1. リードも ないのに、どうして 音が でるの?
1. リードのない笛は、何を震わせて鳴っているのか
1. リードを持たないリコーダーは、何を振動させているのか
リコーダーの うたぐちを のぞくと、ほそい すきまが あります。その さきに、はのように とがった ふちが あります。
息は、この ほそい すきまを とおって、うすい ながれに なり、とがった ふちに あたります[1]。
このとき、息の ほそい ながれが、ふちの うえがわと したがわへ、いきさきを かわりばんこに かえると せつめいされて います[3]。この ゆれが、音の はじまりです。
では、その ゆれは、ほんとうに みえるのでしょうか。
2. 見えない 息の ゆれを、どうやって うつしたの?
2. 高校の実験は、息のゆれを煙で撮った
2. 煙の可視化 ── 高速度撮影で得た1秒460回と455Hz
ひろしまだいがくの ふぞくこうこうの じっけんでは、エッジの ちかくに けむりを ながして、とても はやい カメラで うつしました[4]。
すると、くだの なかへ はいる けむりの かたまりと、そとへ でる かたまりが、かわりばんこに みえました。
いちばん ひくい 音を だしたとき、かたまりは 1びょうに 460かい。おなじ ときに でて いた 音は、455ヘルツでした。ほとんど おなじ かずです[4]。
ヘルツは、1びょうに 何かい ふるえるか、を あらわす たんいです。息の ゆれる かずが、そのまま 音の たかさに なって いるようです。ただ、これは この こうこうの じっけんの あたいです。
広島大学附属高校の実験では、エッジ付近の空気の流れに煙を混ぜ、高速度カメラで撮影しました。すると、管の中へ入る空気と、外へ出る空気が、煙の塊として交互に見えました[4]。
最も低い基本音のとき、その塊は内と外をあわせて1秒に460回できていました。同時に鳴っていた音は455Hz(1秒に455回の振動)で、ほぼ一致しました[4]。
息の揺れの回数が、そのまま音の高さになっているように見えます。ただし、これはこの実験で得られた値で、どのリコーダーでも同じ数字になるという意味ではありません。
とはいえ、息が揺れているだけでは、ふつうの風の音のようになりそうです。リコーダーの音が「ド」や「レ」の決まった高さになるのは、なぜでしょうか。
この実験では、エッジ付近の流れを煙で可視化して高速度撮影すると、管内へ入る空気と外へ出る空気が煙の塊として交互に現れた。基本音では、その塊が内外あわせて1秒間に460回できていた。測定時に鳴っていた音は455Hzで、ほぼ一致している[4]。
息の噴流の振動数が音の高さを与えているように読めるが、値は高校の実験1回のものであり、楽器一般の定数として扱うことはできない。
ただし、噴流の揺れだけなら、エッジの位置や息の速さで様々な高さの雑音になりうる。実際のリコーダーが決まった音階の高さを出すには、管が音を選ぶ働きが必要になる。
3. ゆれた 息は、どうして きまった 音に なるの?
