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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

雨雲は、どうやって 見つけて いるの?

雨雲は、どうやって見ているのか ── 電波のこだまに、雨量計をどう合わせるのか

気象レーダーは降水をどう測り、雨量計とどう組み合わせるのか ── 電波エコーから解析雨量まで

分野:自然

天気の 画面には、雨雲が 色つきで うつって います。でも、雨雲は 遠くて、見えません。

じつは、電波を 空へ 出して、かえって きた 電波の 「こだま」を しらべて います[1]。雨雲の 見つけ方を、山の 上の レーダーの 話から、雨を はかる 道具との 合体まで、たどって いきます。

天気予報の画面には、雨雲の位置と強さが色で描かれています。けれど、雨雲が何十キロも先にあるとき、私たちは目でその雨の強さを見ることはできません。気象庁は、電波を空へ出し、雨粒から返ってくる電波を調べています[1]。

電波の「こだま」は、何を教えてくれるのでしょうか。標高3776メートルの富士山頂に置かれたレーダーの話、風車が雨雲に見えてしまう話、雨量計と組み合わせて雨の地図を作る話を、順に見ていきます。

気象レーダーは、電波(マイクロ波)を出して、雨や雪から返ってくる反射波(エコー)を受け取る装置である。戻るまでの時間から距離が、エコーの強さから降水の強さが分かる[1]。

ただしレーダーは降水を間接的に測っており、雨量計より精度が落ちる[6]。この記事では、レーダーの原理、富士山レーダー、ドップラー・二重偏波、偽エコー、雨量計との合成(解析雨量)、ナウキャストまでを、気象庁などの資料を突き合わせてたどる。

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1. 雨雲は、どうして 見えるの?

1. 見ているのは雨ではなく、電波のこだま

1. 電波の往復時間と強さ ── 距離と降水強度の測定

山に むかって 「おーい」と 声を 出すと、しばらく して やまびこが かえって きます。おなじ ように 声を 出した とき、やまびこが かえる までの 時間が 長い ほど、山は 遠くに あります。

気象きしょうレーダーも、これと にて います。気象庁きしょうちょうの レーダーは、アンテナを ぐるぐる まわしながら 電波を 出して、まわり 数百キロの 雨や 雪を 観測かんそくします[1]。

電波が 雨に 当たって かえって くるまでの 時間で、雨までの 距離きょりが わかります。かえって きた 電波が 強い ほど、雨も 強いと わかります。ただし 本当は、雨雲を 見て いるのでは なく、かえって きた 電波を しらべて いるだけです。

山に向かって「おーい」と叫ぶと、少ししてやまびこが返ってきます。返ってくるまでの時間が長いほど、山は遠くにあります。

気象レーダーの考え方も同じです。アンテナを回しながら電波(マイクロ波)を出し、半径数百キロの範囲にある雨や雪を観測します[1]。電波が戻ってくるまでの時間から、雨や雪までの距離が分かります。戻ってきた電波(レーダーエコー)の強さからは、雨や雪の強さが分かります[1]。

雨雲を目で見ているのではなく、雨粒に当たって返ってきた電波を読んでいるのです。気象庁は1954年にレーダーの運用を始め、現在は全国20か所に置いています[1]。ほかに国土交通省のレーダーもあり、後で出てくる解析雨量には、両方が使われます[5]。

気象庁は、アンテナを回転させながらマイクロ波を発射し、半径数百 km の範囲の雨や雪を観測している。発射した電波が戻るまでの時間から距離を、戻ってきた電波(レーダーエコー)の強さから降水の強さを求める[1]。

運用開始は1954年で、気象庁の解説では現在全国20か所に設置されている[1]。国土交通省のレーダーも別にあり、解析雨量には両者の観測が使われる[5]。気象庁の設置数の数え方(20か所)と、リーフレットの基数(気象庁29基・国土交通省65基)は数え方が異なるため、この記事では混ぜずに書く。

降水の強さはエコーの強さから換算するので、直接量っているわけではない。この点が、後の章で雨量計と組み合わせる理由になる。

2. 山の てっぺんに、レーダーが あった?

