1. 「M6」って、なんの ことかな?
1. 「M6」の中身を読む
1. ISOメートルねじの表記 ── M6が意味するもの
「M6」の Mは メートルねじの しるしです。あとの 6は、ボルトの直径が 6ミリ、と いう 意味です[5]。
ねじの 山の 角度は 60度で、左右が おなじ V の 形です[5]。
たとえば、たんさん 電池は、どこの 会社の ものでも おなじ 大きさなので、その 大きさの 電池を つかう おもちゃなら 入ります。ねじも、おなじ メートルねじの きまりで、大きさも 山の あいだの ひらきも そろえて 作った ボルトと ナットなら、会社が ちがっても 合います。きまりが ちがう ねじとは 合いません。
この きまりは、はじめから あった わけでは ありません。まず むかしの ようすから 見ます。
「M6」のMはメートルねじを表し、続く数字は外径のミリ数です。M6なら、ねじの外径が6mmという意味になります。山の角度は60度で、左右対称のV字形をしています[5]。同じISOメートルねじの規格(同じピッチ・公差)に合うボルトとナットなら、山の間隔(ピッチ)や寸法の許される幅(公差)まで含めて、国をこえて合います。
どの外径のとき山の間隔をいくつにするか、という組み合わせも、ISO 261という規格が決めています[5]。
単三電池がメーカーを問わず同じ大きさなので、その大きさの電池を使う機器に入るのに似ています。ただし電池は、大きさが1種類そろえば足りますが、ねじは、外径・山の形・山の間隔が全部そろって初めて合います。
この決まりは最初からあったのではありません。約180年前まで、ねじは会社ごとの自己流でした。
ISOメートルねじの「M」の後ろの数字は外径のミリ数で、M6は外径6mm。山は60度の左右対称のV形だ。径とピッチ(山の間隔)の組み合わせはISO 261が定める[5]。同じISOメートルねじの規格・ピッチ・公差に合うボルトとナットであれば、メーカーや国が違っても組み合わせられる。
ねじが合うには、山の角度・山の形・外径・ピッチのすべてが揃う必要がある。これらが標準化される以前の状況から、順に見ていく。
2. 1841ねん、さいしょの あんが 出た
2. 1841年、ウィットワースの提案と鉄道会社
2. ウィットワース(1841)── 最初の国家的ねじ規格とされる案
1841ねんより 前の イギリスでは、ねじは 会社ごとに、じぶんの きまりで 作って いました。わずかな れいを のぞいて、みんなで つかう ひょうじゅんは なかったと せつめいされて います[2]。
この 年、ジョセフ・ウィットワースさんが、ねじの 形を 決める あんを 出しました。山の 角度は 55度で、山の さきと 谷の そこは まるく します[2]。
この あんは、イギリスの 鉄道の 会社が たくさん つかい はじめた ことで ひろまりました。国が ほうりつで 決めたのでは なく、つかう 人が ふえて、ひょうじゅんに なって いったのです[3]。
1841年、ジョセフ・ウィットワースは、イギリス土木学会で「均一なねじ山の体系」という論文を発表しました。ねじ山の角度は55度、山の頂と谷底は丸く、外径ごとに1インチあたりの山の数も決めるという案でした[2]。
当時は、個人や会社が自分の寸法で作るのが普通で、共通の決まりと呼べるものはほとんどなかったと説明されています[2]。
広めたのは鉄道会社
この提案は、法律で決まったのではありません。多くのイギリスの鉄道会社が使い始め、イギリスと大英帝国の標準として広がったとされます[3]。鉄道会社は、ねじ山もボルトの頭もナットの形も、それまでは各社で違っていました[3]。
「世界初の国家的なねじ規格」と紹介する資料がありますが、この「国家的」は、国が定めたという意味ではなく、国の中で標準として通用した、という意味に近いようです[2]。
3. 55度は、切りにくい?
