1. でんちが ないのに、ひばなが でるって ほんとう?
1. 電池なしで火花が出る方式と、電池で火花を出す方式
1. 電池なしの点火 ── 圧電素子と日本での実用化
ガスコンロの つまみを まわすと、「カチカチ」と おとが して ひが つきます。ライターも、ボタンを おすと「カチッ」と ひばなが でます。
この ひばなを つくる しくみは、ひとつでは ありません。でんちを つかって ひばなを だす ものも あります。でんちを いれて ひばなを だす コンロも あり、でんちが きれると ひが つかない ことが あります[6]。
いっぽうで、でんちが なくても ひばなが でる ほうほうが あります。ちいさな けっしょうを つかう やりかたです[1]。この けっしょうは、どうやって でんきを つくるのでしょう。まず、「カチッ」という おとの ほうから みて みましょう。
2. どうして「カチッ」と はやく おすの?
2. ゆっくり押すのではなく、ばねで「カチッ」と素早く打つ理由
2. 衝撃方式とばね仕掛けのハンマー
ライターの ボタンは、ゆっくり おしても、「カチッ」と はやい うごきが おきる ように できて います。そのひみつは、なかの しくみに あります。
ライターようの とっきょの せつめいでは、ボタンを おして いる あいだ、ばねの ついた ハンマーは けっしょうから はなれて います。ばねが ぎゅっと ちぢむと、ハンマーが つめから はずれて、いきおいよく けっしょうを たたきます。そのとき、ひばなが でます[3]。
ゆっくり おすだけだと でんあつが よわく なる、と せつめいする ぎじゅつかいせつも あります[7]。ただし これは、1つの かいせつです。
ライターのボタンを、ものすごくゆっくり押す場面を想像してください。それでも「カチッ」と火花が出るのは、押す動きとは別に、素早く打つ仕組みが中に入っているからです。
圧電素子で高い電圧を出す方式には、静かに圧力を加える方式と、衝撃力を加える方式があります。ガス器具には、衝撃機構の中に素子を収めたユニットが一般に使われています[1]。
ライター用機構の特許は、そのつくりを次のように説明します。押している間、ばね仕掛けのハンマーは素子から離れた位置に保たれます。ばねが縮むと、ハンマーは爪から外れて、素子を打ちます。このとき火花が生まれます[3]。人が押す速さに関係なく、打つ瞬間は同じ速さになる、ということです。
ゆっくり押すと電圧が弱くなる、と説明する資料もあります。だから「カチッ」と素早く動く仕組みが必要だ、という理屈です[7]。
では、たたかれた結晶の中では、何が起きているのでしょうか。
高電圧の発生方式には、静圧力を加える方式と衝撃力を加える方式があり、圧電ユニットは衝撃機構(スパーカ)の中に収められてガス器具用に一般に使われる、と日立評論は述べる[1]。なぜ人の手で直接押さず、機構を介するのか。
ライター用機構の特許によれば、押している間、ばね仕掛けのハンマーは圧電素子から離れた位置に保たれる。ばねが縮んだあと、ハンマーが爪から外れて素子を打ち、火花が生まれる[3]。この構造では、打つ瞬間の動きが、押す人の速さではなく、ばねの解放で決まる。ただし、この特許はライター用機構の説明である。
ゆっくり押すと電圧が弱くなるため素早い「カチッ」の動作が必要だ、と説明する資料もある[7]。
では、衝撃を受けた素子の中で何が起きるのか。次は、素子の材料の歴史に戻る。
3. たたかれた けっしょうは、どうして でんきを だすの?