2. 富士山頂のレーダーは、800キロ先の台風をどう見つけたのか

2. 富士山レーダー(1964年完成)は、なぜ山頂に置かれたのか

むかし、日本の 一ばん 高い 山、富士山ふじさんの てっぺんに、レーダーが おかれて いました。高さは 3776メートルです。1964ねんに できあがり、そのころ 世界で 一ばん 高い ところに ある 気象きしょうレーダーでした[2]。

高い ところに おけば、山や たてものに じゃまされず、とおくまで 電波が とどきます。800キロ さきの 台風も 見つけられたと つたえられて います[2]。

この レーダーは、1959ねんの 伊勢湾台風いせわんたいふうの 大きな ひがいの あと、台風を はやく 見つける ために 計画された、と いわれて います[3]。

日本でいちばん高い富士山(3776メートル)の頂上にも、かつて気象レーダーがありました。1964年に完成し、当時、世界でいちばん高い場所に置かれた気象レーダーでした。800キロ離れた台風を検知できたと、IEEE(電気電子学会)の日本の委員会の資料に書かれています[2]。

高い場所に置けば、山にじゃまされず、遠くまで電波を送れます。計画のきっかけは、1959年の伊勢湾台風の被害を受けて、台風の接近を早く知るためだったとされています。この点は百科事典の記述にもとづきます[3]。

その後、気象衛星が発達し、別の場所のレーダーでもカバーできるようになったことなどから、役目を終えました。取りはずされた後は、富士吉田市の「富士山レーダードーム館」に保存されています[2][3]。運用の終わりは、資料によって1999年とも2000年とも書かれています。

富士山頂(3776 m)の気象レーダーは、IEEE マイルストーンの資料で、1964年に完成した世界で最も高い位置の気象レーダーとされ、800 km 離れた台風を検知できたと記される[2]。運用開始は1965年(Wikipedia)。

建設の契機は、1959年の伊勢湾台風の被害を受けた、台風の早期警戒とされる。Wikipedia では、伊勢湾台風の被害を受けて計画されたとされる[3]。

気象衛星の発達や、牧之原・車山のレーダーで足りたことなどから役目を終え、解体後は富士吉田市の富士山レーダードーム館に保存・展示されている[2][3]。運用終了は、Wikipedia で1999年、IEEE 資料で2000年と割れており、この記事では年を断定しない。

3. 雨の うごきや 形も、わかるの?

3. 雨の動きと形も分かる ── ドップラー効果と二重偏波

3. ドップラー効果と二重偏波(2020年3月導入開始)

きゅうきゅう車が ちかづく ときは 音が 高く、はなれる ときは ひくく 聞こえますね。これが ドップラーこうかです。電波でも 同じ ことが 起きます。近づく 雨つぶからは 高い 電波が、はなれる 雨つぶからは ひくい 電波が かえります[1]。これで 雨の うごきや 風が わかります。

あたらしい レーダーは、たてと よこに ふるえる 電波を 同時に 出します。雨、ひょうなどの 形や しゅるいも 見わけやすく なります[4]。2020ねんの 3月から、この レーダーに かえる 作業が はじまりました。

救急車が近づくときは音が高く、遠ざかるときは低く聞こえます。ドップラー効果です。電波にも同じことが起き、戻ってきた電波の周波数のずれから、雨や雪の動きと、降水域の風が分かります[1]。

2020年(令和2年)3月からは、二重偏波気象ドップラーレーダーの導入が始まっています。水平と垂直に振動する電波を同時に送受信するので、雨の強さを高い精度で推定できるだけでなく、雨、雹、竜巻で舞い上がった物といった、当たったものの形や種類も見分けやすくなります[4]。

戻ってきた電波の周波数のずれ(ドップラー効果)を利用すると、雨や雪の動きと降水域の風が観測できる。粒子が近づくと周波数は高く、遠ざかると低くなる[1]。

気象庁は2020年(令和2年)3月から、二重偏波気象ドップラーレーダーの導入を進めている。水平・垂直の両方に振動する電波を同時に送受信でき、雨の強さの推定精度が上がるほか、散乱体の形や種類(雨、雹、竜巻の飛散物など)を判別できる[4]。

4. 雨じゃ ない ものも、うつるの?

