1. どうして でんしゃが 見えないのに なるの?
1. 鳴ったのに、電車が見えない
1. 警報開始と列車到達の時間差
踏切の 警報機が、カンカンと なりはじめました。まわりを 見ても、でんしゃは まだ 見えません。
そのうちに、遮断機が ゆっくり おりて きます。でんしゃが 来るのは、それから しばらく あとです。
これは、警報機が こわれて いるのでは ありません。ふつうの ことです。ふしぎな ことが 2つ あります。どうして そんなに はやく なるのか。そして、でんしゃが どこに いるのか、どうして 分かるのか。
踏切の警報が鳴り始めて、遮断機が下り、それからしばらくして電車が来る。踏切の前で待った人なら、一度は経験があるはずです。
この間、電車は見えていないことも多いのですが、警報は故障ではなく、決まった考え方で鳴っています。この記事の疑問は2つです。なぜそんなに早く鳴るのか。電車がどこにいるのかを、踏切はどうやって知るのか。
踏切では、警報が鳴り始めた時点で、列車が目に見える位置まで来ていないことが多い。これは異常ではなく、遮断機の動作と列車の接近の時間差を見こんだ設計による。
論点は2つある。警報を何秒前から鳴らす基準になっているか(2章)。列車の位置を踏切がどう知るか(3〜5章)。後半では、列車の速度差への対応(6章)を見る。
2. どうして はやくから ならすの?
2. 遮断機が下りきる時間を見こむ
2. 警報時間の基準 ── 標準30秒・最低20秒
おふろに おゆを ためる ときは、おゆが いっぱいに なる 時間を 考えて、先に じゃぐちを ひらきますね。踏切も、それに にて います。遮断機が すっかり おりる 時間を 考えて、先に ならします。
ただし、おふろは 自分で 時間を きめます。踏切は、でんしゃの いる 場所を きかいが 見つけて、なりはじめます。
遮断機の ある 踏切では、なりはじめてから でんしゃが つくまで、およそ 30びょうが めやすと されて います[1]。みじかく ても 20びょう ほしい、と いう きまりです。
遮断機が おりきった あとも、でんしゃが つくまでは、ふつう 20びょう、みじかく ても 15びょう ほしい、と あります。
お風呂にお湯をためるとき、いっぱいになる時間を見こんで、先に蛇口を開きます。踏切の警報も、同じ考え方をしています。遮断機が下りきって、車や人が線路から出る余裕を持たせるため、電車の到着より前に鳴らすのです。ただし、お風呂は自分で時間を決めますが、踏切は電車の位置を機械が見つけて始めます。
鉄道の技術基準の解釈基準として、遮断機のある踏切では、警報の開始から列車の到達までを30秒とすることが標準で、20秒以上にするとされています[1]。さらに、遮断が終わってから列車が来るまでは、20秒が標準で、15秒以上とされます。
別の解説では「警報から遮断機が下りるまで15秒(最低10秒)、下りきってから20秒(最低15秒)」と書かれています[2]。数字の内訳は資料で書き方が違うので、ここでは「警報から到達まで標準30秒、最低20秒」までにとどめます。
遮断機のある踏切の警報時間は、鉄道の技術基準の解釈基準で、警報開始から列車到達までを標準30秒(20秒以上)、遮断動作の終了から列車到達までを標準20秒(15秒以上)とする旨が、複数の解説記事に同じ文言で引かれている[1][2]。
ただし内訳の書き方に揺れがある。一方は上の30秒/20秒の2本立てで示し[1]、他方は「警報から遮断まで15秒(10秒以上)、遮断後20秒(15秒以上)」と書く[2]。後者を足すと35秒になるが、前者の30秒標準とは一致しない。省令の原文を直接確認できていないため、ここでは「警報開始から到達まで標準30秒・最低20秒」までを断定とする。実際の警報時間は、速度や区間で変わり、常に30秒とは限らない。
3. でんしゃは、どこで 見つかるの?
3. 手前の線路で列車を見つける
3. 検知点の位置 ── 時速100km・30秒なら約830m手前
踏切の てまえの せんろに、でんしゃが とおった ことを 見つける ばしょが あります[3]。ここを とおると、踏切に 「でんしゃが 来るよ」と つたわります。
じそく 100キロで はしる でんしゃは、1びょうで およそ 28メートル すすみます。30びょうだと、およそ 830メートルです。ですから、踏切の 830メートル てまえで 見つければ、ちょうど よい ときに 遮断機が おります[3]。
25メートルの プールを 33こ ならべた ながさです。そんなに はなれて いれば、踏切に ついた ときには、もう 見えなく ても ふしぎでは ありません。
ただし、この 830メートルは 一つの れいです。踏切ごとに、きょりは ちがうと 考えられます。
4. せんろは、どうやって でんしゃを 見つけるの?
