1. つめたく なるのに、こおりが とける
1. 塩は熱を出さない
1. 吸熱反応でも氷は融ける
「しおが あつく なって、こおりを とかす」と 思う 人が いるかも しれません。でも、しょくえんは 水に とけるとき、まわりの ねつを すいます。だから、まいた ところは すこし つめたく なります[1]。
それでも 道の こおりは とけます。しおは ねつで とかすのでは なく、水が こおる 温度を さげて いるのです[1]。
「えんか カルシウム」と いう ものは、水に とけるとき ねつを 出します。でも、本当の 道路で こおりを とかして いるのは、その ねつでは ないと、国の しりょうに あります[1]。
食塩(塩化ナトリウム)が水に溶けるときは、熱を吸う反応です。国土交通省の国総研の資料では、1モルあたり−3.88kJという値が示されています。塩をまいた場所は、温度が少し下がることになります[1]。
塩化カルシウムは反対に、溶けるときに熱を出します。ところが同じ資料は、実際の道路での融雪は、この発熱を利用しているのではないと説明しています[1]。
では、何を使っているのか。資料が挙げるのは「凝固点の低下」と、気温との差です。次の章で見ていきます。
国総研の資料によれば、NaClが水に溶ける際の溶解熱は−3.88kJ/molの吸熱で、散布箇所では温度低下が生じる。塩化カルシウムは+81.3kJ/molの発熱だが、実際の道路上の融雪は、こうした発熱反応を利用したものではなく、凝固点の低下と気温との差を利用したものだと説明されている[1]。
したがって「塩が溶けるときの熱で氷を融かす」という理解は、道路の融雪については当たらない。以降は、凝固点の低下という見方で整理する。
2. こおる 温度が さがる
2. 水が「凍れる温度」が下がる
2. 凝固点の低下と融雪の二つの機能
こおった みちには、うすく 水が ついて います。ここに しおが まざると、しおの 入った 水に なります。しおの 入った 水は、0℃では こおらず、もっと ひくい 温度に ならないと こおりません[1]。
しおが まざった 水は、ただの 水より こおりにくい 水に なります。だから、0℃より もっと さむく ならないと、こおりません。
この はたらきは 2つ あります。こおる まえに まいて、こおるのを おそく する ことと、もう できて しまった こおりを とかす ことです[1]。
道路の凍結防止剤(塩)をまくと、路上の水分は塩の濃さに応じて、0℃より低い温度でないと凍らない水溶液になります。これが凍結防止の中心的な働きだと、国総研の資料は説明しています[1]。
この働きは二通りに使われます。凍る前に凝固点を下げて、凍結を遅らせること。すでに凍った氷や雪を融かすことです[1]。
塩が混ざった水は、ふつうの水より凍りにくい水になります。そのため、0℃よりもっと寒くならないと凍りません。氷や雪の融解にも、この性質が働きます。
凝固点降下そのものの説明(粒の数や海水の場合)は、同じ日に公開した別のメモでくわしく扱っています。ここでは、道路の氷に話をしぼります。
路面に凍結防止剤を散布すると、路上の水分は濃度に応じた水溶液となり、凝固点が水より低くなる。国総研の資料は、この「凝固点の低下による凍結の遅延」と「凍結した氷雪の融解」の二つを、凍結防止剤の主な機能として挙げる[1]。
凝固点降下の一般論(溶質の粒子数との関係、Kfなど)は、同日公開の別稿で扱った。本稿は道路の氷という文脈に限る。
つまり、塩が混ざると水溶液の凝固点が下がり、その性質が氷雪の融解にも働く。本稿で言えるのは、資料が示すこの範囲までである。
3. ぜんぶは こおらない から、すべりにくい
3. 完全には凍らないから、すべりにくい
3. 共融点までの部分凍結と路面の摩擦
しおの 入った 水は、0℃に なっても、いっぺんに ぜんぶ こおる わけでは ありません。さむく なるほど、こおりが すこしずつ ふえて いきます[1]。
こおりが できると、のこった 水の しおは こく なります。こく なった 水は、さらに こおりにくく なります。この くりかえしで、水は すこしだけ のこり つづけます[1]。
だから しおを まいた みちは、カチカチの こおりには なりにくく、ぬれた みちの ような、まさつが たもたれる ことが あるそうです[1]。
塩水は、0℃を下回った瞬間に全部が凍るわけではありません。冷えるにつれて氷が少しずつ増え、残った水の塩の濃さが上がり、凍る温度がさらに下がっていきます。この様子は、共融点まで続くと説明されています[1]。
そのため、塩をまいた路面は、ガチガチの氷にならずに、シャーベットのような状態にとどまります。国総研の資料は、凍結防止剤の散布で、湿った路面程度まですべりにくさ(摩擦抵抗)が保たれると述べています[1]。
塩の役目は、氷をなくすことだけではありません。「完全に固まらせない」ことで、タイヤと路面の間にすべりにくさを残す、という見方もできます。この最後の部分は、資料の記述を筆者が言い換えたものです。