4. 雨ではないものも映る ── 風車の「にせの雨」

4. 偽エコーと遠方の遮蔽 ── 電波の反射で見る限界

レーダーは、電波が はねかえって くる ものなら、雨で なくても うつして しまう ことが あります。

たとえば、風車の はねに 電波が 当たると、そこに 雨が ないのに 雨が あるように うつる ことが あります。風車の うしろの 遠くが、見えなく なる ことも あります[5]。

レーダーは、雨を 見て いるのでは なく、電波の こだまを 読んで いる。だから まちがえる ことも あるのです。

レーダーは、電波が反射して返ってくるものなら、雨でなくても映すことがあります。気象庁と国土交通省のリーフレットには、風車の羽根が電波を散乱させると、実際にはない降水域(偽エコー)が映って誤った降水情報になったり、電波が遮られて遠方が見えなくなったりすると書かれています[5]。

「雨雲を見ているのではなく、電波の反射を読んでいる」という最初の話が、ここでもう一度出てきます。レーダーの画面は、そのままでは雨の写真ではありません。

風車の羽根は電波を散乱させ、実際にはない降水域(偽エコー)が現れて誤った降水情報になる。送信波が遮蔽されれば、風車の背後の遠方が観測できなくなる[5]。

レーダーは反射体の種類を電波だけでは区別できず、雨以外の物も映りうる。二重偏波などで種類を見分ける工夫が進むのは、この限界への対処でもある[4]。

5. 雨を はかる 道具と、どう ちがうの?

5. 正確だが「点」の雨量計、広いが大まかなレーダー

5. 雨量計(点・高精度)とレーダー(面・低精度)

雨を そのまま ためて はかる 雨量計うりょうけいは、正しい 雨の りょうを 教えて くれます。でも、おいてある 場所の 「点」しか はかれず、あいだに すきまが できます[6]。

レーダーは、すきまなく 広い ところの 雨が わかります。でも、雨量計うりょうけいほどは 正しくありません[6]。

ぬり絵で いえば、雨量計うりょうけいは ところどころに ある はっきりした 点、レーダーは 全体を うすく ぬった 絵です。ただし 本当は、どちらも 雨を ほかの やり方で はかって いるだけです。

雨量計は、たまった雨を直接はかるので、正確な雨量が分かります。しかし置かれた場所だけの観測なので、面としては隙間があります。レーダーは、隙間なく広い範囲の雨量を推定できますが、雨量計に比べると精度が落ちます[6]。

地図のあちこちにある正確な点と、全体をおおざっぱに塗った絵を思い浮かべてください。どちらか片方では足りません。それなら、両方を重ねればよい、というのが次の章の考え方です。

気象庁の解説では、雨量計は正確な雨量を観測できるが、面的には隙間がある。レーダーは面的に隙間のない雨量を推定できるが、雨量計に比べると精度が落ちる[6]。

点の高精度と面の低精度という、補い合う性質があり、これが両者を組み合わせる動機になっている。レーダーの精度が落ちる具体的な要因(山の陰など)の一次資料は、この記事の調査では取得していないので、ここでは扱わない。

6. 雨の 地図は、どう つくるの?

6. 解析雨量は、レーダーと雨量計をどう組み合わせるのか

6. 解析雨量は、レーダーと雨量計をどう組み合わせるのか ── 1 km 格子・30分ごと

レーダーと 雨量計うりょうけいを くみ合わせて つくる 雨の 地図を、解析雨量かいせきうりょうと いいます。レーダーの 広い 見わたしを、雨量計うりょうけいの 数字で おぎなうのです[7]。

雨の 分布ぶんぷは、1キロ 四方の 細かさで わかります。30分 ごとに つくられ、1時間に どれだけ ふったかを あらわします[7]。

この 地図は、雨を 見るだけでは なく、大雨の けいほうの もとに なる 数字や、少し 先の 雨の よそくにも つかわれて います[7]。

気象レーダーと、アメダスや自治体などの雨量計を組み合わせ、雨量の分布を1キロ四方の細かさで解析したものが「解析雨量」です[7]。レーダーの広い観測を、雨量計の正確な数字で補正しているのです。

作られるのは30分ごとですが、中身は1時間の雨量です。速報版の解析雨量は10分ごとに作られます[7]。

解析雨量は、雨の監視だけに使われるのではありません。大雨警報などの土台になる土壌雨量指数、表面雨量指数、流域雨量指数の計算や、短時間予報にも使われています[7]。私たちがふだん見ている雨の情報の、下ごしらえの部分にあたります。

解析雨量は、気象レーダーと、アメダスおよび自治体等の地上の雨量計を組み合わせて、雨量分布を1 km 四方の細かさで解析したものである。30分ごとに1時間雨量として作成され、速報版は10分ごとに作られる[7]。作成間隔は30分だが、中身は1時間雨量である。

降水監視のほか、解析積雪深・解析降雪量、短時間予報、土壌雨量指数・表面雨量指数・流域雨量指数の計算に使われる[7]。後者3つは大雨警報などの基準に関わる指数である。

7. すこし 先の 雨も、わかるの?

