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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ぬのの いろは、いとに ついて いるの? ぬのに ついて いるの?

糸を染めるか、布を染めるか ── 織物の色を決める順番のちがい

先染めと後染め ── 染める順番が、色の見え方と手間を変える

分野:技術

ふくの はしを よく 見ると、ほつれた 糸が 出て いる ことが あります。その 糸に、ふくと おなじ 色が ついて いる ものと、白い ものが あります。

いつ 色を つけたのかで、できあがりの 見えかたも、つくる ときの たいへんさも かわります。この メモを 読むと、「さきぞめ」と「あとぞめ」の ちがいが わかります。

シャツの格子柄は、生地の上に絵の具でかいたものではなく、色のちがう糸を組み合わせて作られていることが多いといいます。ところが、同じ「柄のある布」でも、白い布を織ってから絵を描くように染めるものもあります。

染める順番がちがうと、色の見え方も、作る人の苦労もどう変わるのでしょうか。このメモでは、公的機関の研究報告や資料をもとに、先染めと後染めのちがいが分かります。

同じ色の経糸と緯糸で織った布は、糸そのものより濃く、くすんで見える。茨城県工業技術センターの結城紬の研究が報告した結果だ[2]。織る前に糸を染める先染めでは、糸の色と布の色が一致しない。

では、先染めと、織ってから染める後染めは、色の出方や手間がどう違うのか。このメモでは、公的機関の資料や研究報告をもとに、染める順番が見た目と作り手の苦労にどう関わるかが分かる。

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1. いとに いろが ついて いるって?

1. ほどいた糸に色がついているのはなぜか

1. 糸に色があるか、布に色があるか ── 先染めと後染め

ふくの はしから、ほつれた 糸を そっと 見て みます。赤と 白の しまの ふくには、赤い 糸と 白い 糸を おりあわせた ものも あります。

これは、糸を あらかじめ そめて から、はたで おって いるからです。こうして つくる ものを「さきぞめ」と いいます[1]。

はんたいに、白い 糸で ぬのを おって から、あとで そめる やりかたも あります。こちらは「あとぞめ」です。

ちがう 色の 糸を たてと よこに くみあわせると、こうしの もようが できます[3]。糸を 先に そめて あるから、できる ことです。

服のすそやえりの端から、ほつれた糸が出ていることがあります。その糸をつまんでみると、服と同じ色のものもあれば、白っぽいものもあります。

織物には、先に糸を染めてから織る方法と、白い糸で布に織ってからあとで染める方法があります。このメモでは、前者を先染め、後者を後染めと呼びます[1]。

新潟県の十日町では、越後上布のような植物繊維の織物の多くを、織る前に糸を染めて作ると説明されています。色のちがう糸を織機で交差させると、格子柄のような柄ができます[3]。

では、同じ色の糸を使って織ったら、布の色は糸と同じに見えるのでしょうか。

服の裾やほつれた糸を引いてみると、糸に服と同じ色がついているものと、白っぽいものがある。この違いが、織物を作る順番の違いに由来する。染めた糸を織る織物と、織ってから染める織物があり、このメモでは前者を先染め、後者を後染めと呼ぶ[1]。

新潟県十日町の染色技法を紹介した国土交通省の資料は、越後上布のような植物繊維の織物は、多くが織る前に糸を染めると説明する。異なる色の糸を織機で交差させれば、格子柄のように柄が作れる[3]。糸の段階で色が決まっているから、柄は織る動作のなかで生まれる。

では、糸を染めて織った布の色は、糸の色をそのまま映すのか。そこを実測した研究がある。

2. おなじ 色の 糸なのに、ぬのは くらく 見える?