3. 1864年、アメリカで60度の案が出る
3. セラーズ(1864)── 60度・平らな山頂の系統
1864ねんの 4月、アメリカの ウィリアム・セラーズさんが、あたらしい あんを、フランクリン協会で 発表しました。
山の 角度を 60度に して、山の さきと 谷の そこを たいらに する あんです[1]。
りゆうは、ふつうの 工場で はたらく 人には、60度の ほうが 切りやすかったからと されています[1]。55度は はかりにくく、まるい 山は よわい と かんがえた、と せつめいする しりょうも あります[4]。
この 年の 12月15日に、協会の いいんかいが この あんを みとめました[1]。
1864年4月、フィラデルフィアのウィリアム・セラーズ(1824〜1905)が、フランクリン協会で論文を発表しました。角度は60度、山の頂と谷底は平らにするという案でした。同じ年の12月15日には、協会の委員会がこれを承認しました[1]。ウィットワースの提案から23年後のことです。
60度にした理由として、ASMEは、普通の機械工が切りやすいことを挙げています[1]。別の資料は、セラーズが55度を測りにくいと考え、丸い山は弱いと考えたと説明しています[4]。こちらは二次資料のまとめなので、そう考えたとされる、というくらいに読んでおきます。
角度が分かれた理由
5度の差は小さく見えます。しかし、現場で刃物を作り、刃物で切り、出来上がりを測る人にとっては、60度のほうがやりやすかった、というのが分かれ目だったようです。理論より、現場の事情が案を分けました。
数年のうちに、政府の工場、主な鉄道会社、工作機械のメーカーなどがこの方式を使い始めたと説明されています[4]。
4. 「合う」と、なにが うれしいの?
4. 部品が入れ替えられる利点
4. 米国での普及 ── 互換性と修理
アメリカでは、1880ねんだい までに、この ねじが 工場で ひろく 使われる ように なりました[1]。
ねじが そろうと、部品が 入れかえられます。こわれた とき、おなじ 大きさの ものを つければ、なおせます。タイプライターから きかんしゃまで、たくさんの きかいに やくに たったと せつめいされて います[1]。
あなたの 家の 自転車が こわれた とき、店で おなじ 大きさの ねじを 買って なおせるのは、そろって いるからです。
セラーズ方式は、1880年代までにアメリカの産業に広まりました。ASMEは、この広がりが、機械の部品を入れ替えられるようにし、生産性を上げ、修理をやさしくし、いろいろな機械メーカーを結びつけたと説明しています[1]。タイプライターから機関車まで、幅広い機械の話です。
どこかが壊れたとき、同じ規格のねじを買ってくれば直せる。たとえば自転車のねじが1本なくなっても、店で同じ大きさを探せるのは、規格が揃っているおかげです。
ただし、ここまでの話は、アメリカの中の話です。大西洋の向こうのイギリスでは、別の形が使われ続けていました。
セラーズ方式は1880年代までに米国の産業界に広く普及した。ASMEは、互換部品を使った機械(タイプライターから機関車まで)の実現、生産性の向上、修理の簡素化、複数の機械メーカーの連携につながったと説明する[1]。
この時点で、英国はウィットワース系(55度・丸い山)、米国はセラーズ系(60度・平らな山)と、インチ系だけでも2つの体系が並んでいた。次に現れるのは、寸法の単位そのものを変えた体系だ。
5. ミリで そろえた ねじが できた
5. 1898年、メートルねじが国際的に
5. 国際メートルねじ(1898)── 60度・ミリ寸法
1898ねんに、国どうしの かいぎが ひらかれ、ミリを つかう メートルねじで、おおくが そろいました[3]。
この 国さいメートルねじは、セラーズの ねじと おなじ 60度の 形で、大きさだけが ミリに なって いました[3]。
ミリに かわっても、山の 60度は そのまま でした。ただし、かいぎで だれが どう 決めたかは、しりょうに よって せつめいが すこし ちがいます。
1898年には、国際会議で、山の形はセラーズのねじと同じ60度のまま、寸法だけをミリにした「国際メートルねじ」で、大部分が統一されたとされています[3]。
会議に集まった国や、だれがどう決めたかは、資料によって説明が少し違います。
見どころは、60度の形が、大西洋を越えてヨーロッパ大陸にも受け入れられたことです。単位はインチからミリに変わっても、山の形は同じものが使われました。
1898年の国際会議で、セラーズと同じ60度の形状でミリ寸法とした国際メートルねじにより、大部分が統一されたとされる[3]。参加国や決定の経緯は資料により説明が異なるため、本稿では扱わない。
ここで、60度の山という形は、ウィットワース系(55度)との対比で、米国とメートル系が共有することになった。単位はインチとミリで別だが、山の形は同じだ。
6. インチと ミリの 中間で、ゆずりあい
6. 1948年、ユニファイねじという折り合い
6. ユニファイねじ(1948)── 米英加の折り合い
アメリカ、イギリス、カナダの あいだでは、部品が 合わない ことが 大きな こまりごとに なって いました。インチの ねじを そろえる 話が すすみます[3]。
1948ねんごろ、アメリカ・イギリス・カナダの 3つの 国が、ユニファイねじの やくそくを しました。1949ねんと する しりょうも あります[3]。
この ねじは、ゆずりあいで できたと せつめいする しりょうが あります。イギリスは 60度の 角度を うけ入れ、アメリカは 谷の そこを まるくする ことを うけ入れた、と いうのです[6]。ただし、これは くわしく たしかめられて いない せつめいです。
