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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

世界一 高い 木の 上の 葉は、なぜ かわいて いるの?

雨の多い森なのに、世界一高い木のてっぺんは「ずっと干ばつ」── セコイアの高さの限界

高さ116 mの梢が乾く理由 ── セコイア(コースト・レッドウッド)の水力学的限界と、その仮説の評価

分野:自然

せかいで いちばん 高い 木の いちばん 上の 葉は、雨が ふる 森の 中に いるのに、ずっと かわいた ところに いるような ようすだと 言われます[5]。

どうして、水が ある 土の 上で 葉が かわくのでしょう。木は、どこまで 高く なれるのでしょう。木が 水を 上へ はこぶ しくみと、これいじょう 高く なれない わけが 分かります。

世界一高い木のてっぺんの葉は、雨の多い森の中にいながら、実質的に「ずっと干ばつ」のような状態にある、とNature誌のニュースは伝えました[5]。

土に水があるのに、なぜ葉は乾くのでしょうか。木は何メートルまで伸びられるのでしょうか。水を高い所へ運ぶしくみと、高さの限界について分かります。

北カリフォルニアの雨の多い森に立つセコイアは、梢の葉が「実質的にずっと干ばつ」と評された[5]。土壌に水があっても、100 m級の高さでは水を引き上げること自体が難しくなるためだ、と考えられている[4]。

その制約は光合成のどこに現れるのか。仮説はどこまで確かなのか。最高木ハイペリオンの約116 mと、2004年の見積もり122〜130 mの差も含めて、資料から分かることを読む。

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1. 立ち入れない 世界一の 木は 何メートル?

1. 立入禁止の世界一は約116メートル

1. ハイペリオン ── 計測年で数字が変わる世界一

2019年に はかった 中で いちばん 高いと されて いる 木は、アメリカの レッドウッド 国立公園に ある「ハイペリオン」です。2006年8月25日に 2人の 人が 見つけました[1]。

2019年に 木に のぼって、上から テープを たらして はかると、116メートルでした[1]。でも、だれでも 行ける 場所では ありません。まわりは 立ち入り きんしで、道も ありません[3]。

この 木は、もっと 高く なれるのでしょうか。2004年に、木の 高さには 上の かぎりが あるはずだと 考えた 研究が ありました。計算で 見つもった 数字は、122〜130メートルです。ハイペリオンは、それより まだ 6メートルほど 下です[4]。

ギネス世界記録が2019年の計測で最も高い木としているのは、アメリカのレッドウッド国立公園にあるコースト・レッドウッドの「ハイペリオン」です。2006年8月25日に発見され、2019年に木に登ってテープを垂らす直接計測で、116.07メートルとされました[1]。国立公園局は379フィート(約115.5メートル)と紹介していて[2]、少し数字が違うのは、計測の時期などが違うためのようです。

この木の周りは立入禁止で、道もありません。国立公園局は、風や落雷で梢を失うことが珍しくなく、常設の道をつくるのは現実的でないと説明しています[3]。

では、木はどこまで伸びられるのでしょうか。2004年にKochらがNature誌に発表した研究は、北カリフォルニアのセコイアを調べ、機械的な傷みがなければ最大樹高は122〜130メートルと見積もりました。当時調べた中でいちばん高い木は112.7メートルでした[4]。ハイペリオンの約116メートルは、その見積もりの下限まで約6メートルです。これは回帰分析による見積もりで、確定した限界ではありません。

Guinness World Recordsが2019年の計測で最も高い木とするのは、レッドウッド国立公園(アメリカ)のコースト・レッドウッド「ハイペリオン」だ。2006年8月25日にChris AtkinsとMichael Taylorが発見し、2019年の直接計測(木に登ってテープを垂らす方法)で116.07 mとされた[1]。一方、国立公園局は379フィート(約115.5 m)と記す[2]。計測の年や方法で数字が異なりうるため、年を添えて読む必要がある。

この木は立入禁止区域にあり、道もない。国立公園局は、風や落雷で梢の一部を失うことが珍しくないので、常設の道への投資は現実的でないと説明する[3]。

では、この木はどこまで高くなれるのか。Kochら(2004)は、北カリフォルニアのセコイアで高さに伴う葉の性質の変化を回帰分析し、機械的損傷がなければ最大樹高は122〜130 mと見積もった。調べた中の最高木は112.7 mだった[4]。ハイペリオン(約116 m)は下限まで約6 mを残す。ただしこれは回帰による見積もりで、確定した限界値ではない。

2. 水は ポンプなしで 100メートルも のぼるの?

