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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

あきの 空は、どうして はれたり ふったり するの? 雲と 雨の ひみつ

雨粒ひとつは、雲のつぶ100万個 ── 秋の空が入れかわるわけ

雲のでき方、雨粒の育ち方、秋に天気が入れかわるしくみ ── 東京の月降水量は10月が最大

分野:自然

気象庁きしょうちょうの 本には、「10月は はれる 日が おおい」と 書いて ある。ところが 東京では、1年の うちで 雨が いちばん たくさん ふる 月は、その 10月なんだ。

はれる 日が おおいのに、雨は いちばん たくさん ふる。ふしぎだね。まず 雲の 中を のぞいて、雨の つぶが どこから くるのかを 見て みよう。そのあと 秋の 空に もどって、にじと、外国の 雨も 見に いこう。

気象庁は、日本の10月を「さわやかな晴天となる日が多くなる」月と説明している。ところが東京では、1年のうちで雨の量がいちばん多い月が、その10月だ。

晴れの日が多いのに、雨の量は1位。この不思議から始めて、雲のでき方と、雨粒がどこから来るのかを先に見る。そのあと秋の空に戻って、虹が見える条件と、ロンドンやシンガポールの雨まで行ってみる。

気象庁の「日本の天候の概説」は、10月を「移動性高気圧に覆われてさわやかな晴天となる日が多くなります」と書く[1]。ところが東京の月降水量の平年値(1991〜2020年)で、いちばん多い月は10月の234.8ミリだ[2]。

晴れの日が多い月が、雨量では1位になる。この食い違いを手がかりに、まず雲の中をのぞいて、雲のでき方と雨粒の育ち方を見る。そのあと秋の空に戻り、入れかわりのしくみ、虹の出る条件、ロンドンとシンガポールの雨の降り方まで行ってみる。

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1. はれが おおい 10月に、雨も いちばん おおいって ほんとう?

1. 晴れが多い10月に、東京では雨がいちばん多い

1. 東京の月降水量は10月が最大 ── 平年値(1991〜2020年)から

東京で、月ごとに ふる 雨の おおさを くらべて みよう。30年ぶんを ならした 数(平年値へいねんち)だ。いちばん おおいのは 10月で 234.8ミリ。つぎが 9月の 224.9ミリ。つゆの 6月は 167.8ミリだ[2]。いちばん すくない 2月は 56.5ミリだから、10月は 4ばいぐらい ある。

「はれる 日が おおい」ことと、「たくさん ふる」ことは、べつの ことだ。雨の 日が すくなくても、ふる 日に どっと ふれば、1か月の ごうけいは おおきく なる。

雨は 雲から ふる。じゃあ、雲は どうやって できるのだろう。

東京の月ごとの雨の量を、1991年から2020年までの30年で平均した数(平年値)で並べると、いちばん多いのは10月の234.8ミリ、次が9月の224.9ミリだ。梅雨のさなかの6月は167.8ミリで、秋の2か月のほうが多い。いちばん少ない2月は56.5ミリなので、10月はその約4倍になる[2]。

気象庁の説明では、9月は秋雨前線や台風の影響で降水量が多く、10月は移動性高気圧におおわれてさわやかな晴れの日が多い[1]。台風が近づく回数は、9月前後に多い[3]。

「晴れの日が多い」ことと「雨の量が多い」ことは、別の数字だ。雨の日が少なくても、降る日にどっと降れば、1か月の合計は大きくなる。10月の雨が何日に分かれて降っているのかは、あとで自分で調べる(第8章)。

雨は雲から降る。では雲は、どうやってできるのか。

東京の月降水量の平年値(1991〜2020年)を並べると、10月が234.8ミリ、9月が224.9ミリで、梅雨のさなかの6月(167.8ミリ)より多い。最少は2月の56.5ミリで、10月はその約4倍になる[2]。

気象庁の概説では、9月は「秋雨前線や台風の影響で降水量が多くなります」、10月は「移動性高気圧に覆われてさわやかな晴天となる日が多くなります」と書かれている[1]。台風の接近数は9月前後に多い[3]。

「晴れの日が多い」と「雨の量が多い」は、別の指標だ。雨の日が少なくても、降る日に大量に降れば月の合計は大きくなる。10月の雨が何日に分かれて降ったのかは、この平年値の表からは分からないので、第8章で自分で調べる道を示す。

雨は雲から降る。では、雲はどうやってできるのか。

2. 雲は、どうやって できるの?