3. 結晶をたたくと電気が生まれる ── 1880年のキュリー兄弟
3. 圧電効果の発見(1880年)と、セラミックへの展開
ちからを くわえると でんきを うむ ざいりょうが あります。この せいしつを「あつでん こうか」と いいます。
1880ねん、ピエールと ジャックの キュリー きょうだいが、すいしょうや トルマリンなどの けっしょうを おしつぶすと でんきが うまれる ことを、じっけんで しめしました[4]。つかった どうぐは、すず はくや にかわ、でんせん、じしゃく、ほうせきの こぎりなど、かんたんな ものだったと いわれます[5]。
のちに、きんぞくの さんかぶつの こなを やきかためた「セラミック」が つくられました。1940ねんだいから 1960ねんだいの なかばに、セラミックの「ペレット」を おしつぶして ひばなの でんあつを つくる てんか そうちも うまれた そうです[5]。
力を受けると電気を生む性質を、圧電効果といいます。1880年、ピエールとジャックのキュリー兄弟が、水晶・電気石(トルマリン)・ロッシェル塩などの結晶を押しつぶすと電気が生まれることを、実験で示しました。効果は、水晶とロッシェル塩でとくに強かったそうです[4]。
実験の道具は、すず箔・にかわ・電線・磁石・宝石細工用ののこぎりなど、簡素なものだったといわれます[5]。
点火に使う素子は、のちに結晶からセラミックへ広がりました。金属酸化物の粉を焼き固めたセラミックです。1940年代から1960年代半ばにかけて、誘電率が結晶の最大約100倍になるセラミックが分かり、PZT系の圧電セラミックが開発されました。「ペレット」を押しつぶして火花の電圧を作る点火装置も生まれました[5]。ここでの「約100倍」は誘電率の比較で、電気を生む力そのものが100倍になったという意味ではありません。
押したときにできる電圧は、実際にはどれくらいなのでしょうか。
圧電効果は、1880年にピエールとジャックのキュリー兄弟が、水晶・トルマリン・ロッシェル塩などの結晶を圧縮すると電位が生じることを示した、とされる。効果は水晶とロッシェル塩で特に強かった[4]。実験の道具は、すず箔・にかわ・電線・磁石・宝石細工用のこぎりといった、簡素なものだった[5]。
点火装置への応用では、材料の転換が要になった。1940年代〜1960年代半ばに、金属酸化物の粉を焼き固めたセラミックが、切り出した結晶より誘電率が最大約100倍と高いことが分かり、PZT系の圧電セラミックが開発された。セラミックの「ペレット」を圧縮して火花電圧を作る点火装置も生まれた[5]。「約100倍」は誘電率の比較であり、圧電効果の強さの比ではない。
では、このセラミックで、実際にどれくらいの電圧が出たのか。次章で、特許と技術誌の値を見る。
4. でんあつは たかいのに、ひばなの エネルギーは どれくらい ちいさいの?
4. 電圧は数千ボルト以上でも、火花のエネルギーはごく小さい
4. 電圧と放電エネルギー ── 約3000V、1万V以上、約2mJ
1963ねんに だされた ライターの とっきょには、「PZT」という セラミックを おしつぶすと、およそ 3000ボルトの でんあつが でると かいて あります。てこで おす ちからを つよめて、セラミックを おしつぶし、でんきを ひばなに します[2]。
むかしの ぎじゅつしには、1まんボルト いじょうを だす ものも のって います[1]。ただし これは、ざいりょうと つくりごとの ちがいです。どれも おなじ ではありません。
では、そんなに たかい でんあつで、ひばなは つよい のでしょうか。にちりつ ひょうろんが しらべた ひばなは、はじめの ぶぶん(スパーク)が 0.5ミリジュール、つぎの ぶぶん(グロー)が 1.5ミリジュールでした。あわせて 2ミリジュール ぐらいです[1]。1ミリジュールは 1ジュールの 1000ぶんの 1です。100グラムの ものを 1メートル もちあげる しごとが 1ジュール ぐらいですから、2ミリジュールは、それを 2ミリ もちあげる ぐらいです。とても ちいさい エネルギーです。
1963年に出願された圧電ライターの特許は、PZT系のセラミックが圧縮されると約3000ボルトの電位を出せるとしています。てこで押す力を増して素子を圧縮し、電極と芯管のすき間に放電させて、燃料に点火する仕組みです[2]。3000ボルトは、この特許の素子の値で、すべての製品の値ではありません。
日立評論は、圧電素子が1万ボルト以上の高電圧を出す方式にふれています[1]。資料によって数字に幅があるのは、素子や構造がちがうからです。
電圧が高いと、火花も強いように思えます。ところが、同じ日立評論の英文要旨では、着火に使われる放電のエネルギーは、日立評論が調べた圧電点火(HPSU-1形)では、スパーク放電域で0.5ミリジュール、グロー放電域で1.5ミリジュール、合計約2ミリジュールと測られています[1]。1ミリジュールは1ジュールの1000分の1です。1ジュールは、100グラムのものを約1メートル持ち上げる仕事に近く、2ミリジュールなら、それを約2ミリ持ち上げる程度です。
数千ボルトという大きな電圧でも、火花が持つエネルギーはごくわずかで、そのわずかな火花が、ガスを燃やす最初のきっかけになるわけです。では、今のコンロは、この仕組みのままなのでしょうか。
1963年出願の米国特許US3167687は、PZT系(ジルコン酸チタン酸鉛)の多結晶セラミックが、圧縮されると約3000Vの電位を出せるとする。てこで押す力を増して素子を圧縮し、電極と芯管のすき間に放電させて燃料に点火する構造である[2]。3000Vはこの特許の素子の値であり、製品に共通する値ではない。
日立評論は10,000V以上の方式に言及しており[1]、資料ごとの電圧の幅は、素子と構造の違いと考えるのが自然である。
電圧が高くても、エネルギーは別の量である。日立評論の英文要旨は、着火現象がスパーク放電域とグロー放電域からなり、HPSU-1形での放電エネルギーはそれぞれ0.5mJ、1.5mJ(合計約2mJ)と述べる[1]。1mJは1Jの1000分の1にすぎない(100gの物を1m持ち上げる仕事が約1J。2mJは約2mm分)。なお、本文のOCRでは「1.5μJ」と読める箇所があり、英文要旨の値を採った。
高電圧で小エネルギーの放電が、燃料の最初の着火を担う。次の問いは、ガスの種類が変わると、点火はどう影響を受けるのか、である。
5. いまの コンロは、どうやって ひばなを だすの?