2. ポンプもないのに、水が100メートルの高さまで届く

2. 凝集力―張力説 ── 水を「引き上げる」力と重力

木の 根は 地めんの 下に あります。水を 使う 葉は、100メートルも 上に あります。木の 中に ポンプは ありません。

よく 知られた 考えは、こうです。葉の 小さな あな(気孔きこう)から、水が 空気の 中へ 出て いきます。すると、水の つぶ どうしが くっつく 力で、下の 水が つながった まま 引き上げられます[6]。

ストローで ジュースを すうと、ジュースが つながって のぼって きますね。それに 少し にて います。ただし ほんとうは、ストローは 口が 引きますが、木では 葉の ほうが 水を 引いて います。

水は 重いので、高く なるほど 引き上げる 力が たくさん いります。1メートル 上がる たびに、重力じゅうりょくに 勝つ ための 力が 少しずつ ふえて いきます[6]。

木の根は地面の下にあり、水を使う葉は地面から100メートル上にあります。しかも、水を押し上げるポンプは木の中にありません。

よく知られる説明は「凝集力―張力説」です。葉の気孔から水が蒸発すると、水の分子どうしがくっつく性質(凝集力)のおかげで、つながった水の柱ごと根から引き上げられます。水の柱が途切れないことが条件です[6]。

ここに重力が加わります。重力は水の柱の高さ1メートルにつき約0.01 MPaの張力の差を生むので、100メートルの木では、蒸散がなくても、梢の水は根元より約1 MPa低い状態になります[7]。MPa(メガパスカル)は圧力の単位です。背が高くなるほど、葉はより強く水を引かなければならなくなります。

では、それほど強く引いているとき、いちばん上の葉はどんな状態なのでしょうか。

水はどうやって100 m級の梢まで届くのか。標準的な説明は凝集力―張力説で、気孔から水が蒸発する力(蒸散)が、水分子どうしが引き合う凝集力を介して、根から葉まで途切れない水柱を引き上げる[6]。この説明は、水柱が切れないことを条件にしている。

そこに重力が効く。重力は水柱の高さ1 mあたり約0.01 MPaの張力の勾配を生むので、100 mの木では、蒸散がなくても梢の水ポテンシャルは根元より約1 MPa低くなる(0.01 × 100)[7]。ただし実測の勾配は理論より緩い例もあり、この値は目安として読むのがよい。

高い木ほど、葉は水を得るためにより強く引かねばならない。では、その葉は実際にどんな状態に置かれるのか。

3. 雨の 多い 森なのに、葉は かわいて いるの?

3. 湿った森の中で、てっぺんの葉だけ「ずっと干ばつ」

3. 水ストレス ── 土に水があっても起こる乾き

セコイアの 森は、雨が 多くて、夏には きりも 出ます[2]。土の 中にも、水は じゅうぶん あります。

ところが、いちばん 上の 葉は、ずっと かわいた ところに いるような ようすだと 言われます[5]。下の ほうの 葉は 大きくて ゆったり して いますが、てっぺんの 葉は 小さくて ぎゅっと つまって います[5]。

研究では、高い ところでは 水が 葉に とどきにくくて、葉が 大きく なるのを じゃまして いるかも しれないと 考えられています[4]。

セコイアの森は、降水量が多く、夏には霧も出ます[2]。土に水はあります。それでも、木の上のほうの葉は「実質的にずっと干ばつ状態」にあると、Nature誌のニュースは伝えました[5]。

地面に近い葉は幅が広くゆったりと並び、てっぺんの葉は小さく詰まっています[5]。Kochらの研究は、背が高くなるほど重力と水の通り道の長さによる抵抗で葉の水ストレスが増し、土に水が十分あっても、葉が広がることや光合成が制限されうる、と結論しました[4]。「されうる」とあるとおり、可能性の話です。

上の葉は、いちばん強い光を浴びられる場所にいます。そこで光合成はどうなっているのでしょうか。

高い木の梢は、水に恵まれた森にあってなお乾く。セコイアの生育地は降水が年60〜140インチと多く、夏には霧も出る[2]。それでも樹冠の葉は「実質的にずっと干ばつ」と評され、地面近くの葉が幅広く間隔があるのに対し、頂部の葉は小さく密集している[5]。

Kochら(2004)は、その背景に重力と水が通る経路の長さによる抵抗を置く。樹高が増すほど葉の水ストレスが強まり、土壌水分が十分でも、葉の拡大と光合成が最終的に制限されうるという[4]。原文が「may」を使っているとおり、これは可能性を述べた結論で、断定ではない。なお、ニュース解説([5])は二次的な紹介にあたる。

では、その制約は光合成のどこに現れるのか。

4. 木の 上の ほうでは、光合成こうごうせいは どうなるの?