3. 息のゆれを、管の中の空気が選んで大きくする
3. 噴流の揺れと気柱の共鳴 ── 波長は管の長さで決まる
ぶらんこを おもいだして ください。ぶらんこには、ゆれやすい はやさが あります。その はやさに あわせて おすと、ぐんぐん おおきく ゆれます。
リコーダーの くだの なかの くうきにも、ゆれやすい かずが あります。息の ゆれが それに あうと、くうきが いっしょに ゆれて、大きな 音に なると かんがえられて います[2]。
ただし、ぶらんこは かたい ものが ゆれますが、くだの なかでは くうきが ゆれて います。
この ゆれやすい かずを きめて いるのは、くだの ながさです[6]。
ブランコには、揺れやすい速さがあります。その速さに合わせて押すと、大きく揺れます。管の中の空気にも、揺れやすい回数があり、息の揺れがそれに合うと空気がいっしょに揺れて、音が大きく響きます。これを共鳴(共振)といいます[2]。
ただし、ブランコは硬い物体の動きですが、管の中で揺れているのは空気そのものです。
この揺れやすい回数を決めているのは、主に管の長さです。千葉大学の実験では、リコーダーの音の高さは管の長さで決まると説明されています[6]。
管が長いほどゆっくり揺れて低い音、短いほど速く揺れて高い音になります。では、指で穴をふさいだり開けたりすると、何が変わっているのでしょうか。
エッジ付近の噴流の揺れが振動源となり、管内の空気(気柱)が共振して音が発生する[2]。共振でどの高さが強められるかは、管の形で決まる。千葉大学の資料は、リコーダーの振動数が長さで決まるとする一方、ペットボトルでは体積と口の大きさなどで決まるらしいと述べる[6]。
両端が開いた管(開管)の基本振動では、波長は管の長さの2倍(λ=2L)になる。沼津高専の講義資料は、フルートを開管、クラリネットを閉管として説明する[5]。リコーダーの管を単純な開管モデルで考えるなら、管が長いほど波長が長く、振動数は低い。実際の楽器では、指穴や開口部の影響で実効的な長さがこの単純な値からずれる。
この考え方が正しいとすると、指穴をふさいだり開けたりして「長さ」を変えれば、音の高さを変えられるはずだ。
4. ゆびを はなすと、どうして 音が たかく なるの?
4. 指穴を開けるほど、管が短くなって高い音になる
4. 指穴と実効的な管の長さ ── 位置は実際の長さではない
リコーダーの おもての あなを ぜんぶ ふさぐと、いちばん ひくい 音が でます。きまった じゅんばんで あなを あけて いくと、音が だんだん たかく なります。
ゆびを はなすと、あなから くうきが でて いくので、ゆれる くうきの ながさが みじかく なったように はたらきます[5]。みじかい くだは、たかい 音です。
ふえの ほんとうの ながさは かわりません。あなの あけ ぐあいで、はたらく ながさが かわる のです。
おもての穴を全部ふさぐと、いちばん低い音が出ます。決まった順番で穴を開けていくと、音が少しずつ高くなります。
指穴を開けると、その位置から空気が出入りできるので、音に関わる空気の柱が、実際より短くなったように働きます。穴をふさぐほど、有効な管の長さは長くなり、音は低くなります[5]。
ここで注意したいのは、「穴の位置=管の実際の長さ」ではないことです。穴の大きさなどで補正が入るため、音の高さに関わる長さ(実効長)は、単純な位置の測り方とは少しずれます[5]。
管の長さと指穴で、たくさんの音が作れます。それでも、指穴だけではとどかない高い音が、リコーダーにはあります。そこで、裏の小さな穴の出番になります。
指穴をふさぐほど有効な管が長くなり低音、開けるほど短くなり高音になる。ただし穴の位置がそのまま管の実長を表すわけではなく、穴の大きさなどによる補正を受けた実効長で考える必要がある[5]。
このためリコーダーの設計では、穴の位置と大きさを調整して音階を合わせる。基本振動の波長が2Lで与えられるとしても、実効長は測った長さより変わりうる。
ところが、この考え方だけでは説明しにくい操作がある。裏の親指の穴(サムホール)を少し開けると、管の長さがほとんど変わらないのに、音が1オクターブ上がる。
5. うらの ちいさな あなで、どうして 1オクターブ うえの 音が でるの?