2. 雲は、持ち上げられた空気が冷えてできる

2. 雲のでき方 ── 上昇による冷却と凝結核

空気の 中には、目に 見えない 水が まざって いる。つめたい ジュースを コップに いれると、外がわに 水が つくよね。あれは、空気の 中の 見えない 水が、コップで ひやされて、見える 水に なったんだ。

雲も、ひえて できる。空気が 上へ もちあげられると、まわりの 気あつが ひくく なって、空気が ふくらみ、つめたく なる。1キロメートル 上がると、10どぐらい ひえる[4]。ひえた 空気は、見えない 水を かかえきれなく なって、ちいさな 水の つぶに なる[5]。

もうひとつ、ひつような ものが ある。海の しおの つぶや、すなの ほこりのような、ちいさな つぶだ。水は、この つぶに くっついて、水の つぶに なる[5]。雲は、「もちあがって ひえた 空気」と「ちいさな つぶ」が そろうと できる。

コップの 水も 雲も、空気が ひえて 見えない 水が 見える 水に なる ところは 同じだ。ちがうのは ひやし方で、コップは まわりの 空気を ひやして いる。雲は、空気が 上へ のぼる ことで ひえる。

空気には、目に見えない水蒸気がふくまれている。空気が上へ持ち上げられると、まわりの気圧が下がって空気が膨らみ、温度が下がる。水蒸気をふくみきっていない空気は、1キロメートル上がるごとに約10℃冷える[4]。冷えるほど、空気がふくめる水蒸気の量は減る。ふくみきれなくなった分が、水の粒になる。これを凝結という[5]。

空気が持ち上がる理由は、アメリカ国立気象局の教材では4つ挙げられている。地面が日ざしで熱せられて起きる上昇、山の斜面をのぼる空気、地表の空気が集まって上へ押し出されること、前線に沿った上昇だ[4]。秋雨前線の雲は、4つ目にあたる。

ただ、空気が冷えるだけでは、雲はなかなかできない。名古屋大学の解説によると、ちりのないきれいな空気では、湿度が300〜400%にならないと水滴ができない。ところが実際の空気には、海の塩の粒、黄砂、排ガスの粒(エアロゾル)がただよっていて、これが核になると、湿度が100%をわずかに超える程度で水滴に育つ[5][21]。雲は、「持ち上がって冷えた空気」と「小さな粒」がそろって、はじめてできる。

できた雲の粒(雲粒)は、半径が0.001〜0.01ミリほどしかない[5]。この粒が、どうすれば雨粒になるのか。

空気が持ち上げられると、周囲の気圧が下がって膨張し、温度が下がる。水蒸気が飽和していない空気の場合、その低下率は1キロメートルあたり約10℃(乾燥断熱減率)だ[4]。温度が下がると空気がふくめる水蒸気の量が減り、飽和に達したあと、さらに冷えると水蒸気が水滴に凝結する[5]。

空気を持ち上げる原因として、アメリカ国立気象局の教材は、地表の加熱による対流、地形、地表の空気の収束による広い範囲の上昇、前線に沿った上昇の4つを挙げる[4]。秋雨前線の雲は、最後のものにあたる。

ただし、冷えるだけでは足りない。名古屋大学宇宙地球環境研究所の解説は、清浄な大気では、水滴ができるのに湿度300〜400%が必要になると述べる。実際の大気ではエアロゾル(海塩粒子、黄砂、排ガスなど)が凝結核になるので、湿度が100%をわずかに超える程度で雲粒に成長する。雲の形成には、上昇流だけでなくエアロゾルの存在も不可欠だ[5][21]。雲粒の半径は約0.001〜0.01ミリ、落下速度は1秒間に約1センチとされる[5]。

この雲粒が雨粒になるまでには、大きさの壁がある。次はその大きさを比べる。

3. 雨の つぶは、雲の つぶ 100万こぶんって ほんとう?

