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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

サメの 体には、どうして 骨ほねが ないの?

サメの骨格はなぜ軟骨なのか:軽さ・浮力・骨のあった祖先

サメの軟骨骨格 密度・肝油の浮力・テッセラ・祖先の骨をめぐる仮説

分野:生きもの

サメは、大きな 体で 海を 力づよく 泳ぎます。ところが、その 体を ささえて いるのは、ふつうの 骨ほねでは なくて 軟骨なんこつだと いわれます。

むかしの サメの ごせんぞには、骨ほねが あった ようです。骨ほねを なくした 理由は、どこまで わかって いるのでしょう。いっしょに 見て いきましょう。

サメの体を支えているのは、いわゆる硬い骨ではなく軟骨です。ところが、サメの祖先には骨があったらしい、という化石の手がかりが見つかっています。

骨を持たなくなったのは、なぜなのでしょうか。軽さ、浮力、軟骨の中のタイル状の部分、そして4億年前の化石まで、博物館や論文の資料を突き合わせて順にたどります。

サメ・エイ・ギンザメなどの軟骨魚類は、歯などを除いて全身の骨格が軟骨でできている[1]。ただし、化石の証拠は、その祖先に骨があったことを示す[7]。

このメモでは、軟骨の密度と柔軟性、浮き袋の代わりの肝油、石灰化したタイル状組織(テッセラ)、デボン紀の化石魚ミンジニアを、博物館の解説・総説・論文から整理する。「軽さのために骨を失った」という説明は解説の立場であり、研究論文で確かめられた結論とは区別して書く。

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1. サメの 体は、なにで できて いるの?

1. 「骨がない」とは、どういうことか

1. 軟骨魚類では、骨格の材料だけが骨と異なる

サメの なかまは、エイや ギンザメと いっしょに、「軟骨なんこつの 魚」の なかまと よばれます。名前は、体の 中の ささえが、ほとんど 軟骨なんこつだから、と いわれます[1]。

では、サメには 頭や せなかの ほねが ないのでしょうか。そうでは ありません。かたちは ほかの 魚と よく にて います。ちがうのは、できて いる ざいりょうです。骨ほねでは なくて、軟骨なんこつなのです[2]。

ただし、歯などは べつです。全身が ぜんぶ やわらかい わけでは ありません[1]。

形は同じで、材料がちがう

軟骨魚類とは、サメ、エイ、ギンザメの仲間です。歯などを除いて、全身の骨格が軟骨でできていて、名前もそこに由来します[1]。

ハワイ州の海洋資源を扱う部署の解説によると、サメの骨格は、ほかの魚のものとよく似た形をしています。ちがうのは、骨ではなく軟骨でできている点です[2]。「骨組みがない」のではなく、「骨組みの材料が軟骨」と読むほうが正確です。

軟骨魚綱(サメ・エイ・ギンザメ類)は、歯などを除き全身の骨格が軟骨で構成される[1]。ハワイ州土地天然資源局(DLNR)の解説は、サメの骨格が他の魚のものとよく似た配置をもち、材料だけが骨でなく軟骨であると述べる[2]。

したがって、「サメには骨格がない」は誤りであり、「骨格の材料が軟骨である」が正しい。なお、歯の材質をどう位置づけるかは資料によって表現が分かれるため、ここでは踏み込まない。

2. 軟骨なんこつは、どんな ところが いいの?

2. 軽くて、しなやかな骨格

2. 軟骨は骨より低密度で柔軟だが、一部は補強される

ロンドンの しぜんし はくぶつかんの せつめいでは、軟骨なんこつの みつどは、骨ほねの およそ 半分だと いわれます[3]。

「みつど」とは、おなじ 大きさで くらべた ときに、どれくらい 重いか を あらわす ものです。「軟骨なんこつの 重さが 骨ほねの 半分」と いう いみでは ありません。

軟骨なんこつは 軽くて、よく しなります。ただし、やわらかい だけでは ありません。あごや せぼね、脳のうの まわりの 軟骨なんこつは、カルシウムの 入った 物で、かたく 強められて います[3]。