2. 同じ色の糸なのに、布は暗く見える

2. 経糸と緯糸が同色でも、織物は糸より濃くくすむ

赤い 糸だけで ぬのを おったら、糸と おなじ 赤に 見えるでしょうか。

いばらきけんの けんきゅうしょでは、「ゆうきつむぎ」と いう きぬの ぬのを つかって しらべました。たて糸と よこ糸を おなじ 色に して おると、ぬのは 糸よりも こく、すこし くすんだ 色に 見えたと ほうこくされて います[2]。

この けっかは、きぬの 糸での じっけんです。ほかの ぬのにも あてはまるとは かぎりません。

茨城県工業技術センターは、結城紬の絹糸の見本をたくさん織って、糸の色と織物の色を比べました。経糸と緯糸が同じ色のとき、織物の明るさと鮮やかさは、どちらの糸よりも小さくなりました。織物は、糸より濃く、くすんで見えたのです[2]。

この報告は、先染めの結城紬を、経糸と緯糸の色が合わさってできる「混合色」の織物と呼んでいます。経糸と緯糸の組み合わせによって、後染めの織物とはちがう、複雑で微妙な色を表せるとも述べています[2]。

そのため、思った色の布を作るには、糸の色を少し修正して選ぶ必要があります。ただし、これは結城紬の絹糸で行った実験の結果です。すべての織物に当てはまる決まりとは書かれていません。

では、白い布にあとから染める後染めなら、こうした苦労はなくなるのでしょうか。その前に、後染めがよく使われる例を見てみます。

茨城県工業技術センターの研究報告は、先染織物の結城紬を、経糸と緯糸の色から合成される混合色織物と位置づける。組み合わせ次第で、後染織物とは異なる複雑で微妙な色を表現できるという[2]。

実験では、絹糸の見本144点を試織した。経糸と緯糸が同色の場合、織物の明度と彩度は、どちらの糸よりも小さくなった。つまり、糸の色より織物の色は濃く、くすんで見える[2]。

この結果から、狙った色の織物を得るには、糸の色を修正して選ぶ必要が出る。ただし、これは結城紬の絹糸に限った実験の結果で、あらゆる織物に成り立つ法則とは述べられていない。

糸の色と布の色がずれるのなら、布になってから染めるほうが、狙った色を出しやすいのではないか。その例として、絹の後染めを見る。

3. しろい きぬの ぬのに、どうやって え を かくの?

3. 白い絹の布に、あとから柄をつける

3. 絹は織ってから絵を描く ── 友禅という防染の技法

十日町とおかまちと いう まちでは、いまの きぬの ぬのは、おりあげてから ゆうぜんと いう やりかたで がらを つけると いわれて います[3]。

まず、しろい きぬの ぬのに、そめたく ない ところだけ のりを ぬります。そのうえから せんりょうを しみこませると、のりを ぬった ところは 白く のこります[3]。

え を かくように、ぬのの うえで もようを つくる ことが できるのです。

でも、きぬなら ぜんぶ あとぞめ、というわけでは ありません。さっきの ゆうきつむぎは、きぬなのに さきぞめでした。

同じ十日町の資料は、現代の絹織物の多くは、織り上げたあとに友禅という技法で絵柄を作ると説明しています。まず職人が、白い絹の布の、染料をしみこませたくない場所にのりを塗ります。その上から染めると、のりを塗った部分は染まらず、白く残ります[3]。

糸を染めて織る格子柄は、織る動作から柄が生まれます。友禅は、織り終えた布の上に、筆で絵を描くように柄を置いていく方法です。柄のつくり方が正反対なのです。

ただし、「植物繊維の布は先染め、絹は後染め」と決めつけるのはまちがいです。さきほどの結城紬は絹ですが、先染めです[2]。同じ材料でも、作りたい柄や色の出し方に合わせて、順番が選ばれています。

後染めをするときは、織り上げたままの布をすぐ染めるのではなく、前処理をします。京都市産業技術研究所の染色の技術支援には、糊抜き、精練・漂白などの工程が挙がっています[7]。先染めの糸には糸の手間があり、後染めには布の手間があるようです。

後染めの代表が友禅だ。十日町の資料によれば、現代の絹織物は、絵柄の多くを織り上げた後に友禅という防染の技法で作る。職人が白い絹織物の、染料を沁み込ませたくない場所に糊を塗り、その後に染める[3]。格子柄が織る動作から生まれるのに対し、友禅は織り終えた布の上に柄を置いていく点で、柄のでき方が正反対になる。

ただし、「植物繊維は先染め、絹は後染め」と一般化はできない。前述の結城紬は絹の先染めである[2]。素材でなく、出したい柄と色によって順番が選ばれると読むのが妥当だろう。

後染めにも手間はある。織り上げた生地は、そのまま染められるわけではない。京都市産業技術研究所の染色の技術支援分野には、糊抜き、精練・漂白、減量加工、浸染、捺染、仕上加工が挙がっている[7]。すべての後染めがこの順で進むとは限らないが、後染めの手間は「生地を染められる状態にする」ところに現れる、と整理できる。

では、先染めにはどんな手間があるのか。身近なデニムから考える。

4. ジーンズは、はくと どうして 白っぽく なるの?