7. 30分先までの雨は、どう予測するのか ── 高解像度降水ナウキャスト

7. 高解像度降水ナウキャストは、何分先までをどう予測するのか ── 250 m 格子・5分更新

いま ふって いる 雨の うごきを 追いかけて、少し 先の 雨を よそくする しくみも あります。「ナウキャスト」と いいます[8]。

30分 先までは 250メートル 四方、35分から 60分 先までは 1キロ 四方の 細かさです。5分 ごとに あたらしく なります[8][9]。

「高解像度降水ナウキャスト」は、雲の中の雨の分布を立体的に追いかけて、少し先の雨を予測します。30分先までは250メートル四方、35分から60分先までは1キロ四方の細かさで、5分ごとに更新されます[8][9]。

250メートルの細かさになるのは陸上や海岸近くで、それ以外の海上は1キロ四方です[8]。

高解像度降水ナウキャストは、降水分布を3次元的に追跡する手法を使い、30分先までを250 m 格子、35〜60分先を1 km 格子で予測し、5分ごとに更新する[8][9]。250 m 格子は陸上と海岸近くで、その他の海上は1 km 格子である。

8. じぶんでも 調べて みたく なったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

雨が ふって いる 日、気象庁きしょうちょうの 「雨雲の 動き」の 画面を 見て みましょう。おうちの 人と いっしょに 見ると、あんしんです。

画面で 色が こい ところと、まどの そとを くらべます。その あと、レーダーが 見て いる ものは 雨では なく 電波の こだま だった ことを 思い出して、どんな ときに まちがえそうか 考えて みましょう。

  • 雨の日に、気象庁の「雨雲の動き」(日本語のサイト)を開き、窓の外の雨の強さと画面の色を見比べてみましょう。ずれて感じたなら、雨量計の点とレーダーの面のどちらのちがいか、考えてみましょう。
  • 富士山レーダーは、山梨県の富士吉田市の「富士山レーダードーム館」に保存されています。行くなら、電波を出す部分の大きさと高さを、自分の目で見てみましょう。
  • 気象庁のサイトで解析雨量の説明[6]を読み、雨量計とレーダーのどちらの弱点を、もう一方が補っているかを、自分の言葉で書いてみましょう。
  1. 気象庁の「気象レーダー」の解説[1]を読み(日本語の気象庁ページだけで確かめられる)、20か所の配置を地図で確かめる。リーフレット[5]の「29基・65基」との数え方の違いを、原文で調べる。
  2. 富士山レーダーの運用終了年が1999年か2000年かを、IEEE の資料[2]と別の一次資料で突き合わせる。伊勢湾台風との因果も、気象庁側の記録で確かめる。
  3. 配信資料ガイド[7]の解析雨量の節を読み、雨量計のデータがレーダーの補正にどう使われるかを、原文で追う。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

気象庁の公開資料を中心に、IEEE の資料と百科事典を突き合わせました。富士山レーダーと伊勢湾台風の関係は、二次資料の記述です。

  1. 気象庁「気象レーダー」(解説)https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/radar/kaisetsu.html (レーダーの原理・設置数・ドップラー効果)
  2. IEEE 日本地区 マイルストーン「富士山レーダー」https://www.ieee-jp.org/japancouncil/jchc/adm/milestone/2radar.pdf (完成年・800 km・運用終了)
  3. Wikipedia「富士山レーダー」https://ja.wikipedia.org/wiki/富士山レーダー (計画の経緯・保存。二次資料)
  4. 気象研究所「ドップラーレーダー」https://www.mri-jma.go.jp/Facility/dopplerradar.html (二重偏波レーダー)
  5. 気象庁・国土交通省リーフレット「風車が及ぼす気象レーダーへの影響」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/radar/leaflet.pdf (偽エコー・レーダーの基数)
  6. 気象庁「解析雨量」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/kaiseki.html (雨量計とレーダーの長所・短所)
  7. 気象庁 配信資料に関する技術情報「解析雨量」https://www.data.jma.go.jp/developer/weatherdataguide/appendix/1-1-d.html (作成間隔・細かさ・使い道)
  8. 気象庁「高解像度降水ナウキャスト」https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/highres_nowcast.html (予測の細かさと更新間隔)
  9. 気象庁 配信資料に関する技術情報「高解像度降水ナウキャスト」https://www.data.jma.go.jp/developer/weatherdataguide/appendix/2-1-b.html (5分ごとの更新)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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