3. 雨粒ひとつは、雲のつぶ100万個ぶん

3. 雲粒と雨粒の大きさ ── 直径100倍、体積100万倍

雲の つぶは、とても ちいさい。1びょうかんに 1センチぐらい しか 下に おちない[5]。だから、雲は なかなか 雨に ならない。

雨の つぶは、ふとさ(直径ちょっけい)が 0.5ミリから 数ミリ[6]。雲の つぶの 100ばいぐらいの ふとさだ。

たとえば、ちょっけい 2センチの 玉を 雲の つぶと して、雨の つぶを 考えると、ちょっけい 2メートルの 大玉に なる。うんどうかいの 大玉ころがしの 玉ぐらいだ。ふとさが 100ばいに なると、玉の 大きさ(体積たいせき)は 100万ばいに なる。雲の つぶが 100万こ あつまって、やっと 雨の つぶ 1こ ぶんだ[7]。

ただし ほんとうは、雲の つぶも 雨の つぶも 水の つぶで、かたい ボールでは ない。

雲粒は、1秒間に1センチほどしか落ちない[5]。風がなく、水が蒸発しないと仮定して1000メートル落ちるには、単純計算で約28時間かかる。実際は上昇気流や蒸発があるので、雲粒はなかなか地上に届かない(雲が浮く理由は雲のメモにある)。

雨粒の直径は、およそ0.5ミリから数ミリ[6]。たとえば雲粒の直径を0.02ミリ、雨粒の直径を2ミリとすると、雨粒は直径で100倍になる。球の体積は直径の3乗で増えるので、100倍の3乗で100万倍だ。ハワイ大学の教科書も、半径10マイクロメートルの雲粒が100万個合わさって、半径1ミリの雨粒1つになると書く[7]。

たとえば、直径2センチの玉が雲粒なら、雨粒は直径2メートルの大玉になる。運動会の大玉ころがしの玉ぐらいだ。ただし本当は、どちらも水の粒で、かたいボールではない。

水蒸気が水滴になる凝結だけでは、この大きさに育つまで時間がかかりすぎる。雨をつくるには、別の仕組みがいる[7]。

雲粒の落下速度は1秒間に約1センチ[5]。空気が動かず蒸発もしないと仮定して1000メートル落ちるとすると、単純計算で約28時間かかる。実際には上昇気流や蒸発があり、雲粒はほとんど地上に届かない(雲が空に浮いていられる理由は雲のメモで扱っている)。

雨粒の直径は約0.5ミリから数ミリ[6]。たとえば雲粒の直径を0.02ミリ、雨粒の直径を2ミリとすると、直径で100倍、体積では100倍の3乗で100万倍になる。ハワイ大学の教科書(Nugent & DeCou, 2018)は、半径10マイクロメートルの雲粒100万個が合わさって、半径1ミリの雨粒1つになると書く。同じ教科書は、凝結だけでは雨粒の大きさまで育つのが遅すぎ、衝突併合か氷を通る過程が必要だと説明する[7]。

では、どうやって100万個を集めるのか。方法は大きく2つある。

4. 雲の つぶは、どうやって 雨の つぶに なるの?

4. 雨粒の育て方は2つ ── 氷を通る道と、ぶつかる道

4. 冷たい雨と暖かい雨 ── 氷晶過程と衝突併合

ほうほうは ふたつ ある。

ひとつめは、こおりを とおる みち。雲の 上の ほうは 0どより ひくくて、こおりの つぶが できる。こおりの つぶは、まわりの 水の つぶから 水を すいとる ように して、どんどん 大きく なる[7]。大きく なると 雪の けっしょうに なって おちて きて、0どより あたたかい ところで とけると 雨に なる。日本の ある 温帯おんたいでは、雨の おおくは、こうして できると いわれる[8]。

ふたつめは、ぶつかる みち。大きい 水の つぶは はやく おちる ので、ちいさい 水の つぶに おいついて、ぶつかって くっつく。あたたかい 海の 上の 雲では、こちらが おおいと いわれる[7]。

だから 東京で ふる 雨は、空の 上では 雪や こおりだった ことが おおい。もちろん 1つぶ ずつ、どちらの みちを きたのかは、見ても わからない。

1つ目は、氷を通る道。雲の上のほうは0℃より低い。そこでは、水滴が凍らないまま残ること(過冷却)があり、氷の粒と混ざる。氷のほうが、水より、空気中に水蒸気が入れる量が少ない。そのため水蒸気は氷の粒にどんどんつき、まわりの水滴は蒸発して、氷の粒だけが急に育つ[7]。育った氷は雪の結晶となって落ち、0℃より暖かい高さで融けて雨になる。これを冷たい雨といい、私たちの住む温帯では、雨の多くがこの冷たい雨だとされる[8]。