はくぶつかんの 学者は、この 軽さと しなやかさが、サメには 役に 立つ と せつめいします[3]。

密度が骨の約半分

ロンドンの自然史博物館の解説では、軟骨の密度は骨のおよそ半分です[3]。同じ大きさで比べたときに軽い、という意味で、「軟骨の重さが骨の半分」ではありません。

この数字は博物館の解説に出ているもので、目安として受け取るのが安全です。

やわらかいだけではない

あごや背骨、脳を囲む軟骨は、カルシウムの塩で補強されています[3]。軽さとしなやかさに加えて、必要な場所は強くなっている、という組み立てです。

同じ解説は、軽くしなやかな骨格が、素早く体を曲げるのに役立つとも説明します[3]。ただし、あくまで一般向けの説明として読みます。

自然史博物館の解説(NHM)は、軟骨の密度を骨の約半分とする。「重さが半分」ではなく密度の話である点に注意したい。顎・脊椎・脳を囲む軟骨はカルシウム塩で補強される[3]。

この数値は一般向けの解説の記述で、原論文は未確認である。また、軟骨が素早く曲がれる、衝撃に強いといった運動性能の説明も一般向け資料のみに見られ、実験による比較は今回の資料では追えていない。

3. うき ぶくろが ないのに、どうして しずまないの?

3. 浮き袋の代わりに、肝臓の油

3. 浮力の調節 肝油と負の浮力

多くの 魚には、しずみにくく する 「うきぶくろ」が あります。サメの なかまには、これが ありません[1]。

その かわりに、サメは かんぞうに、水より 軽い 油を ためて います[1]。かんぞうは、おなかの 中に ある 大きな ぞうきです。

ヨシキリザメという サメでは、かんぞうが 体重の 五分の 一、つまり 20パーセントを しめる と いわれます[5]。

深い 海の サメには、かんぞうが 体重の およそ 三わりに なる ものも います。ただし、これは 深海に すむ 一部の サメの ことです[4]。

でも、油で ずっと ういて いられる わけでは ありません。サメは どれも、少し ずつ しずむ ものです[2]。

肝臓に、水より軽い油をためる

軟骨魚類には浮き袋がありません。そのかわり、肝臓に水より比重の軽い油(肝油)をためて、浮力を調節するといわれます[1]。

ヨシキリザメでは、肝臓が体重のおよそ5分の1、つまり20%を占めるとされます[5]。オーストラリア博物館の解説では、深海のサメには肝臓が体重の最大3割ほどになる種があり、軽い油のスクアレンで、ほぼ浮きも沈みもしない状態になります[4]。「3割」は深海性の一部の種の上限であって、すべてのサメではありません。

それでも、少しずつ沈む

ハワイの解説は、すべてのサメは、わずかに沈む性質(負の浮力)をもつと述べます[2]。軽い軟骨と油の肝臓を合わせても、完全には浮きません。だから「油で浮く」ではなく、「沈みにくくしている」と考えるほうが実態に近いようです。

軟骨魚類は鰾(浮き袋)を持たず、肝臓に水より比重の軽い油(肝油)を蓄えて浮力を調節する[1]。ヨシキリザメでは肝臓が体重の約5分の1(20%)を占める[5]。深海のサメには肝臓が体重の最大約30%に達する種があり、軽い油のスクアレンによって中性浮力に近づく[4]。

ただし30%は深海性の一部の種の上限である。また、DLNRの解説は、すべてのサメがわずかに負の浮力をもつ(沈む)と述べる[2]。軽い軟骨と肝油を合わせても、浮力は完全には釣り合わない。ヨシキリザメの数値はWeblio(辞書項目)のみで、原典は確認できていない。

4. 軟骨なんこつの 上に、かたい タイルが ある?

4. 軟骨を覆うタイル状のブロック

4. テッセラ 軟骨魚類に特有の石灰化

サメの 軟骨なんこつの 表面には、カルシウムの ような 物で かたく なった 小さな ぶぶんが、タイルの ように ならぶ ことが あります[6]。

この かたい ぶぶんを、「テッセラ」と よびます。タイルばりの かべを 思いうかべると、近いかもしれません。ただし 本当は、かべの ような ものでは なく、軟骨なんこつの 上の、うすい かたい ぶぶんです[7]。

テッセラの 中心には、かたく なって いない 軟骨なんこつが あります[7]。この しくみは、サメの なかまに ふつう 見られる、と 書かれて います[7]。

「タイル」という名前の由来

軟骨魚類の軟骨は、多くの場合、アパタイト(カルシウムを含む鉱物)で固まった小さなブロックで補強されています。この石灰化した部分を「テッセラ」と呼び、タイル状に並ぶものもあります[6]。

