1. あかとんぼは、いつ うまれるの?
1. 赤とんぼが生まれるのは、実は初夏
1. 羽化は初夏 ── 低地の水田で生まれるアキアカネ
「あかとんぼ」は、なんしゅるいかの とんぼを まとめて よぶ なまえです。いちばん よく みられるのが 「アキアカネ」です[1]。
みずの なかで そだった こどもは、はるの おわりから なつの はじめに、そらを とべる おとなに なります。たんぼや いけの ちかくで おこる ことです[1]。
つまり、あかとんぼが うまれるのは 「あき」では ありません。なつが はじまる ころなのです。
2. なつの あいだ、どこに いるの?
2. 夏は山の上で過ごす ── 暑さを逃れるひっこし
2. 高地への移動 ── 平均気温22〜23℃がめやすに
うまれて すうじつは、たんぼの ちかくで たべものを とります。でも、なつの あつさが きびしく なると、やまへ ひっこします[1]。
すずしい やまの うえで、あつい なつを すごすのです。だから、なつの あいだ、まちや たんぼでは、あかとんぼに あまり あわないのです。
3. やまの うえで、なにを して いるの?
3. 山の上での準備 ── 体を育てて、産卵は先のばし
3. 生殖休眠 ── 産卵を数か月遅らせるしくみ
やまの うえでは、たくさん たべます。からだの なかでは、こどもを のこす じゅんびが すすんで、からだは まえより おもく なります[1]。
でも、たまごは すぐには うみません。ふゆを ちゃんと こせる、すずしい きせつに なるまで まつのです。この まつ じかんは、2かげつから 3かげつも あります[2]。
4. あきに なると、やまを おりる
4. 秋、山を下りてくる ── 大群になって
4. 秋雨前線と共に始まる下山
すずしい かぜが ふく あきに なると、あかとんぼは やまを おります。おおぜいで、いちどに おりて くることも おおいそうです[1]。
たんぼや かわの うえに、いっせいに すがたを あらわすので、「きゅうに ふえた」ように かんじるのです。でも ほんとうは、なつの あいだも どこかで いきて いて、やまから もどって きただけなのです。
5. きいろから あかへ、いろが かわる
5. なぜ赤くなるのか ── 色素の酸化還元
5. 色素の酸化還元 ── ビタミンCで数時間のうちに赤くなった実験
あかとんぼの あかい いろの もとは、からだの なかに ある いろの もとです。わかい ときは きいろっぽく、おとなに なると あかく かわります[3]。
けんきゅうでは、わかい オスに、レモンなどに ふくまれる 「ビタミンC」を 注射すると、すうじかんで あかく なりました[3]。いろが かわるのは、からだの なかの かがくの へんかだったのです。
りんごを うすく きって、はんぶんには なにも つけず、もう はんぶんには レモンじるを ぬって みましょう。しばらく おいて、いろの ちがいを くらべて みましょう。レモンじるの 「ビタミンC」に、いろが かわるのを ふせぐ ちからが あります。
成熟した赤とんぼの赤は、「オモクローム」という色素からできています。この色素には、酸化した形(黄色)と、還元した形(赤色)があり、成熟したオスでは赤い還元型がほとんどを占めるようになります[3]。
2012年、研究チームは、未成熟なオスに、還元剤として働く「ビタミンC」(アスコルビン酸)を注射する実験をしました。すると、わずか数時間で黄色から赤色に変わったのです[3]。年をとって自然に赤くなるのを待たなくても、化学的に色を変えられることが示されました。
体の右半分と左半分で色がちがう、めずらしい個体も見つかっています。細胞ごとに、色素の酸化・還元が別々に制御されている証拠だと考えられています[3]。
りんごを薄く切り、片方には何もつけず、もう片方にはレモン汁をぬってみます。しばらく置いて、色の変化を比べてみましょう。レモン汁に含まれるビタミンCには、切り口の色が変わるのを防ぐはたらきがあります。赤とんぼの色を変えた実験でも、ビタミンCの同じような還元のはたらきが使われています。
成熟に伴う体色変化の正体は、「オモクローム」という色素の酸化還元状態の切りかえである。酸化型は黄色、還元型は赤色を示し、成熟したオスの個体では還元型の割合が90〜100%に達する。この関係は、ショウジョウトンボ属(Crocothemis servilia)とアカネ属2種(Sympetrum darwinianum、S. frequens)で確認された[3]。
Futahashiら(2012年、米国科学アカデミー紀要)は、未成熟なオスと成熟したメスに、還元剤であるアスコルビン酸(ビタミンC)を注射する実験を行った。数時間のうちに黄色から赤色へと変化したという[3]。加齢によって不可逆に赤くなるのではなく、酸化還元状態という、原理的には可逆なしくみで色が決まっていることになる。
さらに、体の左右で色が異なる個体も観察されており、色素の酸化還元が細胞単位で制御されている可能性を示している[3]。