2つ目は、ぶつかる道。氷を通らず、水のまま育つ暖かい雨だ。大きい水滴は落ちるのが速いので、小さい水滴に追いついてぶつかり、くっつく。大きくなった水滴はもっと速く落ちて、またぶつかる。この連鎖が働くには、雲粒の大きさがそろいすぎていないことが必要だ。ハワイ大学の教科書は、熱帯の海の上ではこちらが中心だと書く[7]。イギリスのMet Office(気象局)の解説も、雲の中の水滴が「ほかの粒とぶつかって大きくなる」場合と「水蒸気が凝結して育つ」場合をあげている[9]。

つまり、東京で降る雨は、多くの場合、上空では氷や雪だったものが融けたものになる。ただし温帯全体の傾向で、目の前の一粒がどちらの道を通ったかは、見た目では分からない。

氷を通る道(氷晶過程)は、次の順で進む。雲の上部は0℃より低く、水滴が凍らないまま残った過冷却水滴と、氷晶が共存する。氷に対する飽和水蒸気圧は水に対するそれより低いので、水蒸気は氷晶に昇華してつき、まわりの水滴は蒸発する。氷晶は水滴を犠牲にして急に成長する[7]。成長した氷は雪の結晶となって落下し、0℃より暖かい高さで融けて雨になる。この雨を冷たい雨といい、温帯で降る雨は多くが冷たい雨だとされる[8]。同じ教科書は、氷を通る過程が、熱帯以外の降水の大半を占めると述べる[7]。

暖かい雨は、氷を通らず、液体のまま育つ。大きい水滴ほど落下が速く、小さい水滴に追いついて衝突し、合体する(衝突併合)。これが自己加速的に進むには、雲粒の大きさに幅があることが必要で、熱帯の海洋上ではこの過程が支配的とされる[7]。Met Officeの解説も、雲の中の水滴が、他の水滴と衝突して大きくなる場合と、水蒸気が凝結して大きくなる場合をあげる[9]。

つまり東京の雨は、統計的には冷たい雨が多い。ただしこれは温帯全体についての説明で、一粒ずつの由来は見た目で区別できない。雲と雨粒の話はここまで。次は、秋の空をこの雲が次々に通りすぎるしくみを見る。

5. 秋の 空は、どうして かわりやすいの?

5. 秋の空は、前線と高気圧・低気圧が入れかわる

5. 秋雨前線と移動性高気圧 ── 9月から10月の入れかわり

9月の しゅやくは、秋雨前線あきさめぜんせんと たいふうだ。秋雨前線は、なつから 秋に かわる ころ 日本の ちかくに でて、ながい 雨を ふらせる 「うごかない せん」の こと[10]。せんの ところでは、あたたかい 空気が もちあげられて、雲が できる[9]。

10月に なると、「移動性高気圧いどうせいこうきあつ」が やって くる。ていきあつと かわりばんこに 東へ うごいて いく こうきあつで、春と 秋に おおい[11]。これに おおわれると、はれる 日が おおい[1]。

日本の 上空 10000メートルの あたりでは、1びょうに 100メートルも すすむ 強い 西風が、ほとんど 1年じゅう ふいて いる。こうきあつも ていきあつも、この 風に ながされて、西から 東へ うごく[12]。だから 天気は 西から かわる。

その うごきは、西から 東へ すすむ パレードに にて いる。はれの 日と 雨の 日が、すうじつ おきに かわる ことが ある。ただし ほんとうは、ならびかたも、かんかくも、まいかい ちがう。

9月の主役は、秋雨前線と台風だ。気象庁の用語集は、秋雨前線を、夏から秋への季節の移りかわりの時期に日本付近にあらわれ、長雨をもたらす停滞前線と説明する[10]。前線は、暖かい空気と冷たい空気がぶつかるところで、暖かい空気が持ち上げられて雲ができる。Met Officeが「前線の雨」とよぶ型だ[9]。そこへ台風が近づくと、雨が強まることがある。2005年9月4日には、台風14号が秋雨前線の活発化に関係し、東京都や埼玉県で1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った[3]。台風の生まれ方は台風のメモにある。

10月になると、主役は移動性高気圧に変わる。気象庁の用語集では、温帯低気圧と交互に東へ移動していく高気圧で、春と秋に多く現れる[11]。上空約1万メートルでは、毎秒およそ100メートルという強い西風がほとんど1年中ふいていて、高気圧や低気圧はこの風に流されて西から東へ動く。だから天気は西から変わる[12]。