4. レールに電気を流して見つける
4. 軌道回路と踏切制御子 ── 二重系の列車検知
でんしゃを 見つける やりかたの 一つは、せんろの 中を 通る、ほそい 電流です。
2ほんの レールに、ちいさな 電気を ながして おきます。でんしゃが 来ると、レールの 電気の ようすが かわります[4]。この かわりを 見て、でんしゃが いると 分かります。
この しくみを 軌道回路と いいます。せんろが、でんしゃを 見つける ばんに なって いるのです。
この ほかにも、レールに つけた そうちを つかう やりかたが あります。じっさいの 踏切では、2つの やりかたを いっしょに つかう れいが あります[4]。
列車を見つける方法の一つが、軌道回路です。2本のレールに弱い電流を流しておき、列車が来ると、レールの電気的な状態が変わります。この変化で、列車がいるとわかります[4][5]。
電車が来る道である線路そのものが、見張り番の役目をしているわけです。
もう一つは、踏切制御子という装置です。レールに取りつけ、始動点と終止点で列車の通過を見つけます[4]。運輸安全委員会が調べた事例では、この2つを組み合わせた二重の検知が行われていて、少なくとも一方が警報を始める合図を出せば、警報を始める仕組みでした[4]。
研究では、車軸検出器を使う方法や、走行中の列車に情報を送れる線を使う検討も紹介されています[8]。
列車検知の方式には、軌道回路と踏切制御子がある。軌道回路は、レールに電流を流し、列車が来たときの電気的な状態の変化で列車を検知する[4][5]。原理の細部は[5]が検索抜粋のみで本文を確認できていないため、ここでは踏み込まない。
踏切制御子はレールに設置する装置で、始動点・終止点の位置関係で列車の接近と通過を見る。運輸安全委員会の事例では、踏切制御子と軌道回路の二重系の列車検知方式がとられ、少なくともどちらか一方が警報開始制御であれば警報を開始した[4]。
研究レベルでは、定時間警報制御に関する列車の位置検知として、踏切制御子や車軸検出器を用いた方式が検討されている。走行中に情報を送れる交差誘導線を使う検討もある[8]。
5. せんろの じょうたいで、見つけ方は かわる?
5. 検知は線路の状態にも左右される
5. 検知の弱点 ── 塩分による不正短絡と錆
レールを つかう 見つけ方は、レールの ようすに えいきょうを うけます。
うみに ちかい ところでは、しおの せいで、でんしゃが いないのに 「いる」と 思って しまう ことが ありました。レールの さびで、「いない」と 思って しまう れいも あります[4]。
この ばあいは、2つの やりかたを いっしょに つかって いました。
レールを使う検知には、弱点もあります。運輸安全委員会の事例では、海岸に近い軌道回路が海水の塩分で誤って短絡し、列車がいないのに検知して警報が続いたことがありました。またレールの錆で、列車が検知されにくくなる例もありました[4]。
この事例では、二つの検知方式が使われ、どちらかが警報開始と判断すれば鳴らす仕組みでした。
運輸安全委員会の事例では、海岸に近接した軌道回路が海水の塩分による不正短絡を多く起こし、列車の誤検知で踏切警報が続く異常処理が発生した。別の箇所ではレールの錆で短絡不良が起こり、列車が検知されなかった[4]。
検知が線路の状態に左右されることを示す例であり、この事例では、二つの検知方式が使われている。ただし、事例は特定の路線での一件であり、全体の傾向を示すものではない。
6. はやい でんしゃと おそい でんしゃは?