4. きおんで、とける りょうが かわる
4. 気温で、氷をとかす量が大きく変わる
4. 塩1kgが融かす氷の量と気温(実験値)
しお 1キロを まいて、1時間で どれだけ こおりが とけるか。しらべた 数字が あります。
マイナス 3℃では、こおりが 4.3キロ とけます。マイナス 15℃では、0.3キロ しか とけません。さむい ほど、しおの ちからは ぐっと 小さく なって いきます[1]。
この 数字は、むかしの しらべの 目安で、道路の じょうけんが かわれば 数字も かわります。それでも、さむい 日は しおだけでは たりない、と いう ことが 分かります。
国総研の資料には、塩(塩化ナトリウム)1kgをまいて、1時間後までに融ける氷の量を調べた表があります。2005年の手引きにもとづく実験値で、あくまで目安です[1]。
−3℃では4.3kg、−7℃では4.1kg、−12℃では1.6kg、−15℃では0.3kgです。−3℃と−15℃を比べると、融ける量は約14倍の差があります(4.3÷0.3から計算)。
寒くなるほど、同じ1kgの塩でも氷をとかす力が急に落ちる。これが、「寒すぎる日は塩だけでは足りない」という話につながります。
ちなみに、塩化カルシウムは−15℃・1時間で2kgとかす、と同じ表にあります。低温でも速く効くタイプです。ただし−3℃では、6時間後までの総量は塩化ナトリウムのほうが多いとされています[1]。
国総研の表2-2-2(2005年の除雪・防雪ハンドブック由来)によると、NaCl 1kgの散布で1時間後までに融解した氷は、−3℃で4.3kg、−7℃で4.1kg、−12℃で1.6kg、−15℃で0.3kgである。−3℃と−15℃の比は4.3÷0.3≒14で、約14倍になる[1]。
同表でCaCl2は、−15℃・1時間で2kgとNaClより多い。ただし−3℃・6時間後ではCaCl2が7.1kg、NaClが9.5kgで、NaClのほうが多い[1]。低温での速効性はCaCl2、温和な気温での持続性はNaClに分がある、という読み方ができる。
これは古い条件下の実験値であり、路面温度・氷の厚さ・散布のしかたで実際の量は変わる。表の値は「目安」として扱う。
5. しおにも、とどかない さむさが ある
5. 塩にも限界がある ── 約−21℃と、薬剤の使い分け
5. 共融点(約−21℃)と薬剤の選択
しょくえんの 水は、マイナス 21℃ぐらいが、水のままで いられる げんかいです。それより さむいと、しおは 水に とけて いられず、ちからが 大きく 落ちます[1][2]。
そこで さむい 地方では、もっと ひくい 温度まで はたらく 「塩化カルシウム」などを つかう ことが あります[1]。
道路に よって、つかい分けも あります。はやく とけて ほしい 橋の ちかくや 坂道では 「えんか カルシウム」、ながく きく ほうが いい 道では 「しょくえん」が 多いと 言われます[5]。
食塩水が液体でいられる限界の温度(共融点)は約−21℃です。これより低いと塩が結晶になってしまい、効果が大きく落ちます。この点は、イギリスの物理学会の雑誌にも書かれています[1][2]。
国総研の資料では、同じ濃度なら塩化ナトリウムと塩化カルシウムは−20℃程度まで同じくらいの効果です。気温がもっと低くなる地域では、凝固点の低い塩化カルシウムや塩化マグネシウムのほうが大きな効果を期待できる、とあります[1]。日本の販売会社の解説では、目安の温度が塩化ナトリウムで約−20℃、塩化マグネシウムで約−30℃、塩化カルシウムで約−50℃です[3]。ただし、これは液体でいられる限界の温度の目安で、実際に氷がとける温度ではありません。
実際の道路では、使い分けもされます。塩化カルシウムは効き目が速く、橋のたもとや急な坂道に、塩化ナトリウムは長く効き、高速道路に使われることが多いとされます[5]。札幌市では主成分は食塩で、初冬などには、塩化カルシウムの水溶液で湿らせてから散布して、路面に付きやすくしているそうです[4]。
NaCl水溶液が液体でいられる限界の温度、すなわち共融点は約−21℃(図では−21.1℃)で、これより低いと塩が結晶として析出し、効果が大きく落ちる。国総研の資料と、Physics Worldの記事の双方がこの点を示す[1][2]。共融点付近の水溶液の濃度は23.3%で、これは溶液の質量濃度の上限であり、路面にまく粒の割合ではない[1]。
同濃度であれば、NaClとCaCl2は−20℃程度まで同程度の凍結防止効果をもち、極寒地では凝固点の低いCaCl2やMgCl2の方が大きな効果を期待できる[1]。販売元の解説による有効温度の目安は、NaClが約−20℃、MgCl2が約−30℃、CaCl2が約−50℃である[3]。ただしCaCl2の共融点は、国総研資料内でも表(約−51℃)と図(−33.3℃)で数値が食い違うため、本稿では数値を断定しない。これは共融点の値であり、実際に氷が融ける温度ではない点にも注意したい。