気象庁は春の解説で、高気圧と低気圧が交互に西から東へ通り、天気は数日の周期で変わると書いている。低気圧の東側には南から暖かい空気、西側には北から冷たい空気が入る[1]。秋にも同じ型の入れかわりがある。2018年の秋は、10月から11月にかけて、全国で天気が数日の周期で変わった[13]。

9月と10月では、天気を動かす主役がちがう。9月は前線と台風、10月は高気圧と低気圧の交代だ。2018年の秋のように、天気が数日の周期で変わった年もある。空が気まぐれというより、天気を動かすしくみが月ごとに入れかわっている。

9月の主役は秋雨前線と台風だ。気象庁の用語集は、秋雨前線を「夏から秋への季節の移行期に、日本付近に出現して、長雨をもたらす停滞前線」と説明する[10]。前線では暖かい空気が冷たい空気の上に持ち上げられ、冷えて雲ができる。Met Officeが「前線の雨」と呼ぶ型がこれにあたる[9]。台風が近づくと雨が強まることがあり、2005年9月4日には、台風14号が秋雨前線の活発化に関係して、東京都や埼玉県で1時間に100ミリを超える猛烈な雨が降った[3]。台風は台風のメモで扱っている。

10月の主役は移動性高気圧だ。気象庁の用語集は、移動性高気圧を「温帯低気圧と交互に東に移動していく高気圧。春、秋に多く現れる」と定義する[11]。上空約1万メートルには、毎秒およそ100メートルという強い西風がほとんど1年中吹いていて、高気圧や低気圧はこの風に流されて西から東へ動くため、天気は西から東へ変わる[12]。

気象庁の概説は、春について、高気圧と低気圧が交互に西から東へ通過して天気は数日の周期で変わること、低気圧の東側には南から暖かい空気が入って気温が上がり、西側には北から冷たい空気が入って気温が下がることを説明している[1]。秋にも同じ型の入れかわりがあり、2018年の秋には、10月から11月にかけて全国で天気が数日の周期で変わった[13]。

秋の空が変わりやすいのは、9月には前線と台風が、10月には高気圧と低気圧の交代が、それぞれ天気を動かす主役になるためだ。

6. にじが 見えるのは、どんな ときかな?

6. 虹が見えるのは、太陽が低く、雨が反対側にあるとき

6. 虹の出る条件 ── 太陽高度42度と、秋の南中高度

にじが 見えるのは、太陽を うしろに して、雨を 前に 見る とき。それに、太陽が ひくい ときだけだ。太陽が 地めんから 42どより たかいと、にじは 見えない[14]。

秋の はじめの 東京では、おひるの 太陽が 54どぐらいの たかさに ある[15]。たかすぎて、おひるの にじは 見えない。あさと ゆうがたが チャンスだ。

天気は 西から かわる。雨雲が 東へ とおざかって、西から 日が さして きた ゆうがた、太陽は 西に あって、雨は 東に ある。すると にじは 東の 空に 出る ことが ある。でも いつも 出る わけでは ない。にじの しくみは、にじの メモに 書いて ある。

虹が見える条件は、アメリカ国立気象局の説明では、太陽を背にして雨を前に見ること、そして太陽が地平線から42度より低いことだ。太陽の光が雨粒に当たっていることも必要になる[14]。虹の中で光が曲がったり反射したりするしくみは、虹のメモにある。

太陽が真南に来たときの高さ(南中高度)は、「90度 − 北緯 + 太陽の視赤緯」で求められる。春分と秋分のころは、視赤緯がほぼ0度になる[15]。東京は北緯およそ36度なので、秋分のころの正午の太陽は約54度と、42度を超える。だから秋の初めの昼は、雨が降っても虹は見えにくい。虹のチャンスは、太陽が低い朝と夕方に来る。

天気は西から東へ変わる。雨雲が東へ去り、西の空から日が差してきた夕方を考えてみる。太陽は西にあり、雨は東にある。太陽を背にして雨を見るには、東を向けばよい。だから夕方の虹は東の空に出る。秋の空の入れかわりが、そんな夕方を作ることがある。ただし、雲の切れ目や雨の残りかたしだいで、いつも出るわけではない。

アメリカ国立気象局(NWS)の「Rainbows」の解説によれば、虹を見る条件は、太陽を背に、雨を前にして立つこと、太陽が地平線から42度より低いこと、太陽の光が雨粒に当たっていることだ。太陽が42度より高いと、虹は見えない[14]。虹の内部の屈折と反射のしくみは虹のメモにある。