4. 光は上ほど強いのに、光合成は約78メートルで山になる

4. 78 mの山 ── 形と光合成が光に追いつかなくなる高さ

木は、日の 光を 使って えいようを つくります。これが 光合成こうごうせいです。光は、木の 上の ほうが 強く 当たります。

ところが、世界で いちばん 高い セコイアを しらべた 研究が あります。同じ 広さの 葉で くらべると、光合成こうごうせいは 78メートル あたりで いちばん 大きく、それより 上では 小さく なりました[9]。

また、葉や えだの 形は、55〜85メートルより 上では、光が ふえても それに 合わせて かわらなく なって いました。水を 上へ はこぶ むずかしさが つながって いると つたえられて います[9]。

78メートルは、木が 高く なれる かぎりでは ありません。光合成こうごうせいの 山が ある 高さです。

光は、木の上へ行くほど強く当たります。だから上の葉ほど、光合成が盛んでもよさそうです。

ところが、Ishiiらが2008年に世界一高いセコイアで調べると、葉や枝の形は、55〜85メートルより上では、増えていく光に合わせて変わらなくなっていました。面積あたりの光合成は約78メートルで最大になり、それより上では下がったと報告されています。水を運ぶ制約が関係する、と論文は考えています[9]。

注意したいのは、78メートルは面積あたりの光合成が山になる高さで、樹高の限界ではないことです。実際にハイペリオンは約116メートルまで育っています[1]。

では、水を引く難しさだけで、木の高さは決まるのでしょうか。

水の制約は、光合成の効率にどう現れるのか。Ishiiら(2008)は世界一高いセコイアで、水輸送の制約のため、葉や枝の形態が55〜85 mより上では光の増加に対応しなくなると報告した。面積あたり光合成は約78 mで最大となり、それより上で低下した[9]。

78 mは光合成の山の高さで、樹高の限界ではない。ハイペリオンは約116 mに達している[1]。上ほど光は強いのに、形も光合成もその光についていけなくなる、という点が読み取れる。

では、この水力学的な制約だけで、高さは説明できるのか。

5. 高さを 決めるのは 水だけ?

5. 「水の限界」だけでは説明しきれない

5. 仮説の評価 ── 「一般的だが普遍的でない」

ここまでの 考えは、「水を 引き上げる むずかしさが、高さを おさえる」と いうものです。

でも、これが ただ ひとつの 答えだとは 言えません。2006年に、51の 研究を 見なおした 人たちが います。高い 木ほど 気孔きこうが ひらきにくく 光合成こうごうせいが 下がる ことは よく あるが、いつも そうでは ないと まとめました[8]。

ほかにも わけが あります。風や 雷かみなりで、てっぺんを なくす ことは めずらしく ありません[3]。雨の 多さや、夏の きり、風から まもられた 地形が、高く 育つ 助けに なるとも 言われます[2]。

木の 高さの わけは、まだ 話し合いが つづいて います。

「水を引き上げる難しさが高さを決める」という考えは、水力学的限界仮説と呼ばれ、1997年にRyanとYoderが提唱しました。背が高くなると、葉あたりの水の通しやすさと気孔の開きが下がり、光合成が減って、樹高の成長が鈍る、という筋書きです[8]。

2006年に、51の研究を見直した論文は、高い木で気孔の開きや光合成、水の通りやすさが「しばしばだが常にではなく」低いと述べ、この仮説は「一般的だが普遍的ではない」と結論しました[8]。唯一の理由と書けるほど、話は決まっていません。

ほかの事情もあります。国立公園局は、レッドウッドが寿命の間に、風や落雷で梢の一部を失うことは珍しくないと説明しています[3]。また、高さの背景として、多い降水、水分の損失を減らす夏の霧、穏やかな気候、風から守られる地形を挙げています[2]。