5. ガスの種類で点火が見直され、今のコンロは電池式が多い
5. 都市ガスの転換と点火の再検討、現在の乾電池式
ひばなで ひを つける ほうほうは、ガスの しゅるいに よって も むずかしさが かわる ことが あります。たとえば、とうきょうの ガスがいしゃは、1970ねんに、まちの ガスを てんねんガスに かえると、あつでん てんかが いまより むずかしく なる ようそが あると して、てんかの しかたを かんがえ なおし はじめました[1]。
いまの おうちの コンロは、かんでんちを いれて ひばなを だす ものが おおい ようです。でんちが きれると、ひが つかない ことが あります[6]。
ひが つかない ときは、まず でんちを かくにん すると よい と、せつめいされて います[6]。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
おうちの コンロや ライターを みて みましょう。コンロには、でんちを いれる ばしょが ありますか。ふたの うらに、でんちの むきが かいて あります。ひを つかう ときは、かならず おとなと いっしょに しましょう。
こうしきの 情報
コンロの とりあつかい せつめいしょに、てんかの ほうしきが かいて あることが あります。
今日できること
家のコンロの取扱説明書を開いて、点火の方式がどう書かれているか探してみましょう。電池を入れる場所があるかどうかは、本体を見れば分かります。火を使うときは、必ず大人といっしょにしてください。
公式情報
コンロの取扱説明書や、ガス会社・メーカーのサイトに、点火方式と電池の交換方法が書かれています。
今日できること
家のコンロの取扱説明書で、点火方式の記載と電池の仕様を確かめる。火を使う観察は、必ず大人と行う。
公式情報
ガス会社やメーカーの日本語のサイトで、コンロの点火方式や電池交換の説明を2〜3社分読み比べ、書き方の違いを確かめる。取扱説明書の点火の項目とも照らすと、本文の話が今のコンロにどこまで当てはまるか自分で判断できる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、日本での実用化・衝撃方式・放電エネルギーは日立評論、素子の電圧とハンマー機構は特許、発見とセラミックの経緯は学会・メーカーの歴史資料、現在のコンロは設備会社の解説を突き合わせた。
- 日立評論 55巻3号(1973)「圧電素子による点火現象」 https://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1973/03/1973_03_10.pdf (実用化の時期・衝撃方式・放電エネルギー・都市ガス転換)
- US3167687A Piezoelectric lighter https://patents.google.com/patent/US3167687 (1963年出願の圧電ライターの電圧と構造)
- US5059852A Piezoelectric mechanism for gas lighters https://patents.google.com/patent/US5059852 (ばね仕掛けのハンマーの動き)
- APS News「This Month in Physics History」(2014年3月) https://www.aps.org/apsnews/2014/03/this-month-in-physics-history (キュリー兄弟の実験)
- APC International「History of Piezoelectricity」 https://piezo.com/pages/history-of-piezoelectricity (実験の道具・セラミックの開発)
- 生活堂「ガスコンロの故障対処法」 https://www.seikatsu-do.com/gas/column/trouble.php (現在のコンロの電池式)
- FIRGELLI「Electric Gas Lighter Mechanism」 https://www.firgelliauto.com/blogs/mechanisms/electric-gas-lighter (ゆっくり押すと電圧が弱くなる説明)
なおした ところ
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