太陽の南中高度は「90 − (その場所の北緯)+(太陽の視赤緯)」で求められ、春分・秋分ではほぼ視赤緯が0度になる[15]。東京は北緯およそ36度なので、秋分のころの正午の南中高度は約54度になり、42度を超える。秋の初めの昼に虹が出にくいのは、このためだ。南中高度は秋が深まるほど下がるので、昼の虹の条件も少しずつ整ってくる。

では、朝と夕方のどちらに、どちらの向きで出るのか。天気は西から東へ変わるので、雨雲が東へ去って西から日が差す夕方を考える。太陽は西にあり、雨は東に残る。太陽を背にして雨を見る向きは東で、夕方の虹は東の空に出る。秋の空の入れかわりは、この配置をつくる場面の一つだ。ただし雲の切れ目や雨の残り方に左右されるので、いつも出るわけではない。

7. 外国の 雨は、日本と どう ちがうの?

7. 東京・ロンドン・シンガポールで、雨の降り方はこうちがう

7. 3都市の平年値 ── 量・回数・時刻のちがい

ロンドン(イギリス)の 空こうの 近くでは、1年の 雨が 615ミリで、東京の 4わりぐらい[16]。でも 雨の 日は、1年に 112日ぐらい。3日に 1日ぐらい ふる。どの 月も 40〜67ミリぐらいで、ほとんど かわらない。すこしずつ、よく ふる 町だ。

シンガポールは、1年に 2113ミリで、東京の 1.3ばいぐらい。雨の 日は 1年に 171日ある[17]。ひるすぎから ゆうがたに、はげしい かみなり雨が ふる ことが おおい。日ざしで 地めんが あつく なって、海から 風が ふくからだ[17]。

東京は、月ごとの ちがいが おおきい 町。どこの 雨も、空気が もちあげられて 雲が できる ところから はじまる。もちあげる ものが、町や きせつで ちがうんだ。

東京の年間降水量は1598.2ミリ。ほかの2都市と並べてみる。

東京・ロンドン・シンガポールの年降水量と月ごとの降水量のふれ幅
場所年降水量月ごとの量
東京1598.2ミリ56.5ミリ(2月)〜234.8ミリ(10月)
ロンドン(ヒースロー)615.0ミリ38.8ミリ(3月)〜66.6ミリ(11月)
シンガポール2113.3ミリ2月がいちばん少なく、11〜1月に多い

数字は、1991〜2020年の平年値だ[2][16][17]。ロンドンは市内の全域ではなく、西部のヒースロー空港の観測点の値になる。

ロンドンは、量が東京の4割ほどで、月ごとの量もほとんど変わらない。1ミリ以上の雨の日が年に約112日、およそ3日に1日降る[16]。少しずつ、こまめに降る町だ。Met Officeは、直径0.5ミリ未満の細かい粒の雨を、drizzle(霧雨)と分けて呼ぶ[9]。東京でいちばん多い10月は234.8ミリで、ロンドンの10月(65.1ミリ)の約3.6倍になる。

シンガポールは、年に2113ミリで、東京の約1.3倍だ。雨の日(0.2ミリ以上)が年に171日ある。午後から夕方の雷雨が多く、強い日ざしで地面が熱せられ、午後に海風が吹くことで起きる[17]。

東京は月ごとの山と谷が大きく、ロンドンは回数が多く、シンガポールは1日のうちの時刻に特徴がある。どの町でも、雨は空気が持ち上がって雲ができるところから始まる。持ち上げるものが、前線なのか、日ざしなのか、山なのか、町と季節でちがう。

気象庁の東京の平年値(1991〜2020年)、Met Officeのヒースロー空港の平年値、シンガポール気象局(MSS)の平年値を並べる。

東京・ロンドン・シンガポールの年降水量と月ごとの降水量のふれ幅
場所年降水量月降水量の最少〜最多雨の日
東京1598.2ミリ56.5ミリ(2月)〜234.8ミリ(10月)―
ロンドン(ヒースロー)615.0ミリ38.8ミリ(3月)〜66.6ミリ(11月)1ミリ以上が年約112日
シンガポール2113.3ミリ2月が最も少なく、11〜1月に多い0.2ミリ以上が年171日

東京の値は、気象庁の平年値の表[2]、ロンドンはMet Officeの長期平均[16]、シンガポールはシンガポール気象局の気候の解説[17]による。ロンドンは西部のヒースロー空港の観測点で、市内全域の値ではない。雨の日の数え方は、シンガポールが0.2ミリ以上、ヒースローが1ミリ以上とちがうので、日数どうしは直接比べられない。