ブロックは、石灰化していない軟骨の芯の外側を覆います[7]。軟骨魚類に特有の、派生的な特徴とされます[7]。

「骨がない」は「まったくかたくない」ではない

サメの体は、全部がやわらかい軟骨ではありません。軟骨の外側にタイルの層があり、とくにかたい部分は補強されています。「軟骨だから柔軟」と、「かたい部分もある」は、両方とも本当です。

軟骨魚類の軟骨の石灰化は、アパタイトを含浸した小さな関節状のユニット(テッセラ)として主に起こる[6]。テッセラは、石灰化していない軟骨の芯(内骨格要素)の表面を覆う、離散的な石灰化組織のブロックで、軟骨魚類に固有の派生形質である[7]。

硬骨魚では、まず軟骨で骨格が作られ、軟骨内骨化によってカルシウムの蓄積した骨に置き換わる[9]。サメの軟骨はこの経路とは別に、テッセラ状に石灰化する。「軟骨=未成熟な骨」という見方は不正確である。

5. サメの ごせんぞには、骨ほねが あったの?

5. 骨のあった祖先と、骨を手放した可能性

5. 祖先には骨があり、その後に失われたとする仮説がある

あごを もつ せぼねの ある 動物の ごせんぞや、サメの なかまの ごせんぞには、体の 中に 骨ほねが あった と 考えられて います[7]。

モンゴルで 見つかった、およそ 4億おく1000万年前の 化石かせきの 魚は、ミンジニアと 名づけられました。この 魚には、ほかの 魚の 骨ほねに にた、細かい あみ目の ような ものが 見つかっています[8]。

骨ほねの ある ごせんぞから、サメの 軟骨なんこつの ほねぐみへ かわった かのうせいが ある、と 考える 研究者も います[8]。

化石かせきを しらべると、サメの なかまは 4億おく年より 前に、皮の 下の 骨ほねなどを なくした と 考えられて います[6]。

はくぶつかんの 学者は、かるさと しなやかさの ために 軟骨なんこつに もどった、と せつめいします[3]。ただし 「かるく する ために 進んだ」と 言い切る 研究は、見つかって いません。

骨をもっていた祖先

顎をもつ脊椎動物の共通祖先や、軟骨魚類につながる祖先のグループには、内骨格の骨があったと報告されています[7]。サメの骨格は「もともと軟骨だった」のではなく、「骨のある祖先から変わった」らしい、という見方です。

モンゴルの4億1000万年前の魚

モンゴルで見つかった約4億1000万年前(デボン紀前期)の化石魚ミンジニアは、板皮類に似た魚です。その骨には、硬骨魚に似た内軟骨性の骨の網目状の構造が確認されました[8]。サメの軽い骨格が、骨のある祖先から進化した可能性を示す手がかりとされます。

別の総説では、化石の証拠から、軟骨魚類は4億年以上前に皮骨などを失ったと推定されています[6]。ただし「推定」であり、断定ではありません。

なぜ軟骨に戻ったのか

ロンドンの自然史博物館の化石魚類学者は、サメの祖先はおそらく骨の骨格をもち、軽さとしなやかさのため軟骨に戻ったと説明します[3]。素早く曲がれる利点も挙げますが、これは「利点とされる」という水準の説明です。軽くするために進化した、と言い切る研究論文は、今回の資料には見当たりませんでした。

顎口類の共通祖先と軟骨魚類の祖先群(ステム軟骨魚類)は、内骨格の骨をもっていた[7]。モンゴルのデボン紀前期(約4億1000万年前)の板皮類様の魚ミンジニア(Minjinia)は、硬骨魚の内軟骨性骨に似た細かな骨梁の網目をもち、軟骨魚類の軽い骨格が骨のある祖先から進化した可能性を示す[8]。この報告はbioRxiv版による。

Frontiers Ecol. Evol.(2021)の総説は、古生物学的証拠から軟骨魚類が4億年以上前に外骨格(皮骨)や骨膜性の骨を失ったと推定する[6]。ただし別の総説(PMC8727550)は、軟骨魚類が骨を「失った」のではなく、骨に似た組織をもつ可能性も論じている[7]。「骨を失った」という見方がある一方、現生の軟骨魚類にも骨に似た組織が残る可能性が論じられている。

