ケーブルの配線の違いとe-Marker)
- USB-IF「USB Charger / Power Delivery」。 https://www.usb.org/usb-charger-pd (100Wと240Wへの拡張)
- 欧州議会 立法観測所「指令2022/2380の要約」。 https://oeil.europarl.europa.eu/oeil/en/document-summary?id=1726604 (USB-C義務化の対象と日付、表示ルール)
- 欧州議会プレスルーム「Deal on common charger」(2022年6月)。 https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20220603IPR32196/deal-on-common-charger-reducing-hassle-for-consumers-and-curbing-e-waste (電子ごみと費用の見積もり)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
- 「5Aのケーブル=最大100W」と読めないよう、100Wは従来の20V条件での値で、USB PD 3.1のEPRでは5Aのまま48Vまで上げて240Wになることを明記。
- 中学生むけの文章を、問いとつなぎのある書き方に直した(事実・数字・出典は変えていない)。
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