5. 裏の小さな穴(サムホール)は、音をどう高くするのか
5. サムホールを真裏に開けたときだけ、1オクターブ上が出ない ── 位置を変えても上がる不思議
リコーダーの うらには、おやゆびで ふさぐ ちいさな あなが あります。これを サムホールと いいます。
この あなを すこし あけると、ふさいだ ときより 1オクターブ うえの 音が でます[4]。
「あなが あくと、くだが はんぶんに なるから」と おもうかも しれません。でも こうこうの じっけんでは、あなの いちを かえても、1オクターブ うえの 音が でました[4]。ながさが かわった から ではなさそうです。
ただ、エッジの ちょうど うらに あなを あけた ときだけ、1オクターブ うえの 音は でませんでした。オルガンの くだで ためした けっかです。しらべた ひとは、エッジの ちかくの くうきの ながれが たいせつだと かんがえて います。
ほんとうの わけは、この じっけんでは、これから しらべる ことだと されて います。
リコーダーの裏側の小さな穴、サムホールを少し開けると、閉じていたときより1オクターブ高い音が出ます。楽器の解説では、サムホールの主な役目はオクターブ孔で、開けると管内の空気の最も基本的な振動が不安定になり、音域が切りかわると説明されています[3]。
この穴の役目を、「穴が開いて管が半分の長さになるから」と考えたくなります。ところが、広島大学附属高校の実験では、サミング(サムホールで音を変える奏法)の穴の位置をどこにしても、基本音の1オクターブ上の音が出ました[4]。位置と関係なく上がるので、単純な長さの変化では説明しにくいようです。
ただし、オルガンの管でエッジの真裏に穴を開けたときだけ、1オクターブ上の音は出ませんでした。研究者は、エッジ付近の空気の流れが重要だと考え、仕組みの解明はこれからと述べています[4]。
身近な楽器なのに、穴1つの働きが、まだ研究の途中にあるのです。ペットボトルを吹いても音は出ますが、リコーダーと同じ仕組みなのでしょうか。
サムホールの主な役割はオクターブ孔(octaving vent)で、開放すると空気柱の第1モードが不安定になり、音域(レジスター)が切りかわる。多くのリコーダーで、最低音の9度より上の音すべてに必要とされる[3]。
この現象を「穴が開くと有効管長が半分になるから」とは説明しにくい。広島大学附属高校の実験では、サミングの孔の位置をどこにしても基本音の1オクターブ上の音が出た[4]。管長の変化が位置に依存するなら、位置を変えれば結果も変わるはずである。
一方で、オルガンパイプのエッジの真裏に開けた孔では、1オクターブ上の音は出なかった。研究者はエッジ付近の空気の流れが重要だと考察し、仕組みの解明は今後の課題と述べる[4]。中間報告的な報告であり、断定的な機構は示されていない。
このように、管長と指穴による音階の話は共鳴の考え方でかなり説明できるが、サムホールの働きは、エッジ付近の流れと管内の共鳴をあわせて考える必要のある問いとして残っている。では、同じく息で鳴る別のものとして、ペットボトルの場合はどうなのか。
6. ペットボトルも ふくと 鳴るのは、おなじ しくみ?
6. ペットボトルの音は、リコーダーと同じ仕組みか
6. リコーダーとペットボトルでは、空気の揺れ方が違う
ペットボトルの くちに 息を あてても、ぼー、と 音が でます。リコーダーと おなじ しくみでしょうか。
ちばだいがくの じっけんでは、くだの なかの くうきの ゆれかたを しらべました。リコーダーでは、くだの ばしょによって、くうきの ゆれる タイミングが ちがって いました。ペットボトルでは、なかの くうきが ぜんぶ おなじ タイミングで ゆれて いました[6]。
だから、二つの 音の でかたは、ちがうと されて います。リコーダーは ながさ、ペットボトルは ふくろの ような ひろさと くちの おおきさで、音の たかさが きまるらしいです。
千葉大学の資料によると、実験で管の中の位置ごとに空気の振動の位相(揺れのタイミング)を比べました。リコーダーでは、位置によって位相が異なりました。ペットボトルでは、内部全体がそろって同じタイミングで振動しました[6]。
このため、両者の発音の仕組みは異なると説明されています。振動数は、リコーダーでは管の長さ、ペットボトルでは体積と口の大きさなどで決まるらしい、とされます[6]。
息で鳴る点は同じでも、空気が揺れる形がちがう。リコーダーの音は、細い管の中で、場所ごとに揺れ方の違う空気の柱が作っているのです。