ヒースローでは、月降水量が38.8〜66.6ミリの範囲に収まり、東京の56.5〜234.8ミリに比べて季節のふれ幅が小さい。1ミリ以上の日は各月で7.9〜11.5日ほどあり、年に約112日、おおよそ3日に1日になる[16]。Met Officeは、直径0.5ミリ未満の細かい粒の雨をdrizzle(霧雨)と分類する[9]。東京の10月(234.8ミリ)は、ヒースローの10月(65.1ミリ)の約3.6倍になる。

シンガポールでは、午後から夕方の雷雨が、強い地表加熱と、午後に発達する海風循環によって起きる。スマトラスコールと呼ばれる雷雨の列は、東へ向かってシンガポールを横切る。6〜9月の南西モンスーンの時期には、明け方から昼ごろにかけて、時速40〜80キロの突風を伴う[17]。

第2章の4つの上昇の原因に当てはめると、東京の秋雨前線は「前線に沿った上昇」、シンガポールの午後の雷雨は「地表の加熱」と「海風による空気の収束」にあたる。持ち上げる主役が町と季節でちがう。雨粒の育ち方は、その上で決まっていく。

8. じぶんでも しらべて みよう

8. 自分でも調べてみたくなったら

8. 自分でも調べてみたくなったら

まどから 西の 空と 東の 空を 見て みよう。雲が どちらから きて、どちらへ いくか。かみなりが なって いる ときや 大雨の ときは、そとに 出ないで、まどから 見よう。

  • おうちの 人と、気象庁きしょうちょうの天気図を 毎日 1まい 見て、こうきあつや ていきあつの しるしが 東へ うごいて いくか 見て みよう[19]。
  • つめたい ジュースを コップに いれて、あたたかい へやで しばらく おいて みよう。外がわに 水が つく ところを 見ると、雲の つぶが できる ところを 思いだせる。

雷が鳴っているときや大雨のときは、外に出ないで、窓や画面から見る。

  • 気象庁の天気図を、数日のあいだ毎日同じ時刻に1枚ずつ見て、高気圧と低気圧の印が東へ動くかどうか調べる[19]。
  • 雨雲の動き(ナウキャスト)で、いま降っている雨雲が東へ動くようすを見る[20]。
  • 気象庁の過去の気象データ検索で、東京の日ごとの降水量を、去年の10月と6月で並べてみる。合計が同じくらいでも、「1日にどっと」なのか、「何日もしとしと」なのかで、雨の型はちがう[18]。

最初の問いだった「10月の雨は、何日に分かれて降ったのか」は、この記事では答えていない。自分で確かめる道は3つある。雷や大雨のときは、外に出ず、画面や窓から見る。

  • 気象庁の過去の気象データ検索で、東京の日ごとの降水量を、去年の10月と6月(または2月)で並べる。月の合計が同じくらいでも、1日に集中しているのか、何日にも分かれているのかで、雨の型が分かる[18]。ロンドンの「3日に1日」と比べてもよい。
  • 気象庁の天気図を、数日のあいだ毎日同じ時刻に見て、高気圧と低気圧の印が東へ動く速さを目で追う[19]。
  • 雨雲の動き(ナウキャスト)で、雲が動く向きを見る。雨雲が東へ去った夕方、西から日が差していたら、東の空を見てみる[20]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

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出典について:気象庁の解説・用語集・平年値・季節の天候、名古屋大学宇宙地球環境研究所の解説、ハワイ大学の教科書、アメリカ国立気象局の教材と解説、国立天文台のよくある質問、イギリスのMet Officeとシンガポール気象局の公開資料を使いました。数字は、記載の期間の平年値などです。