では、身近な木で、この話を確かめるヒントはあるでしょうか。

この考えは水力学的限界仮説と呼ばれ、Ryan & Yoder(1997)が提唱した。樹高が増すと葉あたりの水の通しやすさと気孔の開きが下がり、光合成が減って、樹高成長が鈍るという筋書きだ。しかし2006年の再検討(51研究)は、高い木で気孔開度・光合成・水通導度がしばしば、だが常にではなく低いとし、仮説は「一般的だが普遍的でない」と結論した[8]。したがって、水の限界を「唯一の理由」とは書けない。

実際の木では別の事情も重なる。国立公園局は、レッドウッドが寿命の間に、風や落雷で梢の一部を失うことは珍しくないと説明し[3]、高さの背景として、高い降水、水分の損失を減らす夏の霧、穏やかな気候、風から守られる地形を挙げる[2]。

水を引く力の限界、梢を失う出来事、育つ環境のうち、どれがどの程度効くのかは、ここで使った資料からは決められない。では、身近な木で何が見えるのか。

6. 木を 見上げて くらべて みよう

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 出口 ── 身近な木で観察する/原典を読む

公園や 山で 大きな 木を 見つけたら、見上げて みましょう。手が とどく 下の ほうの 葉と、見える 高い ところの 葉を くらべます。大きさや ならびかたに、ちがいが あるでしょうか。

木には のぼりません。えだが おちて くる ことも あるので、風の 強い 日は 木の 下に 長く いないで ください。ちがいが 見えなくても、だいじょうぶです。いろいろな 木で 見て みましょう。

近くの公園で背の高い木を見つけて、手の届く低い枝の葉と、見上げて見える高い所の葉を比べてみましょう。ただし、この記事の話は世界一高いセコイアなどで調べた研究で、身近な木で同じ差が出るかは分かりません。差が見えなくても、それも観察の結果です。

木には登らず、風の強い日は木の下に長くいないようにしてください。

庭木や公園の木で、手の届く低い枝の葉と、見上げて見える高い枝の葉の大きさや密度を比べてみるとよい。ただしKochらの結果は背の高いセコイアで得られたもので、身近な木で同じ差が見えるかは分からない。見えない場合もひとつの観察結果になる。木には登らず、強風の日は樹下に長くいないこと。

原典に当たるなら、Koch et al. (2004) "The limits to tree height" の要旨[4]が高さの見積もりと水ストレスを、Ryan et al. (2006)[8]が仮説の評価を扱う。ハイペリオン周辺の状況は国立公園局のページ[3]にある。いずれも英語で書かれている。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:世界記録の公式サイト、国立公園局、論文の要旨、大学の講義ページ、Nature誌のニュース解説を使った。Woodruffら・Ishiiらの数値は要旨の範囲で、論文本文の原文は確認していない。

  1. Guinness World Records「Tallest tree living」。https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/tallest-tree-living (ハイペリオンの発見と2019年の計測値について)
  2. アメリカ国立公園局 レッドウッド国立公園 FAQ。https://www.nps.gov/redw/faqs.htm (最高木の高さと、降水・霧など育つ環境について)
  3. アメリカ国立公園局「Should I Hike to Hyperion?」。https://www.nps.gov/redw/planyourvisit/hyperion.htm (立入禁止と、梢を失うことについて)
  4. Koch et al. (2004) "The limits to tree height", Nature。要旨:https://experts.nau.edu/en/publications/the-limits-to-tree-height/ (最大樹高の見積もりと水ストレスについて)
  5. Nature News (2004) "Height limit predicted for tallest trees"。https://www.nature.com/news/2004/040419/full/news040419-5.html (ずっと干ばつ状態の葉、上と下の葉のちがいについて)
  6. Saupe 植物生理学講義「Water transport」(CSB/SJU)。https://faculty.csbsju.edu/ssaupe/biol327/Lecture/water-trans.htm (凝集力―張力説と重力の影響について)
  7. Woodruff, Bond, Meinzer (2004) "Does turgor limit growth in tall trees?"(要旨)。https://research.fs.usda.gov/treesearch/7206 (重力による張力の勾配について)
  8. Ryan, Phillips, Bond (2006) "The hydraulic limitation hypothesis revisited"。https://research.fs.usda.gov/treesearch/61135 (水力学的限界仮説の評価について)
  9. Ishii et al. (2008) "Hydrostatic constraints on morphological exploitation of light in tall Sequoia sempervirens trees", Oecologia(要約)。https://experts.nau.edu/en/publications/hydrostatic-constraints-on-morphological-exploitation-of-light-in/ (高さと光合成・葉の形について)

なおした ところ

更新履歴

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