千葉大学の資料によると、実験でリコーダーの管内の位置ごとに空気振動の位相が異なるのに対し、ペットボトル(ヘルムホルツ型)では内部全体が同位相で振動した[6]。前者は管の中を波が行き来する定常波、後者は容器の空気全体がばねのように一体で動く共鳴に対応する。
その結果、振動数は、リコーダーでは管の長さ、ペットボトルでは体積と口の大きさなどで決まるらしいとされ、両者の発音の仕組みは異なる[6]。息を吹き込む点は共通でも、共鳴する空気の振る舞いが違うため、「管の長さで高さを決める」という考え方はペットボトルにはそのままあてはまらない。
リコーダーの音は、息の噴流の揺れがエッジで生まれ、管内の気柱が長さに応じてそれを選び、サムホールが揺れの型を切りかえるという順序で説明される。最後のサムホールの部分は、まだ研究が続いている。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日できること
リコーダーの うらの あなを、おやゆびを ずらして、すこしずつ あけて みましょう。ぜんぶ ふさいだ 音と くらべて、1オクターブ たかく なるのを きいて みます。音が おちつかなければ、むりに つづけなくて だいじょうぶです。
ペットボトルの くちに 息を ふいて みるのも おもしろいです。すこし 水を いれて ふくと、音の たかさは どう かわるでしょうか。
こうしきの 情報
がっこうの としょしつで、おと や がっきの ほんを さがして みましょう。
今日できること
リコーダーのサムホールを親指で少しずつ開けた音と、完全にふさいだ音を、続けて吹いて聞き比べてみます。開け具合を変えると、音はどう変わるでしょうか。音が安定しなければ、無理に続けなくてかまいません。
ペットボトルの口に息を吹いて音を出し、水を少し入れたときに高さがどう変わるか確かめてみるのも一つの方法です。
公式情報
大学や高校の物理の資料には、管楽器の共鳴や、エッジトーンの実験が紹介されています。出典に挙げた広島大学附属高校の資料は、サムホールの実験を写真つきで紹介しています。
今日できること
サムホールの開け具合を変えながら、同じ運指で音の高さを比べてみる。息の強さも変えると、音がどう切りかわるか観察できる。ペットボトルに入れる水の量を変えて吹くと、体積と音の高さの関係を試せる。
資料を読むなら
広島大学附属高校の研究報告(サミング奏法時の空気流)は、煙の可視化の方法が具体的に書かれており、サムホールの位置を変えた実験の詳細を確かめられる。千葉大学の資料も合わせて読み、管内の位相の測り方を比べてみるとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
発音の順序は日本語版・英語版の解説と沼津高専の講義資料で、実験の数値とサムホールの位置は広島大学附属高校の報告で、ペットボトルとの比較は千葉大学の資料で確かめた。
- エアリード(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/エアリード (ウィンドウェイとエッジ・フルートとの違い)
- リコーダー(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/リコーダー (振動源と共振)
- Recorder (musical instrument)(Wikipedia英語版) https://en.wikipedia.org/wiki/Recorder_(musical_instrument) (息がエッジの上下を通ること・サムホールの役目)
- 広島大学附属高等学校「リコーダーのサミング奏法時の空気流研究」 https://pesj-cs.hiroshima-u.ac.jp/old_html/shibukai2009/Fp1-2.pdf (煙の撮影・460回と455Hz・サムホールの位置の実験)
- 沼津高専 物理2 講義資料 no11 https://physics.numazu-ct.ac.jp/lecture2023/phys2/phys2-yamazaki/no11/FY2022-physics2-no11.pdf (開管・管の長さと指穴)
- 千葉大学「リコーダーの音はどこで発生?」 https://www.cfs.chiba-u.jp/koudai-renkei/information/files/recorder.pdf (管の長さで決まる音の高さ・ペットボトルとの比較)
なおした ところ
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