7. 世界の ものさしと、日本
7. ISOと日本のJIS
7. ISO・JIS ── 国際規格への一本化
せかいの きまりを 作る だんたいに、ISOが あります。ねじの ための いいんかいが あり、きほんの 形と 山の あいだの ひらき、大きさの しゅるいを、できるだけ すくなく そろえる 仕事を している と せつめいされて います[8]。
ISOの インチの ねじには、ユニファイねじだけが 入り、ウィットワースの ねじは 入って いません[5]。
日本では、1949ねんに こうぎょうひょうじゅんかほうが できて、1952ねんに、メートルねじと インチの ねじの JISが 作られました。1965ねんごろから ISOに あわせて なおされ、ウィットの ねじは 1968ねんの 3月までで 使わない ことに なりました[7]。
ISO(国際標準化機構)には、ねじを担当する専門の委員会があります。互換性のあるねじの系列を、基本の形・ピッチ・径の種類をできるだけ少なくして標準化する役目と説明されています[8]。
ISOのインチねじはユニファイねじだけで、ウィットワースねじは入っていません[5]。1841年に最初に提案された形は、国際規格の中には残らなかったわけです。
日本のJIS
日本では、1949年に工業標準化法が公布され、1952年にメートル並目ねじとインチ並目ねじのJISが制定されました。1965年ごろからISOに合わせた改正が進み、ウィットねじは1968年3月限りで廃止と決められました[7]。
ピッチの改正は1967年4月です[7]。改正、ピッチ、廃止は年が別で、別の出来事です。
8. 家の ねじを 見て みよう
8. 手元のねじで、M表示を探してみる
8. 出口 ── 手元のねじを読む/原典に当たる
家に ある ねじや ボルトの 入った ふくろや はこを さがして みましょう。ふくろの ひょうじに「M3」や「M5」と 書いて ないか 見ます。
Mの あとの 数は、ミリの 直径です。ものさしを あてて、ほんとうに その 大きさか くらべても おもしろいです。
あぶないので、ねじを はずす ために、電気の せいひんや 自転車を ばらばらに しては いけません。すでに はずれて いる ものだけを 見ます。
家に、ねじや小さなボルトの入った袋、箱、工具セットなどがあれば、「M3」「M5」のような表示を探してみてください。Mの後ろの数字が外径のミリ数です。
ものさしでねじの太い部分を測り、表示の数字に近いかどうかを、目安として比べてみましょう。ものさしの目盛りでは細かい差までは分からないので、ぴったり合わなくても構いません。
ねじを取るために、電気製品や自転車などを分解する必要はありません。すでに外れているもの、袋や箱に入っているものだけを観察してください。
ねじの歴史を日本語で詳しく読める資料として、富田螺子の「ねじの歴史」があります[7]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:ASME(米国機械学会)のランドマークのページ、ウィキペディア(英語版)の複数の項目、threadcheck.comの解説、富田螺子のサイト、日本規格協会の対談PDFを使った。ユニファイの折り合いとISOの担当範囲は、限られた資料にもとづくため、断定を弱めている。
- ASME「The United States Standard Screw Threads」(ASME Landmark)。 https://www.asme.org/about-asme/engineering-history/landmarks/234-the-united-states-standard-screw-threads (1864年のセラーズの発表と、普及の説明について)
- 「British Standard Whitworth」英語版ウィキペディア。 https://en.wikipedia.org/wiki/British_Standard_Whitworth (1841年のウィットワースの案について)
- 「Screw thread」英語版ウィキペディア。 https://en.wikipedia.org/wiki/Screw_thread (鉄道会社による採用、メートルねじ、ユニファイねじの経緯について)
- 「William Sellers」英語版ウィキペディア。 https://en.wikipedia.org/wiki/William_Sellers (セラーズが60度を選んだ考えと採用の広がりについて)
- 「ISO metric screw thread」英語版ウィキペディア。 https://en.wikipedia.org/wiki/ISO_metric_screw_thread (M表示の意味と、ISOのインチねじについて)
- threadcheck.com「Unified Screw Threads: A New American Standard」。 https://www.threadcheck.com/unified-screw-threads-a-new-american-standard (ユニファイねじの折り合いについて)
- 富田螺子「ねじの歴史」。 https://tomitarashi.com/screwhistory.html (日本のJISのねじの変遷について)
- 日本規格協会「標準化と品質管理」対談(PDF)。 https://www.fij.or.jp/blog/SQ1302(103-106)ISO-taidan.pdf (ISOのねじの委員会の役目について)
なおした ところ
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