運用面では、CaCl2は融氷が速く、橋のたもとや急坂に、NaClは持続性があり高速道路に多用される。NaClは使用量の約7割を占めるとされる[5]。札幌市の例では、NaClを主成分とし、初冬やブラックアイスバーンの際にはCaCl2水溶液で湿らせて付着性を高めてから散布する[4]。
6. まいたあとの ことも 考える
6. まいたあとの、道ばたのこと
6. 副作用と予防散布
しおは、まいた あと どこへ いくのでしょう。ながく たまったり、たくさん まいたり すると、道ばたの 木や 草に よく ない こと、車が さびやすく なる こと、コンクリートの 中の てつが さびる ことが あると 言われます[6]。
だから、いつ どれだけ まくかを 考えて 使う ことが 大切です。
塩は便利ですが、副作用も知られています。鉄筋コンクリートの構造物では、割れ目から塩が入り込み、鉄筋をさびさせて傷める原因になる、と説明されています。道路の脇の植物への塩害、車のさび、川への流れ出しも挙げられます。日本では、川に流れ出す水について、水質汚濁防止法の排水基準を守る必要があります[6]。
どれくらい影響するかは、場所や量によります。害ばかりを強調するのではなく、どこに、いつ、どれだけまくかを考えて使うことが、道路をあずかる人の工夫になっています。
凍結防止剤の副作用として、コンクリートの割れ目からの浸透による鉄筋腐食・劣化、沿道植物への塩害、車両の腐食、河川への流出(日本では水質汚濁防止法の排水基準の遵守が必要)が挙げられる[6]。ただしこれらの影響の大小は、地点・散布量・条件によって異なり、一括して断定することはできない。
散布量は、氷の量と気温(第4章の融解量の表)を踏まえて決める必要がある。冷え込みが厳しいときに塩だけでは足りないのは、共融点の限界(第5章)による。
7. こおりと しおを ならべて みよう
7. 氷に塩をふって、とけ方を見比べる
7. 出口 ── 氷2つの比較/資料を読む
おうちの 人と いっしょに やります。れいとうこの 氷を 2つ、おさらに ならべて おきます。
1つの 氷にだけ、しおを ひとつまみ ふります。じゅんばんに 見て、水の 出かたや、氷の 形の ちがいを くらべて みましょう。
しおを ふった 氷は、どんな ふうに なるでしょうか。ふった あとに おさらの 水を さわると、すこし つめたく かんじるかも しれません。かならず そう なる とは かぎりません。水は のまない ように して、手が つめたく なりすぎたら やめて ください。
冷凍庫の氷を、お皿に2つ並べます。1つにだけ、塩をひとつまみふります。時間がたつにつれ、水の出方や氷の形にどんな違いが出るか、見比べてみます。
塩をふったほうは、水が出ても、まわりが冷たく感じるかもしれません。塩が溶けるときに熱を吸う話(第1章)と、つなげて考えてみてください。ただし、室温や氷の大きさでようすは変わり、必ずこうなるとは言えません。
塩水は飲まないようにします。手が冷たくなりすぎたら、やめます。資料を読むなら、国土交通省国総研の資料[1]の「凍結防止のメカニズム」の章が、日本語で読めます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の資料を中心に、Physics World、企業・報道機関の解説、ウィキペディアを突き合わせました。融解量の比(約14倍)は、資料の表から筆者が計算したものです。
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所「凍結防止のメカニズム」(2.2 章)。 https://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0412pdf/ks0412007.pdf (吸熱と凝固点低下、共融点、融解量の表、摩擦抵抗について)
- Physics World「A salty safety solution」。 https://physicsworld.com/a/a-salty-safety-solution/ (共融点と低温での薬剤の違いについて)
- 東京ソルト「雪が降ったら塩をまく?」。 https://www.tokyosalt.co.jp/pages/124/ (薬剤ごとの有効温度の目安について)
- GAZOO「凍結防止剤の正体」。 https://gazoo.com/column/daily/18/02/18/ (札幌市の道路での使い方について)
- ウェザーニュース「道路脇の凍結防止剤」。 https://weathernews.jp/s/topics/202112/250115/ (薬剤の使い分けについて)
- 「融雪剤」日本語版ウィキペディア。 https://ja.wikipedia.org/wiki/融雪剤 (副作用について)
なおした ところ
更新履歴
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