  1. 気象庁「日本の天候の概説」。 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kisetsu_riyou/tenkou/gaisetu.html (9月と10月の天候の特徴、春の高気圧・低気圧の交代と数日周期、低気圧の東側と西側の気温)
  2. 気象庁 過去の気象データ「東京 平年値(年・月ごとの値)」(統計期間1991〜2020年)。 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php?prec_no=44&block_no=47662 (東京の年と月ごとの降水量:年1598.2ミリ、2月56.5ミリ、6月167.8ミリ、9月224.9ミリ、10月234.8ミリなど)
  3. 気象庁 東京管区気象台「季節ごとの平年の天候についてのコラム『秋の降水』」(関東甲信地方)。 https://www.data.jma.go.jp/cpd/j_climate/kanto_koshin/TenkouKaisetsuHeinenColumn3_Kanto-Koshin.html (秋の降水量が多い要因は秋雨前線と台風、台風の接近数は9月前後に多いこと、2005年9月4日の事例)
  4. アメリカ国立気象局(NWS)の教材「Chapter 7: Stability and Cloud Development」。 https://www.weather.gov/media/aviation/afp/stability_clouds.pdf (上昇する空気が1キロメートルあたり約10℃冷えること、空気が持ち上がる4つの原因)
  5. 名古屋大学宇宙地球環境研究所「気象50のなぜ+10|1. 雲はどうやってできている?」。 https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/meteorology/1.html (凝結核の役割、雲粒の半径と落下速度)
  6. 名古屋大学宇宙地球環境研究所「気象50のなぜ+10|10. 雨粒の大きさってどのぐらい?」。 https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/meteorology/10.html (雨粒の直径がおよそ0.5ミリから数ミリであること)
  7. Nugent, A. & DeCou, D. (2018) "Chapter 7: Precipitation Processes", Atmospheric Processes and Phenomena(ハワイ大学のオープン教科書)。 https://pressbooks-dev.oer.hawaii.edu/atmo/chapter/chapter-7-precipitation-processes/ (雲粒100万個で雨粒1つ、凝結だけでは遅いこと、氷晶過程と衝突併合、熱帯と温帯の分布)
  8. 名古屋大学宇宙地球環境研究所「気象50のなぜ+10|16. 暖かい雨・冷たい雨って何?」。 https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/meteorology/16.html (暖かい雨と冷たい雨の定義、温帯では多くの雨が冷たい雨であること)
  9. Met Office(イギリス気象局)「Rain」。 https://weather.metoffice.gov.uk/learn-about/weather/types-of-weather/rain (雲の中の水滴の育ち方、前線の雨・山の雨・対流の雨、霧雨の定義)
  10. 気象庁「気圧配置 気団・前線・気圧配置・天気図・気圧系の発達、移動に関する用語」。 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi3.html (秋雨前線の定義)
  11. 気象庁「気圧配置 気圧・高気圧・低気圧に関する用語」。 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi1.html (移動性高気圧の定義)
  12. 気象庁 はれるんランド「天気が西から東へ動くのはどうして?」。 https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a5_08.html (上空約1万メートルの強い西風と、天気が西から東へ動くこと)
  13. 気象庁「日本の季節の天候」(2018年秋)。 https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/seasonal/seasonal_201811.html (2018年の秋、10月から11月に天気が数日の周期で変わったこと)
  14. アメリカ国立気象局(NWS)Flagstaff「Rainbows」。 https://www.weather.gov/fgz/Rainbow (虹が見える条件:太陽を背に雨を前に、太陽が地平線から42度より低いこと)
  15. 国立天文台「太陽の南中高度はどうやって計算する?」。 https://www.nao.ac.jp/faq/a0109.html (南中高度=90度−北緯+視赤緯、春分・秋分は視赤緯がほぼ0度)
  16. Met Office「Heathrow Location-specific long-term averages」(1991〜2020年)。 https://www.metoffice.gov.uk/research/climate/maps-and-data/location-specific-long-term-averages/gcpsveqyg (ロンドン・ヒースロー空港の年降水量614.98ミリ、月ごとの量、1ミリ以上の日数)
  17. シンガポール気象局(Meteorological Service Singapore)「Climate of Singapore」(1991〜2020年)。 https://www.weather.gov.sg/climate-climate-of-singapore/ (年降水量2113.3ミリ、雨の日171日、午後の雷雨、スマトラスコール)
  18. 気象庁「過去の気象データ検索」。 https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php (地点を選んで、日ごと・月ごとの降水量などを見られる)
  19. 気象庁「天気図」。 https://www.jma.go.jp/bosai/weather_map/ (天気図を見られるページ)
  20. 気象庁「雨雲の動き・雷活動度・竜巻発生確度(ナウキャスト)」。 https://www.jma.go.jp/bosai/nowc/ (雨雲の動きを見られるページ)
  21. 名古屋大学宇宙地球環境研究所「気象50のなぜ+10|9. エアロゾルって何?」。 https://www.isee.nagoya-u.ac.jp/50naze/meteorology/9.html (エアロゾルがないときは雲の生成に相対湿度300〜400%が必要なこと、雲凝結核としての役割)

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