6. 速い電車と遅い電車 ── 「賢い踏切」
6. 警報時間の最適化 ── 踏切警報時間制御装置(賢い踏切)
でんしゃには、はやい ものと おそい ものが あります。はやい でんしゃに あわせて 早めに ならすと、おそい でんしゃの ときは、踏切が ひつように ながく しまって しまいます[3]。
そこで、でんしゃの しゅるいや はやさに あわせて、なる 時間を かえる 賢い踏切が あります[3]。
えきの ちかくでは、とまる でんしゃ用の なりはじめる 場所を 新しく つくり、なる 時間を みじかく する とりくみを、JR東日本が はっぴょう して います[6]。
踏切が ながく しまる ことは、じどうしゃの じゅうたいの もとにも なると、けんきゅうで 言われて います[8]。
速い電車と遅い電車が同じ線路を走る場合、基本は速い電車に合わせて遮断のタイミングを決めます。すると遅い電車のときには、踏切が必要以上に長く閉まってしまいます[3]。
これを解決するのが、踏切警報時間制御装置、通称「賢い踏切」です。列車の種別や速度に合わせて、鳴らすタイミングを調整します[3]。JR東日本は、駅の近くで通過列車と停車列車が警報の開始点を共用している踏切に、停車列車用の開始点を新しく設けて、警報時間を短くする取り組みを発表しています[6]。全部の踏切が対象とは限りません。
JR西日本は、列車の速度の情報を使って警報開始のタイミングを最適化する賢い踏切を紹介しています[7]。長い警報は渋滞や事故のきっかけの一つになる、と研究でも指摘されています[8]。
速度の異なる列車が混在する区間では、基本は速い列車を基準に遮断のタイミングを設定するため、遅い列車では踏切が必要以上に長く閉まる。これに対し、踏切警報時間制御装置(通称「賢い踏切」)が列車の種別や速度に合わせて調整する[3]。
JR東日本は、通過列車と停車列車が警報開始点を共用していると停車列車の警報時間が長くなるため、停車列車用の警報開始点を新設して両者を判別し、警報時間の短縮を図る取り組みを発表している[6](検索抜粋による。原文は未確認)。JR西日本は、列車の速度情報を活用して警報開始時間を最適化する賢い踏切を紹介している[7]。
警報時間の短縮が求められる背景として、長い警報は渋滞や事故誘発の一因になると論文は述べる[8]。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
30びょう 歩いて、830メートルと くらべる
公園や ひろい 道で、30びょう 歩いて、着いた ところに 目じるしを おきます。でんしゃは じそく 100キロなら、おなじ 30びょうで およそ 830メートル すすみます[3]。自分の 歩いた 長さの 何ばいぐらいか、おうちの 人と 考えて みましょう。
踏切で、なりはじめから 見て みる
踏切の 近くを 通る ときは、遮断機から はなれた 安全な ところから、警報機の おとや、遮断機の おりかたを 見て みましょう。せんろの 中や、踏切の 中には、ぜったいに 入りません。
こうしきの 情報
てつどうがいしゃの ホームページに、踏切の ぼうしの とりくみが のって いる ことが あります。
30秒歩いて、830mと比べる
公園や広い道で30秒歩き、着いた場所に目印を置きます。電車が時速100kmなら30秒でおよそ830m進むので、自分の歩いた長さの何倍ぐらいか、家の人と考えてみます。
踏切で、鳴り始めから見てみる
踏切のそばを通るときは、遮断機から離れた安全な場所で、警報が鳴り始めてから電車が通るまでの様子を見てみます。線路や踏切の中には絶対に入りません。踏切ごとに、鳴り始めから通過までの時間が違うかもしれません。
公式情報
鉄道会社のホームページや、鉄道の技術基準を紹介する解説記事に、踏切のしくみが載っていることがあります。
30秒歩いて、約830mと比べる
公園や広い道で30秒歩き、着いた場所に目印を置く。時速100km・30秒の約830mと比べて、自分の歩いた長さの何倍ぐらいかを見積もり、標準30秒という数字が距離に直すとどれほどかを実感する。
踏切で、鳴り始めから見てみる
遮断機から離れた安全な場所で、警報開始から列車通過までの時間を観察する。踏切や列車種別で差があるかを見る。線路内・踏切内には立ち入らない。
公式情報
鉄道の技術基準の解釈基準(国土交通省)の原文、運輸安全委員会の報告書、各鉄道会社の技術資料を読み、本文で「原文未確認」とした箇所(15秒・20秒の内訳、軌道回路の原理、賢い踏切の数字)の裏づけを探してみるのもよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
今回は、警報時間の基準は解説記事2本を突き合わせ、検知のしくみは運輸安全委員会の事例と論文で確かめた。省令の原文、JR東日本・JR西日本の資料の本文は直接確認できていない。
- どう決まる?踏切の開閉タイミング(乗りものニュース) https://trafficnews.jp/post/95880/2 (警報時間の基準)
- ベストカーWeb 踏切コラム https://bestcarweb.jp/feature/column/92298?prd=3 (基準の別の書き方)
- どう決まる?踏切の開閉タイミング 3ページ目(乗りものニュース) https://trafficnews.jp/post/95880/3 (検知点の距離・賢い踏切)
- 運輸安全委員会ダイジェスト No.31(踏切保安装置が働かなかった事例) https://jtsb.mlit.go.jp/bunseki-kankoubutu/jtsbnewsletter/jtsbnewsletter_No2/No2_pdf/jtsbnl-02_0607.pdf (検知方式・弱点)
- JR東日本 研究開発 Tech-43 https://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_43/Tech-43-33-38.pdf (軌道回路の説明・検索抜粋)
- JR東日本 プレスリリース 2022-05-20 https://www.jreast.co.jp/press/2022/yokohama/20220520_y1.pdf (停車列車の警報時間短縮・検索抜粋)
- JR西日本 賢い踏切 https://www.westjr.co.jp/safety/crossing/cp/smart.html (導入数)
- 日本大学 学術講演会論文 L-32(踏切の定時間警報制御) https://www.cst.nihon-u.ac.jp/research/gakujutu/56/pdf/L-32.pdf (位置検知の方式・警報時間短縮の背景)
なおした ところ
更新履歴
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