4. デニムは、はくほど白い部分が見えてくる

4. デニムは経糸だけ染める ── 表は青く、裏は白っぽい

ジーンズの うらがわを 見ると、おもてより 白っぽいのに 気づきます。

デニムは、たて糸だけを あおく そめて あります。よこ糸は そめて いない 白っぽい 糸です[5]。だから おもては あおく、うらは 白っぽく 見えるのです。

さらに、あおい 糸は、まんなかまで そまって いないと せつめいされて います。はいて いくうちに、おもての あおが うすく なり、なかの 白が 見えて くるのです[6]。

すべての デニムが そうだとは かぎりません。ためして みたい ときは、じぶんの ジーンズを 見て みましょう。

デニムは、経糸に染めた糸(インディゴ)、緯糸に晒した糸(染めていない白っぽい糸)を使い、綾織りにした厚手の木綿の布です[5]。表にはインディゴ色の経糸が多く出て、裏には緯糸が多く出るため、裏側は白っぽく見えます。

さらに、商品や記事の紹介では、デニムの経糸はロープ状にして染めるため、糸の芯まで染まらず、中心が白く残ると説明されています(中白)。はき込むうちに表面のインディゴが落ち、この白い部分が見えてくるというのです[6]。

ただし、これは商品紹介にある説明で、すべてのデニムがロープ染色とは限りません。公的な資料での確認は、まだできていません。

先染めは、糸を一度染めたあとの色も、織ったあとの見え方も、作る前に読まなければなりません。染めた糸に、もし少しでも色のむらがあったら、どうなるのでしょうか。

デニムは、経糸に染めた糸(インディゴ)、緯糸に晒し糸(染めていない白っぽい糸)を使う、綾織りの木綿の厚地である[5]。表に経糸の青、裏に緯糸の白が多く出る構造のため、裏側は白っぽい。先染めの織物では、糸の色の使い分けが、そのまま布の表裏の表情の違いになる例だ。

経糸の染め方についても、商品・記事の紹介では、ロープ状にして染めるため糸の芯まで染まらず、中心が白いまま残る(中白)と説明される。はくうちに表面のインディゴが落ち、白い部分が見えてくる、という説明である[6]。ただしこれは商品紹介の抜粋で、すべてのデニムに当てはまるとは限らず、公的資料での確認は済んでいない。使うなら「と説明される」にとどめるのが妥当だ。

糸の段階で色が決まる先染めは、この糸の色のばらつきが、そのまま布の表情に映りうる。それは実際にどれほどのものか。結城紬の別の報告が、それを調べている。

5. いとの 色が ちょっと ちがうと どうなるの?

5. 糸の色のわずかなちがいが、布の筋になる

5. 糸の色差が「よこ段」を生む ── 先染めの難しさの一例

そめた 糸の 色が、ぜんぶ ぴったり おなじとは かぎりません。

ゆうきつむぎの けんきゅうでは、糸を そめる ときに、糸の たばごとにも、おなじ たばの なかでも、色の ちがいが できる ことが わかりました[4]。

この ちがいが、おった ぬのに よこの すじ(よこだん)を つくる もとに なるかも しれません。そこで、わざと 色の ちがう 糸で おって ためして います[4]。

そめた 糸を おる さきぞめは、ちいさな 色の ちがいにも きを つけなければ ならない ようです。あとぞめなら おきないとは、この けんきゅうでは くらべて いません。

茨城県工業技術センターは、結城紬に横の筋(よこ段)が出る原因を調べました。糸の質によっては、束ごと、同じ束の中でも、染めたあとの色に差が出ることがあります[4]。

各工程で糸の色差が生まれ、それがよこ段の主な原因と考えられたため、研究では、わざと色差をつけた糸で試しに織って、色差が織物にどう影響するかを調べました[4]。

染めた糸を一本ずつ織り込む先染めでは、糸の色のずれが、布の見た目にそのまま表れる可能性があります。ただし、この研究は手紬糸の結城紬の事例です。後染めなら起きないとは、この報告では比べられていません。