NHMの化石魚類学者は、祖先は骨の骨格をもち、軟骨のほうが軽くしなやかなため軟骨に戻ったと説明し、素早く曲がれる利点も挙げる[3]。これは一般向け解説の立場で、目的論的な説明を研究論文が支持しているかは、今回の資料では確かめられていない。

6. もっと しりたく なったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

6. 自分でも調べてみたくなったら

今日 できること

耳の ふちや 鼻の さきを、そっと つまんで まげて みましょう。ふつうの 骨ほねより やわらかく、もどって くるのを 感じられます。これは 軟骨なんこつに にた やわらかさです。

でかけて できること

水族館で サメを 見る 日が あれば、体の まがり 方を 見て みましょう。ガラスは たたかないで ください。

今日できること

耳のふちや鼻先を軽くつまんで曲げてみましょう。骨よりやわらかく、すぐ元に戻ります。軟骨に近い感触です。次に、図書館や家にある日本語の魚の図鑑で、サメとほかの魚の骨格の説明をくらべてみてください。

出かけてできること

水族館では、サメが体をくねらせるようすを観察してみましょう。水槽はたたかず、フラッシュも使わないでください。

今日できること

出典[3](NHM)は「軟骨の密度は骨の約半分」「軽くしなやか」といった記述と、「素早く曲がれる」といった運動性能の記述を区別せずに並べている。どの記述が数値で、どれが説明かを自分で分けてみる。

出かけてできること

水族館では、展示の解説が「軟骨」と「骨」をどう書き分けているか、また「浮き袋がない」「肝臓に油」といった説明が出ているかを確かめる。水槽には触れない。

資料を読むなら

  • Frontiers Ecol. Evol. 2021 “Diversity and Evolution of Mineralized Skeletal Tissues in Chondrichthyans”
  • Frontiers Genet. 2021 “Mineralized Cartilage and Bone-Like Tissues in Chondrichthyans”(PMC8727550)
  • Nature Ecol. Evol. 2020, Endochondral bone in an Early Devonian ‘placoderm’ from Mongolia(bioRxiv版)

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

百科事典・博物館の解説・総説論文・プレプリントを突き合わせた。ミンジニアはプレプリント版による。

  1. 軟骨魚綱(Wikipedia日本語版) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%9F%E9%AA%A8%E9%AD%9A%E7%B6%B1 (軟骨魚類の全身の骨格、浮き袋と肝油)
  2. Hawaii DLNR Sharks: Skeleton & Buoyancy https://dlnr.hawaii.gov/sharks/anatomy/skeleton-and-buoyancy/ (骨格の材料と、わずかに沈む性質)
  3. Natural History Museum: Do sharks have bones? https://www.nhm.ac.uk/discover/quick-questions/do-sharks-have-bones.html (軟骨の密度、補強、祖先の説明)
  4. Australian Museum: What is a shark? https://australian.museum/publications/sharks/what-is-a-shark/ (深海のサメの肝臓の割合)
  5. 軟骨魚綱(Weblio辞書) https://www.weblio.jp/content/%E8%BB%9F%E9%AA%A8%E9%AD%9A%E7%B6%B1 (ヨシキリザメの肝臓の割合。辞書項目のみ)
  6. Frontiers in Ecology and Evolution 2021「Diversity and Evolution of Mineralized Skeletal Tissues in Chondrichthyans」 https://www.frontiersin.org/journals/ecology-and-evolution/articles/10.3389/fevo.2021.660767/full (テッセラ、骨を失った時期)
  7. Frontiers in Genetics 2021「Mineralized Cartilage and Bone-Like Tissues in Chondrichthyans」(PMC8727550) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8727550/ (テッセラの位置づけ、祖先の骨)
  8. bioRxiv「Endochondral bone in an Early Devonian ‘placoderm’ from Mongolia」(Nature Ecol. Evol. 2020) https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.06.09.132027v2.full (ミンジニアの化石。プレプリント版で確認)
  9. JT生命誌研究館「軟骨魚から硬骨魚の進化」 https://www.brh.co.jp/salon/shinka/2014/post_000021.php (硬骨魚の軟骨内骨化)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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