リンゴを薄く切り、断面の片側だけにレモン汁を塗って置いておく。切り口が茶色くなる変化は成分の酸化によるもので、ビタミンC(アスコルビン酸)はこれを還元し、酸化を防ぐ物質として働く。赤とんぼの体色を変えた実験と同じ、ビタミンCの還元作用を、身近な食材で確かめられる。
6. じぶんでも しらべて みたく なったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
あきに、たんぼの まわりや こうえんの みずべを みに いって みましょう。あかとんぼを みつけたら、いろを よく みて みましょう。まっかな こも いれば、きいろっぽい こも います[3]。
- つかまえないで、みるだけに しましょう。
- なんびき いるか、かぞえて みましょう。
- かぞくや ちかくの ひとに、「むかしは もっと いたか」を きいて みましょう。ちいきに よっては、のうやくや たんぼの みずの かんりの かわりかたで、あかとんぼが まえより へって いると いわれて います[4]。
秋に、田んぼの周りや公園の池を見に行ってみましょう。赤とんぼを見つけたら、色をよく観察します。真っ赤な個体もいれば、黄色っぽい個体もいます。色のちがいから、成熟した個体か、まだ若い個体かを考えてみましょう[3]。
秋、田んぼの周辺や公園の池を観察してみるとよい。個体の体色(赤の濃さ・黄色みの残り方)を記録すれば、成熟の進み具合を自分の目で確かめられる[3]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
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- フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』「アキアカネ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/アキアカネ (羽化の時期・場所、高温を避けた高地への移動、生殖腺の発達と体重の増加、秋雨前線を機とした山からの帰還、成虫の見られる時期。尾園暁ら『日本のトンボ』文一総合出版・井上清ほか『トンボのすべて』トンボ出版などを典拠とする)
- 上田哲行(1988)「アキアカネの生活史の多様性」石川県農業短期大学研究報告 18号。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/bulliac/18/0/18_KJ00000059964/_article/-char/ja (平均気温22〜23℃を超える地域から高地への移動が始まること、2〜3か月におよぶ長い前生殖期間、秋初めの低地への帰還と繁殖開始)
- Futahashi, R., Kurita, R., Mano, H., Fukatsu, T. (2012) “Redox alters yellow dragonflies into red”. Proceedings of the National Academy of Sciences 109(31): 12626-12631. https://doi.org/10.1073/pnas.1207114109 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3412017/ (体色を決める色素の酸化型・還元型、成熟したオスで還元型が90〜100%を占めること、アスコルビン酸〈ビタミンC〉の注射で数時間のうちに赤く変わったこと、体の左右で色が異なる個体の観察)
- 東川航・吉村真由美・八木剛・前藤薫(2019)「水田地帯における赤とんぼの衰退と保全に関する課題 ── 生息地利用の視点から ──」陸水学雑誌 80(3): 107-124。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rikusui/80/3/80_107/_article/-char/ja (種によって衰退の要因が異なること。止水性のアキアカネなどは農薬の影響、流水をともなう水域にすむミヤマアカネは水管理の近代化による生息地の減少)
- 中西康介・横溝裕行・林岳彦(2024)「統合的なアプローチで可能になる因果推論:アキアカネは農薬によって激減したのか」保全生態学研究(早期公開)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hozen/advpub/0/advpub_2304/_article/-char/ja (1990年代後半以降の急激な減少が、殺虫剤〈フィプロニル・イミダクロプリドなど〉と、圃場整備にともなう田んぼの乾燥化との複合的な影響によることを、複数の手法を統合して示した研究)
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