それでも、色のそろった糸を作るところに、先染めの職人の腕とこだわりがあることは伝わってきます。

茨城県工業技術センターの別の報告は、結城紬に出る「よこ段」(横方向の筋)の原因を検証している。糸質によっては、綛ごとにも、同じ綛のなかでも染色差が生じる。各工程で生じる糸の色差がよこ段の主な要因と考えられたため、意図的に色差を付けた糸で試織し、糸の色差が織物にどう影響するかを調べた[4]。

染めた糸を織る先染めでは、染めむらが、布の見た目に直接反映されうる。その意味で、糸の染めをそろえる工程は、先染めの品質を左右する。ただしこれは手紬糸の結城紬の事例で、後染めなら起きないと比較した資料ではない。「先染めは難しい」と一般化する根拠にはならず、「先染めにはこういう難しさがある」という一例として読むのがよい。

染めた糸の色を読み、そろえ、織って確かめる。この積み重ねが、先染めの布の表情につながっている。

自分でも しらべて みたく なったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

今日できること:ふくを 1まい えらんで、うらがわや、はしの ほつれを 見て みましょう。ほつれた 糸に 色が ついて いれば さきぞめ、ぬのの おもてだけ 色が ある ときは あとぞめかもしれません。ただし、はさみで ふくを きったり、糸を ひっぱったり しないでください。

もっと しりたく なったら:おうちの人に きいて、ジーンズと しまの シャツを くらべて みましょう。

今日できること:手持ちの服の裏側や、縫い目の端のほつれを見てみましょう。ほつれた糸の色が表の色と同じなら、糸を染めてから織った布かもしれません。糸が白っぽく、布の表面にだけ色があれば、後染めの可能性もあります。ただし、見分け方には例外があるので、決めつけないでください。糸を抜いたり、服を切ったりしてはいけません。

出かけてできること:織物を作る産地の資料館や工房の展示を見ると、糸を染める場面や、織りあがった布を染める場面の紹介があることがあります。

公式情報:茨城県工業技術センターの研究報告や、国土交通省の多言語解説文データベースは、出典欄からたどれます。

今日できること:手持ちの服の裏側や、縫い目・端のほつれた糸を観察する。糸自体に色があるか、白っぽいかを見る。ただし外観だけで先染め・後染めを断定できない場合もあるので、「そうかもしれない」にとどめる。糸を抜いたり切ったりはしない。

資料を読む:茨城県工業技術センターの研究報告第19号・第37号(出典[2][4])は、PDFで公開されている。国土交通省の多言語解説文データベース(出典[3])には、十日町の染色技法の解説がある。

公式情報:先染め・後染めの定義や、色落ちのしにくさなどの耐久性の比較は、今回の調査では公的資料で確認できなかったため、扱っていない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

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  1. Takumi Japan「Woven vs dyed textiles」 https://takumijapan.com/en/collections/woven_and_dyed_textiles (先染め・後染めの言葉の使い分け。英語の解説ページ)
  2. 茨城県工業技術センター 研究報告第19号「紬織物の色彩管理技術研究(第1報)」 https://www.itic.pref.ibaraki.jp/publication/doc/research/h2/N19P098.pdf (結城紬の混合色と、同色の糸で織った織物の色)
  3. 国土交通省 多言語解説文データベース「十日町の染色技法」 https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/common/001781109.pdf (十日町の先染めと友禅の説明)
  4. 茨城県工業技術センター 研究報告第37号「結城紬のたて筋・よこ段発生原因の検証」 https://www.itic.pref.ibaraki.jp/publication/doc/research/h20/vol37-17.pdf (糸の色差とよこ段)
  5. Weblio「デニム」(デジタル大辞泉ほか) https://www.weblio.jp/content/%E3%83%87%E3%83%8B%E3%83%A0 (デニムの織り方)
  6. Makuake プロジェクトページ(商品紹介) https://www.makuake.com/project/wagoromo-4/ (デニムの中白の説明。商品紹介のため、参考にとどめた)
  7. 京都市産業技術研究所 染色(技術分野) https://tc-kyoto.or.jp/domains/dyeing (後染めの前処理の工程)

なおした ところ

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